鉄翼少女のヒーローアカデミア   作:蚊帳 夕

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よろしくお願いします(OwO)


少女とUSJ襲撃(後編)

 

 

 

「13号にイレイザー・ヘッドですか、先日いただいた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが」

 

 無数の敵を吐き出した黒い渦が人の形を取り、周りを見渡しながらオールマイトの不在を確認する。

 て言うか、あの黒い渦みたいなやつ敵だったんだ。そう言う個性なんだろうけど、かなりヤバいな。なんの前触れもなく、別段目印になるようなものも無く突如として軍団を送り込める。一番敵に居たらダメなやつじゃん。

 

「やはり先日のはクソどもの仕業だったか」

 

 相澤先生はマフラーのように首元に巻いている布(捕縛布と言うらしい)の位置を調整するかのように弄りながら吐き捨てるように言う。

 

「お、おい先日のってなんだよぉ!?」

「ミノル、あまり騒がないで、あと“先日”のはマスコミの侵入事件だろうね。通りでマスコミ如きがバリアーを突破出来たわけだ、敵の手引きがあったんだからね」

 

 おそらく、先日のマスコミたちは敵の陽動に利用されたんだろう。雄英の授業カリキュラムを盗み、オールマイトやプロヒーローがお荷物(私たち)を抱えて本校舎から離れて孤立する瞬間を見極めるために。

 

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…

 

子どもを殺せば来るのかな?」

 

 手だらけの敵が私たちを睨め付ける、背筋を這うような粘ついた嫌な気配が這いずってくる。

 

「13号避難開始!学校に電話試せ!センサー対策も頭にある敵だ、電波系の個性が妨害してる可能性もある、上鳴おまえも個性で連絡試せ」

「っス!」

 

 敵の視線を遮るように相澤先生が壁になるように前へ出る。

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面戦闘は……」

 

 おいバカイズク、なんでわざわざ敵の目の前で先生の個性やら戦闘スタイルを大声でバラしてるんだよ!?

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号!任せたぞ」

 

 そう言って敵に向かう先生に近づき、腰につけているポーチの中から赤と青の拳大の金属製のボールを二つ手渡す。

 

「機械島、これは?」

 

 相澤先生の耳元に顔を近づけ、なるべく敵に聞こえないようにボールについて伝える。

 

「先生、赤い方のボールがスタン効果があります、ボールを中心におおよそ半径5メートルが効果範囲です。青い方は私のエネルギーを溜め込んだ衝撃弾です、効果範囲は赤いのと同じくらいで500kgの重りを吹き飛ばす程度の威力があります。使い方はどこでもいいので強く2回握りしめてください。その3秒後に発動します」

「…そうか、使わせてもらうぞ」

 

 他にも催涙ガスやフラッシュバンなんかもあるけど、どちらも先生の個性を妨げてしまうものだからそちらは渡さない。相澤先生に渡したアイテムはアメリカ製の対敵用の鎮圧アイテムだから、たとえ異形型とかの高耐性の敵相手でも一撃で意識を飛ばせる代物だ。

 相澤先生は小さく私に頭を下げると、次の瞬間にはもう階段から飛び降り、敵に向かって飛びかかっていた。

 

「機械島さん!今先生に渡したのって!?」

「そんなの後!今はとっとと避難するよ!相澤先生が敵を食い止めてくれている間に!」

「で、でも!先生が…」

「でもも何もない!私たちがする事は逃げる事!ここに居るだけで先生の邪魔になる!」

 

 正義感ゆえか相澤先生を心配し、何か手助けをと訴えるイズクを怒鳴りつける。

 

「13号先生!先導を!」

「っ!ええ!皆さん!こちらに!!」

 

 私の呼びかけで動き出す13号先生、先生の声でようやくクラス全員がUSJの外に移動し出す。

 ただ、13号先生、荒事にあまり慣れていないのか避難までの初動が遅い、今のも出来れば私が怒鳴る前に先生がまとめて欲しかった。

 USJの出口まで後二十メートルほどまで来た時、そいつは現れた。

 

