ストーンマン拾ったんで魔改造するです!   作:ヤトラ

8 / 70
七千文字を越えたので分割。書こうと思ったら書けるものですね(笑

※書きまくってたので、予約投稿時間を間違えて深夜になりました。

※感想欄で亡霊ナビの存在を思い出しました、2の序盤遭遇クイックマン……orz


【ロックマンVSストーンマン】

 

 時は少し遡る。

 

 熱斗は「やじりの間」のトラップを解除すべく、ロックマンをプラグインして電脳の奥へと向かわせていた。

 隣の部屋から嫌な音がしているのが聞こえるので急いで潜り抜けて制御プログラムを発見したのは良いが、そこで思わぬナビが現れる。

 

「ゴゴゴ……ココハドコダ?」

 

「お前は……ストーンマン!?」

 

 ロックマンが振り向けば、そこに立っていたのは要塞のようなネットナビ―――かつて対峙した事があるストーンマンだった。

 

『すとーんまん?』

 

「WWWの自立型ネットナビだよ! メトロラインの保安プログラムを妨害してた!」

 

『そっか、あの時デリートした……けど色が違うような……まさかお化け!?』

 

「熱斗君、僕ら(ネットナビ)にそんなのは居ないと思うんだけど……」

 

「ゴゴゴ……アノ時ノ青イなびカ、ナンダカ背中ガでかイヨウダガ……邪魔ヲスルナ!」

 

 苛立ちを表しているかのように両腕を地面に叩きつけ、電脳を揺らすストーンマン。

 その地震は凄まじく、容易くロックマンのバランスを崩し、巨大な歯車を模した制御システムが嫌な音を立てて軋ませる程だ。

 

「凄いパワーだ、こんな地震が続けばトラップの制御システムが壊れるよ!」

 

『何するんだストーンマン!』

 

「ゴゴゴ! コノすとーんまん、邪魔スル奴ラハ踏ミ潰セト教ワッテイル!」

 

 ストーンマンはプレス機のように地面を何度も叩きつけ、今度は落石を振らせてくる。

 体制を立て直したロックマンは落石を避け、改めてストーンマンと対峙する。

 

「もしかするとコイツがゴスペルが送った刺客かも! 熱斗君!」

 

『ああ、ここは壊させない! バトルオペレーション、セット!!』

 

「イン!!」

 

「ゴゴゴ!」

 

 ストーンマン、再戦(リベンジ)(?)!

 

 

 

 ロックマンに言われてストーンマンの戦い方を思い出した熱斗だったが当てが外れた。

 

 まずはその防御力。高いHPに加え、直立してガード状態になる事でストーンボディ状態となってダメージを軽減させてしまう。しかもバトルチップに応じてガードする知能もある。

 次いで前回と違う戦法。振動からの落石やレーザーは以前と同じだが、極小のチップフォルダを内蔵しているのか『パネルスチール』を所持しており、一歩ずつ前進して迫ってくる。

 そして適応力。『エアシュート』で相手の『ストーンキューブ』を利用すると『ストーンキューブ』を発動しない、『リモローソク』などを設置するとレーザーで積極的に破壊するなど、バトルチップの特性を理解して行動している。

 

 総じて言えば―――あの時よりも遥かに強い!

 

『ヘビーフィスト!』

 

『うわぁっ!?』

 

 眼前のストーンマンの腕が振り上げられるのを見て避けるロックマンだが、直後に凄まじい威力のパンチが地面を叩きつける。

 

「大丈夫かロックマン!?」

 

『大丈夫! けどこのままじゃ……!』

 

 ストーンマンは体力こそ減っているものの、決定打を受けずにいる。対するロックマンは体力だけでなく精神力まで持っていかれているかのように体が重い。

 そしてストーンマンとの距離が狭まりつつある。こちらも『エリアスチール』で取り返してはいるが、このままでは追い詰められるのは時間の問題だ。

 

 ストーンマンは至近距離で何かをするつもりだ―――だからこそ必要なのは、瞬間火力!

 

『熱斗君!』

 

「そんな石お化けなんかに負けるな! 力を借りるぜデカオ、ガッツマン!」

 

 『アクアカスタムスタイル』によって増加したオープンフォルダの中から、熱斗は三枚のバトルチップを手に取る。

 ロックマンは熱斗が送信するバトルチップが何なのかを理解し、立ち止まって身構える。

 それを察したストーンマンは直立、ガードしストーンボディと化するが……それが却って仇となる!

 

 『ダッシュアタック』と『コールドパンチ』に加え、ガッツマン用にデカオがカスタマイズしたバトルチップ『ガッツパンチ』を組み合わせて完成するプログラムアドバンス。

 

「プログラムアドバンス、『マシンガンパンチ』! いっけぇー!」

 

『だぁーっ!』

 

 乱打するロックマンに合わせ、ガッツマンの巨大な拳が次々と放たれる。

 まさしく拳の機関銃。全ての拳がストーンマンのストーンボディを貫通する!

