バトルシーンってやっぱり難しいです…;
光熱斗にとってN1グランプリ最強のライバルは伊集院炎山である。
無論、ネットバトル好きな彼にとって全てのネットバトラーとネットナビと戦いたいという気持ちはあるし、どんな相手だろうとも全力を尽くすつもりだ。
その思考の隅には炎山とブルースの影がチラついており、N1グランプリファイナルトーナメント用に組んだチップフォルダは対ブルース用を意識している。
対してロックマンが一番懸念しているネットナビはストーンマンだ。
意外であろうが、極端の具現化であるストーンマンは対処を間違えると碌に戦えない。
初手でやってみせたようにプログラムアドバンスを『ストーンボディ』で実質無効化、高速戦闘を得意とするネットナビに有効な『ディスコード』や『ティンパニー』は然程通じず。
幸いにも謎の人物から貰った改造コードを活用し、ガッツスタイルを極めた事で抽出したナビカスプログラム『ブレイクバスター』を装備している。この攻撃力ならストーンマン相手に十分通じるだろう。
しかし『ストーンキューブ』を
そして今も、『ストーンキューブ』の脅威を見せつけられる。
「『ティンパニー』、スロットインです!」
『ゴゴゴ、震エロ!』
ストンナが『ティンパニー』を転送し、それを守るように『ストーンキューブ』が置かれる。
ロックマンはすかさずロックバスターのマシンガンモードで『ストーンキューブ』を壊しにかかるも、壊しきる前に『ティンパニー』から爆音が轟く!
『ぐ―――ぎっ―――っ!』
「ロックマン!」
「潰してやるですーっ!」
『クエイクストーン!』
体を縛り付け動けなくなる程の爆音。そこへストーンマンの巨腕が落ちてくるも、熱斗が送信した『インビジブル』で回避。
先程の『ディスコード』後の攻撃を『オウエンカ』による無敵化で受け流すなど、熱斗の適応力は半端ないとストンナは内心舌打ちする。
「いや熱斗とロックマンの適応力なんやねん。知っとったとしても『ディスコード』も『ティンパニー』も即対応とか」
「熱斗くんとロックマンは現場に強いでマスからね」
ストンナの心情を代弁するようにトラキチが目を丸くして言うも、日頃から熱斗の活躍を知る闇太郎は呆気なく言う。
その間にもロックバスターのマシンガンで『ストーンキューブ』と『ティンパニー』を破壊し、『インビジブル』の効力が切れると同時にストーンマンの猛攻が始まる。
『クエイクストーン』、『ストーンフィスト』による落石、そして頭頂部に転送された『マグナム』。ロックマンは罅割れや落下物を避けつつ、狭まりつつある陣地を『エリアスチール』で拡大。
ストンナとストーンマンの動き自体に激しさはない。見慣れたバトルチップは『マグナム』と『リカバリー150』ぐらいだ。
これまで見なかった『ティンパニー』や『ディスコード』を使うようになったのは、ファイナルトーナメントの為に温存していたのだろう。
「かといってララパッパ系は辛いとこだぜ……!」
『ストーンキューブの配置も厭らしいよね……!』
『ゴゴゴ、誉メ言葉トシテ受ケ取ッテ……オコウ!』
ブレイク性能を持ったガッツマシンガンを受けながらも『ストーンフィスト』を振り下ろす。
射線を防ぐと同時に落石を降らせるも見当違いな所へ落ちたので、そのまま射撃を続行。
「それを言ったらガッツスタイルが私達には辛いのです!」
『ちまちまト的確ナンダヨナ、オ前ラ!』
『これがヒートガッツスタイルのパワーさ!』
「『ヒートショット』! いっけぇ!」
『ウゴゴッ!?』
『ヒートショット』が防壁代わりにしていた巨腕を貫通、炎の弾丸がストーンマンに直撃する。
ヤッタナコノヤロウと『マグナム』を放ち更に足場を削るストーンマン。なんのこれしきと『パネルスチール』で緊急回避、更にガッツマシンガンでチマチマと削るロックマン。
堅実に相手のHPを削るロックマンに対し、確実に相手の足場を奪うストーンマン。
ファイナルトーナメントにしては地味なバトルだな……と大半の観客は思っているだろうが。
「熱斗は初手でとっておきを消費、ストンナはまだ
「
ストンナはN1グランプリでメガクラスチップを
それはクリームランドに遊びに来た時の熱斗も体感しており、警戒するに値するバトルチップ。
そしてストーンマンが『エリアスチール』を用いて前進した直後、『ストーンキューブ』を
「タイミングばっちりなのです! くらうです『ポルターガイスト』!」
事前に使用タイミングを打ち合わせていたのかストンナが叫びバトルチップを転送。
二個の『ストーンキューブ』が浮かび上がり、ロックマン目掛けて飛んで行く!
