イナズマイレブンGO ブリザード   作:アロイ

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第16話 鹿野里中の砦!

 

 前半が終了して、お互いのチームはハーフタイムに入り、休憩をとっていた。白恋中のベンチでは、石が開口一番、鹿野里中を非難する。

 

「楽勝じゃねぇか。シードもいなさそうだし、フィフスが何を考えてんのか分かんねぇな」

「油断するな、石」

「ギャハハハ! どう油断したら、あんな弱っちいチームに負けんだよ!」

 

 スポーツマンシップに反する発言を、他のチームメイトが何か言いたげにしながらも聞き流す。

 

 石がここまで増長している理由は、フィフスセクターからの勝敗指示がないからだ。それに、鹿野里中にはシードもいないため、好き放題暴れていいという許可がおりたのだと解釈していた。

 

 白恋中に潜入したシードとして、大人しくしていた地区予選と違い、今の石は義務などがない素の状態。窮屈なサッカーを強いられていた反動で、残忍な性格が前面に押し出されてきているのだ。

 

「吹雪監督…」

 

 すべての言い分を認めるわけではないが、虎白もシードどころか化身使いすらいない事実に、戸惑いを隠せない。吹雪もどこか引っかかるような仕草を見せていた。

 

「どうやら、僕たちにも予想がつかないことが起こっているらしい。まさか、フィフスセクターが何の策も講じてこないなんてね」

 

 シードといっても、影響力の強い化身使いはひと握りで有限だ。全国出場校にシードがいないのは、そう珍しいことではない。

 ただ、それなら初めから、化身使いのシードが所属するチームと当てればいいだけの話だ。フィフスセクターが取り仕切っている大会なのだから、対戦校を操作するなど造作もないし、それくらいは平気でしてくるだろうと予想していた。

 

「しかしこれは…」

 

 現実として、それほどの苦戦を強いられているわけではない。

 フィフスセクターの意図が読み切れず、深い霧の中いるような、何とも言えない不安を感じていた。

 

 

 

 一方、鹿野里中のベンチでは、暗く思い詰めたような表情で溢れかえっていた。

 

「みんなどうしたんだ! もっと上を向かなきゃ! 勝てるもんも勝てないよ!」

「は、はい…」

 

 試合を投げたわけではない。それでも、自分たちのサッカーが通用しなかったことで、どうしたら良いか、分からなくなっていたのだ。

 

「砦、あんたもだよ。何さ、必殺技の一回や二回破られたところで、泣きそうな顔してるんじゃないよ!」

「し、してないから!」

 

 慌てて目頭を拭うが、濡れていなかった。ホッと息をついて、以前にもこんなことがあったなと、砦は昔のことを思い出していた。

 

 

 ──それは、エイリア学園という悪いヤツらが地球に侵略しに来た頃だった。

 それまでサッカーには興味がなかったのだが、テレビに映る塔子ねぇが格好よくて、必殺技の真似をよくするようになった。

 

『悪い宇宙人め! おまえたちの好きにはさせないぞ! ざ・たわー!!』

 

 エイリア学園を追っ払い、今度はFFIが開催されると聞いたとき、また塔子ねぇの活躍が見れるのだと大喜びした。

 けれど、女子選手の出場ができず、塔子も出られないと知った砦は大泣きした。塔子のこともそうだが、自分の将来も閉ざされた気分だったのだ。

 

『泣くんじゃない。そうやって俯いてると、目の前のチャンスを見逃すよ。あんたが大きくなる頃には、きっと女の子でも出られるさ』

 

 その言葉を信じて、ずっと努力を重ねてきた。そんなある日、今年のホーリーロードで女子選手の出場が可能になった。

 そこで活躍すれば、いつか開催されるFFIで、自分も出られるかも、世界への道が拓けるかもしれない。

 

 塔子ねぇの代わりに自分が日本代表として、世界と戦うんだ。塔子ねぇのサッカーが、世界に通用することを知らしめてやるんだ──。

 

 自分の原点を思い出して、意思を強く持ち直す。

 

「うん、いい顔になった。あんたは、あんたらしくやればいいんだよ」

「あたしらしく…?」

「そう。あんたのサッカーをするんだ」

 

