イナズマイレブンGO ブリザード   作:アロイ

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第17話 大波乱!VS陽花戸中!!

 

 全国大会1回戦を突破した翌日。朝食を終えた白恋中は、合宿所で2回戦のミーティングを行っていた。

 

「明日の対戦相手が決まった。2回戦で戦うのは、陽花戸(よかと)中だ」

「陽花戸中ズラか」

 

 対戦校の名前に、センパイたちが反応する。虎白も聞き馴染みのある学校だった。

 

「知ってるんですかセンパイ?」

「全国常連ってわけじゃないが、数年に一度は出場してる、かなりサッカーが強い学校だ」

 

 虎白の記憶では、陽花戸中にサッカーが強いイメージはなかった。だが、立向居の影響で有名になっていてもおかしくはない。

 

 さすがに、立向居本人が監督をしているということはないだろうが、どんなチームなのか楽しみだ。

 

 

 

 ミーティングも終わり、合宿所のサッカーコートでは、部員たちが、さっそく練習に励んでいた。

 コートを半分に使い分けて、片方はシュート練習、もう片方は2対2のミニゲームをしている。

 

「洞爺、そのままシュートだ!」

「おう!」

 

 ドリブルで攻め込む洞爺に、小樽が指示を飛ばす。目の前には、ディフェンス役の石が迫って来ていた。

 

「行かせるかよッ!」

 

 そう言うと、石が激しいスライディングを仕掛ける。スパイクの足裏を相手に向けた、危険なプレーだった。

 

「うわっ!?」

 

 身の危険を感じた洞爺が、間一髪で避ける。突っ込んできた石にボールを奪われてしまったが、事故は起きなかった。

 

 そのラフプレーによって、練習が一時中断となり、日高が石に詰め寄る。

 

「おい、気をつけろよ。洞爺が怪我でもしたらどうするつもりだ」

 

 冷静に注意するも、無視を決め込む横柄な態度に、日高が腹を立てる。

 

「聞いてるのか、石! 昨日の試合も、一歩間違えれば、相手に怪我を負わせるところだったんだぞ!?」

「うるせぇな。どんな手段を使っても、勝てばいいんだよ」

 

 鬱陶しそうに顔をしかめる。ついに我慢の限界が来た日高が、石に殴り掛かろうとする。

 

「このっ…!」

「お、落ち着いてくださいセンパイ! おれなら大丈夫でしたから!」

「ここで喧嘩したら、それこそ問題ですよ!」

 

 二人の間に入って、仲裁する洞爺と小樽。なんとか怒りを静めてもらったが、その後も、ギスギスとした空気が漂う。

 

 そんな騒動を、吹雪が遠くから眺めていた。

 

 

 ──次の日。

 

 白恋サッカー部は、2回戦が行われるスタジアムに、バスで到着する。

 スタジアムにある控え室まで移動していると、突然、驚いたような大声が廊下中に響いた。

 

「あぁー!?」

 

 白恋中の集団が動きを止めて振り返ると、ユニフォーム姿の少女が、虎白をビシッと指差して固まっていた。

 

「誰だ、あいつ? おまえの知り合いか?」

「さぁ…?」

 

 首を傾げる虎白のもとに、その少女は駆け出してくる。

 

「あ、あなたは、雪守虎白さ…あだぁーっ!!」

 

 そう言いかけながら、何も無いところで躓き、勢いよく転んだ。

 

「だ、大丈夫?」

「あ、ありがとうッス!」

 

 虎白が助け起こす。その子の腕や脚、首にいたるまで、いくつも絆創膏が貼ってあり、よく怪我をしているのだろう。

 バッと顔を上げると、くりくりとした大きい瞳に見つめられる。日焼けした肌と、短い髪が男の子のようだ。

 

「雪守さんの一回戦の試合見たッス! 必殺シュートでバンバン点を取ってく姿…ちょーカッコよかったッス! 化身も痺れました! 自分と同じ女の子とは思えない強さだったッス!」

「そ、そう…。ありがとう…」

 

 早口でまくし立てる少女に、虎白が引き気味にお礼を言う。そこで、ようやく落ち着きを取り戻したのか、笑顔で自己紹介をする。

 

