赤髪のアメロッパ人の女性ブロンコと相棒のイノシシ型ネットナビ・ヘルボアが運転する
小学生とはいえ流石オフィシャルと言わんばかりの払いっぷりにブロンコの目がゼニーに変わる中、炎山より先に熱斗が浦川旅館に入っていく。
女将から事情を聞いてキロクラム一家の部屋へと向かうと。
「おや熱斗さん、お久しぶりなのですー」
何事もなかったかのように来訪した熱斗に挨拶するストンナと、そんな彼女を膝の上に乗せてるニーチ。正面には車椅子に座っているまもるがおり、どうやら雑談中だったようだ。
「ストンナ! 無事だったんだな!」
相変わらずの無表情とマイペースに逆に安堵した熱斗は彼女の無事を喜んだ。
科学省事件で頭がいっぱいだったが、あの時は何もできず目の前で攫われてしまった為に当時はかなり悔やんでいたものだ。
「ご心配おかけしたのです、ストンナはこの通り無事なのですよ」
「ボクも話を聞いたんだけど、戻ってこれた理由を聞いてびっくりしたよ」
「娘が無事に帰って来てくれたのなら
『まったくよな! 余もようやく
まもると熱斗を前にしてもストンナの頭にスリスリと頬ずりする、ストンナを大人化したかのような無表情の美女に同意するのはまもるのネットナビ・バラード。
ちょっと怖さを感じつつも、友達と母に囲まれてストンナも満更ではなさそうだ。無表情だが、熱斗も徐々にストンナを理解しつつある。
そんな彼ら、特に熱斗の様子を見た炎山は薄っすらと微笑む。
「いやはや、娘も良い友人を持ったものだヨ」
ストンナにグリグリ攻撃を仕掛けて茶化す熱斗を見ながらメガト・キロクラムが炎山に近づく。
科学省に問い詰めた時から顔色が優れなかったメガトが元気を取り戻したのを、偉大で忙しい父を持つ炎山としては喜ばしく思う。
それはそれとして話を進めるべく、会話を斬り出す。
「まさか当時の誘拐犯である犬飼猛雄がストンナを返しに来たとは予想外でしたね」
オフィシャルの連絡網を通じてそう聞いた時は炎山も目を丸くしたものだ。
現にストンナは傷一つなくキロクラム夫婦に届けられ、自首した犬飼猛雄はビーストマンをプリズンPETに収納し押収した後にオフィシャルに連れて行かれた。
Dr.ワイリーの追手に関してはマサ達漁師団体の協同もあって無事に逮捕された。殆どが独断行動という困りものだったが。
「彼も一児の父だったということだ。まぁダンディズムパンチでワンパンしたんだけどネ!」
あの見事な腹パンは炎山の脳裏から離れられない……が、頭を振って掻き消す。
「それより要件についてですが」
「解っているとも。つまりは彼が?」
「ええ、アナタの出した条件に見合うはずです」
メガトが出した条件とは『炎山が信頼できる強いネットバトラー』だ……選ばれた当人には勿論内緒である。
「ブラボー、100満点中
光熱斗を連れてきた炎山の慧眼に拍手を送るメガト。
切り替わった雰囲気と120点という高得点の理由が気になる炎山だが、メガトは気にせず歩を進める。
「さて熱斗くん、感動の再会に水を差して悪いが話がある。ストンナ、すまないが……」
「なんとなくは察してますので大丈夫です、私は私でやりたいことがあるので!」
そう言ってニーチの膝からぴょいと降りると、ノートパソコンを机に置いて広げ、大きなヘッドホンを付けてからキーボードを打ち始める。
ノートパソコンの隣には大きめのサーバーが置かれており、何かのプログラムを作成している。ストーンマンを取り戻す為のプログラムだと熱斗は聞いたが……。
それにしても何故ヘッドホンを?と首を傾げる熱斗だが、いつの間にかまもるもいなくなっていた事に気づく。
「熱斗、改めて話がある。聞け」
キョロキョロとまもるの姿を探そうとする最中、炎山の真剣な眼差しを見て察したのか姿勢を正し、彼の隣に立ってキロクラム夫婦と対面する。
ストンナはヘッドホンをしたままPC作業に集中。あの様子からして両親の事を知っているのだろう、つくづく年に似合わぬ聡明さだと炎山は感心し、それはアナタ様も同じですよとPET内のブルースが心の中で突っ込む。
それはさておき。
「ここに来る前に協力して欲しい事があるとお前に言ったが、それは『S』というネットナビを探し出すことだ」
「えす? マグネットマンの必殺技で出てくる青い方の?」
『それはエヌエスタックルのS極』
どうしてそんなこと覚えていたのだろうと、ロックマンが呆れのあまりツッコむ。
一瞬目を点にして呆然とするが瞬時にシリアス顔に戻り、炎山は話を続ける。
「クリームランドと協力して科学省の上層部に連日問い合わせ、先日の科学省事件で漸く聞き出したんだが……WWWが奪った4つのテトラコードはプロトと呼ばれる怪物の封印を解く鍵なんだそうだ」
