鉄翼少女のヒーローアカデミア   作:蚊帳 夕

4 / 24
よろしくお願いします(OWO)


少女と個性把握テスト

 

「「「「「個性把握テスト!?」」」」」

 

 グラウンドに全員揃うなり、唐突にそう告げる相澤先生。

 え、いや待って。今日、入学式だよね?雄英の根幹のヒーロー科が入学式ボイコットして良いの?

 そんな私の、そしてみんなの疑問は、オチャコが代弁して訊いてくれた。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事に出てる暇なんか無いよ」

 

 あまりにもあんまりな応えに、私たちは絶句する。

 

「雄英は自由な校風が売り文句、そして、それは先生側もまた然り」

 

 困惑する私たちを放っておいて、相澤先生は話を進める。

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、五十メートル走、持久走、握力、反復横跳び、長座体前屈、上体起こし。お前らも中学生の頃からやってるだろ?『個性』禁止の体力テスト。国は個性による変革を迎えても、いまだに旧来然とした『無個性』基準の画一的な記録を取り続けてる。文部科学省の怠慢だ。実に合理的じゃない」

「先生!」

 

 ここで話を挟んでおかないと、そのまま普通に開始されそうだったので、手を挙げて発言を求める。

 

「なんだ機械島」

「私は、その体力テスト?って言うのわかんないんですけど!」

「あぁ?あー、周りのやつに聞け。現場じゃわからないから出来ませんは通じないぞ」

 

 一瞬、怪訝な顔をした相澤先生だったが、すぐに私の出身を思い出したのか、納得した顔で答える。その返答もある程度予想通りのものだった。

 まあ、懇切丁寧に教えてもらえるとは思ってなかったし、他の子に聞くことは許されてるから後は見様見真似で頑張るか。

 ぐるりと私たちを見回した相澤先生は、一人に目をつける。

 

「おい、爆豪。中学の時のソフトボール投げ何メートルだった」

「67m」

 

 見るからにthe・不良って感じのツンツン頭の少年が呼ばれ、ボールを手渡された。

 

「じゃ、個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何やっても良い。早よ、思いっきりな」

 

 その言葉に爆豪は、凶悪そうな笑みを浮かべ、円の中央に立つ。そのまま大きく腕を振りかぶって

 

「死ねぇ!!!」

 

 投げる瞬間、独特の掛け声と共に手元が大爆発を起こし、その爆発力でボールはとんでもない速度で見えなくなっていった。

 しかし、そんな光景を他所に、私たちの心は一つになっていた。

 

((((掛け声、「死ね」なんだ))))

 

「先ずは、自分の出来る『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 そう言いつつ、相澤先生が一つのタブレットを私たちに見せる。そこには『705.2m』と表示されている。多分、さっきのボールと連動していて、着弾した位置を記録したんだろう。

 

「すっっげぇ!!なんだこれ面白そう!!」

「705mってマジかよ!」

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」

 

 個性を使用した大記録に盛り上がるクラスメイトたち。みんな目が爛々と輝いている。多分、今までの個性を抑圧された生活の中で、『個性』使えればもっと出来たのに。とか、『個性』を使えば簡単に。とか、そんな感じの鬱憤だの不満だのが噴出したのだろう。

 ちなみに私はアメリカ時代に、『Field day』という、なんか好きに体を動かす日があり、その日はある程度、良識に基づいた個性の使用が認められており、割と自由に個性を使えていたし、パパ所有の訓練所で好きなように個性が使用できたから、そういった鬱憤や不満などはほとんど無い。

 

「……面白そう、か」

 

 個性を思いっきり使える!とはしゃぐ私たちに、冷や水を浴びせるように、不穏な雰囲気で相澤先生がとんでも無いことを言い出す。

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積りで過ごすつもりか?」

『!?』

「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしとして、除籍処分としよう」

 

 冷や水を浴びせられるどころか、完全に浮き上がった心を凍り尽かされた。

 

「生徒の如何は先生の自由!ようこそ、これが

雄英高校ヒーロー科だ

 

 不気味に微笑みながら私たちを歓迎する相澤先生に、一人の勇者が立ち向かった。

 

「最下位除籍ってそんな!入学初日ですよ!?いや、初日じゃなくても理不尽すぎます!」

 

 勇者の名はオチャコ、いやオチャコスゲェな。さっきも入学式の事で相澤先生に向かってっただろ。心臓鋼かよ。

 勇者(オチャコ)の問いに相澤先生が応える。

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵達…いつどこからくるかわからない厄災、現代日本は理不尽に溢れている。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。

放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける!

