ここ2日は音楽聴きながら書き進めてみました。
今回は意外なナビが登場。
誘拐されたストンナ・キロクラムの解放、及び『プロト』に関する情報の開示と共有……クリームランドが科学省に要求した交渉内容である。
初期型インターネットが起こした暴走事件・通称『プロトの反乱』は、インターネットを導入しようとした各国も被害を受けたが故に知っている。
しかしプロトに関する深い情報を、当時ニホンの科学省に留学していたメガト・キロクラムは知っていた。科学省が隠したかった事を全てだ。
証拠を揃えてオフィシャルと共に訴訟されれば頭の堅い上層部も流石に首を縦に振る。
しかも事件の真相を知らない
「まぁタダでとは言わないから」とクリームランドが科学省に差し出したのが、各所で確かな実績を見せた大型ウィルス4体だ。
WWW幹部マハ・ジャラマが起こした事件により施設もネットワークもボロボロな今、より強固なエリア警備は欲しい所。
これまで隠してきた罪を曝け出すという上層部の恐怖と自尊心は、ここで終わったのだ。
こうしてオフィシャル・クリームランド・ニホン市民ネットバトラーの協力を得て、対WWW防衛ネットワークが構築された。
たった一体のネットナビによって崩壊されるとも知らずに。
―――
分厚い
―重装甲の巨体を片手で受け止め、あまつさえ掌から放たれた光弾によって撃ち抜かれた。
1度だけ攻撃を防ぐ水属性のバトルチップ『バブルラップ』。それを9回も発動できる程に分厚い泡に包まれた大型ウィルス『CWU-01P』が接近。
―両手を掲げ光弾をマシンガンのように発射、瞬く間に泡ごと本体をハチの巣に変えた。
大きな翼を羽搏かせて暴風を起こし、その風に乗って火炎ブレスを吐き出すドラゴン型ウィルス『メカドラゴン』。
―強風でマントが靡くも「知った事か」と言わんばかりに瞬間移動、デカい腹に正拳突きをお見舞いして吹っ飛ばした。
今なお現役のネットワーク門番を努めているクリームランド初の大型ウィルス『クリームデビル』の改良型……より高いHPと攻撃性を持たせた『クリームデビルMarkⅡ』。
赤い単眼が閉じられ、イチゴで出来た王冠を被った真っ白なボディを分離させ、九つのイチゴ尽き白玉となって跳ねまわる。
「小賢しい―――アースブレイカー!!!」
―クリームランド最硬の大型ウィルスは、広大な範囲のパネルを巻き込んでデリートされた。
世界中が、その防御力と耐久性、何より対ネットナビ特化の防衛力を評価している大型ウィルス……それら4体がたった一人のネットナビによってデリートされるなど想像できただろうか。
答えは否だ。
「ふん……デカいだけの木偶の坊どもが」
煙を上げる片手を掲げる黒いネットナビ……破壊の化身フォルテなら可能だった。
「クリームランドの大型ウィルスがこうも容易く……!?」
幾多ものネット犯罪を取り締まった経歴を持つベテランのオフィシャルナビですら怯み。
「すげぇ、これがウラインターネット最強と言われるフォルテの力……!」
WWWの下っ端でしかないネットナビはあまりの強大さに目を輝かせた。
そこにあるのは、圧倒的な力で全てを薙ぎ払う暴風そのもの。そんな、誰も近づこうと思わない嵐に近づく命知らずが居る。
「ヒーッヒッヒッヒ! いや流石はフォルテ様、圧倒的でございますな!」
―――
泣き顔の頭を模したボール(これでも同じ頭部)を転がし、笑い顔の仮面を向けるクラウンマンを睨むフォルテ。
だがフォルテは睨むだけで、それ以上の事はしてこない。己が尊敬せし総帥Dr.ワイリーとの
「ささ、この調子で憎き科学省を根絶やしに「何を勘違いしている」―――ひょ?」
彼の言う勘違いとは。クラウンマンは首を傾げて思考する矢先にフォルテが自ら答えを出す。
「オレはデカブツ相手は梃子摺るだろうからとワイリーに依頼されただけだ。オレがデカブツを片付けた以上、あとはキサマらの仕事だ―――テトラコードがある以上、後はザコでもできる」
「……ええ、ええ! まったくもってその通りにございますな、ヒーッヒッヒッヒ!」
考えなしの木っ端な悪党であれば逆上するようなフォルテの傲慢っぷりに対し、クラウンマンはさも当然とばかりに査定しケタケタ笑う。
しかし事実、クラウンマンと
何せ相手は、よかよか動物園・N1グランプリ・湾岸病院と3連続で倒せなかった強固なウィルス。それらが寄って集って一か所を守るのだから無理にも程がある。
フォルテを恐れ硬直状態にある両軍を一瞥してから、クラウンマンは胸に手を当てて一礼。
「それではフォルテ様、残った仕事はザコなりに熟します故」
「ああ」
クラウンマンを見ようともせず、フォルテは身を翻す。
――この調子で「憎き」科学省を―――
(……あの道化、オレが科学省の出だと知っているのか?)