「させませんよ」

 

 黒い渦のような、モヤのような男。大人数を一瞬で転移させる規格外の個性を持った敵。そいつがいつの間にか私たちの行くてを阻んでいた。

 

「初めまして、我々は敵連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは

 

  平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして

 

本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、何か変更があったのでしょうか?まあ…それとは関係なく…私の役目はこれ」

 

 モヤのようや敵がその体積を広げ、私たちを覆おうとする。と同時に13号先生の指のカバーが外れたのが見える。いざ、個性を発動させようと13号先生が手を前に突き出した瞬間、二つのツンツンヘアーが前に飛び出し、モヤに向けて攻撃を仕掛けた。

 

「ッシ!」

「死ねェ!!」

 

 二人が仕掛けた爆破と拳撃は増え始めた黒いモヤを吹き飛ばした。

 

「その前に俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」

 

 っ!?あのバカたち!敵に勝ち誇る前にそこ退けよ!?そこは13号先生の射線と被ってるだろ!?見てれば分かるだろ!…いや、見てないのかもしれない!敵が居たから反射的に飛び出しただけで周りなんて一切気を配ってないのだろう。

 

「ダメだどきなさい二人とも!」

 

 二人を押し除けて先生の射線を確保しようと動こうとしたが、すでに遅かった。

 爆発的に溢れ出した黒いモヤになす術なく飲み込まれる。

 ヘルメットの暗視機能や音響観測でも何も測定する事が出来ない暗闇の中、気がつけば火災エリアの中にいた。

 

「っ!誰か!居るなら返事を!」

 

 ヘルメットの拡声機能を使って周りに呼びかける。もしかしたら敵も呼び寄せてしまうかもしれないけど、それよりもクラスメイトを探す方が優先。

 少しして、()()()足音が聞こえてきた。どうやら外れの方がやってきてしまったらしい。

 

「おい!女だぞ!!」

「しかもデケェ!」

「ああ、胸も尻も最高だぁ」

「全く、最高の仕事だよな!ガキを殺して良いし、女は犯して持ち帰って良い!その上金まで貰える!」

「てか、一人しかいねぇみたいだし全員で取り押さえてここでヤッちまうか?」

「っ!下衆が…!」

 

 どこに居たのか、私をぐるりと囲むように数十人の敵が現れる。

 いや、ほんとどこに居たんだよ。私がここに飛ばされた時には一人も見えなかったよ!?

 全員で、ジリジリと間合いを詰めてくる敵たち。“機械化”(メタリカ)を起動していつ飛びかかられても対応できるように身構える。

 その時、ヘルメットの集音マイクが勢いよく駆けてくる一人の足音を捉えた。

 

 次の瞬間、私を囲む敵のうちの数人が背後から白い影に強襲され、地面に撃ち倒された。

 白い影は囲みを抜けた勢いのまま、私の隣に並ぶ。

 

「大丈夫か!?機械島!!」

「マシラオ!他のクラスメイトはいた!?」

「俺がここに来るまでには誰も見なかった!」

「おっけ!ならここは私達二人で切り抜けよう!」

「クソが、女だけじゃねえのかよ!おいテメェら!ガキの方は殺せ!女は犯してお持ち帰りだぞ!?わかってるよな!!」

「「「「「おおおお!!」」」」」

 

 仲間が倒されたにも関わらず、逆に士気をあげる敵たち。

 マシラオと背中合わせになるようにしてお互いの死角を潰し合うようにする。

 小声でマシラオにとある作戦を伝える。

 

「マシラオ、私が“今”って言ったら地面に伏せて目と耳を塞いで」

「お、おう、わかった。何か作戦があるんだな?」

「うん、一気に片付けるよ」

 

 私の体目当てで士気を上げた敵が堰を切ったように駆け出してくる。

 

「まだ、まだだよ」

「っ!」

 

 後ろ手にポーチのなかから黄色のボールを取り出し、一度握りしめる。

 

