役割を終えたミライトワは、自らの存在が消えゆくことを恐れていた。
そんな彼はソメイティにある提案をする。
「ねぇ…『セックス』…しない…?」
ミライトワが唐突に口を開く。
それを聞いたソメイティは、驚きながらも言葉を返した。
「…嫌よ。どうしてそんなことしなきゃいけないの?」
「僕らの役目である、『東京オリンピック2020』はもう終わったんだ。だから後僕たちにできることは…子孫を残すことだけなんだよ。」
ミライトワとソメイティは東京オリンピックのマスコットキャラクターである。
オリンピックのイメージキャラクターを務め、時にはぬいぐるみが、時にはプラモデルが、時にはロボットが作られた。
東京オリンピック2020が終わった今、彼らの存在は着実に薄れつつある。
「ねぇ…どうしてそんなこと言うの?私たちは子供たちの夢を背負って生まれたんだよ?だからこそ、最後まで綺麗に生き抜こうよ…。」
彼らはデザイン案3つのうちから、小学生からの人気投票によって選ばれた。
子どもたちの夢を背負って生きてきた存在なのだ。
「だからこそだよ。子供たちにも、性について教えてあげるんだ。」
「おかしいよ…正義感に溢れていたミライトワはどこに行ったの…?」
「いくら僕らが正義を願っても、僕らのぬいぐるみを作った会社は賄賂を渡すんだ。綺麗ごとなんて無意味さ。だからこそ…。」
―素晴らしい未来を永遠にするために、子孫を残すのさ。
その言葉を聞いたソメイティは、反射的にミライトワから逃げ出した。
彼女はテレパシー能力があるため、襲い掛かってくることはすぐにわかった。
「目を覚まして…ミライトワ…!」
ソメイティは空飛んだ。
彼女が羽織っている市松模様のマントは、空を飛ぶ能力がある。
逃げるにはうってつけの能力だ。
「おっと、忘れたのかい?」
すると逃げるソメイティの目に前に、ミライトワが現れた。
「何っ…!」
「僕の瞬間移動の前では、移動能力は…」
―無意味ッ!
ミライトワの特技は、瞬間移動である。
どんな場所へと週間移動ができるのに加えて、元々抜群の運動能力を所持しているため、瞬間移動の能力を有用に扱うことができるのである。
「う゛あぁーっ!」
ミライトワの踵落としによって、ソメイティは地面に叩きつけられる。
「…ふぅ、あぶなかった。」
しかし、地面にぶつかることはなかった。
ソメイティの特技は超能力、そして『念力』。
見るだけで対象を念力で動かすことができるのである。
地面に落下している間に、商店街にある布団に視線を向け、念力で動かしたのである。
「…へぇ、ソメイティの念力はそういう応用もできるんだね。」
瞬間移動によって、ミライトワが地面に着地する。
「これはどうかな?」
小石をソメイティに向けて蹴り飛ばした。
持ち前の運動能力で、正確なコントロールでソメイティを狙った。
「…聞こえる。」
しかし、ソメイティはそれを先読みして回避した。
何故なら、ソメイティは超能力で石や風と話すことができるのだ。
蹴られた石とそれによって生じる風からテレパシーで、石が飛んでくる方向を察知したのである。
「そういえば、君の能力はテレパシー能力もあったね。」
「瞬間移動だけで負けるほど、私は甘くないの…!」
「言うねぇ…だがッ!瞬間移動能力こそがッ!」
―最強にて、一番汎用性が高い。
ソメイティが念力で物を飛ばして抵抗する。
しかし、瞬間移動をするミライトワに当たる気配はない。
加えてミライトワが石や植物といったソメイティがテレパシーを図れるモノを、場外に飛ばしていく。
そのため、場に残ったモノは無機物なソメイティがテレパシーを図れないモノだらけになった。
それでも風とテレパシーを取り、ある程度は対応できる。
しかし、モノからテレパシーを取れないため、精度が落ちていくため、ソメイティはひたすらに消耗していた。
「はぁ…はぁ…」
「おや、もう限界かな?」
「そんなこと…」
「でも、君は限界な筈だよ。だから…トドメを刺そうか。」
ミライトワはソメイティに急接近する。
構えるソメイティ。しかし、目の前でミライトワが…
消えた。
何故なら、ミライトワは後ろに瞬間移動していたからだ。
後ろからミライトワがソメイティに飛び掛かる。
「うそっ…」
「僕の勝ち、だね。」
体力を消耗したソメイティは、無力だった。
体力勝負では、ミライトワの方が上手なのである。
そのまま、されるがままに、ソメイティはミライトワに押し倒された。
「それじゃあ…一緒になろうか…。」
「待って!!!!」
ソメイティがミライトワを静止する。
「何かな?無駄なあがきを…」
「なんで私達、一つになろうとしているの?」
「それは、子孫を残そうと…」
「私達…『両者とも性別の設定がない』んだよ!!!」
「へ…?」
ミライトワとソメイティ。
彼らには性別の設定がないのである。
「じゃあ僕らはこのまま…」
「…消えないよ。」
「消えるよ、僕たちは消えていくんだ…」
「私達は、インターネットに残り続けるから。」
「インター…ネット…?」
「私達は、インターネットの世界を行き来できる。だから私達は、インターネットに、残り続けることができる…!」
ミライトワとソメイティは現実の世界とインターネットの世界を行き来することができる。
インターネットは、あらゆる情報が、残り続けるのである。
「そうか…だから僕らの存在は残り続ける…。」
「…そうだよ。」
「だから、ミライトワさんが、性の本能に従った話も、残り続けるよ。」
「あああああああああああああああッ!!!!」
ミライトワの悲鳴が、インターネットの世界でこだました。
その話は、永遠に語られたのであった。