あと、今回のぼっちちゃんは色んな意味でぶっ壊れ風に書いてます。
軽音学部の部室では先程まで体育館にいた生徒たちがこぞって列をなしていた。
その理由は体育館で演奏された3曲が収録されたCDを買うためだ。
「うわ~、すっごい行列!」
「ここにいる人達全員がみんなあの歌に魅了されちゃったんだろうね」
「それぐらい、あの演奏は凄かった……」
「で、ですね。私も思わず……その、はしゃいでしまいましたし」
「いやいや、あれははしゃいでたというよりも……」
「暴走でしたね」
「でも、ロックだったぜ!」
「…………」
自身が思っていたよりも奇行を晒していたことに、スーンと落ち込んだ様子を見せるひとり。
そうこうしているうちに列は進んでいき、ようやく軽音楽部の部室手前まで進む。
「おっ、もうすぐで中に入れそうだよ」
前に並んでいた人が部室内に入っていき、もう少しで買える位置まで来たところで、廊下の後ろの方から騒がしい声が聞こえてきた。
「ほら!どいたどいた!!」
「ちょっ、スピード落とせ、ハルヒ!!」
「あ~、みんなごめんね~」
「すみません!すみません!!」
楽器を乗せた台車を勢いよく押して駆け抜ける4人の少女がこちらに向かって爆走してきた。
「到~着~!!」
「「「楽器が落ちる~~!!?」」」
急ブレーキをかけたことで台車に乗っていた楽器がバランスを崩して落ちそうになるが、間一髪のところでハルヒ以外の3人が支えて落ちるのを防いだ。
ナイス!と見事な動きをみせた3人に親指を立てて賞賛するハルヒ。
まあ、すぐさま3人から手痛いツッコミ(しっぺ、デコピン、馬場チョップ)を貰っていたが。
「あいたたた……」
「あんたは勢いだけで行動し過ぎなのよ!」
「もうちょっと~、私たちの苦労を~、考えて~」
「そうですよ。次やったら……後は言わなくても分ってますね?」
「はい……」
怒られてしょんぼり反省するハルヒに納得した3人は並んでいる列に隣を失礼しますと断りを入れてから通り過ぎていく。
「「「「…………」」」」
本当なら、あんな演奏を披露してみせた軽音楽部の彼女らに話しかけてみたかった結束バンドらだが、あのハイテンションな漫才みたいなやり取りの間に入ることができず、普段は変人を自称するリョウですらも、目の前で行われる軽音楽部のノリにはついていく事ができず、ただ眺めるだけに終わるモブみたいになってしまった。
「あ〜、ほら!前に並んでいた人もう購入し終わってるよ!私たちも行こっか」
「「「はっ!」」」
虹夏の言葉にようやく今の騒動のフリーズから正気に戻った3人が動き出した。
軽音楽部の部室に入ってみると、そこにはハルヒにヘッドロックをかけられている男子生徒がいた。
「いででで……!!」
「あっはっはっは!廊下まで人が並んでたからある程度予想出来てたけど、凄い売り上げじゃない!これなら打ち上げパーティーはオールナイトね!!」
「はいはい!ハルヒ、打ち上げの話もいいけど、お客さんが待ってるからキョン君から離れな!」
パコン!とハルヒの頭をぶっ叩く三浦に涙目で睨もうとするハルヒだが、それ以上の眼力で睨み返されてしまい押し黙ってしまう。
「って、あら?なによ、お客さんって結束バンドのみんなだったのね!」
ようやくこちらの存在に気が付いたのか、正面に立つ私たちと目線が合うと、テーブルの横に積み立てられていたCDを4枚抜き取ると、それを無造作にこちらに差し渡してくれた。
「あの、お金は……?」
「いいのよ、別に!これは私からの結束バンドへのプレゼントってことで!!それに、作者もどうせ文化祭で売られるCDの値段とか調べるの面倒だからこういう展開の方が楽でいいのよ!」
「それ言っちゃていいんですか!?」
「大丈夫だ、問題ない。こういうのは貰っちゃた方が双方にとって嬉しいもの」