“PLUS ULTRA”さ、全力で乗り越えてこい」

 

 そういうと、相澤先生は爆豪を列に戻し別の場所に私たちを連れていく。

 

「さあ、デモンストレーションは終わり。ここからが本番だ」

 

 

◇第一種目・五十メートル走

 

 一つ目は五十メートル走、出席番号順に二人づつ並んで走る。

 

『飯田天哉、記録“3秒04”』

「「「「おおお!」」」」

 

 なんか足からマフラーの生えた眼鏡が水を得た魚みたいに爆走してた。

 なるほどね。そういう感じでやれば良いと、だとすると五十メートルじゃ短すぎるな。それにアイテムも持ってきてないし。五十メートル付近で止まるには…両足だけで良いかな。

 

「次、上鳴、機械島」

 

 呼ばれたのでレーンに行くと、金髪の陽気そうな少年が隣に並んだ。

 

「上鳴っていうんだ。私、機械島ミシェル」

「おう!俺は上鳴電気!」

 

『On your mark』

 

 計測用の機械の指示に従い、スタートラインに立つ。と、同時に靴と靴下を脱ぐ。

 いきなり晒された生脚に隣のデンキがギョッとしつつ生唾を飲みながら凝視してくる。良いのかな、そろそろスタートだけど。

 

『Set ……GO!』

 

 合図と共に空中に飛び上がる。そして、

 

「脚部換装“ブースター”」

「え?うわ!?」

 

 個性を起動させ、両足をブースターに変形させる。即座に点火して、一気にゴールラインまで吹き飛ぶ。

 

『機械島ミシェル、記録“3秒45”』

 

 ゴールと同時に体制を変え、足を前に突き出す形にして減速する。

 タイムは3秒45か、やっぱりブースター系で加速するには速度が乗るまで少し時間がかかるし、五十メートルじゃ最高速になる前にゴールしてしまう。

 

「ぶへ、酷い目にあった」

「あ、デンキ!ごめん大丈夫だった?」

 

 私のブースターの爆風をもろに喰らったのか、顔中煤だらけの真っ黒状態でデンキがゴールしていた。なんか申し訳なくなったので、ジャージの袖でデンキの顔を拭ってあげる。

 

「全然大丈夫!むしろもっと来いって感じ」

 

 なんか異様に元気になった。なんだコイツ。

 スタート地点に捨ててきていた靴と靴下を回収して、女子メンバーのとこに戻る。

 

「ねぇねぇ!凄いね!どんな個性!?足がバーってなってたよね!」

「けろ、私も気になるわ」

「わ、私も!気になる、よ」

 

既に走り終えている子達に囲まれ、個性を聞かれる。

 てか勇者(オチャコ)大丈夫?元々体力少なかったのかスッゴイ息切れてる。

 

「うーん、まだ秘密!種目はまだ一つしか終わってないしね?全種目終わらせた後、皆んなでみんなの個性を当て合う感じのクイズ形式にしよ!」

「「「いーねそれ!」」」

 

 そんな感じでキャッキャしていると、ふと、気になる男の子を見つけた。

 

『緑谷出久、記録“7秒04”』

 

 一人だけ普通のタイムだ。いや、普通さで言えばオチャコもそうなんだけど、オチャコは個性を使って何か体に細工をした上で、元々運動は並み程度しか動けなかった結果だったのに対して、彼は、イズクは本当に普通のタイム、“全く個性を使った形跡のない走り”だったのだ。そのことが、何故か無性に頭に引っかかった。

 

 

◇第二種目・握力

 

 握力の測定と言うことで、何か機械を渡された。いや、どうやって使えと。

 とりあえず、なんでも知ってそうなモモのとこに行こう。

 

「ねえモモー、これどうやって使えば良い?」

「ああ、ミシェルさん。そうですわ、初見で渡されたら使い方分かりませんよね。先ず……」

 

 そう言って、丁寧に測定器の使い方を教えてくれるモモ。

 なるほど、このつまみは手のひらの大きさに合わせて握る部分を調節出来るのか。

 

「それで、モモはさっきから何してるの?」

「個性を使って記録を出せということでしたので、“万力”を生み出して締め上げているのですわ」

 

 いや、それ良いのか?