 塔子が何を言いたいのか、よく分からなかったが、自分を応援してくれていることは理解できた。

 

「あたしのことなんて忘れるくらい、全力でサッカーを楽しんできな」

「それって、どういう──」

「ほら、後半戦が始まるよ」

 

 砦が言い終えるのを待たず、そっと背中を押して送り出した。

 

 

 

 両チームがポジションにつく。白恋は、DFの虎白をFWに、MFの王鹿をDFにポジションチェンジする。

 

『鹿野里のキックオフで、後半開始!』

 

 FWの中谷が味方にボールを回して上がっていく。

 

『前半戦、白恋中に得点を許してしまった鹿野里中。後半で反撃なるかァ!?』

「何とかして点を入れるんだ!」

 

 ほぼ無策と言っていいのだが、それでも彼らの戦意は喪失していなかった。苦しい状況でも諦めない。そういうサッカーをやって来たのだ。

 

『鹿野里中がボールを繋いでいく!』

 

 とにかく虎白にボールを渡さないよう、何とかして前線を押し上げる。

 行く手を阻む白恋をくぐり抜けて、石のいる方へとドリブルで駆けていく。

 

「来たな…!」

 

 石がニィと唇を吊り上げると、相手選手に勢いよくタックルを仕掛けた。その間際、誰にも分からないように、相手の足を踏んづける。

 

「おらッ!」

「がはっ…!?」

 

 つんのめった拍子に衝撃を与えられ、その選手は体勢を崩して横に倒れてしまう。

 

『石がボールを奪ったァ!?』

 

 故意に怪我を誘発させるような、危険な行為だったが、ホイッスルは鳴っていない。

 

『際どいプレーでしたが、ファウルは取られていません!』

 

 その手馴れた反則行為に、会場の誰もが気づいていない。しかし、吹雪だけは難しそうな顔を、石に向けていた。

 

『さぁ、白恋に追加点かァ!?』

 

 石がそのままドリブルで攻め込んでいく。

 

「このっ…!」

 

 ラフプレーに憤った相手が、スライディングを仕掛けて、ボールをタッチラインの外に転がす。

 

『ここは鹿野里がクリア!』

「チッ。雑魚の分際で…!」

 

 自分の邪魔をしてきた選手を、石が忌々しそうに睨む。そんな彼に、「早くしろ」と日高がスローインのポジショニングを急かす。

 

「ケッ。わかってるよ」

 

 悪態をつきながら足を進める。敵味方が散り散りになった。

 

 

 

『白恋のスローインで試合再開!』

 

 白恋が投げ入れたボールを巡って、お互いの選手たちがジャンプする。わずかに小樽の方が高く、ヘディングでボールを遠くに飛ばした。

 

「誰か頼んだ!」

 

 ころころと転がった先で、ボールに足が置かれたことで、ピタッと動きを止めた。

 

「まずいっ…!」

 

 ついに虎白へとボールが渡り、鹿野里中に大きな動揺が走る。

 

『雪守にボールが繋がったァ! 鹿野里ピンチッ!』

「──もう1点奪ってやるよッ!」

 

 ドリブルをする虎白の雰囲気が豹変する。立ち塞がる相手を、次々と突破していく。

 

『雪守が抜け出したァ!』

 

 虎白がゴール前にたどり着く。目の前を砦たちディフェンダーに塞がれているが、関係ないとばかりに必殺技を繰り出した。

 

「──エターナルブリザード…!!」

 

 着地と同時に吹雪が舞い、激しく回転するボールに吸い寄せられるように冷気が渦巻き、氷で覆われ尽くす。

 

「喰らえーーッ!!」

 

 すべての力を乗せた重たい一撃で、氷塊をぐぐっと蹴り放った。氷に閉じ込められていた回転が再始動し、迸る風と冷気を切り裂くように鳴動する。

 

 シュートが迫る中、砦が同じDFのチームメイト2人に声をかける。

 

「2人とも、あの技をやるわよ!」

「でも、あの技はまだ…」

 

 躊躇うチームメイトに、発破をかける。

 

「もうこれしかない! ここで完成させなきゃ、どっちみち負けでしょ!?」

「分かった…!」

 

 砦の強い押しに、2人が頷く。覚悟を決めた3人が、必殺技を繰り出した。

 

