爆豪勝己、雄英高校一年A組、出席番号18番、個性“爆破”手のひらから何らかの爆発物質を生成して爆発させる事が出来る。並外れた戦闘センスを持ち、戦闘中であっても相手への観察を止めることはなく僅かな違和感や変化から的確に弱点を炙り出す事ができる。常日頃から全方位に向けてキレ散らかしているように見えて、実は意外と冷静。自信過剰でトップ意識が強すぎるきらいこそあるものの、それは自身の積み上げてきた実力の裏返しでもある。あと、傍若無人に見えても自分の認めた相手には意外と甘くなる?現状、対象が私とオチャコとエージのみの為更なる検証が必要。
これが私が知るバクゴーという少年の全て。正直に言って強敵も強敵、個性の相性で言えばイズクの自壊砲撃やショートの冷却と加熱による気体の膨張攻撃(膨冷熱波と名付けたらしい)の方が脅威度は高いけど、それ以外、純粋な戦闘センスではヒーロー科一年生の中でぶっちぎりで最強格だと思う。それこそ下手を打てば私でも負けてしまうほどに彼は強い。
だからこそ、私は本気でバクゴーに勝つために、今まで使わなかった手札を切ることにした。今の体の状態ではとてもじゃないけど全力の個性は使えないけど、本気でバクゴーを叩き潰すために。
《レディィイ!!START!!!》
「死ねやぁアア!!!」
プレゼントマイクの開始の声と共にバクゴーが両掌を爆破し一直線に吹き飛んでくる。人一人を吹き飛ばして余りある爆発に裏付けられた圧倒的な加速力。
けれど、今の私からしたら
私以外が
「シッ」
振り下ろされる大振りの右腕、右掌は触れた瞬間に即座に爆破するつもりなのかバチバチと危険な音を立てている。が、そもそも触れなければ問題はない。抑えるべきは前腕部の中程、手首の可動域では絶対に触れる事が出来ず、腕の末端に一番近く軽く撚ればテコの原理で楽に抑え込むことのできる場所だ。
無個性や増強系以外の個性持ちの筋力でもそれだけのことができる。では、それ以外、理外の力を持つものが同じことをやればどうなるのか、こうなる。
「捕まえた」
「っ!離せやクそ…ぉおおお!!!?」
前腕部を掴んだ瞬間思いっきり捻り上げる。仮にも機械化した私の腕力は数トンの重力を軽々と持ち上げる程のパワーがある。それを数十キロ程度しかない、それも空中で踏ん張りの効かないバクゴーに喰らわせた。自身の飛び上がった勢いも合わさり空中で錐揉み回転を始めるバクゴー。
《開幕速攻!!爆豪が機械島に飛び掛かるぅ!!?って!?なんだありゃ!?飛び掛かったはずの爆豪が機械島を錐揉み回転しながら通り過ぎて行ったぁ!!!機械島、空中錐揉み大回転の爆豪に対して冷静に追撃ィイ!!膝がモロに入ってんぞ!!!?何が起こってんだ!?》
もちろん空中で制御を失い無様を晒す相手に追撃を仕掛けないわけはなく、無防備なバクゴーへ向けて飛び膝蹴りを叩き込み、蹴られた衝撃でさらに浮き上がったバクゴーの襟首を鷲掴みにしてそのまま舞台へと叩きつける。
「っ───!!がぁあ!!」
痛みに呻くバクゴーに近付きながら話しかける。
「バクゴー、一応聞くけど降参する気は?」
「誰、が!するか!!俺は!勝つ!」
「そっか、じゃあ思いっきりボコボコにして気絶させるね」
「上等だ!!ブっ殺してやる」
言葉と共にバクゴーは跳ね起き、私に向かって両腕を突き出す。近接がダメなのはさっきの一撃でわかったから今度は中遠距離で戦い、私を吹き飛ばして場外勝ちするつもりかな。甘いし、遅いって。
「“閃光…”」
「おっそ」
技が出る前に一瞬で距離を潰し、バクゴーの掌よりも内側、間合いのさらに内側の安全圏に入り込んで頭にアイアンクローを掛けて地面に叩きつける。
背後で技が暴発したのか、一瞬影が前方に長く伸びる。爆破による吹き飛ばしかと思っていたけど、どうやらさっきの技は閃光による目潰しだったらしい。まあ、バクゴーが何をやるにしても出だしを潰して叩き伏せる予定だったけど、もしまともに喰らっていたら危なかったかもしれないかな。
