つい衝動的にステージからダイブしてしまって涼宮先輩に迷惑を掛けてしまった。
何であんなことをしちゃったんだろう? やっぱり、きくりお姉さんの真似をするなんてするんじゃなかった。
新たに出来た黒歴史にズーンと落ち込んでいると、虹夏ちゃん達が慰めてくれる。
「まあ、どっちも怪我とか無かったし、結果オーライじゃない?」
「ぼっちはロックだった」
「い……印象には残ったと思うわよ」
「あっひゃっひゃっひゃ、さっきのは良かったよ、ぼっちちゃん」
「うっさい! お前は黙ってろ!!」
ゴチン! と頭に拳骨を入れられて強制的に黙らさせられるきくり。
それでなんとか前を向ける程度まではメンタルが回復したひとりだが、そこで見える景色はハルヒ以外が揃った軽音楽部のメンバーで、再びやっちゃったと凹むひとりだった。
一応予備の着替えがあるとはいっていたが、もし自分のせいでライブが中止にでもなればと思うと……。
「あがががが……」
「ああ! ぼっちちゃんがまたフリーズを起こして変な挙動に!?」
「これは多分あれですね。涼宮先輩が中々出てこないから、もし中止になったら自分のせいだという妄想に陥ってますね」
ガタガタと壊れたおもちゃみたく震えるぼっちちゃんの介抱をしていると、壇上が騒がしくなった。
見ればそこには派手を超えてエロイとしか表現できない大人なお店で出てきそうな服装の涼宮先輩が登場していた。
「「「「うおおおおぉぉぉぉっっっ!!!!」」」」
数瞬してようやく現状に理解が追いついた男子生徒が一斉に咆哮のような興奮した雄叫びを上げる。
「あわわわ! わ、私のせいで……あれ?」
こんな惨状を作り上げた原因になったことに慌てていたが、ふと視界に家族の姿が映った。
「うおおおおおっ!? っぐふ!!?」
「あなた、帰ったらお話しましょうか……」
涼宮先輩の衣装に興奮したお父さんがカメラを向けようとした瞬間にお母さんの恐ろしく速いボディブローが炸裂した。これ、帰ったら家族会議かな? いや、私は何も見てない! 見てないったら見てないんだ!!
「シャラ────ップ!!!! 」
「っっ!!?」
びっ……ビックリした。周りの人達も涼宮先輩の突然の叫び声に驚いて、先程まで上げていた声も鳴りを潜めていた。
そして続く涼宮先輩の言葉に私は意識を奪われた。
「ここで多くは語らないわ。ただ、最高の演奏を聞かせてあげる。騒ぎ立つのなら、それを聞いてから騒ぎなさい!!!」
そして始まる軽音楽部の演奏。それは先程の言葉を体現するように、聴く者全てを魅了するようなそんなパフォーマンスだった。
『答えはいつも私の胸に……』
透き通るような歌唱力、そして当然だけども、いつも俯いてまともに観客の人達と目を合わせられない私と違って自信満々に顔を上げて歌う涼宮先輩に、私は目と心を奪われた。
今歌っているあの人達を見ていると、自然と胸が熱くなってくる。あんな風になりたい! あの人もみたいに演奏してみたい!!
「……っ、が……頑張れぇ!!」
「えっ、ぼっちちゃん!?」
気が付くと私は腕を伸ばして、応援の声を上げていた。
それに驚いたように虹夏ちゃん達が私の方を見るけど、気にしない。というよりも、意識がいかなかった。
涼宮先輩の歌声だけじゃない、ギターの腕も、他の部員の人達の楽器演奏の技術も何もかもがプロレベルに近かった。
『冒険でしょでしょ!? ホントが噓に変わる世界で夢があるから強くなるのよ、誰の為じゃない』
曲がサビに入った。周りの人達も涼宮先輩が登場した時以上盛り上がり、曲のリズムに合わせて歓声や手拍子なんかを送っている。
そして、それに合わせて涼宮先輩の歌声は更に澄んでいくようで、とても心地いい声色をしていた。
『始まりでしょでしょ!? キレイが闇を照らすみたいに、私のチカラあなたの涙、どっちも正しいの』
ただ演奏しているだけじゃない。時折ステップを踏むように壇上を移動しながら体育館内にいる人達全員と顔を見合わせれるように踊ってみせている。
カッコいい! まるで……そう、私がネット上で演じてみせているヒーローみたいだった。
いや、涼宮先輩は可愛らしいし、ヒーローよりもアイドルの方が似合うんだろうけども……。
それでも、あの姿は私にとってヒーローのように思えた。
『明日過去になった今日の今が奇跡、確かな~未来を~、つかもう~未来を~、Ibelieveyou……♪』
気がつけば1曲目の演奏は終わっていた。それでも、観客の熱気は冷めておらず、今もわああぁぁぁ!!! とあちこちで声が上がっている。
そんなみんなの声を受けて汗をかきながらハルヒはマイクを手に更に盛り上げんと声を上げる。
「みんな! 盛り上がった? 盛り上がってるよね!! なら、もっと熱くなれるようにテンション上がる2曲目いっくわよぉぉぉ!!!」
『ハレ晴レユカイ』
前奏はさっきよりも長く、その間、涼宮先輩はギターの演奏を最低限にしながらほぼダンスを踊っていた。
ギターの平均的な重さは2.7〜4.5 kgくらい。それを担いだままあんなパフォーマンスが出来るなんて……。
体力の無い私じゃきっと最初の方でバテてゼーハー! と息を切らしてるんだろうな。
『アル晴レタ日ノ事、魔法以上のユカイが限りなく降り注ぐ、不可能じゃないわ』
本物のアイドルのように歌って踊ってみせる涼宮先輩に、この体育館にいる誰もが目を奪われている。
いや、目だけではく心すら鷲掴みにされているのではないだろうか?