 

『ゴゴゴゴゴゴ!?』

 

 文字通り決定打を受けたストーンマンは、ついに浮遊している手足、そして巨躯を地に落とす。

 デリートされてはいないが、拳型の凹みが幾つも浮かぶ石の体を簡単には起こせないだろう。

 

「どうだストーンマン! 俺達の勝ちだ!」

 

『ゴゴゴ……マダマダ……ッ!!』

 

 熱斗の勝利宣言など知らぬとばかりに、ストーンマンは無理やりでも立とうとしている。

 浮かばそうとする両腕をズリズリと引きずり、無理やりその巨躯を前へと進ませる。

 

「こいつ、まだ……ロックマン!」

 

『待って熱斗君!』

 

 もうデリートするしかないか。熱斗はバトルチップを手に取るが、ロックマンに止められる。

 ロックマンはストーンマンの前で立ち止まる、巨躯は彼に合わせて静止して見下ろす。

 

『ゴゴゴ……邪魔ヲ……スル、ナ……!』

 

『WorldTubeって言うサイトで、君がネットバトルしている動画を見かけたんだ』

 

 ロックマンの言葉にストーンマンは目の光を強め、熱斗は目を点にして彼の後ろ姿を見る。

 

 動画投稿サイト【WorldTube】で熱斗の為になりそうな勉強動画を探している中、ランキング一覧にある動画を見かけた。その中にストーンマンの姿があったのだ。

 色が違っているが、WWWのネットナビが何故復活しているのか? そう思って動画を見て―――気づけば様々な動画を見てしまっていた。

 

 強固な防御力を惜しみなく発揮して戦うストーンマンと、そんなストーンマンにバトルチップを送るオペレーターらしき少女の楽し気な声。

 ナビマークしか表示されないが、その声色は楽しさをこれでもかと表現していた。例え負けたとしても、2人は悔しくも楽し気にしていた。

 

 その動画に関連して調べてみて出た情報が、クリームランドのストンナ・キロクラム―――先日誘拐されたというストーンマンのオペレーターの名だ。

 

『最初はナビ違いかと思ったけど、戦って解ったよ。君はメトロラインを妨害していたストーンマンで、バトル動画で見たストーンマンだ。

 君はもしかして……行方不明になった君のオペレーター、ストンナ・キロクラムを探しているの?』

 

『……』

 

 ロックマンの問いかけに応えないが、その沈黙には肯定の意味が籠っている。

 

「行方不明? どういう事だよロックマン、こいつのオペレーターってことはソイツはWWWの手先なのか?」

 

 あまりにもロックマンから勉強動画を推された事で【WorldTube】が嫌いになっていた熱斗は、ロックマンの言っている事がいまいち理解できていなかった。

 

『解らないけど、僕達に復讐する気は無いみたいだし、動画ではクリームランドに住む女の子だって紹介されていたよ』

 

『……すとーんまんハ、モウWWWトハ関係ナイ。オ前ラニ復讐スル、理由ナンテナイ。

 ココニ居ルハズノすとんなヲ……でりーとシ掛ケタおれヲ助ケテクレタ、大事ナおぺれーたーヲ探シニ、ココヘ来タンダ!』

 

 ダカラ邪魔ヲスルナ、そう言って両腕を地面に叩きつけ、その巨躯をゆっくりと持ち上げる。

 再び敵意を剥き出しにするストーンマン。しかし熱斗とロックマンは彼の敵意の裏に秘められた、自分達と同じ熱い想いに共感して立ち止まる。

 

「ちょっと待つですーっ!」

 

 バタンと豪快に開いたドアに驚愕する熱斗。次いで扉を開けた人物がコチラに駆け寄ってくる。

 

「お、女の子?」

 

 パタパタと駆けつけるのは、グレーのロングヘアーに無機質な表情を浮かべる少女。

 同級生のやいと並みに小さな彼女は、無表情なのに解りやすい程に焦燥感を体で表していた。

 

「お願いです、ストーンマンをデリートしないで欲しいです!」

 

『ッ!? ソノ声、すとんなカ!?』

 

「はい、ストンナです! ストンナは此処にいるですよストーンマン!」

 

 熱斗のPETから聞こえる相棒の声に、ストンナはぴょんぴょん跳ねて画面を覗き込もうとする。

 

「ストンナってことは、この子がロックマンが言っていた?」

 

『ストーンマンのオペレーターだよ。クリームランドで行方不明になったって聞いてたけど……』

 

 PET画面にはロックマンと、彼の横から割り込んで覗き込むストーンマンの顔がドアップで映し出されている。ぐいぐい迫ってくるからロックマンも困っていた。

 熱斗は熱斗で、PETに覗き込もうと必死に飛び跳ねるストンナの対応に困っていた。行方不明になった少女がここにいるなど、ゴスペルの手先ではないかと疑ってしまうが……。

 

 

「ロックマンの言う通りだ。その少女は、ゴスペルの手によって誘拐されていたのだ」

 

 

 次いで奥の部屋から現れた人影。その中の1人が声を掛けた事で熱斗の注目が向けられる。

 

「ラウルさん! それにジェニファーさん、プライドさんまで! 無事だったんだね!」

 

「プライド様!?」

 

「ああ、ストンナ! よく無事でいてくれました……!」

 