『ぐあっ!?』
「『リカバリー200』、スロットイン!」
重量物が飛んできた事で生じる衝撃は凄まじくロックマンの体がぶっ飛ぶが、即座に『リカバリー』を転送。
タイミングを見計らっていたのは熱斗達も同じだったようで、完全にとはいかないがダメージは最小限に抑える事に成功。
「ぐぬぬ、なのです」
『マダマダコレカラダ!』
置物系チップ『ストーンキューブ』を自前で用意できるストーンマンにとって切り札級に成り得るメガクラスチップ『ポルターガイスト』。
日暮闇太郎から購入したこのバトルチップは何度も大ダメージを叩きだしたが、流石に熱斗達相手に何度も通じないと痛感してしまう。
それでもストンナとストーンマンに疲労感はなく、ストーンマンは巨腕を同時に振り上げて叩きつけ、落石を起こす!
(ほんっとにタフだなこの二人!)
熱斗とロックマンがストンナとストーンマンを恐れているのは
体力的にも精神的にもタフな二人は、何事にもへこたれず最後の最後まで戦い続ける気概を示し続ける。
熱斗達も気合なら負けてはいないが、流石にロックマンの体力はそうはいかない。
更に言えばナビカスプログラム『ブレイクバスター』は容量を食う為、HP+系統のプラスパーツを組み込めないのがネックとなっている。
プラスパーツで補えない分を、N1グランプリの合間を練ってコツコツとHPメモリを探しまくった苦い経験を思い出し……。
「負けるなロックマン、日頃のHPメモリ探しの苦労を思い出せ!」
『うおぉぉぉーっ!』
日頃の苦労を込めた『ロングソード』で斬り裂く!
その力強い叫びにストンナとストーンマンが一瞬だけビビり、名うてのネットバトラー達が(大変だよなアレ……)と頷く事態。
突然の猛攻モードにテンポを狂わされたストーンマンだが『ストーンボディ』で防いだり、それを『ガッツマシンガン』で削ったりと、状況はロックマンが有利に働きつつある。
しかしストンナのチョイスしたバトルチップは『リカバリー』を多めに入れた防御重視。時には『インビジブル』で攻撃をすかしつつストーンマンを前へ進ませる。
徐々に迫りくる銃痕まみれの巨体……ストーンマンの威容さを大スクリーンで味わう観客達。
「―――では締めくくりなのです!」
リカバリー系統のバトルチップが切れ、ストーンマンのHPも1/4を切った。
しかし巨体は確実にロックマンを追い詰め、彼のHPも気力も、なんなら『インビジブル』や『リカバリー』といったチップも十分削った。
まだ熱斗にどんなバトルチップが仕込まれているかが分からないが、仕掛けるには十分だ。
ストーンマンはストンナの言葉に反応し巨腕を振り上げ―――そのまま固定。
何をしでかすのかと身構えるロックマンを他所に、ストンナがバトルチップを転送する。
転送するバトルチップは『ゴッドストーン』……それを起点にするプログラムアドバンス!
「『プログラムアドバンス・マザーズクエイクッ!!』」
ストーンマン自身の『ストーンキューブ』二枚も合わせることで発動するプログラムアドバンス。相手を行動不能に陥る程の地震を発生させ、次々と巨石を降らせる。
ランダム性は強いが、ストーンマンの巨体が迫ったことで狭まったフィールドで使うなら効力は存分に発揮させる!