バクゴーの頭を舞台に押し付けたまま横に動かし始める。嫌な予感がしたのか必死に私の腕を退かそうと、私の腕を掻きむしり爆破するバクゴー、残念、それでも私のうではビクともしません。
「クソが!離せやァア!!」
「摩り下ろしてあげる」
「がぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!?」
「禿げ上がれ爆発毛根!!!」
《機械島、爆豪の後頭部を床で摩り下ろしていく!!爆発暴君も必死の抵抗をするがまるで手が離れないゾ!!》
《アレは…ダメージが残るかもしれんな。毛根に》
このまま場外まで引き摺り回そうかと思ったが、プレゼントマイク先生と相澤先生の実況。特に相澤先生の実況を聞いて強い危機感を感じたのか一層抵抗が強くなる。その中で偶然、がむしゃらに振り回された腕がお腹に、もっと詳しく言えば下腹部の少し上あたりに直撃した。
「っ!」
全くの偶然、バクゴーも知らなかっただろうし、私も仲のいい女子メンにも言った事は無い私の最大の弱点の在処、たった一刺しで私を殺せる致命的な弱点に痛烈な一撃が入った。その衝撃で一瞬バクゴーを押さえつける力が弱まり、その隙を逃さなかったバクゴーは脱出してしまった。
飛び跳ねるように距離を取るバクゴーから目を離さないようにしながら腹部の、“貯臓”の様子を確認する。うん、なんとか大丈夫そう。想定外の攻撃でびっくりしたけどダメージは少ない、暴れた腕のまぐれあたりだったのが幸いした。これなら貯臓は暴走しないだろうし戦い続けても問題ない。
「よそ見してんじゃ無え!!!」
体の確認でほんの少し気が逸れたのをよそ見と判断したのか、再びバクゴーが突撃してくる。今度はさっきのような無防備な空中突撃ではなく、獣のように身を低くし低空タックルを仕掛けるような体勢だ。爆速ターボ、彼が自身で名付けた移動技で加速しつつも両腕は次の攻撃に備えて爆破をチャージして居るようにチリチリと火花が散っている。
ギリギリまでバクゴーを引き付け、攻撃の狙いを絞る。多分、上半身かな?おそらく顔面狙いの右とお腹狙いの左。さっきのマグレあたりで私がお腹が弱いって見抜いた?やっぱり戦闘センスは本物か。けど、やっぱり遅い。今の私に対しては致命的と言えるほどに遅すぎる。それこそ見てから対処を始めて間に合ってしまう程度に遅い。
バクゴーの意識が完全に攻撃に移り、私の反撃を意識から外した瞬間に低姿勢のバクゴーのさらに下、長くしなやかな美脚をしならせて爪先でバクゴーの顎を上にカチあげる。
「クッソがぁあ!!!」
《爆豪渾身の突撃ィ!!が、ダメ!!アッサリと返り討ちダァ!!》
「クソ!どう言う事だテメェ!?確かに今、テメェはオレの攻撃が決まる直前まで何かに気を取られていた!オレを見ていなかった筈だ!!なのに何で!オレより先にテメェの攻撃が当たる!?テメェに出来てオレに出来ない理由は何だ、オレに何が足りない!!」
「…まあ、正直色々足りないと思うよ。情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ、上げ出せばキリがないくらいだけど、この場合バクゴーに一番足りていないものそれは何よりも
「俺が…遅い?」
「うん、あ、でもバクゴーだけが遅いってわけじゃなくてクラス全員、みんな遅いんだけどね?ちょうどいい機会だし少し教えておくけど、私がいつも着てるコスチューム、特に背負ってるサポートアイテム。アレを着た時の最高速度どれくらい出るか知ってる?」
「ああ?……500か600くらいだろ、どれだけ早くても戦闘機よりも速いってことは無え筈だ」
……なるほど、認識のズレって怖いなあ。
「残念、大外れ。正解は極超音速、大体音速の五倍以上の速度が出ます。時速で言うと6000km/hバクゴーの想定の十倍くらいだね」