 気になったので相澤先生を見ると。

 

「個性で生み出したのもだから問題ない」

 

 問題ないらしい。

 それじゃあ、私もモモに教わった通りに計測しますか。

 

「腕部換装」

 

 個性を起動させ、今度は両腕を機械の腕に変える。そのまま、脇を閉じたまま思いっきり計測器を握りしめる。右の記録が終わったら左でも同じことを繰り返す。

 

『機械島ミシェル、握力“右・3.4t 左・3.4t”』

 

 

◇第三種目・立ち幅跳び

 

 白線の前に立ち、全力で飛んでどこまで行けるかを測る種目。ただし、記録は地面についた時に最も白線に近い場所から計測する。

 正直、五十メートル走でやったことと大差ない。むしろ距離制限が無い分本領を発揮できる。

 

『機械島ミシェル記録“490メートル”』

 

 本当はもっと飛べたのに、途中で姿勢を崩してしまったので已む無く着地した。やっぱり私には飛行はアイテムが無いと難しい。

 

 

◇第四種目・反復横跳び

 

 この種目は個性を使わずに行った。

 まあ、こういうのと相性悪いからなぁ。いままでずっと個性を使用してぶっちぎりの成績を出していたので、女子ズから心配された。大丈夫だよ、理由とかは個性の答え合わせの時に一緒に説明するね。

 

『機械島ミシェル、記録“58回”』

 

 

◇第五種目・上体起こし

 

 反復横跳びと同様に個性を使わなかった。いや、こっちに関しては個性は“使えなかった”と言うべきかな、解説はこれも答え合わせの時に。

 

『機械島ミシェル、記録“31回”』

 

 

◇第六種目・長座体前屈

 

 これはちゃんと個性を使った。

 

「デンキ、意外と体柔らかいねー」

「まあ、ヒーローやる上で体は資本だからな!柔軟くらい出来ないとやってられねぇ」

 

 デンキの記録を記して、場所を交代してもらう。

 

「えーと、壁に背中をつけて?お尻が浮かないように体を倒す?だっけ?」

「おう!あってるぜ」

「じゃ、行くよー」

 

 合図と共に体を倒す。

 

「っと」

「っ!うわ、デッ、太腿ふっと!?てか、胸はみ出して!?

 

 なんかデンキが慄いてるけど、本番はここからだよ。

 

「ふっふっふ、デンキ、もしかして私の記録がここで終わったと思った?」

「え?あ、いや実際これ以上倒れられないだろ。つっかえてるし、ズボンとかケツパンパンだし

「いや!まだだよ!腕部換装!」

 

 再び腕を機械に変化させる。

 

「私の腕は…!伸びる!」

「うぉおお!?」

 

 私の腕が、マジックハンドのように伸び、記録を伸ばす。

 

「そして、さらに!」

「さ、さらに?」

「飛ぶ!」

「飛ぶ!?」

 

 私の宣言通り、手首から先が分離し火を吹きながら飛んでいった。

 

「どーよデンキ!凄いっしょ!」

「おぉおおお!スッゲェ!あ、でも手首飛ばして大丈夫なのか?」

「………。」

「ミシェル?」

 

 デンキの言葉に気まずく横を見る。

 

「ちょーし乗りました。とってきてくれると嬉しいです」

 

 お願いするとデンキは気前よく取りに行ってくれた。優しい。でも、分離しても手の感覚はあるんだよ?めっちゃ握られたの知ってるからね?

 

『機械島ミシェル、記録“137メートル”』

 

 

◇第七種目・ソフトボール投げ

 

 「次、機械島」

 

 開始前にデモンストレーションで爆豪が投げたソフトボール投げ、円から出なければ何をしても良い種目。直前に勇者(オチャコ)が測定距離∞とか言う、絶対に超えられない記録を打ち立てたので凄い気が楽。勇者(オチャコ)マジで勇者。

 

「ほら機械島、ボールだ」

「相澤先生」

「なんだ?」

 

 ボールの強度によっては、出来る投げ方が変わってしまうのでちゃんと尋ねておく。

 

「このボール、どの程度まで壊れませんか?」

「ほう?とりあえずオールマイトが全力で投げても壊れなかったぞ。だからお前が壊すのは無理だと思うが」

「いえ、ありがとうございます」

 

 なるほど、なら安心だ。

 円に入り、中央で片膝立ちになり、右腕を前方に水平に伸ばす。

 

「腕部換装“肩パルト”」

 

