鉄翼少女のヒーローアカデミア   作:蚊帳 夕

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よろしくお願いします(OwO)


少女と戦闘訓練(前編)

 

 

 グラウンド・βに到着すると、既に男子は全員揃っていた。

 くっ、コレも全部トールショックが悪いんだ。なんだよ手袋と靴だけって、靴下も無いのかよ。後で機械島グループの商品セールスでもしとこう、確かいつの間にか自宅の工作室に置かれていたカタログに光学迷彩系の装備が幾つかあった筈だから。

 

「よし!全員揃ったな!良いじゃ無いか皆!カッコいいぜ!」

 

 女子の戦闘服は更衣室で大体見たけど、男子のを見るのはコレが初めて。うん!実に個性的だね!マント付きの西洋鎧なのとか、手榴弾を模した大きな腕装備とか、普通におしゃれな革ジャンのようなのもある。個人的には持久走で競り合ったイーダの戦闘服が好きかな。スマートな全身鎧にフルフェイスヘルメット。ちょっとシンパシーを感じる。

 

「さあ!始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!」

「先生!ここは入試の試験会場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 イーダがオールマイト先生に質問する。

 そっか、みんなと私、試験会場違ったもんね。みんなはここで入試を受けたんだ。試験だしあまり内容が違ったら問題だから、そう大きな違いはないかもしれないけど、みんなの入試の時の様子とか見てみたかったな。

 

「いい質問だ飯田少年!屋外での戦闘訓練もいいが、我々はもう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪な敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会、真に賢しい敵は室内に潜む!!」

 

 確かにそうだ、屋外で堂々と悪党が活動することは殆どない。敵退治で屋外で戦闘する時も、基本的に逃走中にヒーローと鉢合わせした時だったり、屋内から追い出された後だったりする。そうじゃなきゃアメリカでも軍の特殊部隊に室内や地下専門の戦闘部隊が存在する理由が無い。

 

「君らにはコレから“敵組”とヒーロー組”に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はただぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

 

 あー、そっか、小さい頃から戦い方を教わるなんて親がヒーローかそれに準ずる立場じゃなきゃそんな機会無いよね。戦い方も試行錯誤って子も多いんだ。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ブッ飛ばしてもいいんスか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」

「別れるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」

「このマントヤバくない?」

 

「んんんー!聖徳太子ィィ!!!」

 

 次々と繰り出される質問を捌ききれず天を仰ぎ、震えるオールマイト先生。授業に慣れない新人教師感にほっこりする。

 捌ききれずに困ってしまったオールマイト先生は懐から何かを取り出し、読み始める。

 

「いいかい!?状況設定は“敵”がアジトに“核兵器”を隠していて、“ヒーロー”はそれを処理しようとしている!勝利条件は“ヒーロー”は制限時間内に“敵”を捕まえるか“核兵器”を回収する事。“敵”は制限時間まで“核兵器”を守るか“ヒーロー”を捕まえる事。コンビ及び、対戦相手はくじだ!」

 

 取り出した何かはカンペだったらしい。妙に懐かしい(アメリカン)な設定で少し笑ってしまう。

 コンビの組み合わせの決め方にイーダが「適当なのか」と噛みつくが、イズクが「他事務所とのチームアップ」を例として出し、オールマイト先生の回答を必要とせず解決してしまった。

 

そして、くじ引きの結果。

 

Aチーム:緑谷出久・麗日お茶子

Bチーム:轟焦凍・障子目蔵

Cチーム:八百万百・峰田實

Dチーム:爆豪勝己・飯田天哉

Eチーム:青山優雅・芦戸三奈

Fチーム:佐藤力道・口田甲司

Gチーム:上鳴電気・耳郎響香

Hチーム:蛙吸梅雨・常闇踏陰

Iチーム:尾白猿夫・葉隠透

Jチーム:切島鋭児郎・瀬路範太

Kチーム:機械島ミシェル

 

「む!?まあ21人で奇数だからな一人余ってしまうのは当然か、どうする機械島少女!誰かに入ってもらうかい?」

「んー、大丈夫です。一旦一人でやってみたいです」

「オッケー!それならそうだな、ハンデも込めて全員の個性を把握できる一番最後に順番を回すとして、対戦相手はその時に決めようか!」

 

 そう言うことになった。

 正直、個性把握テストの時にちらっと見ただけで誰がどんな個性を持っているのか、しっかりとは把握出来てないんだよね。

 それにしてもイズクとオチャコ、一緒のチームか。うーん、コレはもはや運命では?もっともオチャコは自分からの矢印を自覚してはないようだし、イズクはふとした瞬間に送られる熱視線に一向に気がつく様子はないけど。

 

「それでは!初戦の対戦チームはコイツらだ!」

 

 そう言って箱からくじを取り出したオールマイト。

 ヒーローチームを決める左手にはAのくじ。敵を決める右手にはDのくじ。オチャコとイズクの運命ペアじゃん。しかも敵はイズクと何やら因縁のあるらしいバクゴー。昨日の個性把握テストのときや今日の午前中の授業でも突っかかって行って非常に傍迷惑なヤツだった。

 その後、私たちは対戦チームを地上に残して地下にあるモニタールームに移動した。

 

「それでは!訓練開始!」

 

 オールマイト先生の掛け声で一戦目がスタートした。

 敵チームであるDチームは確保目標である核兵器を最上階の一室に隠すようだ。なるほど、目標は隠すチームによって変動するっと。そこら辺の索敵能力も重要だしね。敵倒しても核兵器が見つからず時限式で起爆してしまいました。じゃダメだもんね。

 

 開始から数分、Aチームがビル内への侵入に成功した。慎重にビル内を移動するオチャコたちだったが、曲がり角でバクゴーの不意打ちを受けてしまった。が、間一髪イズクが庇う形で殆ど無傷で奇襲を切り抜けた。その後はイズクがバクゴーを足止めするために踏み止まりオチャコを先に行かせた。ふーん、カッコいいじゃんイズク。

 一方、足止めされた形になったバクゴーは私怨故か、攻勢こそ過激だが、肝心の攻撃は感情的で単調に直線的なものが多く、イズクに受け流され時々反撃を喰らっている。コレはもう決まったかな。よほどの番狂せが無ければイズクが今のバクゴーに負けることは無いだろう。

 ただ、やはり今回もイズクが個性を使わないことが気がかり。個性把握テストの時もそうだったけど、執拗なまでに個性を切らない。まあ、把握テストの時の様子だと使うと体が壊れてしまうからなんだと思うけど、そうなると少しおかしい。発動型、それも身体増強型の個性なんて自分で自分を傷付けてしまわないように、幼少の頃からしっかりと訓練をされる筈なのに、彼はまるで個性が発現したての赤子のように自爆をしている。コレはあり得ないことだ。授業が終わったら少し話を聞いてみようかな。

 視線をオチャコとイーダを写したモニターに移す。そこにはオチャコの個性を警戒して部屋の中のものを全て片付けたイーダとオチャコが対峙していた。いや、すごいなイーダ。オチャコ対策としてはほぼ模範回答だと思うよ。コレでオチャコはイーダに対して近接戦以外の戦闘手段が無くなった。そして、オチャコは…こう言うのはなんだけど運動に関して言えばクラスの中でも恐らく底辺に近く、対してイーダは個性による機動力を押し出した近接タイプ。オチャコに対して非常に厳しい対面になった。

 オチャコがイーダに対してどう言った行動をするのかワクワクしてみていると、突如地下室全体が激しく揺れた。

 

「え、うわ!?何コレ!?」

 

 驚いて近くにいたキョーカに掴まり、状況を聞く。

 

くっ、格差社会!えっと、緑谷の事をなかなか倒せなかった爆豪がオールマイト先生の静止を振り切ってサポートアイテムを使って大爆発を緑谷に向けて放った。それの衝撃で地下室まで揺れたって感じかな」

「ありがとキョーカ」

 

