そろそろ一か月ぐらい休憩しちゃおうかなぁ。
クリームランドが開発している対ネットナビ特化大型ウィルス。その特徴はその名の通り、ネットナビに反応する大型のウィルスであることだ。
カスタマイズ次第で戦闘力にもハッキング能力にも特化できるネットナビに的を絞り、大型化することで簡単には落とされない高耐久を実現している。
開発者であるメガト・キロクラムが所有している認証コードを持ったナビには反応しないと言う性質を持ち、その認証コードを悪用されないよう、許可のないコピーや移植を行えば自壊するようプログラムされている。
逆に言えばウィルスなどは素通りさせてしまうという欠点がある。その対策としてクリームランドは警備プログラムや防衛用ウィルスを配置しているのだが……。
『こら待て、ファイアアーム!』
強風吹き荒れる電脳にてジワジワと進んでいくバジリコらの後から火炎放射を放ち。
『熱斗くんバトルチップをドンドン送って!』
そんなバジリコの群れを守らんと立ち塞いでくるアゾマータの蔦を『ソード』で斬り裂き。
『アハハハハいいぞ進め進め同胞よ―――ってアッヅ!?』
木属性の進軍を応援するプラントマンに、強風に混ざった火炎の嵐が襲い掛かる。
湾岸病院の心臓とも言える手術室の電脳では大乱戦が行われていた。
メインコンピューター前を陣取るは、大きな翼で浮遊する大型ウィルス『メカドラゴン』。
大きく柔らかな腹部は見た目に反し強固なガード性能を有しており、並大抵の攻撃なら防げる。
大きな目が突き出たコミカルな竜頭からは、着弾すると炎の嵐を巻き起こす火炎弾を定期的に吐き出している。長い首を伸ばして噛みつき攻撃も可能だ。
弱点は意外にも尻尾。だが強靭な尻尾の先端はフォークのように尖っており、槍のように突き出して攻撃することも出来る。突き出した直後の硬直時が反撃のチャンスだ。
だがこのメカドラゴン最大の武器は大きな翼だ。
常に羽ばたいている為、彼がいる電脳は『トップウ』に匹敵する強風を起こし続けている。
ネットナビを押し返す強風に、着弾すると炎の嵐を起こす火炎弾。この組み合わせが恐ろしい。
だが前述したとおりネットナビにのみ反応するため……プラントマンが解き放った木属性ウィルス達はすんなり通っている。
しかも植物ならではの蔦や根っこを使った移動は強風の影響をある程度緩和されており、後からやってきたファイアマンとロックマンを徐々に引き離している。
更にバジリコが最悪で、炎属性に弱い木属性でありながら、メカドラゴンの火炎弾を受け止められる盾を構えているからだ。
『アハハ! 最初からこうすれば良かったんだ! 所詮はウドの大木か!』
高笑いするプラントマンがいる場所は、バジリコ3匹の真後ろ。
吹き荒れる強風と放たれし火炎弾を、密集したバジリコの盾が防ぐ。熱の余波がバジリコとプラントマンの焦がすが大したダメージではない。
更には別方向にもバジリコが2~3体迫っており、そちらは素通りしている。あわよくばメインコンピューターを狂わせ、更に事態を狂わせるつもりらしい。
「くっそコレだから木属性ってのは嫌いなんだ!」
「オレも嫌いになりそう!」
ヒノケンと熱斗のソウルが共鳴した!
苛立ちながらも頭は冷静に、確実にアゾマータとバジリコをデリートせんとバトルチップを転送していく。
緊急事態という事で炎属性のバトルチップをヒノケンからその場で買い取ったものを転送し、プログラムアドバンスを発動。
まずはメインコンピューターに近いバジリコを一層する!