「今!」

 

 二度目の握り締めと同時に真上にボールを投げる。きっかり三秒後、私たちの頭上でボールは弾け、凄まじい閃光と爆音が敵達の目を焼き、鼓膜を揺さぶった。

私自身はヘルメットの機能で目や耳を守っていたのでノーダメージ、マシラオも私の言いつけた通り、地面に伏せて目と耳を塞いでいたので最小限のダメージで済んでいる。周りを見れば敵は軒並み目を抑えて悶え苦しんでいる。絶好のチャンスだ、この隙にできる限り多くの敵を行動不能にする。

 

「マシラオやるよ!」

 

 即座に両手足のブースターを吹かして超加速をし、鋼鉄の拳を敵に叩き込む。一瞬の遅れの後、マシラオも暴れ始めたのを背後に感じる。このペースなら敵が回復する前に全員叩きのめせるだろう。

 

「くっそ、テメェ卑怯だぞ!?ヒーローだろうが!」

「知らないし、敵にかける情けなんて無い!君たちが先に仕掛けたんだよね?私一人に数十人がかりでさ、その上殺すだの犯すだの、なら君たちにだって殺されたり犯されたりする覚悟はあるんだよね!まあ、殺しまではしないけど手足の一本や二本、折れたり欠損したりするのは覚悟してよ!」

 

 何か喚き出した敵に拳を叩き込みながら、聞こえてないだろうけど宣言しておく。倒れた敵の膝を踏み潰しながら他の敵の顔に拳を捩じ込む。足の裏や拳から硬質なものが砕ける感触を感じながらさらにそれぞれに力を込める。

 

「「ギャァア!!」」

 

 数人の敵を叩き潰して確信したけど、こいつら雄英に襲撃して来た割にほとんど素人同然のチンピラだ。個性の使い方も甘いし、戦闘技能もなっちゃいない。が、いかんせん無駄に数が多い。

 

「腕部換装“インパクトブロー”!」

 

 なので腕を広範囲を制圧できるものに切り替える。ガチャガチャとけたたましい音を響かせて、スリムで女性的な丸みを帯びた腕が巨大でマルタのような太さの角張った巨腕へと変わる。

 腕部機構“インパクトブロー”()()()()()()()()()を再現するために生み出されながらも、再現する事が出来なかった失敗作。どれだけの機構を組み込んでも彼の一撃に至ることはできなかったが、それでも十分に強力な武装であり、その力は…。

 

「せい!」

 

 掛け声と共になるべく多くの敵を視界に収めるようにして、その方向へと()()()()()()()()()を殴りつける。

 

「へへ!どうした急に何も無い場所を殴りつけて!ヤケでも起こぉ゛!?」

 

 一瞬の静寂の後、私の拳の先にいた敵十数名が見えない拳に殴られたかのようにひしゃげながら吹き飛ぶ。

 そう、“インパクトブロー”は前方へと非常に強力な衝撃波を放つ武装。本来は拳の一点に全ての力を集結させた一撃を放つ武装として開発されたのだが、何故か衝撃波を放つようになってしまったため失敗作とされた武装なのだ。 

 そして、今放ったのは右手、私の腕は二本ある…。つまりは!

 

「もう一発!」

「「「「「ぎぇぇええ!!?」」」」」

 

 こんなふうにド派手に敵を倒す私の背後で、一人一人堅実に、確実に、練り上げられた武術を使って敵を倒し続けたマシラオ。その甲斐もあってほんの数分程度で火災エリアの敵を全滅させる事が出来た。

 

「よし!終わり」

「はぁ、はぁ、なんとかなるもんなんだな、流石機械島」

「マシラオが後ろ守ってくれたからね!背後の心配しなくて良いってのは凄く助かるんだよ!ありがとうねマシラオ」

「あはは、ところでこれからどうする?先生方のところに戻るか、ここでこいつらを見張っておくか」

「…とりあえず、先生達のとこに行こう。て言うか、脱出を最優先にしよう。あの黒い霧で私達はここまで飛ばされたんだ、もしかしたらあの場にいた全員がそれぞれUSJの各地に飛ばされてしまっていて、まだ誰も脱出出来ていない、外に助けを呼びに行けていないかもしれない」