タダでCDが貰えるということで虹夏の遠慮の声を押しとどめる山田。それに便乗してハルヒも「そうよそうよ!」と言うので有難くCDを貰うことにした。
もちろん、山田には虹夏からチョークスリーパーを掛けられることになったのだが、それを止める者はいなかった。あとついでにハルヒも三浦からチョップを貰っていた。
「ノオォォォォ!!!」
「あ痛っ──!」
「「反省しろ!!」」
似た者
「あの、さっきの演奏凄かったです!」
「前々からここの軽音楽部の演奏はヤバいって噂は聞いてましたけど、それ以上って感じでした!!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「ま~、頑張って~練習してきたからね~」
わざわざ直接感想を言いに来てくれた2人に嬉しいと返す。
「ふっふ~ん!それもこれもリーダーである私の教育の賜物ね!」
「わっ!涼宮先輩!?」
「あれ、さっきまで三浦先輩から折檻喰らってませんでした?」
突然背後から声を掛けられて驚く後藤と喜多ちゃん。後ろを見れば未だ折檻を喰らってる山田の姿はあったが、ハルヒに折檻を喰らわせていた三浦は結束バンドの後ろに並んでいたお客の相手をしていた。
その隣にはキョンと呼ばれていた男子生徒も一緒になっていて手伝いをしており、中々のスピードでお客さんたちを捌いている様子だった。
「そうだわ!ねえ、今日の打ち上げパーティー、あなたたちも一緒に参加しない?」
「えっ!?いいんですか?」
「いいのよ!ね?みんなも賛成でしょ!?」
ハルヒの提案に喜多ちゃんが驚いていいのかと尋ねるが、ニッ!といい笑顔で親指を立てて大丈夫だと答え、周りで聞いていた3人にも大丈夫かと聞いてみる。
「いいもなにも、まずはうちらにも確認してからOK出しな。まあ、別に反対とかはしないけど」
「あたしも~、結束バンドのみんななら~OKよ~」
「あたしも別にいいけど、キョンは大丈夫?」
「この流れで反対出来ると思うか?まあ、別に全然問題ねえけど……」
どうやら、全員結束バンドの打ち上げパーティー参加に賛成のようだ。
それにしても……。
「あの、キョンって人も軽音楽部なんでしょうか?」
「ああ、違うわよ。あの人はなんて言うか、涼宮先輩の友達以上恋人未満な関係の人よ」
こっそり隣にいる喜多ちゃんに耳打ちするひとり。
それに帰ってきた言葉が友達以上恋人未満という単語だったから、ひとりは背後に宇宙ネコを背負って思考を停止させていた。
え?涼宮先輩に恋人?いや、違う友達だ!?そうだよ、涼宮先輩に……ハルヒ先輩に恋人なんていない!
友達以上恋人未満なんてのも、距離感の近いハルヒ先輩だからそう見えてるだけで、本当はただの気の合う負けフラグが建った幼馴染系の友達なんだ!うん、そうに違いない!」
「あの……ひとりちゃん。途中から声に出てたわよ。主に負けフラグのところから……」
「はひぃ!?」
後ろを向いて見れば照れたような笑みを浮かべるハルヒ先輩とズーン!と落ち込んだように机に突っ伏しているキョンという男子生徒。
それと、何故かニヤニヤとしながらキョンにお・友・達と囁く三浦先輩の姿があった。
「あわわわ……!?」
「わぁ~!ひとりちゃんがまた顔面……というか、全身崩壊を!!?えっ、なんか手足バラバラになって宙に浮いてるんだけども?!」
「相変わらずぼっちはユニークだな」
この目の前で起こっている超常現象にもユニークで返す山田に軽音楽部のメンバーはいやいや!とツッコミを入れている。
「いや、落ち着いてる場合じゃないでしょ!?私が言うのもなんだけど、その子相当に変わってるわよ!?」
「まあ、それがぼっちちゃんの生態なんで。慣れたら結構愛くるしさも芽生えてきますよ」
これを慣れの一言で片付けちゃっていいの!?まあ、よく見ればネットとかで玩具になりそうな面白い絵面ではあるが、これに慣れるのはちょっと……。