「あっ、申し遅れたッス! 自分は陽花戸中のキーパー、七転(ななころび)くくる! どうぞよろしくッス!」

「よ、陽花戸中だって!?」

 

 目の前のドジな女の子が、まさか対戦相手だったことに、他のメンバーが驚きの声を上げる。

 

「あんなスゴいシュートを撃つ人と戦えるんだと思うと、ワクワクが止まらないッス! 雪守さんのシュート、必ず自分が止めてみせるッス!」

 

 真っ直ぐすぎる目が、虎白を見つめた。そう意気込んだところで、彼女の後ろから怒鳴り声が響く。

 

「見つけたぞ、七転!」

「キャ、キャプテン…!」

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、今は叱られた子供のように、縮こまってしまった。

 

「すまないな、白恋中の皆さん。このバカは、あとでキツく叱っておくよ」

「いや、オラたちは別に…」

 

 同じキャプテンとして、北厳が返事をする。

 

「ほら、行くぞ!」

「ああー!? 待ってくださいよキャプテン! まだ全然、雪守さんとお話できてないのにぃ!」

 

 陽花戸中のキャプテンが、首根っこ捕まえて、彼女を連行していく。その光景を、呆気にとられた白恋中が見送った。

 

「変なやつだな…」

「でも、ああいうサッカーバカな子ほど、要注意だよ」

 

 ただの勘だが、虎白には何か感じ取れるものがあった。この試合、そう簡単にはいかないかもしれない。

 

 

 

 ──同時刻。

 

 全国大会2回戦、“白恋中”対“陽花戸中”のスタジアムの観客席には、鹿野里中の『館野砦』の姿があった。

 

 全国大会1回戦で敗退し、本来であれば奈良に帰っているはずなのだが、彼女の友人に誘われて2回戦の試合を見ることになったのだ。

 

 その友人はもう到着していて、開始時間ギリギリに着いた砦を急かす。

 

「こっちやこっち! 何してんねん、もう試合始まるでー!」

 

 彼女の名前は、『中世木(なかせぎ)ユメ』。大阪出身の女子中学生だ。派手な見た目をしているが、これでもサッカー部に所属している。

 

「全国で会おうとか言っときながら、なんであんたは予選敗退なのよ」

 

 隣の席に腰掛けながら、出会い頭に毒を吐く。ホーリーロード地区予選が始まる前に、二人で約束したのだが、結局叶られなかった。

 

「いやー、ええところまでは行ったんやけどな?」

「リカねぇもガッカリしてるんじゃない?」

 

 調子のいいことばかり言うユメに、砦は呆れてしまって、ため息を吐く。

 リカねぇとは、『浦部(うらべ)リカ』のことで、塔子の親友だ。その付き合いで、彼女とも知り合った。

 

「しゃ、しゃーないやろ? ウチのとこは全員女子部員しかおらんくて、その半分くらいもお遊び感覚やし」

 

 拗ねたように唇を尖らせる。ユメが通っているのは女子校で、元々サッカー部はあったのだが、去年までろくに練習試合もしてこなかった弱小校なのだ。

 

「そういうアンタは、1回戦負けやないの」

「しょうがないでしょ…。あんな化け物がいるなんて思わなかったんだもの」

 

 苦々しげに話す砦に、やれやれと肩をすくめる。

 

「雪守虎白とかいう子は、そんな強かったん?」

「まぁね。少しだけへこんだわ。あれが世界を目指せる力なんだ、ってね…」

 

 昨日、少しだけ愚痴を聞いたが、砦が敵わない相手がいるなど、ユメには信じられなかった。

 

「なら、この試合はどっちが勝つと思うん?」

「十中八九、白恋ね。雪守の強さは普通じゃない。あいつを止められる選手が、陽花戸中にいるとは思えない」

 

 経験談も踏まえて、砦が即答する。

 

「ふ〜ん? じゃあ、一方的な展開になりそうやな」

「…と思うけど、七転くくるには妙な噂があるから、まだ分からないわ」

「妙な噂…?」

 

 首を傾げるユメに、冗談でも言うような口ぶりで教える。

 

「あいつには、強力な守護天使がついてる、ってね」

「守護天使ぃ〜…?」

 

