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リビングに戻ると既にみんな服を選び、着替え終えていた。
「あ、ミシェルちゃん戻ってきた!」
「はいはーい、戻ってきたよ。うん、みんな可愛いじゃん!!」
オチャコが選んだのはオーバーサイズの白のフード付きトレーナーにブラウンのミニスカ、黒のタイツも履いてるけど…これは元々履いてたやつかな?制服の時も見たし。オチャコって感じがして可愛い。
ミナの服は黒のノースリーブシャツにデニムのショートパンツ。肌の露出が多いけどそれが逆にピンク色のミナの肌を魅せている。可愛い。
ツユちゃんは水玉模様のワンピースと白のニーソを選んだ。個性故かかなりの猫背?前傾姿勢だけどちゃんと似合っていて可愛い。
トールは……なんだ、これ?パリコレとかで出てきそうな前衛芸術の塊みたいな服を…服なのかこれ?いや、ここにあるって事は服なんだろうけど…よくこんなの着たな……。
キョーカの服装は私に近い、黒のオーバーキャミに同じく黒のドロップショルダー、レザーのショートパンツでだいぶパンクな格好をしている。ニューヨークでも街を歩いていれば数人は見かけるような格好。可愛い、けどどちらかというとカッコいい!
モモの服はthe・お嬢様って感じの服。襟折りのシャツにネクタイ、キャミソールワンピースのセット。クラスの中でも私に次ぐ長身かつ抜群スタイルのモモによく似合うスッキリとした服装センス。オセイソダー!
一通りみんなを見渡し…。
「トール、本当にその格好でいいの?動きづらく無い?」
一応、念のためにトールに服装の最終確認をしてみる。
「うん!大丈夫だよ!これとは別にちゃんと服選んであるから。これはただ着てみたかっただけ」
あ、よかった。ちゃんとしたのも選んでたんだ。それにしてもなんでこんなのがあったんだろ?
っと、いけない。まだやる事あるんだった。
「それじゃ、みんな着替え終わったみたいだし、着てた制服ちょうだい。クリーニングに出すから」
みんなから制服を受け取り、適当なカゴの中に入れて玄関脇に置いておく。こうしておく事で後で誰かが良いようにしてくれるはずだ。
「それじゃ、ご飯頼もっか!食べたいものなんでも言っていいよ、基本なんでも出てくると思うから」
それから何やかんやあり、好きなものを好きなだけ食べ、少し気になる腹回りの解消に鬼気迫る形相で勤しんだり、お風呂で泳ぎ回ったりした。
その中で、オチャコが大層なお餅をお持ちであることが発覚したり、ツユちゃんが両生類にあるまじき起伏の持ち主だったり、お湯に何がとは言わないけど浮くから楽になるよね勢とそもそもそんなのねぇよ!勢のシビルウォーが発生しかけたりと楽しく過ごした。
そして現在、私たちがお風呂ではしゃいでいる間にみんなに選ばれなかった服や食べ終わった食器類が片付けられ、毛布やクッションで埋め尽くされたリビングで真ん中を囲むように円形に寝そべり、就寝前の穏やかなひと時を過ごしていた。
そんな時、ミナが放った一言が場を戦場へと変えた。
「ねーねー!せっかくのこんな機会だからさ!やろ!恋バナ!!」
いくら私たちがヒーロー科の生徒で、戦闘訓練やら個性の制御訓練、ヒーロー資格習得のための勉強に励んでいるとは言え所詮は女子高生。他人の愛だの恋だのを囃し立てたいお年頃なわけで…!