 機械になった腕が変形し、展開する。

 肩から二本のフックが飛び出し、その間に投擲物を保持するための受け皿が取り付けられた腕は、空母の甲板に設置されているような“カタパルト”そのものだった。

 受け皿にボールをセットする。今は、目標地点などを演算し表示してくれるサポートアイテムが無いので、適当に上斜め前方へと腕を向け。

 

「Fire」

 

 一瞬、腕の表面を青白い電気が走り、次の瞬間、ボールが音速を超える速度で射出された。

 

 個性を解除し腕を人の物に戻す。

 振り返ると相澤先生がこちらにタブレットを向けていた。表示された記録は、

 

『機械島ミシェル、記録“2434メートル”』

 

「Mission complete」

 

 腕から噴き上がる煙を吹いて、カッコよくキメる。まあ、どれだけ飛ばそうとも∞の勇者がいる時点で二位確定なんですけどね。

 そして女子グループに戻りキャイキャイする。

 

「次、緑谷出久」

 

 イズクくんの番が回ってきた。結局、彼はこれまでの全種目で個性を使用しなかった。雄英に入学できている時点で“無個性”と言うことは無いだろうけど、使わないのか、はたまた使えないのか。見させてもらう。

 

 何か、覚悟を決めた顔で円に入るイズク。

 全力で投げたボールは、

 

『緑谷出久、記録“46メートル”』

 

 やっぱり個性を使用しなかった。いや、違う。彼の愕然とした顔は、使おうとした個性が不発になったような顔だ。

 

「イレイザー・ヘッド……」

 

 遠くで誰かの名前を呼ぶイズクくん。

 

「イレイザー・ヘッド?」

「誰だろ?ヤオモモ知ってる?」

「いえ、存じませんわ」

 

 状況的にそのイレイザー・ヘッドってのが相澤先生なんだろうけど、イレイザー・ヘッド。どこかで見たような…。あ、

 

「思い出した。イレイザー・ヘッド。抹消ヒーローイレイザー・ヘッドだ」

「ミシェルさん、知っていますの?」

「うん、雄英について調べた時に少しだけ見た。ほとんど情報が無かったけど個性だけはわかった。彼は、

個性の発動を消すことのできるヒーローだよ」

 

 イズクくんと何かを話していた相澤先生が離れ、イズクくんの二投目が始まった。

 追い詰められたような表情で、小さく何かを呟き続けるイズクくん。

 

「SMASH!!!」

 

 掛け声と共にボールは遥か彼方に吹き飛んだ。

 

「まだ…動けます!」

「こいつ…!」

 

先生に何か宣言するイズク、相澤先生もどこか予想を外されたような、嬉しそうなそんな顔だ。

 

『緑谷出久、記録“705.3メートル”』

 

 

◇第八種目・持久走

 

 最後の種目は持久走。これはクラス全員が揃ってスタートし、トラック一周約二千メートルを走り切るタイムを競う。ついでに全員で走るからか、「やる奴はいないと思うが他者への悪質な妨害は順位、タイムに関わらず即座に除籍処分にする」と言う相澤先生の釘を刺された。君に言ってるんだぞ爆豪。さっきイズクに飛びかかったやつ。

 

「ハイ、ヨーイスタート」

 

 いつかの入試の時みたいにヌルッと始まった。

 私は先生の合図と共に両足をローラースケートのような形に変形させる。アメリカにいた時もよく使っていた、お気に入りの移動形態だ。コンパクトで小回りが効き、私の個性で生み出したのもだから、ローラー部を高速回転させて車に匹敵する速度で走る事ができる。

 そんな私の隣に並んで走る者が二人いた。一人は飯田天哉。足の排気口みたいなところから煙を吐きながら走って追いついてくる。もう一人は八百万百、個性で生み出したのかスクーターに跨り、悠々と走っている。

 

「やっぱり来たね二人とも!」

「くっ!速さを競う物でぼ、俺が負けるわけには行かない!」

「飯田さん、ミシェルさん!勝負ですわ!」

 

 三人ほぼ横並びのまま、最初のカーブに差し掛かる。ここで一人、速度を落とし先頭から脱落した。

 

「くっやはりカーブでは速度を落とさねば曲がれんか!」

「イーダ!お先に!」

 

 コーナーを抜けると同時にローラーの回転を上げ加速する。その動きを読んでいたかのようにモモがピッタリと横につけ常にイン側をキープしている。

 

「やるねモモ!とっとと抜き去るつもりだったのにちゃんと喰らい付いてくる!」

「ええ!この個性で出来ることを把握する中で、乗り物を運転できることの重要さは痛感していますの!私、家の私有地の中で練習は沢山しましてよ!」

 

 バックストレッチを並走しながら、私たちは第三コーナーに入る。ここだ!ここで仕掛ける!