『『ダブル・ヒートスプレッド!』』
ファイアマンとアクアカスタムロックマンが同時に武装を展開、炎の散弾銃が火を噴く。
やっとメカドラゴンの後ろを通り過ぎたというのに、たまたま居合わせたアゾマータを視点とした面攻撃に巻き込まれデリートされてしまうバジリコ達。
疲れというより怒りと焦りで息を切らすロックマンとファイアマンだが、そんなの関係ねぇと言わんばかりにメカドラゴンが放った火炎弾が素通りし、背後で炎の嵐を起こした。
『うわっ!?』
『くっそ良い火力してやがんなぁ!』
背後からの衝撃と熱で吹っ飛ぶも前方面から吹きすさぶ風に押し倒され距離をとられる。
体制を大きく崩したロックマンが吹っ飛んでいく中、ファイアマンは踏ん張ってその場に留まり悪態を吐く。生意気にもメカドラゴンは咆哮で応じた。
しかしメカドラゴンが狙うのはファイアマンとロックマンだけではない。
2体のナビを遠ざけた事で、素通りしようとしたプラントマンを新たなターゲットにして振り向き、今度は尻尾を突き出す。
2体のバジリコの盾が密集して三叉の槍を防ぎ、その間にバジリコとプラントマンが全身。尻尾を突き出して生まれた硬直時間の分、メインコンピューターに近づくことが出来た。
「こうなったら『ブラックボム』で纏めて……!」
「ダメダメダメ、メインコンピューターまで巻き込んじゃうじゃんか!」
徐々にコンピューターへ近づきつつあるプラントマンを流石に拙いと感じ、火が点けば広範囲の大爆発を起こす不発弾『ブラックボム』のバトルチップを掴むヒノケン。
それに待ったをかけるのは熱斗だ。確かに炎属性のファイアマンがなら鬼に金棒なバトルチップだが、熱斗が第一に考えているのはまもるの安全なのだから。
「じゃあどうしろってんだよ!?」
「オレが知りたいよ!」
喧嘩しながらも『リカバリー』でネットナビを回復させるヒノケンと熱斗。器用である。
休憩室から手術室に移動するまでの僅かな時間で、バジリコを盾として利用して接近する作戦をプラントマンが思いついてしまったのが運の尽きだった。
病院の機能停止を防ぐ為に行動している熱斗とヒノケンにとって、メインコンピューターに近いウィルスですら放っておけず、ナビを積極的に狙う大型ウィルスの妨害を躱しながらデリートしなければならない。
プラントマンを狙おうにもバジリコ3体の盾がしっかりとガード。プラントマン自身も『プラントウィード』で動きを封じたり、『ローズニードル』で遠距離攻撃を仕掛けてくる。
ヒノケンが豊富に所持していた『ヒートショット』や『ヒートブイ』といったバジリコに有効なバトルチップは使い切ってしまったし、『ブラックボム』といった広範囲のバトルチップはメインコンピューターを傷つける可能性がある為に使えない。
そうして横入してくるアゾマータ系にも苦戦している内に。
『遂にこの時が……!』
2匹のバジリコがネットナビ2人組及びメカドラゴンの犠牲になったが、プラントマンがメインコンピューターの目の前にたどり着いた。
振り向けばメカドラゴンはこちらを振り向いているにも関わらず、プラントマンに攻撃してくる気配がない……「できない」というべきか。
『そうだよねぇキミの使命はこのメインコンピューターの守護だものねぇ!』
唸るメカドラゴンを見上げてプラントマンは嘲笑う。隣ではバジリコがウィルスとしてメインコンピューターを弄っており、ジワジワと紫色に蝕んでいく。
『止めるんだプラントマン!』
『野望という大輪の花を前に、道端に咲く小さな花は散るのが定め!』
ロックマンの叫びにキザったらしい言い方で返す程にプラントマンは調子に乗っていた。メインコンピューターに触れテトラコードを抜き取ろうと振り向き。
『やってみるがよい』
―――強烈な衝撃が額に襲い掛かり、遅れて体が後方へと吹き飛んだ。
『……ふむ?