『『『いーね!やろ!!』』』
と、すぐさまみんなワクワクした顔で距離を詰め合うのでした。
ミナが口を開く。
「いい?この話はここだけの話だよ。学校で、男子たちが居る前でバラすのは禁止、ネタにして揶揄うのは極力禁止ね?私たち、乙女の秘密だからね」
ミナの約束事にみんなで頷く。
「じゃあ始めるよ。正直、今現在誰かと付き合ってる人居る?」
『『『……』』』
みんな揃って首を横に振る。
「ま、だよねー。入学してから二ヶ月ちょっとしか経ってないし、イベントらしいイベントとか戦闘訓練かUSJ襲撃くらいだもんね」
「それじゃあさ、なんとなく気になるかも?みたいな相手とか居る?」
ミナに続いて質問を投げかけてみる。
「うーん、どうだろ?」
「モモとか居る?」
「その、ミシェルさん。恥ずかしながら私、今まで一度も恋愛経験がなく…、雄英入学以降も勉学に励んでおり、その、誰かを異性として認識するよりも競い合う学友という認識の方が強く…」
『『『あー、そうだよねー』』』
これはモモに聞いた私が悪かったかな。モモ真面目だし、個性の関係上常に何かの勉強をしてるイメージがある。
それにしても初恋もまだなのか、初心いねぇ。
「あー、とはなんですかあー、とは!それでしたら皆さんはどうなんですか!?」
「んー、悪いってわけじゃ無いんだけどさ、何というかこう、子供っぽいよねうちの男子たちって」
「バクゴーとかイズクとかね。あとハンタとデンキとミノル」
「そうそう!ちょっと無いかなぁって感じのメンバー!」
元気よくクラスメイトを切り捨てるミナ。なら少し爆弾を投げてみよう。
「じゃあ、エージは?なんか同じ中学から一緒に来たらしいじゃん?」
『『『!?』』』
「え!?ちょ、何処から聞いたの!?」
「エージ本人から」
「芦戸そうだったの!?」
「初耳ね」
「うわぁーうわぁーー!」
「そうなんですか、そう言えば言われてみれば芦戸さんと切島さんの距離感は他の男子と比べて近かったような…」
「ない!ないから!!」
顔を真っ赤にして否定するミナ。
「まあ、同中だし。そこそこ話す機会もあるけど切島とはそんなんじゃ無いから!」
「えー?でもエージと中学時代のエピ聞かせてほしいなぁー?」
「あー!もう!ここだけの秘密だからね!中3の終わり際にさ、ちょっと敵騒動に巻き込まれたんだよね」
「そこを切島が男らしくガツンと!?」
「いや、全然、ウチも後から切島から聞いたんだけどさ、そこに切島も居合わせてたみたいで、でも切島そん時に動けなかったみたいでさ、中坊なんだし当たり前なんだけど切島的には自分が許せないみたいで後で謝りに来たんだ。で、そっからまた時間があって雄英入学で再開して、その時にちゃんとあの時のこと乗り換えたら、みたいな話があって……」
思いの外甘酸っぱいエピが飛び出してきてみんなで固唾を飲んで傾聴する。
「だから、今はまだかな。切島がちゃんと乗り越えられて、俺はヒーローだって胸張って言えるようになったら……」
「…なるほど、つまり芦戸的には脈ありだけど熟成中って感じか」
「なんでそうなる!?」
キョーカのあんまりなまとめ方にミナが叫ぶ。でもミナ、私もおんなじような結論になったよ。
「そ、そういう耳郎は上鳴とどうなの!?上鳴と話してる時楽しそうだし、男子の中だと一番よく話してるじゃん!!」
ミナの逆襲がキョーカを襲う。
「いや、無いわ。上鳴と話してるのは楽しいよ?結構話が合うし、ノリが軽いから気軽に話せるから。でも恋愛対象かって言われると無いわ」
あれ?意外。ミナとデンキって休み時間とか教室で二人でいる所をよく見るからてっきり…。
「なんというかなぁ、あ!ミシェル!アメリカでも居なかった?やたら話しかけやすいくせにそういう対象じゃ無いやつ!」
そう問われて記憶を掘り返してみる。
「あー、居るねー。なんかこう、親がヒーローだったからそうコアな話が合う男子は居たなぁ。確かに恋愛対象としては無いわ」
「でしょ!!上鳴はそんな感じだから!ウチも両親が音楽関係で上鳴とも音楽で話が合うだけだから」
「なるほどなぁ、それなら納得かな」
一人で納得していると、今度はトールが標的となっていた。
「葉隠はどうなの?誰かいる?」
「そう言えば尾白は?戦闘訓練の時一緒だったよね」
「良い人だと思うよ!優しいし!」
「ほうほう!恋愛対象としては!?」
「うーん、どうだなんだろうね?よくわかんないや!」
声音はあんまり変わらないけど…こういう時、表情を隠せるトールの個性はずるいと思うなぁ!
その後もトールはミナやキョーカに突かれてものらりくらりと追求を交わし続けて、ついにそのまま乗り切ってしまった。
「ちぇー!……それじゃ、そろそろ本命行こっか?」
「本命?」
オチャコとイズクの事だろうか?意外とみんな知ってたのかな?
