◇雄英高校・一年A組教室
「それでさ!結局ミシェルの個性ってなんなの?」
個性把握テストを終えて更衣室で着替えた後、教室まで戻ったところで、ついに堪えきれなくなったのかミナが私の個性を聞いてきた。
「ミナ、ミナ。落ち着いて。みんなで個性当てクイズしよって言ったじゃん。私が個性を教える前にみんなの予想を聞かないと」
「あ!そうだった。えー、みんな、なんだろ?」
「けろ、そうね。先ず五十メートル走の時は足から火が出て飛んでたわ」
ツユちゃんが、今日一日で私が見せた個性発動の瞬間をピックアップしたのを皮切りに、みんなで顔を突き合わせて話し合い始める。
「そうだったね。その時確か『換装』?って言ってたような?」
「『換装』、身につけたものを取り替える事ですわね。握力測定では足ではなくて、腕を『換装』していましたわ」
「立ち幅跳びの時は五十メートル走の時と同じような足に変えてた!」
「そう!凄かったよね!ジャンプしたって言うか、普通に飛んでたもんね」
「それで、次の反復横跳びと上体起こしの時は、特に個性使って無かったよね」
「けろ、急に個性を使わなくなったから体調が悪くなったのかと心配したわ」
「そして、長座体前屈の時は…申し訳ありません、私位置が離れており、個性を使ったのか確認できておりませんの」
「あー、アタシもちょうど同じタイミングで測定し出したから見えてないんだよねー」
「ウチ見たよ!ちゃんと個性使ってた」
「本当ですか麗日さん!でしたらどのように個性を使っていらしたのですか?」
「えっとね、先ず腕が伸びてて」
「「「「「腕が伸びて!?」」」」」
「その後、手首が飛んでった!」
あまりにもまとまりの無い個性の内容に混乱する彼女たちを、後ろから楽しく見守る。確かに一つ一つを見れば、脚を取り替えて空を飛ぶ、金属製の腕になる、腕を伸ばす、手首が吹っ飛ぶ。と雑多な内容だけどその実、ちゃんと一つの要素で全部繋がっている内容だったりするのだ。
「けろ、ミシェルちゃん、ちょっときてもらっても良いかしら?」
ツユに呼ばれたので彼女に近づく。
近づくと、みんなからじっと体を見つめられる。ちょっと恥ずかしい。
「とりあえず、見てわかる特徴はありませんから異形型ではありませんわね」
「えー、もしかしたら服に隠れてる場所に何かあるかもしれないよ?」
「……ミシェル、ちょっと体触らして」
「良いけど、キョーカ。ちょっと目が怖いよ?」
「大丈夫、ダイジョウブ、ちょっと腕とかサワラシテモラウダケダカラ…フォオオ!?」
私の右腕を触ったキョーカが突如奇声を上げた。
「ど、どうしたん!?響香ちゃん!?」
「す、すっごい」
「やはり見えない部分に何かありましたのね!」
「金属みたいな硬い感じ!?」
まるで何かを見つけ出したような顔をするキョーカに、服の下に異形型の特徴を見つけたのかと色めき立つ女子ズ。
いや、
「すっごい柔らかい…!」
「「「「へ?」」」」
「ものすっごい柔らかい!でもなんだろ、脂肪とかそう言うのもちゃんと付いてるけど太ってるって感じじゃなくて、柔らかさの下にしっかりとした筋肉もあるんだけど、こう『ふわもちっ』って感じの一度触ったら離れられなくなる感じで病みつきになるような、あっ、やっばいいつまでも触ってられる」
唐突に私の体のレビューを始めるキョーカ。そのレビューにそわそわし出したのは、なんとモモだった。
「そんなに良いものですの?あの、ミシェルさん」
何かをねだるようなモモに、無言でフリーになっている左腕を差し出す。
「まあ!ありがとうございます!それでは失礼して……。わぁ…すごい、これは病みつきになるのも無理ありませんわ。いえ、しっかりなさい八百万百!私は栄えある八百万家の…!いえ、ですがもう少しだけなら、すっごいですわ」
八百万百、陥落。
そんなだらしない二人に向けてツユちゃんが冷静な声をかける。
「けろ、ところで当初の目的の特徴的な箇所はあったのかしら?」
その声に、はっ、とする二人。
「い、いえ。この病みつきになるような滑らかさが特徴と言えば特徴ですが、これは個性とは関係ないものでしょう」
「…いや、まだだよ。ヤオモモ」
「耳郎さん?」
「私にはまだ、触っていない場所がある。それは、ここダァ!!!」
突如として、目をかっぴらいて勢いよく、私のとある部分に手を伸ばすキョーカ。勢いよく伸ばしたその両腕は…
ふに
そんな擬音が聞こえそうな感じで私の胸に沈み込んだ。
「ッん!?」
「ふお!?ふぉおおおおお!?」
あまりにもあんまりな暴挙に、全員の思考が停止する。
「ここか!?ここに隠してるんか!?くそぉ、なんだよこれ!神様は不公平だぁ…ちょっと分けろぉ!」
調査というにはあまりにも私怨に塗れたセリフに全員の思考が再起動する。
「ちょ、ちょっと耳郎さん!?それは流石に」
「響香ちゃん!それ以上はあかんて!」
「耳郎!落ち着いてって」
「ケロ、流石に見過ごせないわ」
「おのれ、欧米スタイルめ!発育の暴力め!」
みんなの注意を無視して私の胸を揉みしだくキョーカ。