 

 そう、あの黒い霧に飲まれた時、私はイズクを引き摺るように避難しているところで、集団のほぼ最後方だったのだ。ならば私より前にいた人達が飛ばされていても不思議はない。

 

「そう…か、それもそうだな。優先順位は先ず俺たちの脱出、避難、それと助けを呼ぶことだな」

「うん、それでさちょっと聞きたい事があるんだけど」

「うん?なんだ?」

 

 一度、マシラオの姿をじっくりと見る。手足は太く、筋肉質で角張っている。戦闘服の道着の襟から覗く大胸筋は盛り上がり、雄っぱいと呼ぶにふさわしい色気が…。ってそうじゃ無い、今はそこじゃ無い。何より特徴的なのは彼の個性でもある尻尾だろう。太く手足と同じように筋肉質で、しかし柔軟性に富み、彼の戦闘スタイルの根幹を支えている。

 

「…マシラオって着地とか得意?」

「は?」

 

 いや、そんな素で聞き返さないでよ。

 困惑するマシラオに詳細を説明する。

 

「えっと、つまり機械島の個性で大体成人男性二人くらいまでなら連れて飛行が出来ると」

「そう」

「でも、あくまで出来るのは離陸と飛行させる事だけで着地に関してはサポートできない」

「そうそう」

「だから俺に着地が得意かを聞いたわけだ?」

「そう言うことだね」

「なら最初からそう言ってくれよ」

「ごめんごめん」

「そう言うことなら答えはNOかな、異形型の個性のおかげで人よりかは頑丈だと思うけど流石に高いところから勢いよく落ちるのは無理だと思う」

「そっか」

「うん、だから先に機械島が先行してくれよ、俺は全力で走って行くから」

「ん、オッケー!じゃ、また後でね」

「おう!また後で」

 

 マシラオが走り去っていく姿を見送り、“クイーンビー”を起動して地面から一メートルほど浮いたところでホバリングする。

 

「脚部換装“ロケットブースター”腕部換装“制御スラスター”」

 

 両手足が飛行に最適化された武装へと変化する。脚部は膝から下が両足が融合してひとつの大きなブースターに、両腕は手のひらに噴出口が、肘や肩も小さなブースターが出現する。

 

「カウント省略!“SKY DIVE”!!」

 

 全てのブースターを一斉に点火し、一瞬凄まじい重力で内臓を押し潰されるような感覚があり、次の瞬間にはすでにUSJを覆う巨大なドームの天井付近にまで飛び上がっている。そこから一度滑空姿勢に入り、目的地であるUSJの出口を探す。

 

 …見つけた。飛び上がった私のほぼ正面に出口がある。高空に来たことだしついでに他のクラスメイトがそれぞれどこに居るのかを確認する。

 

 隣の山岳エリアにはモモとデンキ、キョーカ。

 土砂エリアは今は人影が見えないけど広範囲が凍結してるからショートがいたらしい。

 水難エリアにはイズク、ミノル、ツユちゃん。

 倒壊エリアには爆発音からしてバクゴーがいる。

 暴風エリアはドームになっていて中がわからない。

 USJの出口には飛ばされなかったのか、13号先生、オチャコ、イーダ、ハンタ、メゾー、リキドー、ミナがいて、黒い霧の敵を押し退けて残存メンバー最速のイーダを救援を呼ぶ為に外に通そうとしている。

 そして、全てのエリアの中央、セントラル広場には相澤先生が敵を食い止めるために戦っている。

 いや、戦っていた。もう、戦っていない。敵を全て倒し切ったのでは無い。

 相澤先生は脳みそが剥き出しの敵に押さえつけられ、地面に倒れ伏していた。

 

「ッ!」

 