 熱斗が告げた人名の中に探したかった人物の名があったことでストンナが振り返るも、彼女が一番に見つけたかった人物―――プリンセス・プライドの抱擁に包まれる。

 ぎゅうっと抱き締めるプライドの顔は涙が浮かぶほどに嬉しそうで、ストンナはその豊満な胸に抱かれ藻掻いている。そんな二人を呆然と見ている熱斗にラウルが説明する。

 

「実はアメロッパ城に向かう前、裏通りでプリンセス・プライドとアメロッパ人の特徴を継いだ男が話し合っているのを見かけていたんだ。

 だから私は最初からプリンセス・プライドを疑っていたのだが……罠の炎にやられかけたところを彼女に救ってもらい、事情を聞くことにしたんだ」

 

 その結果がこれだ、とプライドとストンナを顎で指すラウル。次いでジェニファーが証言する。

 

「私もそこのストンナに助けられてね。彼女に事情を聞いたんだが……あたしの証言とラウルの証言、そしてストーンマンの言ってた内容を合わせれば辻妻が合うよ」

 

「つまりゴスペルの手先は別にいて、プリンセス・プライドはこの子を人質に取られて仕方なくソイツを招き入れたってこと?」

 

『そうなるね。ストーンマンが現れたのも、ゴスペルの手先と攫われたストンナがここアメロッパ城に居るって解ったから……』

 

 熱斗もロックマンも沈痛な面持ちとなる。このような少女を誘拐したゴスペルと、少女を人質に国の王女を脅して利用した事に怒りを覚えて。

 

 だがその怒りは直に治まる事になる。

 

「ストンナ、これを」

 

 ようやくストンナを離し、プライドは懐から彼女のPETを取り出して手渡す。

 

「はいです! 戻ってくるです―――ストーンマン!」

 

 石像の様に動かない顔。だが少女の声と体は軽やかで、鮮やかな手つきでプラグを差し込む。

 

『探シタゾ、すとんな!』

 

 すぐさまPET画面に現れ、喜びを全身で表すストーンマン。

 

「ストーンマン! よくここを見つけ出したですね!」

 

『発信機ヲ頼リニ、あめろっぱ中ヲ駆ケ巡ッタ!』

 

「ストーンマンは私の命令に従い、発信機を辿ってクリームランドエリアから旅立ったのよ」

 

『うむ、まさに忠義者よ!』

 

 大雑把な小型発信機の信号を頼りに国を飛び出しローラーダッシュで探しまくったストーンマンを、まるで己の事の様に誇るプライドとPET内のナイトマン。

 

 己を探してくれた事、敬愛する友人と再会できた安心感、そしていつの間にか大きく暖かな心を持った最高の相棒を得た幸福感―――ついに無機質なジト目から、ぽろぽろと涙が零れ出る。

 

「オヨヨ……ストンナは、ストンナは果報者なのですよ~! オヨヨ~!」

 

 PETを握る手に力を込めて力いっぱい泣く少女。それを止めようとする者はこの場に居ない。

 少女と巨大な相棒の絆を目の当たりにした熱斗とロックマンの心は、暖かな気持ちで満ちていた。

 

 

 

―――だが。

 

 

 

「ぐわあぁーーーっ!」

 

 

「今の悲鳴は!?」

 

「ジョンソンの声だ!」

 

「行こう!」

 

 

―――まだゴスペルの魔の手が残っている。

 

 




〇ネットナビのお化け!?
感想欄見て思いだしたけど、デリートされたナビが野良で出てきますね(汗

○邪魔スル奴ラワ踏ミ潰セ
あ、そうだ つよいぞ もんくあるか おい!
ストンナに言わせたい台詞シリーズの一つです。

〇ストーンマンリベンジ
ストーンマン単体でも『パネルスチール』を発動できるよう魔改造されてます。

〇カスタムスタイル
チップオープン枚数が7になるスタイルチェンジ。アニメの影響でコレのアクア版が強く見える。
因みに作者の初スタイルチェンジはエレキシールドでした。勿論アドコレ。

〇マシンガンパンチ
『2』で登場する『ガッツパンチ』+『コールドパンチ』+『ダッシュアタック』で発動するPA。
まさにマシンガンみたくパンチが飛びますが、実物を見るまでJOJOで有名なアレを想像してた。

〇熱斗とWorldTube
ストーンマン再戦時の反応を書きたいが為に、熱斗君を動画投稿サイト嫌いにしてしまった。兄さんの推し押しが悪いんや(←つまり作者のせい
逆にロックマンは名人のライセンス勉強動画やチップコンボ解説動画、中では射撃コンテスト動画など色々見ていたりする。そういうのを見せれば良かったのに。

〇ラウルとジェニファー
ラウルがプライドに助けられて事情を聞き、ジェニファーがストンナに助けられて事情を聞いた事で2人の事情を理解することができました。
感想欄でもありましたがアラシの大雑把さを利用しました。ご指摘いつもありがとうございます……。

〇ストンナの再会
大好きな姫様と手を込んだネットナビに再会できたら無表情でも泣く。


今回書き詰めてしまった上に投稿予約間違えてしまいました(汗

いつも感想や誤字報告ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。