 

「モモ、貴女についてこれるかな!?」

「な!?カーブに入ると言うのにスピードを落としませんの!?いえ!それどころかさらに加速を!」

 

 モモの驚愕を置き去りにしてさらに加速する!

 

「いけません!そのスピードでは曲がりきれませんわ!」

「いや!ここからだ!」

 

 カーブの遠心力に逆らうように体を倒し、地面スレスレまで体を倒す。その上で足を交差させながら、スピードスケートの選手のように横に滑りながらコーナーを曲がる。スクーターとは違い、接地部を自在に動かせるローラースケート型だから出来る走法だ。

 

「楽しかったよモモ!でも、ここまでだ!」

「そんな!?」

 

 今度こそ完全にモモを置き去りにする。

 そのはずだったのに。

 

「いいえ、いいえ!まだ終わりませんわ!まだ、私のスクーターは行けます!何度も何度も転びながら、貴方に乗れる様になりましたの、貴方のことは私が一番知っていますわ!だからこそわかる、貴方の限界はここでは無い!貴方のスピードはミシェルさんに決して劣らない物、それがこのように引き離されるのは、ひとえに私の覚悟のなさが原因!そして、覚悟は今、決めましたわ!」

 

 カーブの途中だと言うのに、モモはさらにアクセルをフカシ加速を始める。そして、離されていたはずの私とモモの間の距離を少しずつ詰めてくる。

 

「そんな、馬鹿な!なぜあの状況から加速を!?」

「行きますわよスクーター!貴方に今、

命を吹き込んで差し上げますわ!!!」

 

 ほぼ同時に第四コーナーを曲がり切り、最後の直線に勝負を賭ける。

 

「うぉおおおお!ぶっちぎれ『機械化(メタリカ)!』」

「差し切りなさい!スクーター!」

 

 もつれ込むように私たちはゴール板を踏み越えた。

 タイマーを持った相澤先生が息を大きく吸い込み

 

「一着、八百万百!二着ハナ差、機械島ミシェル!」

 

 私たちの勝敗を告げた。

 

「やりましたわ!!」

「ぁぁああ!!」

 

 項垂れる私にモモは手を差し伸べる。

 

「ミシェルさん、ありがとうございました。とても楽しいレースでした。もし宜しければ、今度、二人でツーリングに行きませんか?」

 

 その手を握り立ち上がる。

 

「ああ、今回はあんたの勝ちだ、モモ。でも次は負けない。それはそうとツーリング良いね。行こ、約束だよ」

「ええ、約束ですわ」

 

 私とモモが特別な友情を感じている間に、次々と他の生徒がゴールしてきた。

 

 

 全員がゴールし終わると、相澤先生が私たちを整列させる。

 

「んじゃ、ぱぱっと結果発表だ。トータル順位は単純に各種目の評点を合計した物だ。いちいち発表するのは面倒だから一括で表示するぞ」

 

 そう言って、相澤先生は手元のタブレットを操作して、クラスの順位を表示させる。

 イズクの顔色がもはや真っ青を通り越して、ドス黒くなっている。まあ、ソフトボール投げを除いて全部最下位だもんね。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

『『『ハァア!?』』』

 

「君らの最大限を引き出すための合理的虚偽」

 

 「それじゃ、教室に必要な書類置いてあるから持って帰れよ」と相澤先生は帰ってしまった。

 

「よかったぁ、除籍嘘やった」

 

 隣で口を手で覆い、安堵の息を吐くオチャコ。その視線の先にはイズクがいる。その目元は潤み、顔は赤い。

 んー?んんー?これ、ひょっとしてひょっとするのでは!?

 

 そんなオチャコの肩を叩き、正気に戻して更衣室に戻る。教室に戻ったら女子ズのみんなで個性の答え合わせだ。




とりあえず、最初の投稿は今回で以上になります。今後はある程度書き溜めてから(原作一巻分ぐらいの物語)投稿していきます。

面白いと思ってくださったら気軽に感想、評価などお願いします。




おまけ

個性把握テストで一番書きたかったのは持久走、元々はウマ娘の二次創作考えてたけどこっちの方が書きたくなったのでヒロアカにしたけど、やっぱりレースは書きたいよねって言うお話。なんか色々混ざった気がするけど女の子がガチでレースしてるからヨシ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。