当日ギリギリまで書くもんじゃないですね……。
動物園の電脳には、恐らくハッキングしたネットナビが配置したであろう『動物なりきりメットール』なる奇妙なメットールが各所に配置されていた。
近年クリームランドで発達を続けるウィルス技術に倣い、よかよか動物園のプログラマーが独自に開発したウィルスセキュリティである。
その動物に関連する『なりきりプログラムくん』を宛がえば謎の演出をもって消滅するというマニアックすぎるウィルスで、本来はハッカーへの時間稼ぎが目的なのだが。
―ばこーん
『……あのねストーンマン』
―ずこーん
『ナンダろっくまん』
―どこーん
『轢いちゃっていいのかな……』
ストーンマンに次々と跳ね飛ばされていた。
体内に埋め込まれたICチップを悪用され暴走する動物達を止めるため、パンダ舎のマルチユニットから動物園の電脳へ侵入したロックマンとストーンマン。
PETのプラグは二つ挿入したが熱斗がオペレートするのはロックマン。そのアシストとして自立型ナビである彼がロックマンを頭頂部に乗せて爆走している。
その圧倒的重量がローラーを用いて加速すれば、小柄なウィルスなら簡単に跳ね飛ばせる。そりゃもう軽々と。
あまりの勢いに特殊ウィルスだけでなく、その辺を屯っていたウィルスも巻き込まれてぶっ飛ばされている。
しかしストーンマンは速度を緩めず言う。
『特技ハ押シ付ケルモノ(キリッ』
ナビカスプログラム『ヒョーゲンリョク』で『キメ顔』のフキダシを出すストーンマン。
ゴリ押しを恥じぬその様は彼らしいが、遠慮なくウィルスを轢き飛ばす姿を頭頂部から見下ろしているロックマンは思う
『ストンナに似てきたね』
『だな』
これには熱斗も納得。いや『照れ照れ』のフキダシを出している場合じゃないぞストーンマン。
それはともかくとして、動物と観光客の為にも、急いで電脳ジャック犯を探しだすのだ。
▼なりきりプログラムくんは うらめしいめで こちらをみている……。
―――
WWW所属のオペレーター『犬飼』とそのネットナビ『ビーストマン』。
彼らの目的はこの電脳のどこかに隠されている『例の物』を探すことなのだが……。
『避けろビーストマン!』
『グォッ!?』
ビーストマンが飛び退き、そこを極太の炎が一直線に伸びていく。掠っただけでこの熱量だ、当たれば大ダメージは必須だろう。
炎が収まった後も、ビーストマンは身を屈め全方位に跳躍できるよう機会を窺う。本来の彼なら反撃すべく飛び掛かるだろうが、相手が悪かった。
彼らの眼前に立ちはだかるのは、亀をモチーフとした大型ウィルス『ガメライザー』だった。
歯が一体化しているギザギザした口、大きく強固な甲羅、それを支える強靭な四つ足。緑色のカラーで統一されたその巨体は一種の兵器ですら思わせる。
ガメライザーの背後にあるのは、動物園の中枢を担うコンピューター。そこに犬飼……正確にはWWWが欲するデータが眠っているはずだ。
『くそっ、ワイリー様から情報が洩れているから警備は厳重だって言ってたがよぉ……!』
『グルルル……目障りなカメめ!』
恐らくは『例のデータ』を守る為に科学省が配備した大型ウィルスだろう―――しかしだ。
"もし連中に情報が洩れているのなら、なぜコイツ一体なのだ?"
四つ足を引っ込めジェット噴射で飛び、分離したコンテナから小型のカメウィルスが飛び出るという、奇天烈な行動に出たガメライザーに驚きつつもビーストマンは思考する。
『例のデータ』の重要性及びそれに連なる危険性は科学省も理解しているはず。
こんな辺鄙な場所に隠したのも秘匿性を高める為なのだろうが、あまりにもお粗末な隠し方だとビーストマンは思う。
WWWの裏切り者がWWWの計画をオフィシャルにバラしたのなら、隠し場所を変えるなり、警備ナビを増やすなりしてセキュリティを強化することも考えられた。
しかしいざ訪れてみれば、『例のデータ』を守るようにして現れた大型ウィルス一体のみ。
人員不足なのか、よほど守り切る自信があるのか、オフィシャルネットバトラーが来るまでの時間稼ぎなのか。
そもそもクリームランド産だとすれば強固なセキュリティを敷かない理由はなんなのか……ビーストマンは獣型とは思えぬ頭脳で様々な疑惑を浮かべる。
『ぼけっとしてんなビーストマン、さっさとそいつを片付けろ!バトルチップ【ホウガン】スロットイン!』
『ガルルル、解っている!』
つくづく頭の回転が悪いオペレーターだと、ビーストマンは内心で毒づくも『ホウガン』を投げる。
甲羅を除くあらゆる個所を攻撃してみた所、首が弱点なのは解った。
弱点を晒すのは口から火炎放射を放つときのみだ。しかし分離したコンテナから飛び出す子カメウィルスが残っていると邪魔される。
更に頭と足を引っ込めての体当たり攻撃、ボディプレスで落石と罅割れを起こすなど攻撃も多彩。
鈍間な見た目とは裏腹に隙が少ない。ビーストマンの爪だけでは長引くだけだ。
犬飼のバトルチップフォルダは『とにかくダメージがデカいバトルチップ』を大量に詰め込んだ、コードも揃えずチップの特性も考えていない脳筋フォルダ。
特に『ホウガン』はガメライザーにも有効で、その分厚い甲羅を凹ましている。時間はかかるだろうがデリートは可能だ。
『見つけたぞ!』
犬飼とは違う声に振り向くビーストマンとガメライザー。
要塞のような巨大ネットナビが急停止し、その頭頂部から青いネットナビが着地し対峙する。
想像以上に早く訪れた邪魔者に犬飼とビーストマンは舌打ちする。ただでさえ大型ウィルスに苦戦しているというのに。
『ウ、ウィルスが二体!? こいつらが動物が暴走した原因か?』
『違う、あの二本足で立っている奴、獣みたいだけどネットナビだよ!』
『すとんなガ好ミソウナでざいんヲシタねっとなびダナ』
またズレたことを……とストーンマンに振り向いたロックマンを見て、隙あり、と咄嗟に判断したビーストマンだが……。
『グオオオォーッ!』
『っ!?』
突如としてガメライザーが咆哮、開口しロックマンに向けて火炎放射を放つ。
ガメライザーの咆哮を聞いたことで咄嗟に避けれたロックマン。ストーンマンは避けれず直撃するが、火炎放射では大したダメージにはならない。
『ロックマン、大丈夫か!?』
『うん! けどこの大型ウィルス、一体なんなんだろう?』
ロックマンが戸惑う間にもガメライザーは頭と四肢を引っ込め、ボディプレスで大地を揺らし落石を起こす。
既に地面の幾割かが罅割れているが、ロックマンとビーストマンは頭上から落ちる岩を避ける。ストーンマンは相変わらず避けれない。
『チャンスだビーストマン、データを抜き取れ!』
突然ガメライザーがロックマンを狙い始めたことに違和感を覚えるビーストマンだが、犬飼の命令を聞いて咄嗟に動き出す。
しかしガメライザーは首だけ振り向き火炎放射を放つ。高温を察知したビーストマンは横へ飛んで回避、コンピューターに直撃するがビクともしない。
『ゴゴゴ……大型うぃるすノ性質ヲ考エルナラ、下手人ハアノなびカ!』
ネットナビのみを狙うという大型ウィルスの特性を考え、あの獣型ナビが犯人だと判断したストーンマンは右腕をワープさせ『クエイクストーン』として落下させる。
察せられたビーストマンは舌打ちし跳躍に次いで跳躍、『クエイクストーン』の直撃からは逃れるも、ガメライザーの視線は依然としてビーストマンを狙っている。
『ロックマン、獣型ナビを追い詰めよう!』
『うん―――うわっと!?』
かと思えばロックマンが前に躍り出ればそちらを振り向き、埒があかないと判断したのか頭と四肢を引っ込め、コンテナを分離してから体当たり攻撃を仕掛ける。
まるでホッケーのように飛び交うガメライザー。それを避けるロックマンとビーストマン。乱入する子カメウィルス。
その中で襲われていないのがストーンマンだった。余波は受けているが、ガメライザーはストーンマンなど眼中に入れていないらしい。
『ストーンマン、デカいウィルスってストンナのパパが作っているんだろ、何か知らないか!?』
『ゴゴゴ、ソウイエバめがとハ動物園ニ頼マレテ……ア』
ココでストーンマンは思い出した。
大事な娘のネットナビだから万が一がないようにと、大型ウィルスの対象外となるコードをメガトから埋め込まれた事に。