「は?」
自身の予想を大きく超える答えに唖然とした表情を晒すバクゴー。
「まあ、“最高速度は”だから初速から極超音速が出せるわけじゃないし、動き始めてから常に極超音速状態を維持できる訳じゃないけど、それでも平均的な速度は音速を超えるかそれくらいの速度になる予定。勿論その音速の世界に対応するためには私の認識速度は音速の世界で色んなものを正確に判断出来る必要があるわけで。まあ、つまり何が言いたいかっていうと…
スイッチを入れた私に対して、音速以下の攻撃はほとんど止まって居るようなモノって事」
実はだいぶハッタリや誇張が入ってるけど明かした情報は本当のこと。言った通りのパフォーマンスを発揮するならコスチュームのヘルメットが必要だけどね。流石に生身の体でそこまでの性能は無いし、音速への入門だって言うほど簡単に入れない。
「なん…だよ、それ。じゃあ何だ、テメェは今までずっと手ェ抜いてたって事か、使える力使わないで、舐めプかましてたって事か!!?」
「別に手を抜いていたってわけじゃ無いよ、ずっと真剣に本気でやってた。ただ、全力を尽くしていたって訳じゃないってだけ。それにいつも使い続けてると段々と認識の感覚がズレちゃうし」
「っ!!それを!舐めプっつうんだよ!!!クソ機械が!!!」
激昂しながら台パンをするかのように両腕を舞台に叩きつけて即座に爆破し、上空へと高く吹き飛ぶバクゴー。
「テメェの認識速度が常人離れしてんのは分かった!テメェよりもオレがイラつくほど遅えのも!だが!!いくら音速以下が止まって見えようが!テメェの速さがオレより速かろうが!そもそも避ける隙の無え、見えていようがどうしようもねえ攻撃で潰しちまえばいいだけだろうが!!!」
飛び上がった状態のまま、両腕を胴体の前でクロスさせて左右にタイミングよく爆破する。両腕の位置や爆破のタイミングを緻密に調整しているようで大きく左右にブレる事なく爆破の勢いで横回転を始めるバクゴーの体。落下による重力加速もあり、徐々に速度を増しつつ私に迫ってくる様はまるで黒煙で造られた槍の穂先のようだった。
おそらく今から繰り出そうとして居るのがバクゴーの最大最強の大技なんだろうね。重力による加速を味方につけつつ自ら回転する事で技の貫通力を向上、スタジアムを覆い尽くしたオチャコの流星群を一撃で吹き飛ばすほどの広範囲爆撃を地面に向けて撃つことで着弾地点よりも前の舞台そのものを消し飛ばして強制的な場外勝ちを狙って居るのかな?まあ、今からジャンパージャッキに換装して大ジャンプで回避余裕なんだけどさ。
ねえ、バクゴー?私はバクゴーに対して速度が足りないって言ったけど、それは何も移動速度や認識速度だけじゃ無いよ。攻撃速度のことも言ってるんだ。気づいてる?今の試合の中で私が動き出したのはバクゴーが動いてから攻撃開始から爆破までのタイムラグの間だけなんだよ。バクゴーからしたら動き出してから爆破に移るまで1秒未満の時間
どうせなら飛び上がったまま上空から文字通りの絨毯爆撃を仕掛けた方が勝ちの目はあっただろうに……ああ、私の飛行を警戒したのかな?バカだなあ、今の私が飛べる訳ないのにね。もし飛べるなら第一種目からずっと飛んでるよ。今の私のエネルギーはほとんど空っぽだ、辛うじて後数十分は機械化を維持して戦闘は出来るだろうけど飛行なんて以ての外、数秒のジェット噴射で力尽きる程度にしかエネルギーは残っていない。やはりたった2週間じゃ腕を再生産しつつ十分なエネルギーの確保は無理があったのだ。
「またよそ見で余裕ブチかましてんのか!?舐めプクソ機械!!!」
バクゴーの声に顔を上げると、予想よりも近い位置にバクゴーがいた。この速さ、重力加速に加えて爆破での加速も入れたな。
「最後まで舐めプ気取りかクソ機械!!だったらそのまま死ねェエエ!!!!