 ヘルメットのズーム機能で相澤先生の状態を確認する。顔は押さえつけられていて伺うことは出来ないが、地面に広がる血溜まりが尋常では無い怪我を負っていることを知らせる。そして、敵が掴み上げた腕は、関節では無い場所が複雑に折れ曲がってしまっている。

 視界が真っ赤に染まる、込み上げてくるのは激しい怒りだった。敵に対してはもちろん、自分にも。もし、相澤先生に閃光玉や催涙ガス玉も含めて全部渡していたら、こんな事にはならなかったのでは無いか。そんな思いが込み上げる。

 出口に向かって滑空していた体勢を変更、相澤先生を押さえつける敵へと行き先を変える。

 

「全ブースター最大出力!!」

 

 一瞬だけ全てのブースターを最大出力で起動して爆発的な加速を得る。ブースターの噴射終了と同時に脚部を換装する。このままの勢いで敵に突っ込んでしまっては敵の下にいる相澤先生にまでダメージがいってしまうかもしれない。それを避けるための換装だ。

 

「換装“サーマル・クロー”」

 

 選んだのは猛禽類の爪を模した黒鉄の爪。

 ただ蹴り飛ばすのではなく、爪を突き立て、引っ掛け、振り回して相澤先生から引き剥がすために選んだ武装。

 ブースターによる加速と落下による重力加速による殺人的な速度の中、頭と足の位置を入れ替え体勢を整える。

 

「その手、離せぇぇエ!!!」

 

 脳が剥き出しの敵に激突する。激突の瞬間、妙な感覚があったが無事にクローは敵に突き刺さり、相澤先生を押さえる手が緩んだので“クイーンビー”を全力で噴かし敵を振り回す。投げ飛ばす先は勿論、身体中に手をまとわり付かせた不気味な敵だ。

 

「ちっ、なんでガキがこっち来てんだよ…ああ、イラつくなぁ!」

 

 投げ飛ばされた敵をあっさりと避け、ガリガリと喉を掻きむしりながら手の敵がイラつく。

 

「相澤先生!大丈夫ですか!」

「機械…島、か、すまん…助かった…が、逃げろ、アレは、オールマイトじゃなければ…」

 

 相澤先生と会話しつつ、敵からは目を離さない。投げ飛ばした方の敵はなんかおかしかったし、手だらけの敵は未だ無傷だ。

 

「はぁぁ、“脳無”そのガキ殺せ」

 

 手だらけの敵が指示を出すと同時に、土煙の向こうから私が放り投げた敵が飛び出してくる。

 

「っ!?速い!」

 

 脳無と呼ばれた敵の攻撃、抉り込むような角度のボディブロー。咄嗟に受け止め、防御することを選ぶ。

 

「避けろ…!機械島!そいつのパワーは、オールマイトに匹敵する…!」

「!?」

 

 しかし、もう遅い。脳無の拳はじきに私の腕に接触する。なら…!

 

「腕部!“アブソーブ”」

 

 激突する刹那、間一髪で腕の換装が間に合う。空気抵抗を少なくするためのスリムな腕に幾つもの噴出口が空いた物から、無数の細かな六角形で構築されたハニカム構造の重厚な腕へと。

 脳無の拳が腕に触れる。拳がハニカム状の装甲に触れ、波打つように装甲全体が蠢き、金属が捩じ切れるような音と共に拳を受け止め切った。

 腕部機構“アブソーブ”絶対防御として『全てを弾き返す最硬の守り』を目指した装備の作成の中で生まれた正反対の概念『あらゆる物を受け止める不破の盾』を実現しようとした失敗作。腕のハニカム装甲全てが内部機構で複雑に連携し合い、一点に受けた攻撃を装甲全てで肩代わりし合い、内部機構自体でも軽減させることで実質的な攻撃の無力化をする武装。だったのだが、衝撃を軽減させる内部機構、全ての装甲を繋げる構造の複雑さが祟り、装備そのものの耐久性が不安視され失敗とされた装備。だけど、そんな装備でも意外と使い道はある。そう、一度きりの使い切りの防御として全ての機構を使い潰すのであれば、性能試験では時速100kmで突進する2トントラックを正面から受け止められるような防御性能を発揮する。それが一撃で壊れた。オールマイトを甘く見ていたわけじゃ無いけどせめて二発、出来れば四、五発くらいは持つと思ってた!

