文化祭でハルヒが歌うだけの話   作:リーグロード

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前回から1週間も間があいてしまった。投稿スピードを早めたい!けど、内容はしっかりしたのを書きたい!
どっちもしなくっちゃあ~ならないってのが小説家のつらいところだな。

覚悟はいいか?オレはできてないぜ。

アリアリアリアリアリ……アリーヴェデルチ!!!


とあるライブハウスでの一幕

 下北沢のライブハウス『STARRY』でバイトする結束バンドのメンバーは、仕事終わりの時間に軽く雑談を交わしていた。

 

「いや〜、今日もお客さんいっぱいで疲れたねー」

 

「はい! ですけど、最近ようやく仕事にも慣れてきたので、最初の頃よりかはずっと楽になった感じがします!」

 

「あっ、虹夏ちゃんも喜多ちゃんもお疲れ様です。すっ、すみません。今日も何の役にも立てないミジンコで……」

 

 今日も今日とてコミ症を発症してお客とまともに会話することすらできずに2人にフォローしてもらった負い目からどんよりとミジンコに変化するひとりにリョウがフォローを入れる。

 

「まあ、落ち込むな。ぼっちもなかなかに仕事を頑張ってたぞ!」

 

「何上から目線で言ってんだ。あんたがこっそり仕事中にうたた寝してたの、こっちはちゃんと知ってるんだからね!」

 

 上から目線でフォローを入れるリョウの脳天にチョップを叩き込んで怒る虹夏。

 いつもの何気ない日常の1コマに、喜多ちゃんもぼっちちゃんも笑って見ている。

 

「あれ? これなんですか?」

 

 そんな他愛ない時間を過ごしていると、喜多ちゃんが部屋の隅に置かれていた小道具であるサイコロを発見した。

 

「ああそれ。前に喜多ちゃんがいない頃に話題作りの一環として使ったやつだよ」

 

「懐かしい……。あの頃からぼっち面白かった。そして虹夏がツッコミ入れてぼっちをへこましてた。プププ……」

 

「うっさいわ! ……って、それにしてもちょっと前のことなのに、なんか懐かしいね」

 

「そうですね……って、あれ!?」

 

「えい……!」

 

 いつの間にか喜多ちゃんが何気なくサイコロを転がすと、出た目は学校の話題が止まった。

 

「えっ? 急どうしたの喜多ちゃん??」

 

「だって、私だけ仲間外れなんて寂しいじゃないですかー!!」

 

「いや、それは喜多ちゃんが逃げちゃったからで……。あっ、ごめんごめん。私が悪かったからそんな光の消えた目で椅子に座らないで!!!」

 

「あの頃は本当にすみませんでした。急にバックれた挙句に連絡すらせずにごめんなさい……」

 

「よっ、よ~し! リョウ、最近あった学校の面白い事言ってみよう!!」

 

「逃げたなコイツ……」

 

 とはいえ、折角時間もあることだしとリョウも虹夏に続いて最近あった学校の話題を語りだす。

 まあ、内容はリョウが自由奔放し過ぎて虹夏が苦労したという話だが。

 

「じゃあ、次は喜多ちゃん! いってみよー!」

 

「そういえば、2人の通っている秀華高校の話を聞いたことない。前はぼっちの地雷を虹夏が踏みぬいたから……」

 

「お前もう本当黙れ……」

 

 感情が完全に抜け落ちた顔でリョウを睨む虹夏。

 

「あ、あの……! だったら、今度やるウチの文化祭の話なんかどうでしょうか?」

 

「おっ、いいね! そういえば、友達に1回だけ秀華高校の文化祭がヤバいって話を聞いたんだけど。あの話って本当なの?」

 

「ああ……。涼宮ハルヒ先輩が絡んだ事件のことですね……」

 

「「「涼宮ハルヒ先輩???」」」

 

「いや、虹夏先輩とリョウ先輩はともかく、なんで後藤さんも首を傾げてるの!?」

 

「あっ、ごめんなさい。そういうことを喋れる友達とかいなくて……」

 

「ああ、ごめんごめん。本当に悪気は無かったの! だからそんなに落ち込まないでぇ!!!」

 

 喜多ちゃんの悪意のない言葉にぼっちは心に200のダメージを負った。ぼっちはネガティブボッチに退化した。

 

「ほ……ほらほら、その……涼宮ハルヒ先輩だっけ? その人って一体何をやったの?」

 