「全換装──」
予想よりも近い位置、これは回避は無理かな。
まあ、もとより避けるつもりなんて無いんだけどさ。「思いっきりボコボコにして気絶させる」その宣言通りに正面からバクゴーの攻撃を全部叩き潰して、その上で私が勝つ。
スローモーションの世界の中で、一向に逃げない私に対して驚いたように顔を歪めるバクゴーが見える。
両腕と肩を使って上半身をスッポリと覆うような防御姿勢、ピーカブスタイルよりも脇と肘を絞めたような姿勢を取り、中腰になり衝撃に対抗する用意をする。
「───“バンカーシェルター”」
巨大な金属の防壁に変わる腕の隙間、完全に閉じ切られる刹那に見えた景色はドス黒い爆炎が迫り来る様子だった。瞬きの間に隙間は閉じ切られ、直後に全身を爆炎が襲った。
《麗日戦でも見せた特大火力に勢いと回転を加え、まさに人間榴弾!!!対する機械島はなす術もなく飲み込まれたように見えたが!!?爆豪は大技の反動か腕を押さえて呻いている!!なんか虫みてえだな!っと!爆煙がゆっくりと晴れて……ア、アレは!?》
爆風が過ぎ去ったことを確認して防御姿勢と“バンカーシェルター”を解除する。
“バンカーシェルター”その名の通り防御施設の防壁。ただただ重く、ひたすらに頑丈。それだけの機構だけどそれだけで充分。しっかりと腕と腕の結合さえしていれば戦車の主砲や野砲すらも耐え抜く規格外の強度を持っている。その代償としてあまりに重すぎてその場からの満足な移動は出来ないし、あらかじめ変形させる前に防御姿勢を取っておかないと腕を持ち上げることすら出来なくなってしまうある意味での欠陥品。
「…榴弾砲だったっけ?バクゴー。残念だけど私の防御を抜きたかったら榴弾じゃなくてバンカーバスターを持ってくるべきだったね」
「クソ、クソ!クソがぁあ!!!!」
悪態を吐きながら走り寄ってくるバクゴー。既に個性の容量限界なのか、お得意の爆速ターボを使わずに足で走っている。
隙だらけの大ぶりの右を躱してガラ空きのリバーに一撃、思わず顔を顰め俯いた瞬間に顎へ一撃、跳ね上がった顔にストレートを捩じ込めば、力が抜けたようにバクゴーは仰向けに倒れ込む。
「もう一回聞いとくけど降参は?」
「クソ、オレは…オレは…!!」
…もうまともに会話もできてない。判断を仰ぐために主審のミッドナイト先生を見ると、少し難しい顔をした後、首を横に振った。降参はしてないし場外でもない、気絶もしていないので続行、ちゃんとトドメを刺しなさいって事かな。
両手足の機械化を解除して、バクゴーに馬乗りになり首を絞める。両手足を機械化させたままだと気道を抑えるどころか首の骨まで折ってしまいかねない。無駄に苦しめないために確実に気絶させられるようにゆっくりと慎重に気道を探す。あった。
「それじゃあ、おやすみバクゴー」
「クソ…クソ…!オレ…は…」
一息に締め上げる。コレで数秒後にはバクゴーは気絶する。
ただ、私は忘れていた。いや、私達アメリカ人は、かな?追い詰められた日本人が何をするかなんて、大昔の私達アメリカ人がその身を持って思い知らされたはずだったのに。
かつてあった大戦争、その最中に報告された古き悪しき二つの日本人の習性。カミカゼアタックとスーサイドボム。国の為に喜んで死ぬ。敵に捕まり辱めを受けるなら、敵に殺されるくらいなら自分達で死ぬ。そんな日本人の生み出した狂気が、今、私に牙を向いた。
「オ…レは……ぃっそ、負け…る、くらぃなら……自分で……!」
気づいた頃にはもう遅かった。抵抗されないように膝で腕を押し潰し、爆破の暴発を喰らわないように手のひらは舞台側に向けさせて置いた。油断も勿論あったけど、意識も朦朧として個性の容量も限界を迎えている奴が自分諸共爆殺しようとするなんて普通考えないよ。