 ユメが疑わしそうな視線をジトーっと向ける。

 

「あたしだって信じてないわよ。でも、七転がたまに、神憑かったスーパーセーブをするのは本当の話よ」

「ふ〜ん? まぁ、天使でも何でも出さんことには、白恋に勝つのは無理そうやからな。そんなもんが拝めることを、期待しとこか」

 

 天使と言えば、塔子ねぇたちは昔、天使や悪魔と戦ったことがあると言っていたのを思い出す。作り話にしても、もう少しマシな嘘を思いつけなかったのだろうか。

 

 砦とユメは、もうすぐ試合が始まろうかというフィールドに視線を移した。

 

 

 

『さぁ、本日の“白恋中”対“陽花戸中”! 間もなく試合開始です!』

 

 白恋中と陽花戸中の選手たちが、それぞれポジションにつく。陽花戸中のゴールには当然、七転がGKとして立っている。

 

「ホントにキーパーだ」

「ちょっとやりにくいな…」

 

 女子相手にボールを蹴るのは、どうしても気が引けてしまう。

 

「油断は禁物だよ」

「分かってる」

 

 FWとして立っている虎白が、隣の雪村含めたメンバーを諌める。

 

『陽花戸中のキックオフで試合開始だァ!』

 

 ピィーッ!とホイッスルが鳴り、相手FWが隣にボールを蹴る。さらにパスを回して、相手MFがドリブルで駆け上がった。

 

 その目の前に、虎白が素早く現れる。

 

「行かせないよ!」

「くっ…!」

 

 立ち塞がった虎白を抜き去ろうとするが、すぐに追いついて、ボールを奪取する。

 

『雪守がボールを奪ったァ! そのまま陽花戸中に切り込む!』

 

 虎白を抑えようとするディフェンスを、ひらりと避けて、陽花戸中をかき乱す。

 軽快なドリブルで相手を引きつけ、ゴール前に走り込んできた雪村にパスを放った。

 

「雪村くん!」

 

 虎白からボールを受け取り、陽花戸中ゴールを見据える。あとは、シュートを叩き込むだけだ。

 

『雪村、シュート体勢だァ!』

 

 しかし、次の瞬間、白恋イレブンの目を疑うようなことが起こった。

 

「ギャハハ! たまには俺にも撃たせろよ!」

「なっ!?」

 

 石が強引に割り込んで、雪村を軽く突き飛ばす。味方から横取りしたボールで、ゴール目掛けてシュートする。

 

「おらァ!」

 

 仮にもシードとして鍛えられた石のキック力は侮りがたく、かなりの威力があるシュートが、相手ゴールを襲う。

 

「たぁっ!」

 

 迫るシュートを、七転は怯むことなく掴みかかり、両手でしっかりとキャッチする。ノーマルシュートではあったが、キーパーとしての実力は十分だった。

 

「チッ! コースが甘かったか!」

「あんまり舐めないでほしいッスよ!」

 

 チームの和を乱す石に、雪村を筆頭としたメンバーが、非難するような目を向ける。

 

「なんのつもりだ! オレの邪魔しやがって!」

「フォワード以外が、シュートを撃ったらダメなんてルールはねぇだろうが」

「今のは、明らかにオレへのパスだっただろ!」

 

 頭に血が上った雪村が、石を詰め寄る。

 

「こっちだ!」

「キャプテン!」

 

 仲間割れしている白恋の隙を突き、七転からのボールを要求する陽花戸中。

 

「雪村くん、今は…!」

「分かってるっ…!」

 

 焦ったような虎白が声をかけ、不満そうに顔を歪める雪村と、ボールを追いかけた。

 

 

 

『さぁ、陽花戸中の反撃だァ! キャプテン宮地(みやじ)が上がっていく!』

 

 ドリブルで駆けていく宮地。その前を、氷里が塞ぎにかかる。

 

「通さない!」

 

 宮地が味方にパスを出して走り込み、再びそのボールを受け取った。流れるようなワンツーに、氷里は反応できない。

 

『氷里が突破されたァ!』

 

 そのまま深く攻め込んだ宮地が、フォワードにパスを繋げようとする。

 

「まずは1点だ!」

「そうはさせないズラ!」

 