 場の空気を切り替えようと虹夏が先程の喜多ちゃんの口にした涼宮ハルヒ先輩について聞いて話題変換する。

 

 とはいえ、虹夏もその涼宮ハルヒ先輩という人物が何をしでかして他校にまで噂が広がったのかは気になっていた。

 

「えっとですね。私も去年は中学生だったから友達からの噂話しか知らないんですけど。曰く、漫画の中のキャラみたいな人らしいですよ」

 

「漫画の中のキャラ? どういうこと??」

 

 いきなりのふわっとした紹介にリョウが理解出来ずに内容の追求を求める。

 

「ああ、すいません。これだけじゃよく分からないですよね。つまりですね、涼宮ハルヒ先輩は美人で成績優秀で運動神経抜群、学年問わずの交友関係を持ち、様々な学園イベントで伝説を作る問題児って感じの人なんです」

 

「うわ~、美人なうえに成績優秀で運動神経抜群ってだけでヤバいのに、その上に社交性のある問題児って、かなり設定モリモリだね~」

 

「うん。私も流石にそこまで設定は入れ込んでない」

 

 ちょっと多すぎる設定の量に若干引き気味の両者であるが、あえて深くツッコミを入れることなくスルーする。

 そのまま話を続けてもらおうとしたが、虹夏がふと違和感を覚える。

 

「って、あれ? そういえばぼっちちゃんはどこ行ったの?」

 

 気がつけばぼっちちゃんの姿がいつの間にかいなくなっており、キョロキョロと探す虹夏。

 すると、リョウがツンツンと床の方を無言で指差しして何かを伝えようとしてくる。

 

「ん? なに、リョウ? って、うわぁ!? ぼ、ぼっちちゃんがぁぁぁ!!!」

 

「あばばばばばばば……」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

 顔面崩壊からの全身超ガクブルで震えているぼっちちゃんが床の上で転がっていた。

 

美人……成績優秀……運動神経抜群……社交性あり……

 

「大変だわ! 後藤さんの青春コンプレックスが全部刺激されて体の構造を維持できなくなっているわ!!」

 

「体の構造が維持できないって何!?」

 

「やっぱり、ぼっちは面白い」

 

「もう無理……。そうだ、私はミジンコ……地面の汚れ……」

 

「ああ! ついにぼっちちゃんがスライムに!!!」

 

「虹夏先輩! 早く後藤さんを集めないと!!!」

 

 ドロリと溶けて床と一体化しかけるぼっちを必死にかき集める喜多ちゃんと虹夏。それを傍らで何もせずにただ面白がって眺めているだけのリョウ。

 現場は混沌とした様子だったが、なんとか床に溶けたぼっちちゃんの体のパーツを捏ね繰り混ぜて復元し直すことには成功する。

 

「あの、ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした」

 

「いいよいいよ。心配しないでぼっちちゃん」

 

「そうよ。あの程度、もう結構慣れちゃったから」

 

「…………」

 

 何かしらの違和感を感じる。なんだろう? 

 こうやっぱり……。

 

「ぼっち、なんか……背高くなってない?」

 

「「「なっ!!?」」」

 

 リョウの発言に3人の背にピシャンと雷が降り落ちる。

 確かに、よく見てみればぼっちの顔を見るには顔を上げなければ見えなくなったし、頭だってちょっとジャンプすれば天井の照明に当たりそうなくらいに伸びている。

 

「これはあれだね……」

 

「ええ……」

 

「2人が復元ミスったな」

 

「「ごめんなさい、ぼっちちゃん!!!」」

 

 リョウの指摘に条件反射レベルのスピードで即座に謝罪を決める喜多ちゃんと虹夏。

 

「あっ、あの、気にしないでください。別に後で分裂して小さくなりますから……」

 

「なんか、そういう能力者みたいなのになってる(笑)」

 

 とりあえず、ぼっちちゃんの復元ミスは帰る前にはなんとかなるらしいので、一旦は保留にすることが決定した。

 

「それで、結局その涼宮ハルヒ先輩って人のこと何も聞けてないんだけど……」

 

「そういえばそうだね。なんか凄い人ってのは何となく分かったけど、具体的にどう凄いのかは分からないままだよね?」

 

「そうですね。まず涼宮ハルヒ先輩はウチの秀華高校に入学してからテストでは常に満点なんですよ。それ故に秀華高校きっての天才なんて言われていて、ただ学年1位になるだけでは飽き足らず、交友のある先輩方から過去問を見せてもらってテスト前に疑似テストプリントを作成しての勉強会なんかを開いて、学年の平均点を20点近く上げたって話が有名ですね!」

 

「えっ、それマジなの?」

 

「本当だとしたらヤバいね。そりゃ有名にもなるはずだ……」

 

「それだけじゃないんですよ! 運動系の部活で助っ人なんかに呼ばれては練習試合でバンバン得点を決めてチームを勝利に導いたり!」

 

「ああ、なんか昔の少女漫画に出てくる王子様感がヤバいね」

 

「確かに、それだけの事をやってたら成績優秀で運動神経抜群なんて言われててもおかしくないね」

 

「そうなんですよ~! って、アレ? 後藤さんは……?」

 

 気づけばまた再び姿が消えていたぼっちを探すと、今度は部屋の隅っこで泡を吹いて体育座りをして震えていた。

 

なにその陽キャエピソード……私なんかが同じようにしても勉強会には誰も集まらず1人ぼっちで終了。テスト返却は赤点の学年最下位。部活なんて誘われることもなく、もし運動部に入ろうものなら陰キャが出しゃばって来やがってとイジメの対象になって学校をひっそりと退学に……ああああああああ!!!! 

 

 エクソシストに悪魔祓いされる被害者の女性のような叫び声を上げるぼっちに慌てて駆け寄る3人。

 

「お……お……落ち着いて、ぼっちちゃん!!」

 

「大丈夫よ、後藤さん。しっかり深呼吸して……」

 

「……このままぼっちを溶かしてもう一度復元したら?」

 

「「それだ!!!」」

 

 少しするとぼっちちゃんのいつもの妄想負のスパイラルで勝手に溶けていき、ちょうどいいところで今度は道具も使ってちゃんと元のぼっちちゃんの状態へと復元し直す。

 

「「できたー!」」

 

「あっ、ちゃんと戻ってる。すみません。何度もお手数をおかけして……」

 

 鏡で元の姿に戻ったのを確認すると、迷惑を掛けたことへの謝罪をするひとり。

 

「問題ない。それもまたぼっちのいいところ」

 

「って、あんたは一切手伝いしていないじゃない!」

 

 ポコッとさり気なくぼっちちゃんに恩を売るリョウの頭を小突いて反省を促す虹夏。

 

「いや~、それにしても本当に凄い人なんだね。その涼宮先輩って人は……」

 

「うん。聞いてるだけでヤバい人ってのは充分に伝わってきた。けど、なんでそんな凄い人が問題児って言われてる?」

 

「ああ、そうですよね。普通はそう考えちゃいますよね」

 

 確かに、今までの話を聞いていると、涼宮ハルヒという人物は問題児などとはまるで真逆の存在のように思える。

 

「けど、その成績が優秀すぎるがゆえに教師陣もちゃんと注意することが出来ず、イベントごとではとにかく盛り上げることに力を入れすぎるあまりに、涼宮先輩は校内では『歩く核弾頭』と呼ばれています」

 

「「「……はい?」」」

 

 あまりにも予想外すぎる単語に思わず聞き返してしまう。

 

「えっと、どういうこと? 喜多ちゃん」

 

「そのままの意味です。涼宮ハルヒ先輩はとにかく破天荒が服を着て歩いている存在だって噂はよく聞きますよ」

 

「例えば?」

 

「そうですね。まず第一に思いつくのは服装ですね。涼宮先輩って結構なアニメ好きで、好きなアニメが終わったら、そのアニメキャラのコスプレして学校に来たりするんですよ」

 

 ほらっと友達から送ってもらった涼宮ハルヒのコスプレ写真を見せる。

 そこには嬉々としてどこぞの艦隊娘の衣装を着こなしながら校門で先生に注意されている涼宮の姿が写っていた。

 

「へぇ~、マジでこんな格好して学校に来てるんだ。それにしても、横顔だけしか写ってないけど、本当に美人さんだね」

 

「こ……こ……こんな格好で学校に行けるだなんて。私だったら絶対に無理です……」

 

「いや、ぼっちちゃんも割とそのピンクジャージ目立ってるからね……」

 

「あっ……、その、すみません」

 

「ああ……! 落ち込まないで、ぼっちちゃん。ほ、ほら、でもぼっちちゃんのピンクジャージ結構似合ってるよ!」

 

 まさかツッコミされるとは思っていなかったのか、虹夏にツッコミを入れられたひとりは露骨に落ち込んだ。

 それを、隣りからまた虹夏がぼっちをイジメてるとリョウが揶揄ってくる。

 

 その後も喜多ちゃんから涼宮先輩のやらかしや学校での問題行動を面白おかしく語ってるとあっという間に時間は過ぎていった。

 

「ああ、もうこんな時間。私達は平気だけど、そろそろ帰らないとぼっちちゃんは家が遠いから危ないんじゃない?」

 

「そうですね。それじゃあ、お先に失礼します」

 

「お疲れ~、それじゃあ私達もそろそろ解散しよっか」

 

「そうですね」

 

「私も眠いし、先に帰るね~」

 

「あっ、待ってくださいよ先輩。私も一緒に帰ります」

 

 ひとりが帰っていったのを皮切りに、リョウと喜多ちゃんが帰路へとついた。

 残ったのは虹夏ただ1人で、することもなくなった虹夏はおもむろに自身のドラムスティックを握って机をドラムに見立て演奏の練習をする。

 

「タッタ、タタタン」

 

 次の文化祭で演奏する曲を練習しながら、喜多ちゃんから教えてもらった涼宮ハルヒという人の事を思い浮かべる。

 

『なにより、涼宮先輩って軽音楽部の人で、文化祭では1年と2年の時に音楽で大喝采を搔っ攫った超凄い人なんですよ!』

 

 聞けば聞くほど出てくる涼宮ハルヒという人物の偉業や去年と一昨年の文化祭での活躍に虹夏は内心で緊張していた。

 自分達結束バンドがもし涼宮ハルヒ率いる軽音楽部と比較されて大したことないと思われたらどうしようかと不安に思う。

 

 決して自分達結束バンドが下手であるとは思わない。初のライブから時間も経ち、喜多ちゃんやぼっちちゃんも最近はメキメキとバンドマンとしての腕を上げていっている。

 これならきっと文化祭で失敗することはないだろう。

 

 それでも……。

 

「はぁ~、涼宮ハルヒ先輩かぁ~。そんなに凄い人の演奏ってどんな感じなんだろう?」

 

 STARRYで日頃バイトしながら他のバンドグループの演奏はよく聞いているが、軽音楽部という同じ高校生の……それも部活動している子らの演奏は学業ごとなどのイベント以外でははっきり聞いたことないので、どれ程のレベルかは正直想像しにくい。

 けれども、喜多ちゃんからの話しぶりからして、きっとそこらのバンドマンじゃ太刀打ちできないくらい凄い腕の持ち主なんだろうなとは予想できる。

 

 もしそれで秀華高校の人らから軽音楽部に比べて結束バンドって下手じゃね? と落胆されでもしたら……。

 

「うう……。駄目だ! ぼっちちゃんみたくネガティブな発想しか浮かんでこない」

 

 ガクッと頭を抱えて項垂れる虹夏の耳に、ガチャッと部屋の扉が開く音が耳に届く。

 

「あれ? まだ練習してんの?」

 

「あ、お姉ちゃん。いや~、次にぼっちちゃんの学校の文化祭でやる曲の練習がしたくてね~」

 

 心配をかけないようにすぐさま笑顔に切り替えて答える。

 

「ふーん、そういえばそんなこと言ってたわね。……ねえ、あんた最近なんかあった?」

 

「え? なんで?」

 

「いや、なんか今のあんたの顔、なんか無理してる感じがしたから……」

 

「べ……別に何もないよ! いつも通り元気いっぱいだよ!!」

 

「……そう? まあいいわ。あんまり根詰めすぎちゃダメだかんね」

 

「うん、分かってる」

 

「そう……、ならいいけど」

 

 そう言い残して星歌は残りの仕事を片付ける為に去っていった。

 そんな、ぶっきらぼうながらも心配してくれる存在がいるということに内心の不安が溶かされていくのを感じる。

 

「本当に……、お姉ちゃんはツンデレだな~」

 

 姉の背中を見つめながら、虹夏は静かに決意する。

 

「よし!文化祭までにもっと上手くなって、涼宮先輩にも負けないようなバンドになるぞ!!」

 

 そうして虹夏はまた気合いを入れて練習を再開させる。

 

 

 

 




今回は涼宮は登場しませんでした。
涼宮ファンには申し訳ないが、ぼっちちゃん達結束バンドが涼宮という人物を知る回が欲しかったんです!
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