「ズバリ、ミシェル!轟とどうなの!?」
「……え?私?」
てっきりオチャコの話になると思っていたから、予想外の攻撃に反応が遅れた。
「ふっふっふっ、ネタは上がってるんだよ?先ずは!」
「初回の戦闘訓練のときのボーイミーツガール!」
「次に!」
「お昼ご飯の時の二人っきり発言!」
「「「さあ!説明してもらうよ!」」」
突如として繰り出されたキョーカ、トール、ミナの波状攻撃。
「えっと、とりあえず何にも無いけど?」
「何も無いはずが無い!あの全方位迎撃体制の轟が自分から絡みに行ってるのは男女合わせてミシェルしかいないんだからね!?」
……そう言えばショートが自分から誰かを誘いに行ったのは私をお昼に誘った一件以外無いかもしれない。
「そう言われても何も無いものは何も無いよ?戦闘訓練の時は思いっきり頭を床に叩きつけたからそれを心配しただけだし、昼食の時も…あ、そう言えば結局まだ話してないや」
ショートについて思い返していると、ショートが望んでいた二人きりでの会話ができていないことに気づく。なんだかんだ忙しかったからなぁ。
「体育祭終わったらちゃんと話しよ」
「それ!あのトゲトゲ状態の轟がわざわざ二人きりを指定するなんて…絶対告白だって!」
「明らかにそういうラブリーな感じじゃなくてもっとシリアスな話な気がするけど」
「シリアスな関係から発展する恋もいいよね!」
ダメだこの恋愛脳ども。
ちょっと面倒くさくなったので新たな標的を用意する。
「あー、オチャコ。そう、オチャコはどうなの?最近っていうか、個性把握テストの時からずっと目で追ってるよね、イズクのこと」
『『『!?』』』
「……」
今までずっと顔を真っ赤にしてうわぁーと呻いていたオチャコが石像のように固まる。
顔がだんだんと真っ赤に染まっていく。
「ちゃ、ちゃう、ち、ちゃうよ!?ちゃうて!!?」
凄い勢いで否定し始めるオチャコ。
「そう言えば麗日さん、入学当日もイズクさんと一緒に教室へ入ってきましたね」
「なんか、入試の実技試験の会場も一緒だったんだっけ?」
「あ、なんか聞いたことあるかも!0ポイントのおじゃまロボをわざわざ倒しに行って大怪我した超パワーの子がいたって!あれ緑谷か!」
「決まりね、きっとそこであったのよボーイミーツガールが」
『『『そこんとこどうなの!?』』』
「ちゃうて、ちゃうて、ちゃうやん?ほら、な?ちゃうんや」
問いかけられ、追い詰められてついに真っ赤にした顔を両手で覆ってしまうオチャコ。個性も暴走しているのかふわふわと浮かび上がり「ちゃうちゃう」と連呼しながらグルグルと回り始めてしまった。
オチャコを置いたメンバーで少し離れたところで集まる。
「これは決まり?」
「決まりだね」
「よくわかりませんが多分そうなのでは?」
「確定でいいと思うよ」
「決まりね」
「てか、よく気付いたねミシェル」
「まあ、私もイズクに関しては個性の方で気にかけてたから、その関係でね?オチャコもよくイズクの事見てるなあって、今回カマかけてみたら案の定」
『『『あぁー』』』
「ちゃうんや、うちがす、好きとか…ちゃうんやて…」
オチャコはイズクの事が好きである。
この結論を持って今回の恋バナは終了した。
あ、そう言えば…!
「ツユちゃんツユちゃん」
「どうかしたのかしら?」
「いや、オチャコの件で飛んじゃってたけどツユちゃんはどうなのかなって、ツユちゃんだけ無傷で返さない、もとい全員聞いておかないとって」
「本音が漏れてるわミシェルちゃん。でもそうね、実はわたし、緑谷ちゃんが少し気になっていたわ」
「え?」
「え?」
『『『えぇー!!?』』』
最後の最後に特大の爆弾が放たれて恋バナは再開されたが、ついぞツユちゃんはその口を割らなかった。
ちなみにオリ主の相手は現在誰かは決めていません。
それはそれとして、恋バナを始める前の誓約、アレ、ウチのシマ独自のモノらしいって書いてる時に知ってビックリしました。なんかウチらのとこでは恋バナから弄りに入ってそのまま自殺させちゃったみたいな事からこう言う誓約を結んで始めるらしいっすね。