「ぷろと……そういえばマハ・ジャラマがそんなこと言ってたような」
『ネットワーク社会をデリートする怪物だって言っていたね』
トラウマ故に掘り返したくはないが嫌でも思い出すのは、勝ちを確信したマハ・ジャラマが得意げに話していた内容だった。
「科学省を含めた4つのテトラコードを奪われた以上プロトの封印を解かれるのも時間の問題だ。上層部は焦りのあまりしどろもどろになってしまってな……なんとか情報を整理した所、『禁断のプログラム』と呼ばれる最終手段の在処を『S』と呼ばれる謎のネットナビが知っているらしい」
「その『S』はウラインターネットに存在しているとオフィシャルが掴んだのだが……その詳しい所在を私達は知っている。それを教える条件として、君のような協力者を呼ぶよう炎山くんに突きつけたのだヨ」
自慢のカイゼル髭を摘まみながらメガトは自慢げに言う。
ここまでの話を整理すべくウンウン言いながら腕を組んで考え込み……熱斗はシンプルな答えに導く。
「つまりウラインターネットに乗り込めってことだな!」
『その前に行き先をメガトさんに聞かないと』
惜しい、とロックマンは指を鳴らして付け足す。
熱斗も事件解決の為にウラインターネットに潜り込んだ経験があり、その広大さと危険性は理解しているつもりだ。凶悪なウィルスの数々やミステリーデータトラップにどれだけ苦労し無駄骨を折った事か。「タイリョウ」と喋るゼリー人間みたいなウィルスこわい。
そんな中でたった一人のナビを探し出すなんて不可能に近い。炎山とブルースは経験豊富だろうがネット犯罪者に恨まれているためウラインターネットでは動きづらいだろう。
それを最短距離で済ませれるかもしれないのが、目の前の無表情夫婦だと言う。
お茶目だけど紳士的なストンナの両親がどうしてウラインターネットの事に詳しいのかと熱斗が思う中、メガト氏は手で制する。
「これ以上の話をする前に、まずは私と妻のネットナビと勝負してもらう」
「キロクラム夫妻の?」
意外だと目を丸くしている熱斗に対し、炎山は怪訝そうな顔を隠そうともしない。
「これでもクリームランドのウィルス研究者とセキュリティ専門家だ―――ウラインターネットのウィルスを熟知していないようでは研究者とは言えないだロ?」
「ハンニャ
声だけ得意げに笑うメガトと、キャスター付きの大きなサーバーを用意するニーチ。
「……えっと、つまり?」
「……クリームランドもそうだが、ウラインターネットにネットナビを秘密裏に派遣し、ウラで手に入る最新情報を集める国は意外に多いんだ」
勿論おおっぴらに言うんじゃないぞ、と熱斗に釘を刺す。納得したし絶対に喋れないと、口を手で塞いでコクコクと頷く。
つまりはこの二人は魔境であるウラインターネットを渡り歩く程の実力者だということ……なのだが、以前キロクラム家に遊びに来たことのある熱斗は首を傾げる。
「……二人のネットナビって」
『うん、ただのノーマルナビだったと思うんだけど』
熱斗とロックマンは、キロクラム夫婦のネットナビである白と青のノーマルナビを思い浮かべる。出会った事はあるが無口で強そうには見えなかったし、そもそも戦った事ですらない。
意気揚々とサーバープラグインする夫婦に続いて熱斗と炎山もプラグインし、4体のネットナビが対面する。
『『……っ!』』
「ど、どうしたんだよロックマン?」
白と青のノーマルナビと直面した途端に身構えるロックマンとブルースに熱斗が戸惑う。
『凄いオーラを感じる……この前会った時には感じられなかったのに!』
『気をつけろロックマン、こいつらのプレッシャーは並のネット犯罪ナビとは比べ物にならない!』
「ブルースがここまで言うとは、お二人は一体?」
卑怯卑劣上等なネット犯罪者達と戦い抜いて鍛えられたブルースの胆力と経験談が警鐘を鳴らすほどのネットナビ。
キロクラム一家が一癖も二癖もある相手だとは解っていたしウラインターネットに通ずる腕前だとは思っていたが、まさかこれほどまでとは炎山も思わなかった。
キロクラム夫婦の冷たい眼差しが炎山と熱斗を見つめ、ポツリと口にする。
「「擬態モード解除、戦闘モードへ移行」」
その直後、夫婦のネットナビに変化が生じた。
白のナビは一瞬で真っ白に染まり、雪風を纏いながらもこもことその体を大きくさせる。
青のナビは水柱に呑めれ、中から青い王冠のようなものが水柱の天辺に出現する。
やがて形が明確になり……真の姿をロックマンとブルースの前に晒す。
片や大きな腕と短めの足が生えた、雪の
片や水柱そのものなネットナビ。水柱は噴水のように常に流動しており、本体なのか大きな水色の王冠に浮かぶ一対の目がギロリと2人を見下ろしている。