そんな些細な疑問ですら「どうでもいい」と割り切り、彼はウラインターネットへと向かった。
―――
フォルテが立ち去った事で勇気を取り戻した科学省サイドは反撃を開始。
主にオフィシャルナビとクリームランド産の重量級ノーマルナビが戦線を敷き、それをWWW傘下のネットナビが押す。
WWW側はウラで仕入れた強力なバトルチップとDr.ワイリーによるプチ魔改造(腕部大型化や装甲強化程度)で強引かつ連携無視の力押し。
科学省側はオフィシャルの的確な指示、クリームランドナビの防御力、科学省の科学者が貸し与えたバトルチップ、そして市民ネットバトラーの頑張りと、強固な横の繋がりで応戦。
「それそれ~、やられちゃえ~!」
「うぉぉぉぉバァストォォォ!」
カラードマンが次々と放つ『アクアタワー』と『フレイムタワー』を、バーストマンの頭部とバスターを用いた連続射撃『アクアバースト』でかき消す。
「行け、森の仲間たちよ!」
「うおぉぉぉっ!?」
電球を掲げ発光しかけたフラッシュマンを、ウッドマンの『グリーンシード』より生まれた二体の『ウッドキャノーダム』のリンゴ砲弾の雨が襲い掛かる。
WWWのネームドネットナビと市民ネットバトラーのネットナビも拮抗しており近づきづらいが……。
「さぁて……有象無象は我々が抑えますので、後は頼みますぞドリルマン」
「ドリドリ……任せろ、風穴空けてやる!」
呼ばれ参上したのは、つま先から頭部までドリルだらけのネットナビ・ドリルマン。
テトラコードを埋め込まれたドリルマンは意気揚々とネットバトル前線へと歩み……ふと止める。
「おい……一応聞くが忘れちゃいねぇだろうな? これが終われば―――」
「そこはアナタ様の活躍及びワイリー様次第ですが……まぁ叶いますとも」
「ドリリ……ならいい。ワイリー様が与えてくださったこの力、存分に使ってやらぁ!」
どうやらドリルマンとワイリーの間には何かしらの約束があるらしい。それを確認すると再び前を見る。
すると両肩と頭部が合体して自ら巨大なドリルとなり、直後に前方の空間に穴が空く。
ドリルマンはその穴に飛び込み……ネットナビ達の争いを無視してテトラゲート前へ出現。
空間破壊からの簡易
自らがドリルに変形し破壊力を上げる必要があるが、大半の障害物を空間移動で無視できる点は非常に有効と言えよう。
流石に『プロト』を保管する特殊な4枚のセキュリティゲート相手には通用しないが……今のドリルマンには全ての『テトラコード』がインストールされている。
「ドリドリドリ……プロトは貰うぜ!」
人型に戻って照準を定めた後、再び巨大ドリルとなって突き進む。
「させぬわぁっ!」
―ガギャァンッ!
「ドリリッ!?」
突如として上空より飛来した
強固なガード機能を持つ巨大ドリルですら止まらざるを得ない衝撃、しかし螺旋にそってその攻撃は反られ、両者は仕切り直しとばかりにその場で変形する。
人型に変形しドリルマンは前方を見やる。ドリルモードは視界が悪くなるのが欠点なのだ。
それは✕の字を描くように2本の剣を背負う、巨大な剣が人となったようなネットナビだった。
「キサマ、何者だ!?」
「ワガハイはネットナイツが一柱・ソードマン! ココより先へ進むなら、この剣のバグにしてくれよう!」
ドリルマンの前に立ちはだかり剣を握るソードマン。
かつてゼロウィルスによって操られ「あるもの」を守る番人として使われた彼にとって守衛はお手の物。
一切の隙を見せぬソードマンを前にドリルモードに変形すれば、その瞬間を切り裂かれる可能性がある……ドリルマンは忌々し気に舌打ちした。
「ネットナイツ……クリームランド専属のネット警邏隊……!」
クリームランドに恨みでもあるのか、ドリルマンの体からは怒気と憎悪が放たれる。
『気を付けろソードマン、そのナビはただ者ではない!』
ソードマンの側にディスプレイ画面が開かれ、紫の髪を持つイケメン男性が姿を現し警戒を促す。
「無論! オペレーションを頼むぞ、ケンスロット卿!」
自律型ネットナビである自身を受け入れ、操られたとはいえネット犯罪に手を貸した罪を償う手伝いをしてくれるオペーレーター。
新たなライバルや仲間を得た愛すべき国……クリームランドを守るためにも、なんとしてもプロトを死守する!
