この常識の通用しない世界に祝福を!   作:仲美虚

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第五話『この曰く付きの空き家に引っ越しを!』

雪精討伐から数日。垣根たちはそれなりの報酬を得ていたが、流石に家の購入までは程遠く、相変わらずクエストやバイトに明け暮れる日々を送っていた。変わった点があるとすれば一つ。あの一件以来、垣根とパーティメンバーとの関係が少しぎこちないものになっていた。カズマたちは垣根に積極的に声をかけ、垣根もまたそれに応えるが、どこか余所余所しい。この現状についてはカズマたちはもちろん、垣根自身も良しとはしていなかった。

 

そして現在、皆が各々の用事で出払っており、垣根は一人ギルドで時間を潰していた。

 

 

「何だってんだよ、クソッ……」

 

 

垣根は日頃の鬱憤を流すように酒を呷る。無駄遣いなどしていられないとわかっていながらも、この行き場のない感情を処理する方法を他に見つけられず、昼間から飲むことしかできなかった。しかし幼い頃からの実験漬けで獲得した薬物耐性により酔いが回らず、気分が晴れることはなかった。

これからどうやってカズマたちと付き合っていくか。垣根が頭を抱えていると、後ろから声をかけられた。

 

 

「こんにちは、お兄さん」

 

「あ?」

 

 

声の主は銀髪ショートヘアの少女。右頬に傷があり、女冒険者としては比較的軽装に見える。見かけだけで判断するなら、職業は『盗賊』と言ったところであろうかという風貌であった。

 

 

「あたしはクリス。君、最近カズマたちとよく一緒にいるよね。今日は一人でどうした――」

 

「……何やってんだクソ女神」

 

 

クリスと名乗る少女は垣根の言葉にフリーズする。そしてはっとして周囲を見廻し、垣根の腕を掴み上げた。

 

 

「――っと、ごめん! ちょっとこっち来て!」

 

「ちょ、何だよ!」

 

 

少女は垣根を引き連れギルドの外へ出る。そしてそのまま近くの路地裏に入り込み、人気がない事を確認し、言葉を発した。

 

 

「……どうしてわかったんですか?」

 

 

少女の口調が変わる。それはかつて垣根を転生させた女神――エリスそのものであった。

 

 

「顔面と声帯変えて出直して来い。まあ、髪弄って顔に傷を入れただけにしちゃあ上出来だが。……ていうかお前、その胸――」

 

「それは言わないでください! ……ええと、実は時々こうしてこの世界に人間として来ているんです。内緒にしてくださいね?」

 

「別に構わねえが……そもそも何の用だ?」

 

「それは……少し心配になりまして……」

 

 

垣根は人様に心配されるような謂れはないと言わんばかりの表情を返す。エリスはそんな垣根の顔色を窺うように続けた。

 

 

「たまに様子を見ていたんですが、ここ最近少しパーティメンバーとうまく行っていないようだったので、何か力になれればと……」

 

「……余計な世話だ。帰る」

 

「そんな、話だけでも――」

 

「――要らねえっつってんだろが!」

 

 

食い下がるエリスに垣根は大声で怒鳴りつける。しかし怯む様子もない彼女に対し、垣根はひとつため息を吐いて続けた。

 

 

「……話だけでもと言ったな? いいぜ、俺も聞きてえ事がある。――テメェ、俺に一体何をした?」

 

「な、何を――」

 

「惚けてんじゃねえぞコラ。思えばこっちに来てからどうもおかしい。転生の時にテメエが何かしたに決まってんだろが」

 

 

垣根の声に震えが混じる。そして溜め込んだものを吐き出すかのように、その口から言葉が溢れ出す。

 

 

「今まで誰がどうなろうがどうでもよかった。弓箭や誉望――スクールの連中だってそうだった。カズマたちだって、あいつらなんかただこの異世界で暮らす上で都合のいい存在でしかない。そう思ってたはずだ。なのにこのザマだ。俺とした事があいつらと馴れ合って、居心地がいいと思っちまってた。これじゃあまるで――」

 

「……年相応の少年のよう、ですか?」

 

 

エリスの言葉に図星を突かれた垣根は言葉を詰まらせる。エリスはそんな彼の様子を見て、真剣な表情で切り出した。

 

 

「垣根さん。あなたが転生してからの学園都市について、少しお話しする事があります」

 

「何……?」

 

「あの後、少し調べさせていただいたのですが……現在、『垣根帝督』という人間は今も学園都市で生きています」

 

 

垣根は己の耳を疑った。この女神は今何を言ったのか。自分は死んだから今ここにいるという話ではなかったのか。そんな垣根の心情を見透かすかのように、エリスは続けた。

 

 

「貴方が私の元に来た時、貴方の肉体は治療できない程に破壊されており、ほぼ死んだと言っても差し支えない状態でした。しかしその身体は回収されており、機械で脳を生かされ、能力を吐き出す機械として軍事利用されていたようです」

 

「……はは、この俺の未元物質(ダークマター)がたかが便利な素材扱いかよ」

 

 

あの状態から生きているとすればそういう状態になるのも頷ける。学園都市のやりそうな事だと、垣根は自嘲気味に笑いを漏らした。

 

 

「その後、貴方は能力で自身の肉体を復元し、一方通行(アクセラレータ)さんへの復讐を果たそうとしました。――しかし、対決の邪魔になる要素を排除するために放った偵察機の内の一機が反逆を起こし、能力の制御権を奪いました。そして今は彼が『垣根帝督』として生きています。今では学園都市の子供たちを守る都市伝説になっているそうですよ」

 

「……ちょっと待て、何? 能力で肉体の復元? 未元物質(ダークマター)はそこまで届いた(・・・)ってのか? しかも制御権を奪われた挙句、新たな『俺』が正義のヒーローだと? 冗談だろ? 能力から生み出された偽物とはいえ俺がか?」

 

 

情報の洪水に垣根は困惑する。未元物質(ダークマター)による物体の構築など、勝手に出現する翼以外でやってのけた事など一度もない。――単に不要だからやってこなかったというのも大きいが。しかし、純粋な能力による意味のある物体の構築は、素材の一部として人工的に兵器に利用する以上に難易度が高い。それを人体の構築などという複雑極まりない分野で成功させた上、自律兵器まで作り上げたというのだから驚く他ない。しかもヒーローなどとおよそらしくない事をやっているとなるといよいよ訳がわからない。皺の寄った眉間に手を当てる垣根とは対照的に、エリスは微笑みを浮かべる。

 

 

「いいえ、偽物とは言い切れませんよ。一方通行さんへの復讐に燃えた悪の垣根さん。子供たちを守る善の垣根さん。それぞれ別の人格を持っていますが、どちらも同じ『垣根帝督』という人間です。つまり――」

 

「……成程、話が見えたぜ。確か『三つ子の魂百まで』って諺があったな。人格と魂とやらをイコールとするなら――」

 

 

垣根は考える。元の世界に現れたという二人の垣根帝督。同じ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を持つ存在であれば少なくともその人格の根本は同じであるという事は間違いないだろうが、その在り方は真逆である。しかし、人間の性格や感情は単純に善や悪で分けられるような単純なものではない。どんなに良い人でも多少なりとも悪意を持つ事はあるし、その逆も然り。ならば、垣根帝督という人間が持つ人格の一側面が濃く抽出された存在が、復元された彼らという存在なのだろう。それはつまり――

 

 

「――そうか、俺にも残ってたんだな。そういうところ(・・・・・・・)が」

 

 

理解はしたが納得しきれているわけではない。エリスが事実を言っているという明確な証拠があるわけでもない。しかし、自分にもまだ良心が残っていた事を知り、垣根はむず痒いような気持ちになり、表情に照れが浮かぶ。そんな彼を見て、エリスは微笑んだ。

 

 

「ふふ、今の貴方もきっとそうですよ。恐らく、あの戦いで人格の一側面が死んだ魂として剥離した事で、イレギュラーな存在として私のところに来たのでしょう。しかし、そうなったからには死の間際に強く想った何かがあったのではないですか?」

 

「……ああ、そうだったな」

 

 

垣根が死の間際に想った、かつて手を掴むことができなかった少女――林檎との約束。その時の感情を思い出し、ふと気持ちに整理がつく。垣根は踵を返し、自身の背中越しにエリスに声をかけた。

 

 

「この俺に良心ってのはやっぱ妙な気分だが……まあ、割り切れた。礼を言うぜ。じゃ、またな。エリス――いや、クリス」

 

「……! うん、また何かあったら相談に乗るよ!」

 

「だから余計な世話だっての」

 

 

『クリス』に別れを告げ、裏路地を後にする垣根。カズマたちと話すべく、表通りを歩き出した。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「……確かここに行くって言ってたな」

 

 

垣根が向かったのは魔道具(マジックアイテム)店。以前知り合った女性、ウィズが働いており、垣根も物珍しさで何度か一人で通った事がある。

 

ウィズはリッチーと呼ばれるアンデッドの王で、垣根たちが彼女と知り合ったのは、アクアのレベル上げの為に墓地へ行った時の事だった。そこで目当てのモンスターではなく彼女に遭遇したのだが、アンデッドを目の敵にするアクアに浄化されそうになってしまう。しかし彼女は墓地で彷徨える魂を毎夜天に帰しており、やっている事は善行そのものなので、カズマたちの仲裁やウィズ本人の必死の願いの甲斐あり、なんとか見逃してもらえる事になった。その後、ウィズの仕事を代わりにアクアが引き受ける事になり、今に至る。

 

垣根が店の前で当時のことを思い出していると、中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。垣根がドアを開けると、丁度カズマとアクアが店から出てくるところだった。

 

 

「おっと、悪い――って帝督か。どうしたんだ?」

 

「いらっしゃいませ――あ、テイトクさん! お久しぶりです!」

 

 

出会い頭、カズマとぶつかりそうになる垣根。店の奥の方から何故か半透明になっているウィズが挨拶をしてきた。

 

 

「ああ、どうも。……いや、カズマが今日ここに行くって言ってたから様子を見にな。もう用事は済んだのか?」

 

「ああ、ばっちり『ドレインタッチ』を習得させてもらったぜ。――っと、それより仕事だ! 喜べ、暫く住む家には困らないぞ!」

 

「……何だって?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

垣根たちはめぐみん、ダクネスと合流し、宿に戻り荷物をまとめ、とある屋敷に来ていた。どうやらこの屋敷には何度除霊してもすぐに幽霊が湧くらしく、買い手が付かず困っていたオーナーの依頼で、垣根たちは泊まり込みでの除霊をする事となった。さらに成功報酬として、次の買い手が付くまで住んでも良いとのことで、一時的にではあるが、垣根たちは安宿生活から一転して豪邸での暮らしを手に入れることができた。

 

 

「幽霊、ねえ……」

 

 

垣根は若干の不安を覚える。幽霊のような実体の無い――物質へ干渉しない存在への未元物質(ダークマター)での対処法はまだ確立できていない。しかしこのパーティにはアクアという除霊のスペシャリストがいる。彼女に任せておけば問題はないだろうと考え、一旦その不安は頭の隅に追いやる事にした。それよりもまずは話す事がある。

 

 

「――あー、何だ。その……今まで悪かったな、空気悪くしちまって」

 

 

垣根がバツの悪そうな顔で謝罪を述べると、カズマたちは一瞬驚いたような表情をするが、すぐに笑みを浮かべた。

 

 

「気にすんなって。俺の方こそ、あの時帝督に気を付けろって言われてたのに……その、ごめんな」

 

「私もあの時、空気を読んで大人しく武器を捨てていれば……本当に申し訳ない」

 

 

カズマとダクネスもまた謝罪する。彼等は垣根の生い立ちを知っているわけではない。しかし、カズマの死によって垣根の古傷を開くような結果になってしまった事は理解していた。その為、あの件以来ずっと負い目を感じていたのだ。

 

 

「まあまあ、これにて仲直りということで。また以前のように仲良くしましょう」

 

 

めぐみんの言葉に皆が頷く。一件落着といった雰囲気になったところで、アクアが思い出したように声を上げた。

 

 

「あっ、そういえば私の胸ぐら掴み上げた事謝って! すっごく怖かったんですけどぉ!」

 

「いや、それはあの時すぐ謝っただろうが」

 

「……あれ? そうだったかしら? でももう一回謝って!」

 

「テメェこっちが下手に出てれば……!」

 

 

額に青筋を立てる垣根をカズマが止めに入り、アクアをめぐみん、ダクネスの女性陣が宥める。最後まで締まらないパーティなのであった。

 

 

 

 

今度こそ話がついたところで、屋敷に入り、部屋の掃除と荷解きを済ませた垣根たち。その日は各々早めに床に就くことになった。

 

垣根は自身に割り当てられた部屋で一人考える。昼間エリスから聞いた言葉。未元物質(ダークマター)で肉体を復元して生まれたという、もう一人の自分。その技術があれば、仲間が負傷した際に助ける事ができるのではないかと。

 

 

(あの時できてりゃあ、林檎も助かったろうにな……)

 

 

林檎は組み込まれたプログラムによって臓器を破壊されて息絶えた。その時未元物質(ダークマター)による肉体の補修が可能だったならば助けられたかも知れない。垣根は二度とあんな事は繰り返しはしまいと固く決意する。

 

 

(そうと決まれば早速理論の組み立てだ。まず、人体の主成分は肉、骨、臓器、体毛、爪に至るまで全てタンパク質だ。だが、タンパク質と一口に言っても、人体の組成に関わるものだけで約十万種類は――)

 

「きゃあああああああああ!?」

 

「……」

 

 

集中しだしたところで、部屋の外から響くアクアの叫び声に思考を乱される。すぐにカズマの声も聞こえ、何か二人で騒ぎ立てている様子が少し離れた垣根の部屋にまで伝わってくる。

 

垣根はうんざりとした表情で立ち上がり、能力を発動する。未元物質(ダークマター)の効果で部屋を防音にし、ついでに入口の扉も施錠した。そして静かになった部屋に満足し、再び思考に耽った。

 

 

――そして深夜。

 

 

(各部位それぞれに近い組成の未元物質(ダークマター)の構築を――いや、最低限必要なのは『代替』だ。義肢の要領で考えれば話は早い。拒絶反応を起こさず、必要な機能さえ果たせばそれで十分だ。木原相似の真似事みたいで癪だが、この方向性なら――)

 

 

垣根の計算式は思考だけに留まることなく、手持ちの紙という紙に出力されていた。片付けたばかりの部屋は、来る前以上にメモ書きで散らかっている。誰にも邪魔されない環境で、驚異的な集中力でペンを走らせる垣根。そんな彼の視界の端に、何か動くものが映った。

 

 

「……おい、気が散るからどっか行ってろ」

 

 

冷たく言い放つが、まだ何かが周囲を彷徨く気配がある。

 

 

「何の用だよ。見ての通り今忙しいんだ」

 

 

語気を強めるが、気配は離れない。堪忍袋の尾が切れた垣根は勢いよく顔を上げる。

 

 

「……ッ! テメェいい加減に――」

 

 

言いかけたその時、気配の正体と目が合う。しかしそれは人間ではなく、ビスクドールだった。瞬間、垣根のスーパーコンピュータに匹敵する頭脳がフル回転し、自問自答を始める。

 

 

Q.こんな人形部屋にあったか?

A.無かった。無論、自分が持ち込んだものでもない。

 

Q.誰かがこっそり持ち込んだ?

A.部屋は施錠していた。有り得ない。

 

Q.もし部屋に入れることができたとして、こんな悪戯ができるか?

A.不可能。物体を遠隔操作できるスキルを持つ人間はこの屋敷にいない。

 

Q.ではこの人形は一体?