だって、今の自分がそうなのだから。
さっきまで私たちが立っていたあの舞台で同じように演奏する涼宮先輩の姿に胸がざわついて仕方がない。
彼女がそこで歌って踊れば、いつも使っている慣れ親しんだ体育館がまるで武道館のホールみたいに思える。
本当に凄い! これが涼宮ハルヒ先輩の実力……。
「……っ、ハルヒ先輩!」
これってアレだよね、きっと……。──―憧れ、だよねぇ。
「う……うおおぉぉぉ!!! LOVE❤️ハ・ル・ヒ!!!」
「うわぁ!? ぼっちちゃんが急にオタク化した!?」
「ぼっちめ、ここにきて覚醒したか!?」
「っていか、後藤さん。なんなのその壊れた玩具みたいな動きは!?」
コミュ症とは思えない程にピョンピョンとコミカルに飛び跳ねて必死に応援するひとり。
少し不気味さはあるが、ただ見てる分には愉快な動きであるため、そこまで酷くは言わないが、虹夏は内心でもし結束バンドでダンスなど踊るような真似があってもぼっちちゃんには大人しくしていてもらおうと心に決めた。
そんなひとりの熱が周りにも電波したのか、その周りにいた観客達も同じようにオタ芸さながらの動きをハルヒのダンスに合わせて踊る。
「「「「うおおおぉぉぉぉ!!!! LOVE❤️ハ! ル! ヒィ!」」」」
『キラキラ光って、厚い雲の上を飾る、星たちが希望をくれると、時間に乗ろうよByuuuuuun!!!』
そんな観客の応援を受けてハルヒは更にダンスのキレを加速させていき、歌声はもはやこの体育館の中にいる人間全員を魅了し聞き惚れさせている。
そして曲がサビに入ると、今まで踊っていたハルヒはステップを踏む足を止め、その場でクルリと回りながらマイクを持っていない左手を大きく広げると、それを見た観客達は皆一様に息を飲む。
そうして一瞬だけ静寂が訪れたと思ったその時、ハルヒは大きく息を吸い込みながら両手を広げ、満面の笑みを浮かべて声高らかに歌い上げる。
『手と手を繋いだら、向かうとこ無敵でしょ。輝いた瞳には、不可能がないの~♪ 上だけ見ていると、涙も乾いちゃう「変わりたい!」ココロから強く思うほどつ・た・わ・る♪ 走り出すよ~、後ろの人も~おいでよ、ドキドキッするでしょ?』
ここまでくると体育館内は阿鼻叫喚といった具合に、見様見真似でハルヒと一緒に踊る者もいれば、感涙に伏せて嗚咽を流す者、ひとりのように完全にファンとなってオタ芸を披露する者と様々な反応をみせている。
誰しもが軽音楽の作り出した熱に浮かされて今この瞬間を全力で楽しんでいるのだ。
『おおきな夢&夢、スキでしょ?』
そんな熱狂的な空気のなか、ついに曲が終わり、流石のハルヒも汗と共にハァーハァーと息を切らしているが、それでも笑顔は絶やすことなくマイクを握って前を向いている。
「すぅ~はぁ~、みんな盛り上がった~? なんて、野暮なことは聞かなくてもよさそうね」
「「「「「うおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」」」」
「この勢いのまま3曲目に突入! って言いたいとこだけど、ちょっとだけ休憩させて……。流石に今の状態で次に歌ったら途中でバテるって分かっちゃうから……」
本当に申し訳なさそうに謝るハルヒだが、そんなハルヒのお願いに観客は不満など一切ないと言わんばかりに肯定の声や体の心配をする声が上がる。
その声に嬉しさを覚えると同時に次の曲でそんな彼らの度肝を今まで以上にぶっこ抜いて上げるとテンションを更に胸の内で上げる。
「よ~し! 回復完了ぅ!!! みんなも次の曲の準備はOK?」
「「「OK!!」」」
「よっしゃー! なら、私たち軽音楽部ラストの曲『God knows』いくわよ!!!」
「「おおおぉぉぉぉ!!!」」
ハルヒの宣言によって再び歓声が上がり、観客達のボルテージは最高潮に達する中、ハルヒはマイクをスタンドに戻してからギターを持ち直すと、それに続くように他のメンバー達も楽器を構え直し、演奏準備を整える。
さあ、最高の演奏を始めよう……。
これは面白いのか?ずっと書いてたらだんだん自信が無くなってくる。
頼む!面白いと思ったら感想を送ってくれぇぇぇ!!!
本当に次回の話が出来るかどうかは感想次第かもしれん!!!