「ヤッバ…!」
咄嗟に思考速度は音速を超えるが、手足が付いてこない。それもそうだ、アレは両手足を機械化させてその膂力で無理やり動かしてきただけだ。生身の体の性能なんて実はそれほど高くないんだよ私は。何とかバクゴーの首から手を離し、顔とお腹を庇おうと動かし始めたところで時間切れ。私と爆豪を爆炎が飲み込んだ。
◇爆豪勝己
激しい頭痛、耳鳴り、吐き気、最悪の目覚めだ。人生通して過去最悪と言っても過言じゃ無えかもしれねえ。てか、何でオレはこんなとこで寝てんだ?背中が痛え。
霞がかかる思考を死ぬ気でぶん回して直前のことを思い出そうとする。たしか、そう。オレは機械島と準決勝で……。
《爆豪くん場外!!よってこの試合機械島さんの勝利!!》
ああ、そうだ。思い出してきた。オレの出せる全力を尽く捻り潰してきたクソ化け物。氷の半分野郎、轟には敵わねえかもしれねえと感じたし、ポニテのクソ女郎には知識で負けたと思った。だが、両方ともいつかは確実に越えられる壁だとも思った。自慢じゃねえがオレは常に一番だった、一番すごいやつでオレが絶対だった。そんな“一番”だけが集められたのが雄英で、そんな一番たちの中でも一番、それもぶっちぎりでトップを独走してる化け物、機械島ミシェル。最初から最後まで全てにおいて上を行かれた。他の奴らとは一線を画する超えるべき、果ての見えない壁。そいつに向かって、榴弾砲着弾を放って……。
「そう、かよ…。オレは…負けたのか…!くそ、クソ!クッソが!!!」
自身の持つ最大火力すら通用しなかったのか。悔しい、悔しいが、それ以上に自分の不甲斐なさに腹が立つ。開幕でのビッグマウス、控室での機械島への宣戦布告、そして、機械島の舐めプを終に破る事が出来なかったこと。雄英に来てから負け続きだ、格下のクソデクに負けた、機械島に完封された。こっからだ、二度と負けねえ、絶対に次は勝つ。そのために……!
《よって決勝戦へは機械島さんに……いえ、コレは!!?救護ロボ!早く担架を!!いえ!動かすのは不味いわ!セメントス!!》
《わかってる!僕の個性で舞台ごと動かす!リカバリーガールに至急連絡を!!》
先公どものアナウンスがうるせえ。たく、大騒ぎするほどの怪我じゃねえだろ。精々個性の使いすぎて両腕が死ぬほど痛えだけだっつうの。
内心文句を言いつつ、瞼を開ける。そこには
舞台の上、一人尋常じゃないほどの血溜まりの中にうつ伏せに倒れ伏す機械島が居た。
「…はあ?なん、何だよ!?」
何で、何でテメえが倒れてやがる!?テメエが勝ったんだろ?オレの榴弾砲を潰して、オレを場外にして!!なのに何で!!
「…ぁ」
直後、思い出した。そうだ、オレの榴弾砲を潰した後、まだ試合は続行されて、機械島はオレを締めに来て、負けるくらいならいっそ…。
オレのせいで…
負けたオレが勝ったあいつを……。
「ぁぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
《ダメだ!機械島さんの血が止まらない!!吐血している!下手に抑えようとすると喉が血で塞がってしまう!!内臓も幾つかやられてるかもしれない!!っ!不味いミッドナイト!爆豪くんが目を覚ました!!僕はこのまま機械島さんを運ぶ!君は爆豪君を!!》
《わかってる!!セメントスはそのまま機械島を!“眠り香”》
ふわりとした甘い香りがしたと思ったら、ゆっくりと瞼が落ちてくる。ダメだ、耐えられねえ、落ちる……。
《決勝戦に進出した機械島さんですが、病院へと緊急搬送となり、我々教師陣の協議の結果、強制棄権となりました。よって対戦相手の爆豪くんを繰り上げしんしゅつとして決勝戦へ進出とします!》