推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA 作:重曹ちゃんかわいい
夢への道しるべ
日曜日の休日。私は監督の家に来ていた。月に2、3回はお兄ちゃんと一緒にここへ来る。お兄ちゃんはなにか監督のところで演出? の勉強をしているらしい。ママがお休みの時ならママと一緒にいるけど、仕事なら、私はこっちについて行ってその間、監督の所で映画を見ている。
「あははは、おもしろー」
監督の部屋のDVDレコーダーでハリウッド映画を見ていると監督が声をかけてきた。
「毎度毎度自分の家みたいにくつろいでんじゃねえよ! お前、ほんと自由なやつだな」
「あっ、監督、お兄ちゃんとの勉強会は終わったの?」
「いや、今回は早熟のやつに頼み事をしてただけだよ。あいつ、マクロ組めるらしいからな。しかも、英語だけじゃなくてドイツ語を話せたり、プログラミング言語も出来たりわけが分からん。いつ何の為にどこで勉強してるんだ?」
プログラミング? は知らないけど、お兄ちゃんがせんせだった時に英語とドイツ語は仕事で不自由をしないくらいに話せるとか言っていたから前世で話せるようになったんだろうけど知らないふりしとかないと。
「さあ? よくパソコンとか見ているからそれでじゃない?」
「いや、普通はそんなもんで出来ないからな……って、なに見てるかと思えばホームアローンか名作だな」
「めっちゃ面白いよね」
「これでカルキンも世界一有名な子役なんて言われるようになったらしいからな。迫真の演技もあって30年経った今でも見て楽しめる傑作だ。くっそ俺もこんな作品作りてえな」
私が見ている映画を見て、監督が口を挟み始めたり感想を言い合ったり、しばらく雑談をしているとお兄ちゃんが帰ってきた。
「監督、データ収集マクロ作ったけど、これでいい?」
「お、早熟、出来たか。うわ、マジで作ってやがる。ほんと、お前、なんでもできるな」
「まあ、俺も最近は情報収集が面倒だから自動で収集させて簡素化したりしたやつを見るだけにしているから、その流用だし、たいしたことじゃないよ」
「いや、3歳児はマクロなんて組まないし、情報収集なんてしない。なんて今更だな。さんきゅ。これで無駄に時間使わずに済む」
お兄ちゃんと監督は毎回、こんな感じで監督の下でなにかを手伝ったりしていて、その対価に演出のことについて教わったり、仕事の時に助言を貰ったりしているらしい。
「で、早熟、この馬鹿のことなんだが」
監督が私のことを指さして失礼な事を言い出した。
「馬鹿って誰のこと?」
「誰ってお前以外居ないだろ」
「しゃー! しゃー!」
「ばっか、爪立てるな。わかった訂正するからやめろルビー」
ひっかいてあげようとしたけど、すぐに訂正したので許してあげた。私はどう考えても年齢的に考えれば相当賢いはず。お兄ちゃんが早熟なのに、私が馬鹿なのは納得がいかない。
「で、監督。ルビーがなに?」
「なに? じゃねえよ。こいつこれからどうするつもりなんだ?」
私のことについてらしい。
「どうって、雑誌とかでのモデルとかやりながら映画、ドラマに出て知名度を稼いで将来的にはアイドルさせようって話だったと思うけど」
「早熟、それは俺も悪くないと思ったけど、これからこいつ映画にもドラマにも大して出れなくなるぞ」
「えっ? なんで?」
この2年くらいの間、私は結構ドラマにも映画にも出てきたと自負してるし、エゴサしても結構かわいいとか凄いとか言われてたと思うんだけど。
「単刀直入に言うとお前使いにくすぎ。一回使ってくれたやつは特殊な役以外あんまりお前に出番与えたくないと思うぞ」
「じゃあ、監督が私に出番ちょうだい! 私演技上手いでしょ!」
「お前は突っ立ってるだけで目立ちすぎるんだよ。エキストラしても主演より目を引くときすらあるからアイより遙かに使いにくいぞ」
私に自覚は無いけど、私は目立つらしい。まあ、ママの娘だし、超美少女だから仕方ないかもしれないと言ったら呆れられた記憶がある。オーラ? とかそういうのがあるらしい。まあ、ママも可愛すぎて監督が使えないことあったし。と言ったらめちゃくちゃ渋い顔された。なんで?