「やっぱり、どこかであたしの世界改変能力が発動した?」
わなわなと震えながら自身の手を見つめるハルヒに虹夏たちは痛い人を見つめる目で見ていた。
とりあえず宙に浮いていたひとりの手足は山田が回収し、それを喜多ちゃんが器用にプラモを組み立てるようにくっつけて元に戻していった。
いや、普通は取れた人体の手足ってそんな風に元に戻らないんですけど……というハルヒの呆れ声のツッコミは軽く流されてしまう。
それから結局ひとりは体は元通りに治った……直ったの方が正解なのか?とにかく、元に戻ったのだが、顔を赤面させており、どうやら軽く羞恥心で気絶している様子だった。
そのため、結束バンドのリーダーである虹夏とハルヒがラインを交換し、残ってるCDを販売し終えたら連絡を入れると言ってその場は別れた。
「う~~ん……」
「あっ、ぼっちちゃん気が付いた?」
「はい?って、うぇ!?ど……ど……どうして私、虹夏ちゃんに背負われて!!?」
いつの間にか虹夏におんぶされている状況にひとりは困惑した声を漏らした。
そして思い出す、気絶する寸前の自身が犯した
「は~い!ストップだよ、ぼっちちゃん」
「ぼっち、今はただ忘れるんだ」
「そうよ、ひとりちゃん!1日に2回もあんな変形を起こしてたら、流石のひとりちゃんでも体に悪影響よ!」
1回でもアウトだから!という何故かここにはいないハルヒのツッコミが脳内で流れてきたが、気のせいかとみんな無視した。
とりあえず、ひとりも自身の精神の安定の為に何もない空に向かって「何もなかった。涼宮先輩はフリー。好意を持った男子なんて存在しない……」とブツブツ独り言を呟いている。
もし仮にハルヒが妊娠して双子の母になったという世界線があったなら、ストーカーになって腹にナイフをブスり!と犯ってしまいかねない危険な雰囲気があった。
どうやら彼女は涼宮ハルヒの持つ天才的な天性のアイドル性に目を奪われてしまったようだ。はっきり言って怖いです。
そうやってブツブツと独り言を繰り返すひとりにどう声をかけるべきか3人で思案していると、偶然にも文化祭を楽しみ終わって帰ろうとする後藤一家が通り掛かった。
初めは何もない空を眺めて念仏を唱えるみたく「ハルヒ先輩……キョン先輩は×××……」と意味深な感じで独り言を繰り返す娘を見てお祓いしなくちゃと慌てていたが、悪霊に憑りつかれたわけではなく、封印したい記憶が出来てしまったからと説明すると後藤一家は全員「「「なぁ~んだ、いつものひとり(お姉ちゃん)か……」」」と安心したようにほっと一息ついていた。
いや、私たちが言うのもなんだけど、家族としてその納得の仕方はどうなのだろうか?
「でも、ちょうどいいわ。みんなこのあとその軽音楽部の人達と打ち上げパーティーするんでしょ。だったら、ついでにウチのふたりもご一緒できないかしら?」
「えっ?母さん!?」
「いいの!お母さん!?」
後藤父とふたりがほぼ同時に後藤母に聞き返す。何故か父の方は焦ったような声色だったけども、気のせいかな?
「ええ、いいわよ。勿論、皆さんがそれでいいならの話しですけども……?」
「あっ、大丈夫ですよ。ふたりちゃん、礼儀正しいですし、迷惑なんてかけないもんね~?」
「うん、ふたり大人しくしてる!」
よしよしとふたりの頭を撫でて打ち上げパーティーにふたりが参加することが決定した。
ハルヒにもラインでその有無を伝えると、秒で既読がついてOK!のラインスタンプが返ってきた。
これで万事オッケーなのだが、何故か後藤父の顔色がとても悪そうに見える。人混みで疲れたのだろうか?ぼっちちゃんのお父さんなら有り得そうだし、早く家に帰ってゆっくり休んでほしい。
応援と感想……そして評価さえあれば……俺は何度でも戦えるからよ……。
止まるんじゃねえぞ!