訳がわからない。何故自分は地面を転げまわっているのか。
『手術中の者を散るべき花と言うのだな?』
意味がわからない。何故自分はデコピン一発で地に這いつくばるのか。
『我が友にして
誰なのかわからない。バジリコを盾ごと片腕で粉砕し、腕を組んで仁王立ちするこのネットナビを。
『まだ見ぬ世界を歩むマスターを守り、彼の者の道を先んじて拓くのが、余の成すべき事だからな!』
ネットナビは両腕を広げる。あまねく世界を受け止める大樹のように。
『ふざけるな!!』
『ふざけてなどない』
余裕を持って名乗りを上げたネットナビに怒りをぶつけるように『ローズニードル』を放つプラントマンに対し不敵に笑ったまま、迫りくる薔薇の棘をラウンドシールドでもって受け止める。
『バラード……クラッカー!』
盾を構えたまま、空いた手で掴んだ
フィジカルに大半のリソースを注いだらしいこのネットナビが持つ唯一の遠距離攻撃。爆弾を放り投げるというシンプルなものだが、その剛腕から繰り出される剛速球は高速の域に達する!
『おぐ―――!?』
『ローズニードル』を跳ね除けたにも関わらず速度は衰えず、そのままプラントマンの腹部にめり込み―――大爆発を起こす。
メインコンピューターより離れた場所だから良かったが、その爆発は小さくともネットナビを簡単に消し飛ばす強力なものだった。
プラントマンのデリートを確認した後、『軟弱よなぁ!』と豪快に笑う。
『止めてくれてありがとう! えっと……キミは?』
呆気ない勝利に唖然とするファイアマンは放っておいて、未だにメカドラゴンの暴風を凌いでいるロックマンが問いかける。するとネットナビはニヤリと笑った。
『―――然らば刮目せよ、余の威光を!』
そのネットナビは、メタルマンやマグネットマンのように大柄で線が太い。余計な装飾を持たずシンプルな体には厚い装甲で覆われ、右腕にはボディと同じ濃紺のラウンドシールドを携えている。
何より特徴的なのは、三日月のような金色の角と、胸元に光るナビマーク……それを見た熱斗とロックマンは瞬時にネットナビの正体を悟った。
『余の名はバラード!』
彼らが守ろうとしている友人の車椅子と同じ……緑を基調としたUの字のようなマークだからだ。
『我が友まもるの未来を覇道でもって切り拓く王である!!』
ストンナがまもるの為に作り上げたネットナビ・バラードは高らかに叫ぶ。雄雄しく。気高く。
――グオオォォォォ!
『―――では次はドラゴン退治であるな!』
『焚きつけないで!』『焚きつけんじゃねぇ!』
咆哮を上げるメカドラゴンに対し、肩を回して意気揚々と挑もうとするバラードを止めにかかるロックマンとファイアマンだった。
―――
手術室に駆け込んだ熱斗とヒノケン、突如としてプラグインしたバラードの協力もあってプラントマンをデリートしたことで、混乱は一気に収まることとなる。
まもるの手術は無事に成功、後は回復も兼ねて麻酔から覚めるのを待つだけ。
プラントマンが持つウッドプログラム(劣化品)が消失したことで命の木並びに茨の暴走は弱まり、そこへサロマによって改心したアネッタがコントロール装置を操作することで完全に止まる。
伸びまくった蔦や茨はダイスケを筆頭に自然保護団体が除去を進め、オフィシャルネットバトラーが逃げ遅れた患者やその関係者を避難させ、別の病院に運ばせている。
病院の電脳に蔓延った植物プログラムやウィルスは、アシッドを筆頭に、ヒートマン並びフレイムマンがオフィシャルネットナビの監視下で焼却作業を進めている。
ヒノケンが貸し与えた炎ナビの火力は凄まじく、この作業スピードなら夜が明けるまでに病院の機能が完全に復帰することが可能だ。
「はぁー……疲れた」
「おう、お疲れさん」
ソファに背を預けて息を吐く熱斗の頭をわしゃわしゃと撫でるヒノケン。鬱陶しいが、今の熱斗には払いのける気力も体力も残っていなかった。