「じゃあ、主演にして!」
「ふざけんな。メインキャストもろくにやったことないやつを抜擢なんて出来るか」
「じゃあ、そっちやらせてよ」
「お前が出来る役が限られすぎるんだよ。下手な役だと主役を食っちまうし、最悪、物語をめちゃくちゃにする。この間もたしかに評判は良かったよ。でも使えるのが超常の存在とかじゃねえか。普通の役柄やらせようとすると目立ち過ぎるからキャストに顔のいい一流どころをつれて来ないといけないし使いにくいんだよ、低予算の作品の監督があつめられるか」
「じゃあ、監督もはやくビッグになって高予算つかえる監督になってよ」
「そう簡単になれるか! お前ほんと馬鹿。もう早熟もよくこんなやつが務まるキャスト持ってくるな。なんだ? 前は語り手の怪しい少女役で、その前は神様、さらに前なんて天使、悪魔とかそんなのじゃねえか。まじでどこでそんなの見つけてくるんだ?」
「いや別に。出演する監督にルビーを紹介すると顔もいいからって割と簡単に出してくれる約束してくれるんだけど、実際に撮影して困るから困らないような役がないか知り合いに聞いてくれる」
「たらい回しにされてんじゃねえか」
監督は頭を抱えてる。
「本当、アイちゃんもだけど可愛いすぎるって罪だよね。中途半端な役だと主役食べちゃうから駄目って」
そう言うと監督がため息をついた後、お説教が始まった。
「お前はたしかに子役じゃずば抜けて可愛いしカリスマ性みたいなもんもある。演技だって才能あるよ。だが、そもそも子役でメインキャストの作品はあっても小学生高学年とか中学生あたりの世代からだ。幼稚園、小学生低学年で主演級の作品なんてあんまり無いんだよ。そんな数少ないやつを馬鹿食いしてる有馬かなとお前の兄貴のアクアで需要は満ちてるの! あとの食い残しみたいなのはみんな大手の子役のやつがコネで奪い合いやってるから」
「えー! かなちゃんのせいで仕事ないの?」
監督の所で出会ってからお兄ちゃんと共演することが多い人でお兄ちゃんと一緒にアクかなコンビなんて呼ばれてる。からかうと反応が面白い愉快な人だけど、メスの顔をしているので確実にお兄ちゃんを狙ってる。お兄ちゃんを毒牙から守らねばならないのでよくけんかになる。
「この業界は1番のやつに仕事をまず振って断られたら残りのやつに振り分けるってのが基本で、お前は同年代で実力なら2番手だけど存在感ありすぎて使いにくいし、知名度ないのと事務所が弱すぎて主演級の仕事じゃ仕事が振られるのは10番目とかになってる。あとお前の顔の需要は似てるアクアで十分なの。出られてるの全部アクアが監督とのコネ作って、そういう変な役ないかみたいなのわざわざ見つけてるだけだから、ほんとは仕事ないぞルビー」
「えー、それでも私にもやりやすい仕事ってないわけじゃないよね。なのになんでこんなに仕事ないの?」
「有馬かなはお前より態度がでかいし、口は悪いし、協調性もないやつだが、それだけのもんは持ってる。主演になるためのような存在感にオーラ、顔だってモデル並みにいい。知名度はダントツ。主演も何度もやってるから起用する側も安心して任せられる。なにより演技力はずば抜けて良いからな。最近の伸びは化け物みたいにやべぇし。同世代の女の子役はこいつが落ちるか、仕事量自体が増える小学校の高学年帯までずっとこいつの残り物だけだ。お前だけじゃないが、圧倒的な一番手のいる子役の二番手、三番手でメインキャストなんぞこの年代のやつらに殆ど出来ない。特にお前は有馬かなと特徴が被ってるからより状況は悪い」
容姿と存在感を除けばマイナス面もプラス面もお前の上位互換だな。と付け加える監督。小学生にもなってない子供に対して辛辣すぎる気がする。
「かなちゃんの世代の女の子達の子役さんたちかわいそ-」
「男の子役なんてアクアと比較されるんだぞ。最悪すぎんだろ。2年前に頭の良さと立ち回りは知っていたが、出演作品を増やす度にどんどん演技も学んできて、ここで演出もかじってるからな。出来る事が多すぎる。しかもリテイク出さないことでこいつ有名だからな。使いたいだろ」