「『ユカシタモグラ』、スロットイン!」
「『ガッテムモモグラン!』」
熱斗が転送したバトルチップは、『インビジブル』より持続時間が長く、対ユカシタ性能を持つ攻撃以外は通じない防御系バトルチップ。
ロックマンはパネル上に生じた小規模のバックドアに入り込み、次々と落ちてくる巨石から逃れる事に成功。対ユカシタ性能はないんです。
対モモグランを意識してストーンマンを魔改造してきたストンナとストーンマン。
そんな二人の最大の敵が『ユカシタモグラ』を使って切り札をスカしてくるなど、なんという皮肉か。
「このための対ユカシタ性能です! 潰してやるですコンチキショー!」
『オノレももぐらん! パワーストーン!』
よほど悔しいのかストンナもストーンマンも若干の涙を浮かべて『パワーストーン』を発動。
自らをワープさせ、分銅状に変形したストーンマンがロックマンが隠れている『ユカシタ』に直撃!
『ぐわぁっ!?』
「な、なんて凄い一撃なんだ!」
思わず、と言った感じに穴から出てくるロックマン。『アンダーシャツ』が無ければデリートされてた。
丁度『マザーズクエイク』が切れていた事もあって最後の『リカバリー』を転送することで余裕が生じるが、それでも大ダメージを負った事には違いない。
「けどこっちも揃ったぜ! 力を借りるぜガッツマン!」
『メットガード』、『ダッシュアタック』、そしてナビチップ『ガッツマン』。
疲弊するロックマンの隣に現れたガッツマンがロックマンを持ち上げ、そのまま投げ飛ばす!
『ガッツ……シュートぉぉ!』
ここで『ストーンボディ』で防げばまだ勝負は続いたかもしれない。
しかしストンナとストーンマンがモモグランへの恨み辛みをぶつけるようなやけっぱちを起こしたことが、プログラムアドバンス『ガッツシュート』を防げない理由となっていた。
『ゴゴゴッ!?』
ガッツマンのパワーと『ダッシュアタック』の推進力が重なったロックマンの巨腕パンチがストーンマンの頭部にクリーンヒット!
思わずのけぞる程の衝撃がストーンマンを襲い、罅割れを起こしてHPがゼロとなってデリート。
「WINNER、光熱斗&ロックマン! 友情パワーが難攻不落の壁を打ち破りましたー!」
緑川ケロの叫びがそのままスタジアムへの熱狂へと変わる。
ナビチップ故に反応はないが、それでも息を切らしながらロックマンはガッツマンにサムズアップを向ける。
その光景に日暮闇太郎が「漢の友情でマス……」とオイオイ泣き、観客達の拍手喝采が響き渡る(特にデカオは大喜びだった)。
「負けちゃったです……」
『取リ乱シタノガ原因ダナ……』
ネットバトルマシンからPETのプラグを抜き、PET内のストーンマンと共に反省するストンナ。
見た目は分からないがしょぼくれているストンナの前に熱斗の手が差し伸べられ、彼の明るい笑顔を見やる。
「楽しかったぜストンナ、ストーンマン!」
『二人の分まで決勝戦がんばるからね!』
「……私達も楽しかったのです!」
『ももぐらんヘノ恨ミハ忘レテクレ』
「『アッハイ』」
ぎゅっと握手を交わすストンナと熱斗に再び拍手が送られる。
スクリーンにはこれまでのバトルのダイジェストが流れ、彼らの戦いの堅実さを物語らせる。
特に注目すべきは『ポルターガイスト』と『マザーズクエイク』を回避する熱斗とロックマンの適応力だろう。相手の戦術をある程度知っていたとはいえ、リカバリーが早い。
「いや熱斗とロックマンの対応力が光るネットバトルやったなぁ」
「爆発力はストーンマンが上でマスが、対処されるととことん弱いでマスからねぇ」
短時間でダイジェスト動画を作り上げたDNNの手腕を内心褒めつつ、トラキチと闇太郎は分析する。
視聴者や観客もフムフムと頷く中、当人達は静かにネットバトルマシンから離れていく。
「さぁ次も見どころ満載間違いなし! 伊集院炎山VSジャック・エレキテル選手の入場です!」
次回、ついにエレキ伯爵が(悪い意味で)動き出す。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます。