このシーンを書きたいが為に頑張った感あります。
パルストランスミッションシステムとは、脳波が一種の電気信号であることを利用し、人間の頭部に脳波とやり取りする機器を装着することで、その精神データを電脳世界に繰り出す装置。
現実世界における肉体を忠実に再現するだけでなく、ネットナビのデータと融合し、常にフルシンクロ状態となり潜在能力を最大限に引き出すことが出来る。
当然ながらリスクも高く、電脳世界でダメージを負えば、そのダメージまでもが脳波でやりとりされて肉体と精神に大きな悪影響……最悪の場合は死に至る恐れですらある。
ここで取り上げたいのは、電脳世界で造り上げる疑似的な肉体は脳波を基に作られた、ということ。
WWW幹部がやったようなフルシンクロのみに使用するのでなく、Dr.コサックがやったようなエネルギーを無理やり上昇させてからの自爆でもなく。
そのシステムを正しい心を持って利用できたのなら……肉体に不利を抱える患者に一定の自由を約束する、素晴らしい装置になっていたに違いない。
そう……例えば、感情表現が下手な女の子に表情を与える、とか。
―――
ストンナは怒っていた。その激情は脳波となってパルストランスミッションシステムで変換され、電脳世界の肉体に影響を及ぼす。
当たり前のような感情表現が、当たり前のようにストンナ・キロクラムの体に及んでいる……それが
そしてそれは、Dr.ワイリーにより記憶を消去されたはずのストーンマンも同じだった。
『―――ゴ、ゴゴ……』
お前は何者だ。そういう意図を込めて微動だにしないストーンマンは唸る。
『ストーンマン』
トテトテと、数センチ上で浮かび続けている巨腕の影から出るストンナ。
危ないと声をかけたCFロックマンを、
助けようとドリルに変形しかけたドリルマンを、『シャーッ!』と威嚇することで止めた。
無表情でもリアクションで感情を表現してきたストンナが、特に行動せず表情を変えるだけでココまで威圧感を放つようになるなんて。
これが本来のストンナ……感情豊かな天才少女の真の姿。
静かに距離を縮めてくる少女を前に恐れを抱いたらしく、遂にストーンマンが一歩後退りし、CFロックマンの上で止まっていた巨腕を戻す。
身構えた―正確には身を強張らせた―ストーンマンを見てもストンナの怒り顔は緩まず、ストーンマンの目の前で漸く止まり、腰に手を当てて仁王立ちする。
ハァ、と少女は溜息をついた。
『アナタ……友達に手を出すなんてナニしてやがるんですかア゛ア゛ァン!?』
小さな少女が見上げて睨んでくる―――ストーンマンは思わず『ヒイ』と情けない声を上げた。
『ゴ、ゴゴゴ、ゴゴ……!』
オレはソイツらなんか知らない……そう唸り声を上げると。
『―――ナーニが、オレはソイツらなんか知らない、ですか!』
少女の言葉にストーンマンも、CFロックマンやドリルマンですら驚いた。
Dr.ワイリーはストーンマンの防御力と攻撃力を効率的に上昇させるべく、ネットナビの基礎である言語プログラムですら弄って省略化している。
開発者にしか解らないコードで喋る為、同じWWWのコードを持つナビ同士でないと話が通じないようになっている。ストンナはそれを改善したが、洗脳した際にワイリーが元に戻したのだ。
そんなストーンマンの言葉が……意図がこの怒る少女に伝わっている。
だからだろうか。少女の脳波データがストーンマンに微弱ながらも伝わり―――
―――これからよろしくね、ストーンマン
『ゴ……?』
そこでバスターを構えているナビに似たネットナビが、穏やかな笑顔を浮かべ見上げている。
ノイズに塗れているが確かに脳裏に浮かぶと同時に、頭に当たる部分に鈍痛が走る。
―――アナタがストンナのネットナビなのですね
―――ストーンマンよ、クリームランドに勝利の凱旋を
『ゴ、ゴゴゴ……ッ!?』
目に隈が浮かんでいる金髪の女性が嬉しそうに
自身に匹敵する巨大な鎧姿のネットナビが、鉄球を
存在しないはずの記憶が次々と浮かび、その度に頭痛が強まっていく。
『思い出していますか? それがストンナとストーンマンの友達なのですよ!』
『ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴォ!』
―それは
―――解ってるじゃねぇか!