『改めてありがとうファイアマン、バラード!』
『止せって気持ち悪ぃ!』
『礼を言うのは余の方だ。よくぞまもるを守り抜いてくれた!』
ファイアマンは敵対していたロックマンに礼を言われて背中が痒くなり、バラードは友の友と言う事でロックマンと熱斗の勇気を素直に称える。
そこへキロクラム夫婦、そして父メガトに抱かれたままのストンナが近づく。両親も表情には出さないものの肩が下がるほどに疲労しているようだった。
「いや本当に良かったヨ」
「一時はどうなるかと思いました……」
「まだ寝てるんだストンナ……」
『ゴゴゴ、我ガますたーナガラ頑固ナヤツダ』
あんな騒動が起こっていたというのに、ストンナは未だに父の腕の中で夢の中。しかもPETは無理やり剥がされそうになったにも関わらず頑なに離そうとしなかった。
これには熱斗だけでなくストーンマンも呆れて肩(?)を竦める。ロックマンが苦笑いする中、誰かがどすどすと駆け寄ってきた。
「無事か、よかった!」
防護ゴーグルに防塵マスクをかけたままの男。どうやら自然保護団体の一人らしい。
「おかげさまで助かったよ、ありがとう」
「キロクラム博士だったか、
「このとおりね。いやあのアネッタという娘に引っ張られた時は―――」
どうなるかと、と言葉を続けようとして―――男がストンナを奪い取った。
「な―――!?」
力ずくで奪われ呆気に取られるメガトと、同じく呆気に取られていた熱斗とニーチよりも先にヒノケンが動く。男からストンナを取り戻そうとして、その野太い足で蹴り飛ばされた。
「ぐあっ!!」
「ヒノケン!!」
蹴飛ばされ壁に背中から激突したヒノケンを案じて叫ぶ熱斗。
それを好機と捉え男は咄嗟に病室の扉を体当たりでこじ開け中に入る。遅れてメガト、ヒーチ、熱斗の順に同じく病室へ走り出す。
「この、頼むから離してくれ……!」
「ストンナ!」
開いた窓の前で男はなんとかストンナからPETを奪おうとしてできず、三人が迫ってくる。
「ああくそ、アネッタのヤツ裏切りやがって!」
万が一の為に向かわされてこれかよ!と男は毒づいてゴーグルとマスクを脱ぐ―――その男はワイルドな風貌をしており、熱斗とロックマンは見覚えがあった。
「お前、ビーストマンのオペレーターの!?」
男の正体はWWW幹部が1人―――犬飼猛雄!
猛雄は気まずそうに眠ったままのストンナを見やった後、窓から身を乗り出す。
何をと思いメガトが駆けつけた頃には猛雄は飛び落ち―――背負っていたリュックから3基の噴出口が飛び出てジェット噴射で空を飛ぶ。
「ストンナ――――!!」
呆然と飛び去る猛雄を見送るメガトを押しのけ、熱斗が身を乗り出して叫ぶ。
―――ストンナ、二度目の誘拐!
と言うわけでウィルスを織り交ぜてみました。
ロックマンとファイアマンはメインコンピューターに近づくウィルスも倒さなきゃいけないし、メカドラゴンから見て侵入者であるロックマンとファイアマンも相手にしなければならない状況下に。
それでいてプラントマンはバジリコ3体を盾にジワジワと。
〇バラード
浦川まもるの新たなネットナビ。突如として起動し、想定より出力が上がっている。
元ネタはロックマンワールド4に登場するロックマンキラー第三号。
イメージは勿論征服王。病弱なまもるを導き成長させるなら自然と浮かんだもので。
〇犬飼猛雄
「……安心しろチビ、事が終われば必ず父ちゃん母ちゃんの元に帰してやるからな……!」
〇目覚めぬストンナ
「うぅん……オヤツは3000ゼニーまでなのです……」「いや高ぇな!?」
次回、ストーンマンがワイリーに渡った事で事態が急転直下。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!
読んでみたいですか?(4/8締め切り
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