あ、やばい。なんか変な気持ちになってきた。
このままではマズイと、キョーカの体に手を伸ばし、
そのまま頭を抱きしめた。
「っ!?っっ!?!!?」
今の今まで怨敵のように揉みしだいていたそれが、急に自分の顔に迫り、一瞬で顔を包み込んだ事でキョーカの暴挙が止まる。そのまま、私は困惑するキョーカを抱き潰す。
自身の頭を包み込むそれが、より強く自分の頭を圧迫した事で呼吸を著しく制限されたキョーカは暴れるが、構わず抱き締め続ける。やがて暴れていたキョーカの腕は力無く、ぱたんと倒れた。
「よし、鎮圧完了」
「ミシェルさん、なんて恐ろしいことを…」
意識を朦朧とさせたキョーカを胸から離して慄いているモモに渡す。
キョーカをモモに渡したとき、腕の力だけでは僅かに受け止めきれなかったようで、体を使って抱き止める形になった。抱き止めた瞬間、意識を朦朧としていたキョーカが、くわっ!と目を見開きモモから跳ねるように距離を取る。
「ヤ、ヤオモモもウチの敵だ!」
「どうしてですの!?」
たぶん、背中に当たったんだろうな…。発育の暴力が。
その後、なんとかキョーカを宥めて、私の個性の考察を再開する。
「それで、耳郎さん如何でしたの?」
「すごく柔らかかったです」
「いえ、触った感想ではなくて」
結局、異形型としての特徴は見られないということになった。私完全に触られ損だよね。
「と言うことはやはり変形型と言うことになるのでしょうか」
「あー!でもヤオモモ!手首飛んでったって言ってたし、実は予めたくさんの腕や足を用意してて体の中に格納する。みたいな個性とかない?」
「なるほど!確かにその線もありますわね。それに機械島グループは機械系サポートアイテム製造の大家。そう言ったバックアップも万全とも考えられますわ。ありがとうございます芦戸さん」
確かにそうだ。と意見をまとめつつある中で、ポツリとオチャコが呟く。
「でも、そうなるとミシェルちゃんの今の手足も作り物なん?」
その言葉に空気が凍り付く。良いとこ目をつけるなオチャコ。
「た、確かに今考えている個性では、手足の取り替えが必要になります。と言うことはミシェルさんは四肢が…」
「けろ!?」
「で、でもヤオモモ!ウチらが触ったとき柔らかかったし、ミシェルも触覚ありそうだったじゃん!」
「そ、そうですわね!あれだけ柔らかいのなら本物の…いえ、あの機械島グループなのです。もしかしたら生身に近い質感を再現する技術が…」
ちょっと場が混乱し始めたので少しだけ助け船。
「ちゃんと手足は自前のだよー」
「「「「「「ほっ」」」」」」
私の情報提供に胸を撫で下ろす一同。
まあ、ちょっと一部パーツの
その後もしばらく話し合いを続け、ついに私の個性の結論を出したようだ。
モモが代表して発表する。
「それではミシェルさん、貴女の個性がなんであるかの私たちの解答を発表しますわ。ずばり、体を機械に改造する個性ですわね」
「うーん、まあ正解!」
「けろ、なんだか引っかかるような言い方ね」
「うん、正確には違うけどみんなに見せた部分から考察できる範囲なら正解って感じ」
まあ、これは完全に私が意地悪だったって話になる。
「答え合わせだけど、体を機械に改造するって部分は八割くらい正解。正確には、両手足を機械に変化させる。になるね。腕は肩関節まで、脚は股関節辺りまで、一部腰あたりも機械化してるよ」
「なるほど、だから上体起こしの時に個性を使ってなかったんだ」
「そう言うことだねトール。上体起こしで私が個性を使っちゃうと上半身と下半身で真っ二つに折れちゃう」
「あれ、じゃあなんで反復横跳びは個性を使わなかったん?」
「あー、それはね」
腕を前に突き出し、個性を発動させて機械化させる。
「とりあえず支えてみて、一発でわかるから」
「あ、アタシやりたい!」
ミナが両手で私の腕を支える。
「思いっきり踏ん張ってね?結構重いから」
「え?それ、どうい、う!?」
腕の力を抜いた瞬間、ミナの腕が勢い良く下に引っ張られる。胸の下辺りまで腕が下がったところで再び腕に力を入れる。
「うへぇ、めっちゃ重かったけど!?」
「そ、めっちゃ重かったでしょ?これが私が反復横跳びで個性を使わなかった理由。腕一本で大体百キロくらいあるよ。脚だと片方で百五十くらい。そんな重さだから瞬発力なんてあってないようなものになっちゃうから使わなかったんだ」
「なるほど!そんな理由があったんやね!」
私の説明に『個性を使わなかったの体調不良説』が否定され、安心したような納得したような顔でみんな頷く。
「それでここからみんなに見せてない。って言うか、見てもまずわからない部分。とりあえず一つみんなに質問!なんで機械化って言う個性で私は足からジェット噴射して空を飛べたでしょうか」
「?そう言う個性だからじゃ無いの?」
「違うよーミナ、私が今まで説明したのは両手足を機械化させる
「ですから、脚をジェットエンジンに変えて…ちょっとお待ちください、機械化させるだけの個性!?