「──パーフェクト・タワー!!!」

 

 両腕を振りかぶった砦が走り出す。残りの2人が飛び出したのと同時に、勢いよく両腕を振り下ろす。円柱で積み上げられた巨大な塔がそびえ立ち、飛び乗った2人を高く押し上げた。

 

「うわあああーーッ!?」

 

 しかし、そこで氷塊が衝突してしまい、必殺技は失敗に終わる。塔を砕き、3人を吹き飛ばしたシュートが、ゴールへと襲いかかる。

 

「ぐぅっ…!」

 

 砦が顔を歪ませながら、シュートの行方を追った。

 

鐘楼──っ…!?」

 

 仏田が必殺技を繰り出そうとすると、ボールが上方に逸れて、ゴールから大きく外れた。

 

『ああっと、ゴールバーを超えてしまったァ!? ゴールならず!』

「チッ!あれでコースが変わったか!」

 

 虎白が悔しそうな声を漏らす。未完成ながらも、決して侮れない強さを持っている。

 

「や、やっぱり塔子ねぇの技なら…!」

 

 自分で止められなかったが、結果的に無得点に終わったことで、砦が喜色を滲ませる。この調子でいけば、逆転も不可能じゃない。

 

「あいつ…」

 

 そんな彼女を、虎白が目を凝らして見つめていた。砦のプレースタイルに、どこか昔の自分と似たものを感じていたのだ。

 

 

 

『鹿野里のゴールキックから試合再開です!』

「頼みましたよ!」

 

 キーパーの仏田が、遠くの味方にボールを蹴り上げる。

 

「シュートはあたしたちで防ぐ! まずは1点取って、追いつくわよ!」

「おう!」

 

 自信を取り戻した砦が、味方を鼓舞する。勢いに乗り出した鹿野里中に、白恋陣営が引き気味に対応する。

 

『鹿野里が反撃に出たァ!』

 

 パスをカットされたり、ディフェンスに足止めされたりして、中々シュートチャンスがやってこない。

 しばらく接戦が続いていたが、ようやく雪村にボールが渡る。

 

『白恋、ついにパスが繋がったァ!』

「来るっ…!」

 

 いよいよ訪れたピンチに、鹿野里ディフェンスに緊張が走った。

 

 ドリブルをしている雪村と、隣を走る虎白が、アイコンタクトをとって頷き合う。

 

「パンサァァァ──!」

 

 雪村がボールを弾き上げると、豹の雄叫びが轟き、激しい縦回転のかかったボールが打ち上がった。

 

「──ブリザードォ!!」

 

 虎白が背面に捻りながら飛ぶと、雰囲気が豹変する。その勢いのまま、すべての力を乗せた重たい一撃で、打ち上げられたボールを蹴り放つ。

 シュートに氷が加わり、豹が雪豹へと進化を遂げる。さらに激しさを増した回転が、迸る風と冷気を切り裂くように鳴動する。

 

「次こそは…!」

 

 荒々しく揺れるシュートに、砦たち3人が身構える。

 

パーフェクト──うわあああっ!?」

 

 必殺技を繰り出す暇もなく、3人が吹き飛ばされる。威力の衰えていないシュートが、ゴールを襲った。

 

「──鐘楼門!」

 

 仏田が合掌して、両手を突き出すと、青銅の大鐘が現れる。しかし、ボールを弾き返すことができず、鐘が後ろに大きく揺れ、仏田の頭にぶつかった。ゴーンと鐘の音が響き、ボールがゴールネットに突き刺さる。

 

「ぐあぁッ!?」

『決まったーッ! 白恋、追加点だァ!』

 

 得点を許してしまった砦の顔が曇る。

 

「そ、そんな…」

 

 唯一の希望だった、『パーフェクト・タワー』まで破られてしまっては、もう手が残されていない。

 

「ダメ…。このままじゃ、何もできずに負けちゃう…!!」

 

 そう諦めかけたとき、ある考えが脳裏を過ぎった。

 

 ──アレを使えば…。

 

 そう思い至った瞬間、迷いを捨てるように、ぶんぶんと頭を振り払った。

 

「そんなの、塔子ねぇのサッカーじゃない…!」

 