―――ぶっ飛ばしてやるでガッツ!
―――このトラキチ様が組んでやるんや、ドーンと任せときぃ!
―――共に予選を勝ち抜こうぞ、ストーンマン
―――言うねぇ、だが簡単に行くとは思っていないよ。なぁメタルマン
―――否! 断じて否だ! この時の為に鍛え上げた我が鉄拳に砕けぬものはない!!
『ウゴゴ、ゴ、ゴオォォ……!』
太っちょの男が、剛腕を振り回すナビが、関西弁で話す少年が、王のような黒いナビが、男前の美女が、鋼鉄のナビが……次々とストーンマンの脳裏に浮かんでくる。
場面ごとに様々な感情プログラムがストーンマンを蝕み、知らないはずの記憶が今の自分を否定してくる。まるで自分とは別の自分が抗っているかのように。
『じゃあこの記憶はなんだってんですかー! いい加減、洗脳されているって認めるですよ!』
―
その言葉にストンナは更に青筋を浮かべる……それ程までにブチ切れていた。
『消えるわけないじゃないですか!!』
ジゴク島でも披露した高い身体能力は電脳世界でも発揮され、その場で屈んでから大きく跳躍。
そのままベッタリとストーンマンの顔に張り付き、頭を後ろへと思いっきり下げ―――。
―ゴォンッ!
『仲間ってのは、
ストンナの頭突きと怒号が炸裂。その衝撃は、超重量体のストーンマンを微動させた。
『
痛む額をゴリゴリとストーンマンに押し付ける。まるで頭の中の映像を送りつけるように。
その思いと記憶はストーンマンの脳裏に更なる映像を送りつける。
父メガトと母ニーチ。家政婦デニッシュとコンパゲース。アケートとツンドラマン。バストとバーストマン。クリスとクリスタルマン。ウールとシープ。
桜井メイル、ロール、綾小路やいと、グライド、大山チサオ、バブルマン、日暮闇太郎、ナンバーマン、緑川ケロ、トードマン、砂山ノボル、デザートマン、マサ、シャークマン、サロマ、ウッドマン、みゆき、スカルマン……。
これまで紡いできた多くの仲間と記憶がストーンマンの記憶データを埋め尽くしていく。
『見ているですか!?
ストンナの叫びと想いが、ストーンマンにあるはずの無い記憶データと感情プログラムが次々と
『ワイリーは、アナタを操るだけででなく、
―――ヤメロ、ヤメテクレ……!
―――喧しいわい! デリート、これもデリートじゃ!
『ゴ、ゴゴ、ゴゴゴゴ……!』
修復されると同時に思い出すは、次々と記憶データを削除していくワイリーに抗う自分。
大型ウィルスを止め、侵入者を止める為にあらゆる記憶を消去したとワイリーは言った。ストンナの為の身代わりとは言え、これまでの思い出を消されたくなかった。
そんなことまで忘れていた事を思い出しかけたストーンマンは、内側から負の感情プログラムが溢れ出てきて、体がどうにかなりそうだった。
だけど。
『ストーンマン! アナタはそんな―――』
この少女が―――初めて出来た友達が、共感してくれる。
『
それに応じないでどうする―――!!
『ゴ、ゴ―――ゴオオオオオオオオオオオ!!!!』
『な、なんだコリャ……』
かつて心無いオペレーターと袂を別った自律型ネットナビは呆然と立ち止まっていた。
人間とネットナビの堅い絆とフルシンクロを目の当たりにして、胸に熱い何かを感じていたから。
『「ストンナ……ストーンマン……」』
かつて人間だったネットナビと、その弟は喜びで満ち溢れていた。
友を取り戻した友の成果を。自分達に匹敵する絆を体現した事を……とても嬉しく感じていた。
『頭ガ痛イゾ、ストンナ』
『うっさいです、痛いのはコッチなんですよ……バカ』
―――フルシンクロ。クロスフュージョン・ストーンマン。
〇魂で繋がっている
ハガレンの名シーンが一つ。後のソウル・ユニゾンに繋がると思う。