ガメライザーがロックマンとビーストマンばかり狙うわけだ、と納得した……余波で落石が直撃しているが。
『根本的な解決になっていないよ!』
『グルルルーーーッ!』
火炎放射を避けながらロックマンとビーストマンは叫ぶ。
ビーストマンはデータ回収が目的で、ロックマンとストーンマンは動物達を早く止めることが目的。
そしてガメライザーはデータを守るべくストーンマン以外のナビをデリートする。
動物を操っている犯人であろうオペレーターのナビをどうにかしたいがガメライザーが邪魔をする。
故にだ。
『ろっくまん、スマナイガソノママ耐エロ! アノ獣型ハおれガ相手ヲスル!』
『ガルッ!?』
『ストーンフィスト』で地面を叩き落石を発生、ビーストマンに攻撃を仕掛ける。
回避しようにも火炎放射が横切り咄嗟に静止、落石に直撃してしまう。
『仕方ない、耐久戦だロックマン! ケモノナビにも気をつけよう!』
『うん! オペレートよろしく!』
『グルルル、人型ナビはこれだから小賢しい!』
ビーストマンを視界に捉えつつガメライザーの攻撃を避けることに集中するロックマンと、ガメライザーとストーンマンの攻撃を避け続けるビーストマン。
『仕方ねぇ、先ずはそのでけぇナビをデリートしろ! 【コオリホウガン】スロットイン!』
『グルーッ!』
馬鹿の一つ覚えのようにホウガン系バトルチップを送信し、ビーストマンに投げさせる犬飼。
奇しくもホウガン系は機動力が殆ど無いストーンマンにも有効だ。ガメライザーの攻撃を避けなければならないこともあって時間がかかるだろうが。
このままで行けば、異変を察知したオフィシャルが駆けつけるのも時間の問題だ……しかし。
『サンダークロー!』
突如としてガメライザーの足元から蛇腹状の腕が伸び、絡みついた所へ電撃が流れる。
かなり強力な電撃だったのかガメライザーは動けなくなり、突然の出来事に身動きが取れなくなった3体を他所に腕が地面へと消えていく。
その腕の持ち主……喜ぶ顔と泣く顔を縦に並べた雪だるまのようなネットナビを最初に見つけたのは熱斗だ。
『お前は誰だ!』
『時間もないので手短に…ー
以後お見仕切り置きを、とお辞儀するクラウンマンだが、次いでビーストマン……正しくは犬飼に向けて見下した視線を送る。
『ワイリー様に頼まれて様子を伺ってみればこのザマ。情けないですねぇ犬飼殿、ひーっひっひっ!』
『うるせぇ! 今すぐこいつらをデリートするから手伝え!』
『ところがどっこい、ワイリーは退けとの御命令でして』
『ガル?』
クラウンマンの伝言に目を丸くする犬飼とビーストマン。
その直後に、ギギギ、と音を立ててガメライザーが動き出そうとする。
『まて、動物達を!』
『おいおい何バカな事を言ってやがる! 俺様の任務はワイリー様からなぁ!』
『ウィルスに手こずり光熱斗とロックマンを招いた時点で失敗なのですよ。今回は失敗しましたが、次の手はワイリー様がちゃーんと考えておりますとも―――ではお先に』
怒鳴り散らす犬飼など気にせず、クラウンマンはチラリとロックマンとストーンマンを見る。
そして『ひーっひっひっ!』と笑い声を上げてプラグアウト、犬飼よりは理解があるビーストマンも舌打ちしてプラグアウトする。
『待って……逃げられちゃった』
『ゴゴゴ、ソレヨリ動物達ノこんとろーるヲ取リ戻スゾ!』
WWWのネットナビを放置するのも危ういが、目先の問題は動物園を脱走した動物達だ。
ストーンマンはコンピューターにアクセスしてICチップを操作、悪用するプログラムを取り除いて安定化を図る。
『一体何が目的で………どわっと!?』
『ロックマン気をつけろ、カメが動き出した!』
がおーと叫びながらロックマンに襲いかかろうとするガメライザー。
ストーンマンのアドバイスを受けて動物園の電脳からプラグアウト、ガメライザーも追撃せずコンピューターの前で居眠りを始めた。
その横で淡々とコンピューターを操作するストーンマンがとてもシュール……ストンナのPET画像を見ながら熱斗は思うのだった。
この後、コンドルを除く動物達が自ら檻に戻ったことで無事に解決。熱斗は観客とスタッフから感謝の言葉を一身に受けることとなった。
肝心のストンナとチサオだが、コンドルが何処かへ飛んでいった事でデカオ他スタッフがよじ登って無事に救助に成功した。
因みにチサオはといえば。
「くーるびゅーてぃじゃなかったでちゅが、ストンナちゃんに惚れ直したでちゅ……」
「よせよ照れるぜべらんめぇ、です」
チサオからの熱い視線を受けて照れるストンナに一同唖然。
このちびっ子コンビに一体何があったのか!? 次回を待て!
○なりきりメットール
ほんとなんの為に置かれたんだコイツら。
○ガメライザー
ロックマン7に登場するガメラみたいなカメ型ロボット。
○クラウンマン
ワイリーお助けロボ。なんちゃらコードは回収できなかったが、第二の作があるらしい。
○チサオとストンナ
ストンナの化けの皮が剥がれたのか?
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!