 苦しんでいる砦の姿を、ベンチから見つめていた塔子が、歯痒そうに拳を握りしめる。

 

 

 

『鹿野里のボールで試合再開です!』

 

 2点差という窮地に陥ったことで、ボールを追いかける選手たちの表情は暗い。

 

『残り時間はあとわずか! 鹿野里、追いつけるかァ!?』

 

 これ以上、失点を重ねてしまったら、いよいよ逆転できなくなってしまう。

 

 そんな重圧から、体を張ったプレーで、強引にでも白恋の攻撃を食い止めることが増えてくる。

 

 たちまち、ボロボロになっていくチームメイト。仲間たちが苦しんでいるのに、自分は二の足を踏んで立ち止まっている。

 

 ──でも、これを使ってしまったら、あたしがサッカーをやってる意味なんて…。

 

 チームを思う気持ちと、自分の使命との間で、板挟みになっていた。

 

『白恋のツートップが、鹿野里ゴールに迫る!』

「砦!」

 

 自分を呼ぶ声にハッとする。すぐ目の前まで、虎白と雪村に攻め込まれていた。

 

「雪村ァ! もう一度だ!」

「ああ!」

 

 ゴール前まで駆け抜けた二人が、再び必殺技を繰り出す。

 

「パンサァァァ──!!」

 

 雪村がボールを弾き上げると、豹の雄叫びが轟き、激しい縦回転のかかったボールが打ち上がった。

 

「──ブリザードォ!!」

 

 打ち上げられたボールを蹴り抜くと、雪豹へと進化を遂げ、さらに激しさを増した回転が、迸る風と冷気を切り裂くように鳴動する。

 

 このシュートを止められる可能性があるとすれば、一つだけ。

 

「だけど…だけど…」

 

 それは砦にとって、許してはならないことだった。

 

 『塔子ねぇのサッカー』。砦が憧れたサッカーは、いつしか彼女自身の負い目になっていた。

 

 性別の区分なく、自分だけ恵まれた環境でサッカーをできていることが、塔子に申し訳ない。だから、塔子の分まで頑張る。決して自我を出してはいけない。

 

 どうせ勝ち目が薄いのなら、最後はせめて、サッカーを教えてくれた塔子のために尽くしたい。

 

 それができないのなら、このまま終わっても──。

 

「あたしのサッカーに重ねなくていい!」

 

 諦めかけた砦に、立ち上がった塔子が大声で叫ぶ。自分の思いが伝わるように、必死に言葉を尽くす。

 

「あんたは、あんたのサッカーをしていいんだよ!」

「…っ!」

 

 その言葉で、砦の目に闘志が蘇る。クッと顔を上げると、一滴の涙がこぼれ落ちた。それは、幼い頃に流した悲しみの涙ではなく、憧れとの決別の涙だった。

 

「これがあたしのサッカーだあああッ!!」

 

 雄叫びを上げて、砦が自分で編み出した必殺技を繰り出す。

 

「──カーテン・ザ・ウォール!!!」

 

 頭上で組んだ腕を振り下ろすと、砦の背後に青いオーラの輪が広がる。それが弾けると、地鳴りを響かせながら、分厚い城壁がそびえ立つ。

 

「「──ッ!?」」

 

 突然、ゴールを妨げる壁が現れたことで、虎白と雪村が目を見開く。

 

 堅牢な城壁にシュートがぶつかる。激しい回転を相殺しようとする衝撃音が響くが、城壁はビクともしない。やがてボールの勢いもなくなり、砦の足元に力なく転がった。

 

 完璧に守りきった姿は、まさに『砦』そのものだった。

 

『館野の新必殺技だーッ! 鹿野里、このピンチを見事に防いだァ!』

 

 土壇場で思いついた必殺技ではない。砦がサッカーをする内に、『ザ・タワー』とも違う、強力な必殺技を、自然と編み出してしまったのだ。

 だが、それは塔子のサッカーとは異なるもの。自分には必要ないと、砦はずっと封印していたのだ。

 

「ハァ…ハァ…。使っちゃった…」

 

 素直に喜べないでいる砦。そんな彼女とは反対に、塔子は晴れやかな顔をしていた。

 