極めて異質なネットナビを前に息を呑む。
「改めて紹介しよう、私のネットナビ・フロストマンだ」
「こちらは私のネットナビ・ウェーブマンですわ」
『ホー……』
『ウェ~イ、ナミナミならねぇ相手じゃ~ん?』
フロストマンは口数が少なくのんびりとしており、ウェーブマンは随分とチャラい性格のようだ。
しかしロックマンとブルースは異様な姿に見合わなぬプレッシャーに緊張感を保ち、熱斗と炎山は瞬時に気持ちを切り替え真剣味を帯びさせる。
「結構結構、才能ある若者はそうでなくてはネ」
うむうむ、と頷くメガト。
炎山は兎も角、
キズつきながらも助力した時もそうだが、ヒノケンは本当に良い仕事をする。今度バーで一杯奢ろうと思いつつ、少年らの壁となるべく言い放つ。
「若者の実力を確かめ、導くか止めるのが大人の義務だ。娘とストーンマンほどではないが、我々は壁として立ちはだかるとするヨ」
「さぁ、どちらがどちらのナビを相手いたしますか?」
紳士に対応するメガトに対しニーチはどこか楽しげだ。
どちらかと言えばママに似たんだなと熱斗は気を抜きつつ、炎山の「任せる」と言っている視線を受けて頷く。
「やろうぜロックマン、フロストマンと勝負だ!」
『相手はウラインターネットの実力者だ、全力で行こう!』
「フフフフ。年甲斐もなく熱くなってしまうヨ」
『ヒー、ホー!』
バスターを構えるロックマンを前にして剛腕を振り上げ咆哮を上げるフロストマン。
「オレ達はこちらか、行くぞブルース」
『了解、速攻で鎮圧します』
「N1優勝者だからといって負けてられませんわ、娘の為にも!」
『ナミんじゃねーよ、押し流してやるぜ~!』
水柱から巨大な津波となってウェーブマンが襲いかかるも、ブルースは慌てず『パラディンソード』を構える。
キロクラム夫婦VS決勝コンビ、バトルオペレーション・イン!
残念ながら戦闘シーンはカットマンだ!(描写下手
・ストンナ帰還
プライド(テレビ通話「無事でよかったわストンナ!え、WWWの手下が逃がしてくれたですって?……成程、今度お会いしたらロイヤルビンタで許しましょう」(ニコォ
ナイトマン『そうですか、ストーンマンが……もう姫様の命令ですら聞けぬのでしょうな、ご武運を。我が友を頼みますぞ!』
たま子「ストンナかい!? いや誘拐されたしストーンマンはWWWに洗脳されてとどうなるかと思ったが、お前さんが無事だっただけでも良かったよ!もしもの時は頼りな、力になってやるから!」
トラキチ(テレビ通話『ニュース見たでぇ! 心配かけよってにこのガキ! ストーンマンに関しては残念やったが……あん?絶対取り戻す? バックアップは最後の手段? かぁーっ、ほんま頑固やな!褒めてんのや!』
緑川ケロ「砂山ディレクターから取材行ってこいっていわれてきましたー! よーしよしよし無事で良かったーっ! というわけでインタビューをお願いしていいかしら!?」
色んな人やナビに無事を喜んでくれましたが、ストーンマンの事になると急に曇る。それぐらいには絆は広い。
・ストンナ工作中
バックアップデータからの再生は最終手段に留めており、ワイリーに操られているストーンマンを助けるためのプログラムを考案中。
オフィシャルから許可や審査を受けている特殊なプログラムらしい。
・オフィシャルと各国とウラインターネット
自国防衛の為に自国のウラインターネットに腕のあるネットナビを配置し、時には国ごとのオフィシャルと連携してネット犯罪を取り締まる。
表向きメディアには明かさないもののネット犯罪に巻き込まれた一般人を助け出す事もあるので噂程度には広まっており暗黙の了解となっている。
・フロストマン
メガト・キロクラムのネットナビ。普段は形状変化によりノーマルナビとして振る舞っている。
戦い方は遠距離戦が増えたガッツマン。大きな体とは裏腹に俊敏で時に大ジャンプする。
モチーフはロックマン8に登場するボスロボット。更にとあるゲームシリーズのジャックフロスト要素も加えております。
・ウェーブマン
ニーチ・キロクラムのネットナビ。普段は形状変化によりノーマルナビとして振る舞っている。
戦い方はガンガン攻めてくるデザートマン。自ら津波となって突進する他、サーフボートに乗ったプログラム君を流し『ソード』を振り回すことも。
モチーフはロックマン5に登場するボスロボット。本来はダイバーみたいな姿ですが変身機能が欲しくて大胆なリメイクに。
次回はウラランキング編をすっ飛ばして……?
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!