観念したのか、ドリルマンは片腕のドリルをソードマンに突きつけ宣戦布告を言い渡す。
「いいだろう! その生意気な鉄板を全てハチの巣にしてやる!」
「その意気やよし! いざ!」
空間破壊を伴わない純粋なドリル突進を、両手で握りしめた大剣で受け止める。
―――
「状況はどうなっている?」
『クリームランドの大型ウィルス4体をデリートした後、フォルテは姿を消しました! 現在は科学省・クリームランド・市民ネットバトラーと共に応戦中……す、すごい数です!』
ヘルメット越しでもマフラーの轟音と風切り音、そして風圧に負けるものかと熱斗は炎山にしがみつく。
対して炎山は慣れているのか、PETに繋がれたイヤホンを通じて電話対談を続けている。
「ぶ、ブロンコさんもっとスピード出せない?!」
強がりでそう尋ねると、ブロンコは前を向いたまま困ったように言う。
「私はオフィシャルじゃないし、これ以上は法定違反でムリー。これでも最短ルートなんだよー?」
このスピードで?と熱斗は更に震えてしまう。アクセルを握る女性オペーレーター・ブロンコの出すスピードは法定速度ギリギリなのだ。
トップスピードを維持したまま曲がる事で生じる遠心力に抗えながらも、必死で炎山にしがみつく。決して怖いからではない(必死
「そ、そういやどうしてフォルテがWWWなんかの手を貸すのさ!?」
気を紛らわせようと熱斗が炎山に問いかける。
ロックマンとブルースをエリア移動させるよりブロンコのバイクに乗った方が早いと炎山に引っ張られ、こうしてサイドカーで風を切る羽目になった。
碌に話し合わず乗せられた為に具体的な案が聞きたかったのだが、炎山の答えは曖昧なものだった。
「わからん。メガト氏の話では科学省への復讐と捉えても不思議ではないと言っていたが、それにしたってワイリーの取引に応じるとは思えないとも言っていた」
未だノートPCをカタカタ弄るストンナが心配だと浦川旅館に残ったキロクラム夫妻の言葉を思い出す。
曰く、プロトとは初期型インターネットより生まれた、全てを取り込むアメーバのような存在。
曰く、フォルテとは世界初の自律型ネットナビで、史上最強の性能を持って生まれた存在。
曰く、プロトの誤作動による厄災は、当時問題ばかり起こしていたフォルテの仕業と勘違いし科学省に冤罪を被られた。
故にフォルテが科学省に現れたと聞いたメガトが考えたのは、自身を地獄の底に落とした連中への復讐とも考えられたが……。
「セレナードが言ってたよな、フォルテはそんな
徐々に恐怖を誤魔化せた熱斗が呟く。
フォルテのセカンドモデルとして開発されたセレナードは、シークレットエリアに縛られる前に彼と会ったことがあるという。
フォルテの野望は更に自身を強化すること……即ちプロトの力を我が物にしようとしているのではないか、とセレナードは考えている。
『いずれにしても世界の危機だ、一刻も早く科学省に向かわないと!』
『ヘルボア、いざとなったらお前の
『ぶひぃぃ! 合点承知だぜぇぇ!』
ネットナビ達の危機感が強まり、プラグイン直後の素早い対応を話し合う。
ネットナビ達の気合も充分とと判断した炎山は、仕方ないとばかりに舌打ちする。
「できればこの手は使いたくなかったが……」
「こ、この手ってどの手?」
嫌な予感がする熱斗を無視し、炎山はPETを掲げる……そこには赤い文字で『
「オフィシャルネットバトラー・伊集院炎山の許可の下、法定速度超過の運転を認める! ブロンコ、全速力を依頼する!」
「YES、Sir!」
即座に鳴り響くサイレン。赤く点灯するPET画面。それを理解し道を空ける車達。
ブロンコはニヤリと笑うとアクセルを思いっきり吹かし、バイクを更に加速させる!
「ひぇぇぇぇ!!!?」
後に熱斗はこう振り返る……「ジェットコースターより怖かった」と。
当作では自律型ナビまたはオペーレーターを失ったナビの就職先を検討しております。スターマンとか。
・ドリルマン
エグゼリメイクのドリル変形が滅茶苦茶カッコいいネットナビ。
当作のWWWは悪役っぽさを目立たせる為に洗脳ナビが多いという設定があり、プロト奪還を見据えたワイリーが突貫に優れた自立型ナビであるドリルマンを誘拐・魔改造した。
・ソードマン
元ネタはロックマン8のボスロボット、エグゼでは『トランスミッション』で初登場。
高い戦闘能力を持ったネットナビ。ゼロウィルスにより操られある場所を守っていた。
現在はケンスロットのナビとなり、罪を償う為にネットナイツの一人となった。
「ナイトマンの好敵手」を自称しているが、実際ナイトマンが苦戦する程の剛剣使いでもある。
・ケンスロット
ソードマンの新たなオペレーター。見た目はまんまFGOのランスロットを私服姿にしたもの。
プリンセス・プライドに忠誠を誓う市民ネットバトラーで、現在はクリームランドが保有するネット警備隊「ネットナイツ」の一人。
騎士道を重んじているが女癖が悪く、割と軟派だったりする。娘の反抗期に悩む一児のパパ。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!
よく返信し忘れていてすみません(汗)