 立ちはだかる北厳が、必殺技を繰り出した。

 

「──アイスウォール!!」

 

 両拳を強くかち合わせて、力を振り絞ると、背後に分厚い氷の壁が現れる。その迫力に圧倒されて、尻もちをつく。

 

『ここは北厳が必殺技で止めたァ!』

「くっ…!」

 

 ボールを奪った北厳が、日高にパスを出す。

 

「上がるズラ!」

 

 その指示通り、ドリブルでボールを運ぶ。味方と連携したパスで、相手ディフェンスを躱していく。

 

『白恋、ボールが雪村に繋がったァ!』

 

 雪村がクロスするように、右踵を振り下ろし、左足も振り上げると、その背後に豹の如き気迫が漂う。

 

「──パンサードライブ!!」

 

 ボールを弾くようにして左足で蹴り上げると、それに呼応して豹の雄叫びが轟き、激しい縦回転のかかったシュートがゴールを襲った。

 

 真剣にボールを見据える七転が、必殺技を繰り出す。

 

「──ローリンガード!!」

 

 七転が助走をつけている途中で躓く。その転んだ勢いを利用して、全体重を乗せた頭突きでシュートとぶつかり合う。押し返した反動で、ボールが地面にめり込んだ。

 

『キーパー七転が防いだァ!』

「くっ…!」

 

 雪村が奥歯をギリッと噛み締める。得意げな七転の顔が、妙に腹立たしかった。

 

 

 

『再び陽花戸中の反撃だァ!』

「今度こそ…!」

 

 ボールを受け取った宮地が、白恋に攻め込んでいる。

 

「とっとと来いっ!」

 

 軽くあしらってやろうと、獲物を待ち構えるような石に、宮地が必殺技で対抗した。

 

「──サンセットロード!!」

 

 水平線に沈む夕日を背景に、見事なボール捌きを魅せる。その目が眩むほどの美しさに、一瞬ボールを見失った隙を突き、ドリブルで駆け抜けた。

 

『キャプテン宮地が、石を突破したァ!』

「なっ…!? クソがぁ!」

 

 まんまと出し抜かれたことで、遠ざかる背中を、石が憎々しげに睨む。

 

久留米(くるめ)!」

『フォワードの久留米にボールが渡ったァ!』

 

 ゴール前でシュートをしようと構えるが、寸前のところで、王鹿にボールを弾かれる。

 

『陽花戸中、またも攻めが不発だァ!』

「くっ…!」

 

 キャプテンの宮地が顔をしかめる。白恋中の方が地力が勝るようで、点数差以上に、苦戦を強いられている。

 

 あらぬ方向に転がったボールを、両チームが追いかける。そこから、中盤で広がった争奪戦の末、虎白にボールが繋がった。

 

「雪守!」

 

 パスを受け取った虎白が、キーパーの七転と対峙する。既に、その雰囲気は獰猛なものになっていた。

 

「ついに来たッスね…!」

「止めれるもんなら、止めてみなァ!!」

 

 目の前に立たれているだけで、プレッシャーを感じて、七転がごくりと息を呑む。

 

「──エターナルブリザードッ…!!」

 

 着地と同時に吹雪が舞い、激しく回転するボールに吸い寄せられるように冷気が渦巻き、氷で覆われ尽くす。

 

「うおぉらッ!!」

 

 すべての力を乗せた重たい一撃で、氷塊をぐぐっと蹴り放った。氷に閉じ込められていた回転が再始動し、迸る風と冷気を切り裂くように鳴動する。

 

 必殺シュートの風圧が、ビシビシと七転の頬に伝わる。

 

「これがエターナルブリザード…! 間近で見ると、スゴい迫力ッス!」

 

 鬼気迫る状況の中、好戦的な笑みを浮かべて、必殺技を繰り出した。

 

「──ローリンガード!!」

 

 七転が助走をつけている途中で躓く。その転んだ勢いを利用して、全体重を乗せた頭突きでシュートとぶつかり合う。

 

「ぐぐぐっ…がはっ!!」

 

 何とか押し返そうと全身に力を込めるが、シュートの威力を抑えることができず、吹き飛ばされる。

 

『ゴール! 雪守の必殺シュートで、白恋が先取点!』

 