「流石モモ!気づくの早いね!そう、あくまで出来るのは機械化だけ!燃料はまた別口!ところでみんな、個性婚って知ってる?」
“個性婚”その単語が出た瞬間、視界の端で紅白色の少年がこちらに勢い良く振り返るのが見えた。
「個性婚、たしか強力な個性同士、相性のいい個性同士を掛け合わせることで子供により強力な個性を発現させようと言うもの。だったよね?歴史の授業でいけないことって習ったけど」
「もちろん!アメリカでもタブー視されてる事に変わりはないよ。でも、結果として私は個性婚の成功例のような形になった。パパとママの個性、そのいいとこ取りの複合型個性として。パパからは体を機械に変える変形型の個性を、ママからは体の余剰エネルギーを無尽蔵に貯蓄する異形型の個性を受け継いだ、ある種の完成された個性。さっきの質問の答え、燃料の供給源はママから遺伝した個性、元々の名前は『貯臓』、余剰エネルギーを溜め込む特殊な臓器に付随する個性。この二つの個性を併せ持ったのが私の個性『
「そんな複雑な個性、わかるわけありませんわ!」
「あはは、ごめんごめん。意地悪だったよね」
モモの苦情にその通りだと頷くみんな。
「でもでも、すごい個性だよね!機械化しても燃料のない個性と燃料は沢山あるけど動かす先のない個性。二つが合わさって弱点のない完璧な個性になってるよね!」
「まあ、こういうと完璧な個性に聞こえるかもしれないけど、かなり弱点も多い個性だよ」
トールの言葉に否定的な返答をする。
「先ず一つ目、機械化の弱点。元々の個性での燃料を自前で用意できないってのもあるけど、何でもかんでも自由に変化させられるわけじゃ無いってこと。変化させる先の機械的構造をちゃんと理解して、腕としての形に落とし込めているかがあるよ。万能のようでその実出来ることは限られてる」
「二つ目、貯臓の弱点。ほぼ無尽蔵にエネルギーを溜め込み続ける個性なんだけど、この個性自体にはエネルギーの発電機能はないってこと。あくまでもこの個性は私が日常生活を送る中で生まれる余剰エネルギーを溜め込むだけ。容量は大きいけど溜め込む効率はすごく悪いんだ」
「三つ目、これも貯臓の弱点だけど、貯臓に直接衝撃が入るとエネルギー出力が不安定になってしまうこと。最悪の場合、エネルギーが体内で暴走してしまうこともある。常に体内に爆弾を抱えているような状態を維持し続ける形になっていること」
「四つ目、最後にして最大の弱点、私が生身であること。ちょっとわかりづらいかもしれないけど、私の手足以外が生身という事って言い換えても良いかも。つまり私の内臓とか脳とか、そう言った重要器官は全部生身ってこと。これのせいで私の個性は実質的な機能の上限が設定されているんだ」
あまり無茶な動きをすると全身バラバラにちぎれ飛んじゃう。
その言葉と共に私の個性の答え合わせは終わった。
とりあえずオリ主の個性
両手足を機械に変えることが出来る
変える先の機械の構造を理解していなければならない
手足の範疇から大きく外れてはいけない
エネルギーは別途必要
内臓が増える
ほぼ無尽蔵にエネルギーを溜め込む
エネルギーの補充は日々の生活での余剰エネルギーのみ
衝撃に弱く、最悪体内で爆発する
生身の部分が(手足と比べて)貧弱
と言った具合です。
戦闘訓練編とUSJ編は一気に書き上げて一緒に投稿する予定です。もうしばらくお待ちください。
おまけ
発育コンプレックス耳郎ちゃんは大好きなので定期的に擦っていきます