 

 

「っぅ!“パージ”!」

 

 脳無の攻撃を受け止め、壊れてしまった左腕を肩から切り捨てて個性によって補填する。これは『機械化』の力の一つ。両手足に限り、“貯臓”に蓄えられたエネルギーを大量に消費して新しく手足を製造する事ができる。ただ、新たに製造する物が大きくなればなるほど、複雑になればなるほど消費されるエネルギーは莫大になっていく。腕一本丸ごととなると現在の貯蓄量だと精々あと2回の製造が限界、つまり私は後3回攻撃されたら防御手段もなく攻撃を喰らってしまう。なので出来るだけ早く救援が来てほしいなぁって!

 脳無が拳を振るい、右腕が壊れる。即座に切り捨てて製造を開始する。残り一回…!しかも、腕丸ごと造っているからか、製造の進みが遅く、未だに左腕が戻ってきていない。

 脳無が拳を振り上げ、せめてもの抵抗で拳にヘッドバットでもしてダメージを…!そんなことを考え、ふとおかしいと気づく、脳無が拳を振り下ろさない。拳を振り上げた状態で停止している。訝しんでいると、手だらけの敵のすぐそばに黒い渦が現れ、そこから黒い霧の敵が現れる。

 

「死柄木弔」

 

 死柄木弔、それがあの手だらけの敵の名前らしい。

 

「黒霧、13号はやったのか」

「行動不能にはできたものの散らし損ねた生徒がおりまして…一名逃げられました」

 

 黒霧というのがワープの敵の名前、それと逃げた生徒、多分イーダだ。あいつの足なら本校舎までそう時間は掛からないはず。

 

「………は?」

「はーー…はあーーー黒霧お前…おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ…今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 脳無を挟んだ向こう側で死柄木と黒霧と呼ばれた敵が撤退について話している。ただ、どうしてだろう。撤退するって言っているのに何故か嫌な予感が絶えない。

 

「けども、その前に平和の象徴としての矜持を少しでも……

 へし折って帰ろう!」

 

 ほんの一瞬、瞬きの間に死柄木は、いつの間にか水難エリアからセントラル広場まで来ていたツユちゃん、イズク、ミノルの前に移動し、ツユちゃんの頭に触れていた。

 殴っていない?というか、手のひらで頭を包み込むように触れている?

 

「……本当にカッコいいよ。イレイザーヘッド」

 

 そうか!相澤先生が死柄木を見て個性を消したんだ、となると死柄木の個性は手のひらか指、若しくはその両方で触ることで発動する一撃必殺の個性!

 

「手っ…放せぇ!!」

「脳無」

 

 ツユちゃんから死柄木を引き剥がすためにイズクが殴りかかる。

 ほんの一瞬、今までの個性発動とは違ったイズクに気を取られた瞬間、脳無が振り上げていた拳を振り下ろしてきた。ギリギリで両腕を差し込む事は出来だけど、その威力は先の二撃よりも強く、あっけなく両腕は粉々に砕かれ、そのままヘルメットまで砕かれ、前頭部に強い衝撃。

 眩み回る世界で見えたのは、イズクの一撃を無傷で受け切った脳無、今度こそツユちゃんに個性を使おうとする死柄木。そして、外側から弾け飛ぶUSJの出入り口。そこから現れる筋骨隆々の大男。

 

「もう大丈夫

 

私が来た!

 

オールマイトの姿を見て、私の視界は真っ暗に暗転した。

 

 

 

 




ごめんなぁ、本当にごめんなぁ後編言うから今回で終わりや思ったろ?

  もう一話あるんや
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