 七転も意地を見せたが、虎白には力が及ばなかった。だが、深く気落ちすることなく、キラキラとした眩しい目は健在だった。

 

「やっぱり雪守さんはスゴい! 次こそ止めてみせるッスよ!」

 

 両拳を握って、ふんすっ!と自らを奮い立たせる。その無邪気さに、去っていく虎白が軽く微笑んだ。

 

 

 

『陽花戸中のボールで試合再開!』

 

 白恋中との点差を詰めようと、必死に攻め込む選手たち。その焦りが生じて、攻め方が単調になっている。

 

「しまった!」

 

 白恋にボールを奪われて、急いで自陣に引き返す。

 

「石センパイ!」

 

 パスを受け取った石が、追加点をもぎ取ってやろうと、ドリブルで駆け上がる。

 

『前半も残りわずか! 追いつけるか陽花戸中!?』

 

 急いで戻ってきた宮地が、ディフェンスに参加する。こちらに向かってくる、重戦車のような石を迎え撃った。

 

「ここは通さない!」

「どけぇ!」

 

 先ほどの因縁もあり、勢い任せのドリブルで突進する。そんな石から、すれ違いざまにボールを抜き取った。

 

『宮地がボールを奪ったァ!』

「なっ…!」

 

 そのまま、白恋陣内へと攻め上がる。

 

「チィ…! ふざけやがって…!」

 

 凶悪な顔で恨み言を吐きながら、石が宮地を全速力で追いかける。

 

「この俺を二度もコケにしたこと、後悔させてやるよ!!」

 

 ぶつかりそうな距離まで詰めても、石の勢いは留まることがない。

 

「おらァ!!」

 

 そして、宮地の背後から、ボールではなく、相手の足を狙って、スライディングを仕掛けた。

 

「ぐわああッ!?」

「キャプテン!?」

 

 宮地が衝撃に倒れ込み、悲痛な叫びを上げる。足を襲うズキズキとした痛みに、のたうち回る。

 

「なっ!?」

「石!?」

 

 あまりに凄惨な出来事に、選手全員が足を止めて、愕然とする。

 

『これは危険な行為だ! 石にイエローカードが出されたぞ!』

 

 誰が見ても分かる、あからさまなファウルにホイッスルが鳴り、試合が中断される。

 

「なにをやってるんだ!」

 

 いの一番に、日高が石を怒鳴りつける。近頃、石のラフプレーが目に余っていたため、その怒りは最高潮に達していた。

 

「ちょっとビビらせようと思っただけだ。まさか、こんなのも避けられねぇとは思わなかったんだよ」

 

 まったく反省している様子もない石に、チームメイトたちが怒りを募らせる。北厳や日高がしつこく声を荒らげるが、まるで聞く耳を持たない。

 

「キャプテン…」

 

 担架で運ばれていく宮地を、暗い顔をした七転が見つめていた。

 

 負傷した宮地は選手交代し、白恋中のファウルによって、陽花戸中にはフリーキックが与えられた。

 

 

 

 ファウルが起きた地点にボールが置かれる。ゴールにほど近く、味方にパスが通れば、それだけで絶好のシュートチャンスだ。

 

『陽花戸中のフリーキックで試合再開!』

 

 ホイッスルが鳴り、相手が鋭いパスを出すのと同時に、両チームの選手が動き出す。

 

「決めろ!」

「まずい!」

 

 FWの久留米にパスが通ってしまう。白恋に動揺が走る中、ダイレクトでシュートを撃ち込んだ。

 

「ハァーッ!!」

 

 白咲がボールに飛び込むも、間に合わずに失点を許す。うつ伏せに倒れた白咲が、ゴールに入ったボールを見て、悔しそうに顔を歪めた。

 

『同点だァ! 白恋中、追いつかれてしまったァ!』

「そんな…」

 

 石のファウルがきっかけとなり、得点を入れられた白恋中。苦々しい気分が広がっていく。

 

『そして、ここで前半終了のホイッスル! 白恋中、まさかのファウルで失点! 1-1の同点です!』

 

 白恋中の苦難はさらに続いていく。虎白たちの後方では、先ほどとは異様な雰囲気を放つ、七転くくるが立っていた。

 

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