A.…………

 

 

ほんの一瞬、瞬きする間もない程の僅かな時間。垣根は全てを理解した。

 

 

「――のわぁぁぁあああああああああああ?!!」

 

 

知る人が見れば爆笑(した後殺される事)間違いなしの声を上げ、垣根は部屋を飛び出した。

 

 

「馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎!! 卑怯だろアレは!!!!」

 

 

暗い廊下を駆ける垣根。すると曲がり角で誰かとぶつかりそうになる。

 

 

「ひゃああああああ?!! ――って、なんだ帝督か」

 

 

現れたのはカズマとめぐみん。酷く焦った様子で、特にカズマは青ざめた顔をしている。

 

 

「カズマにめぐみんか。お前ら何、を……」

 

 

暗がりでよく見えなかったが、垣根は気づいてしまった。めぐみんはカズマに手を引かれており、涙目で顔を赤らめ――何故か下に何も履いていなかった。

 

 

「カズマお前、とうとうこんなガキに……」

 

「待て、誤解だ。話し合おう」

 

「ガキって言いましたね!? いいですか、私はもう立派なオトナのレディで――」

 

「話がややこしくなるから黙っててもらえますぅ?!! ――って、こんな事している場合じゃないんだよ!!」

 

 

再びめぐみんの手を引いて走り出すカズマ。振り返れば大量の人形が迫ってきており、垣根も続いて全力疾走する。やがて物置と思われる部屋を見つけ、三人でそこに飛び込んでドアを押さえつけた。外からガンガンとドアを叩く音が響き、恐怖を煽る。

 

 

「ハァ……ハァ……これからどうする? もう後が無いぞ」

 

「ああ、このまま閉じこもっててもジリ貧だ。それに俺がついているとはいえ、めぐみんをロリコン性犯罪者と一緒にしておくわけにはいかねえ」

 

「お前まだ言うかこのメルヘン野郎が!! いいぜぇやってやるよスティールで全身ひん剥いて公衆の面前に突き出してやっからよぉ!!!!」

 

「またロリ呼ばわりしましたね!? はーーーーいいでしょう喧嘩なら買いますよぉ!!!!」

 

 

垣根の何気ない言葉に怒り心頭のカズマとめぐみん。そんな彼らを見て、垣根はとどめとばかりに鼻で笑った。

 

 

「――はん、やめろよな。本気で喧嘩したらテメェらが俺に勝てるわけねえだろうが」

 

「「むっかーーーーーー!!!!!!」」

 

 

怒髪天を衝くとはまさにこの事であった。

 

 

「お前マジでやってやるからな後で泣いて謝っても遅いぞ!!」

 

「我が爆裂魔法で塵も残さず消し飛ばしてやりますよええ本気ですからね!!」

 

「「表出ろコラァ!!!!」」

 

 

カズマとめぐみんが怒りのあまり、状況も忘れ勢いよくドアを開ける。――同時に、ゴン!! と、何かが強くぶつかる音がした。

 

そこには、除霊されて抜け殻となった人形たちと、ドアに頭をぶつけて気絶したアクアの姿があった。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

かくして、アクアの努力の甲斐あり屋敷の除霊に成功したパーティ一行。今回の件はギルドからの臨時報酬が出るとのことで、カズマとアクアはその受け取りの為ギルドの受付に行っていた。――はずだった。

 

 

「は? 受け取ってないだぁ?」

 

「文句ならこの駄女神に言ってくれ……」

 

 

屋敷に戻ってきた目の死んでいる二人を出迎える垣根。聞けば、ギルドからの報酬は受け取らなかったという。カズマ曰く、今回の件はアクアがウィズから引き受けた墓地の除霊をサボっていたことが原因らしい。

 

毎夜毎夜の除霊を手間に感じたアクアが悪霊避けの結界を張って誤魔化していたことで、行き場を失くした霊たちが屋敷に棲み着いていたという。言ってしまえばただのマッチポンプであった。

 

 

「お前……本っっっっっっ当にお前なぁ……」

 

 

本当に常識が通用しないやつだ。言いかけたその言葉は、呆れの感情に掻き消された。

 




前回の投稿から少し間が開きました。もう少しペース上げていきたいです。
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