 状況は分かった。

 ……バッカじゃないのあのボンバーヘッド!室内で大爆破なんてやっちゃダメな事筆頭じゃん!卵電子レンジに入れて温める事と同じくらいやったらダメなヤツだよ!?しかも今回なんて自分たちの護衛対象はそう言った衝撃に晒したらダメな“核兵器”だよ!分かってるのかな!?いや、多分、分かってないだろうな。

 殆ど話したことのないバクゴーへの好感度が急激に下がる音と共に、イズクとバクゴーを映したモニターが復活する。そこには間一髪爆発を免れたイズクと怒り狂うバクゴーの姿があった。

 

 その後、なんやかんやあってイズクが個性を使ってまたも大怪我をしながらヒーローチームが核兵器を確保して勝利した。状況的に圧倒的に不利なヒーロー側で格上の二人相手に凄いじゃん!オチャコとイズク!

 まあ、多分だけど今回のMVPはイーダだろうけどね。勝利したことは凄いけど、そこに辿り着くまでの過程がダメダメだったからなぁ。バクゴー?論外。

 

「それでは!講評の時間だ!まあ、つっても…今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」

「けろ、勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

「何故だろうなぁー!わかる人!!?」

「ハイ、オールマイト先生」

 

 重症で保健室に運ばれたイズクを除いた全員が地下のモニタールームに集まり、オールマイト先生の講評が始まる。

 イーダがベストに選ばれた理由を聞かれ、迷いなく手を挙げるモモ。私も手を上げかけていたけどモモに先を越されてしまった。

 

「む、それでは八百万少女!機械島少女は八百万少女の後に意見を聞こうかな」

 

 わお、よく見てる。流石No. 1。上げようとしていただけで殆ど手は動いてなかったのに分かったんだ。

 

「それではミシェルさん、失礼します。飯田さんがベストに選ばれた理由、それは飯田さんが一番状況設定に順応していたからですわ。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断、そして先程、先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを“核兵器”として扱っていたらあんな危険な行為出来ませんわ。相手への対策をこなし、且つ“核兵器の争奪”をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは「訓練」だと言う甘えから生じた反則のようなものですわ」

 

「ま、まあ飯田少年もまだ固すぎる節はあったりするわけだが…まあ正解だよ。くぅ…!機械島少女も何かあるかい!?」

「なにも!無いです…!思ってたこと全部言われた…」

 

 分かってたけどモモすっごく賢い!多分知識量としてはそこまで変わりは無いと思うけど、思考速度と物事を多角的に見る力が私よりも高い!

 

「常に下学上達!一意専心に励まなければトップヒーローになどなれませんので!」

 

 ドヤ顔で宣言するモモは凛々しく、その上とても可愛かった。

 

 バクゴーとイズクがビルを壊してしまったので別のビルに場所を移し、二戦目。今度は敵チームにIチーム。ヒーローチームにBチームで行われたが、勝負は一瞬で決まった。最初にBチームのメゾーが個性で敵チームの位置を捕捉し、ショートがビルを丸ごと凍結させて完封勝ちした。て言うか、私達のいる地下室まで凍りかけてたからとんでもない規模の個性の発現だった。地下室では私が手足をヒーターに換装して暖を取って寒さを逃れたけどIチームはショートが氷を溶かすまで結構な極寒地獄だったんじゃないかな。

 それはそうとトール。いくら君の個性を最大限活かすためと言っても異性の前で気軽に全裸になるんじゃありません。マシラオ困ってたよ。

 

 その後も訓練は続き、ついに私を除いた全チームの戦闘が終わった。途中から保健室に搬送されたイズクも帰ってきて、すごい楽しそうな顔でクラスメイトの個性の分析をしてて思わず笑ってしまった。君、ほんの少し前まで結構な重症だった筈なんだけどなぁ?

 楽しそうに分析するイズクの一方で、バクゴーは訓練が進むにつれてその表情を落ち込ませていった。まあ、然もありなんってヤツだろうね。今まで自分と並び立つ者がいない環境で過ごしてたのが、いきなり自分と同レベルばかりの集団に入れられたら膨れ上がった自尊心もボコボコだろう。

 

「それでは最後!機械島少女の番だ!!」

 

 ついに私の訓練が始まる。

 

 

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