「それでいいんだよ、砦。あんたは、あんたのためにサッカーをするんだ」

 

 その優しい声と眼差しは、まさしく“姉”と呼ぶに相応しいものだった。

 

「まさか、パンサーブリザードが止められるなんてな…」

「面白くなってきたね」

 

 雪村が警戒するような目つきで、砦たちに視線を巡らせる。その隣では、虎白が楽しそうに顔を輝かせていた。

 

 

 

『勢いに乗ってきた鹿野里中、このまま逆転──』

「うわああッ!?」

 

 流れをぶった切るように、虎白がドリブルをする相手からボールを奪う。

 

 一気に現実に引き戻されたようで、砦が冷や汗をかく。

 

「まさかそんな必殺技を隠していたなんて、ビックリしたよ」

「…本当は使いたくなんてなかった。でも、もう吹っ切れたわ」

 

 緊迫した状況の中、似たもの同士な二人が対峙する。

 

「憧れに近づきたいって気持ち、よく分かるよ。そして、それだけじゃダメなんだって悩む気持ちもね…。だから、私も全力で応えるよ!」

 

 虎白が目を閉じてマフラーに触る。

 

「──これが、オレだけの力だッ!!」

 

 次に開いたときには、琥珀の瞳が爛々と輝いていた。虎白が構えると、背後から黒い影が出現し、形作るように立ち昇っていく。

 

「出番だぜッ! ──冥界の女王ヘル!!!」

 

 内側から黒い影を大鎌で引き裂き、化身がその姿を現した。黒い外套を目深く被り、長い白髪を肩に垂らした氷の女王様。

 

「これは…化身ッ!?」

 

 初めて化身を見た鹿野里中の選手たちが、驚きに目を見開く。

 

「気ぃ抜くんじゃねぇぞ、砦ッ…!!」

 

 ヘルが妖しく微笑むと、氷獄の世界に一変する。その吐息を吹きかけると、冥府の冷気が激しく渦巻き、ボールが回転ごと氷で覆われ尽くした。

 

「──ヘルブリザードッ!!!」

 

 虎白が高速回転しながら飛び上がる。限界まで引き絞られた重たい一撃で、氷塊を蹴り放つと同時に、ヘルの大鎌が振り下ろされた。

 二つの衝撃に、氷に封じ込められていた回転が再び蘇り、迸る冥府の冷気を切り裂くように鳴動する。

 

「くっ…!」

 

 シュートから伝わるプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、砦は懸命に立ち向かう。

 

「絶対に止めてみせる! ──カーテン・ザ・ウォール!!!」

 

 砦の背後に、地鳴りを響かせながら、分厚い城壁がそびえ立つ。激しく荒ぶる氷塊が、ゴールを塞ぐ城壁を抉るようにぶつかった。

 

「ぐぐっ…うあ゙あっ!?」

 

 あまりの衝撃に顔が歪む。化身シュートの威力は凄まじく、ほんの一瞬で砦の必殺技を打ち砕いた。

 城壁を貫いたシュートがゴールを襲うが、キーパーも反応できず、ゴールネットの奥深くに突き刺さる。

 

『ゴール!! 白恋、ダメ押しの3点目だァ!』

 

 得点が入るのと同時に、試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 

『ここでホイッスル! 土壇場で立て直した鹿野里中でしたが、惜しくも及ばず!3-0で、白恋中の勝利だァ!!』

「よぉし!」

「初戦突破だぁ!」

 

 観客席から喝采が起こり、白恋中の選手たちが喜ぶ。ベンチにいる塔子も、勝利を収めた白恋中と、善戦した鹿野里中に拍手を送っていた。

 

「砦さん」

「なによ…」

 

 気落ちしている砦に、虎白が声をかけると、若干泣きそうな目で睨まれる。

 

「私たち、やっぱり仲良くなれると思うな。まだ難しいかもしれないけど、世界の舞台に立てるよう、お互い頑張ろう」

 

 笑顔で差し伸べられた手を、そっぽを向きながら握る。

 

「フン。その前に、来年あんたたちを倒してやるわ」

「楽しみにしてるよ」

 

 一度は拒んだ握手を交わす。それは、女子でありながら、世界を目指す同志として、砦が虎白を認めた瞬間だった。

 

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