それはそう。せんせが世界一格好いいのは知ってたけど、アクアになってから中身だけじゃなくて外見も世界一になっちゃったから、比べられる男の子は可哀想だ。
「主演級の役や存在感があり過ぎても違和感のない役しか出来ないけど、主演やメインキャストはかなが独占してしまって、スケジュールの都合上出られないのは大手の子役が奪い合いをしている。存在感がありすぎても大丈夫な役は少なすぎるか……まあ、考えがないわけじゃないけど」
「んっ、なんだ早熟。手があるのか?」
「一応ね。メディア上の俺のキャラはF2(35歳~49歳の女性)層にウケがいいんだよね」
「あの詐欺みたいな女性層がん刺さりのキラキラ王子キャラ。気持ち悪いけどほんとウケいいよな」
「その年代の人達は特定の異性の人に対する特別のやさしさとかより、家族を大切にする姿がすごく好きなんだよ。実際の現場だと同じ子役の子達を纏めてる姿とか年上に対する礼儀正しさとかで絶賛されていてインタビューとかでそれが認知されてるからね。自分の子供とかがこうやって育って欲しいみたいな理想像をあえて演じてるからね」
「俺から出演を依頼したときからそんなこと考えてたのか」
「まあね。結婚、出産を機に価値観が変わる人はみてきたからね。今の若い層ってテレビを見ない人が多くて、視聴率を大切にするメディアからしたら発掘はしていきたいだろうけど、それより目の前の数字を優先したいと思ってる。そして俺は年齢的にF1(20~34歳の女性)層の若い女性受けを取りにくいからF2層以上の女性に対して数値を取れるようにしていかないとってこのキャラを始めたわけだけど、ブームだから一時的だろうけど潜在視聴率が約3%くらいはあるって広告代理店からは認知されはじめてる」
「そんなに数字持ってんのかよ。お前のギャラ1本15万とかだろ。コスパいいな」
「だから俺の出演が欲しいところは家族ドラマとかそっちで使いたいから兄妹枠でルビーが取れるんじゃ無いかと思ってね。こうやって俺が仕事を選べる時になって、アイやルビーを使ってくれる所を優先して出るっていうのは散々関係者の人との間でも答えたから、ルビーにも機会はきっとくる。そこで結果をだせば一気に認知度だって上がるはず。正直、邪道だけどこうでもしないと有馬かなの牙城は崩せないと思ってる」
あのキラキラキャラ、最初は笑っちゃったけど、そういう意図があったんだ。私のために……そう思うと胸が熱くなる。
「これだけ数値を持ってれば、主演級の子役で妹、もしくは姉が居る作品だって獲れるはず。今まで仕事をした監督達にも連絡を取り合ってるし、そういう脚本なら予定を空けて出るって言い続けた。ギャラなんて少なくてもいいからこの状況が欲しかった。そしてその作品で知名度を稼いでアイドルに乗り込むつもり。地下アイドルなんかを経由せずに一気にメジャーに乗り込ませる為に社長と前々から準備はしてた。それに監督が今出してる企画書いいよ。あれが通ってくれれば俺の計画はずっとスムーズに進む」
「あれか? 一応、ルビーのやつをキャスティング希望に出してるが、多分有馬かなの出演依頼が出ると思うぞ」
「アクかなコンビか……最初は知名度を稼ぐ為にかなに近づいたところはあったけど、自分でやったことが回り回ってきた感じがする」
「ただの踏み台になんて出来るやつじゃなかったし、お前も現場でフォローしちゃってるからな。このお人好しめ」
「そんなんじゃない」
「映画やドラマで俺の要請があれば最優先で出る。そのかわり、お前の妹のデビューに協力するって約束だしな。出来るかどうかはともかく協力はしてやるよ」
そんなことを考えてくれてたんだ。私は色んな人に応援してもらえてる事が実感できる。昔、病院でアイドルになりたいなんて言って応援してくれる人はせんせしか居なかった。今はお兄ちゃんにママに監督、社長、ミヤコさん、B小町のみんな、私のファンの人達、みんなが応援してくれている。私にみんなが期待してくれてる。
アイドルになりたい! そしてみんなに恩返ししたい!
私は二人に抱きついた。
「えへへ、二人とも大好き!!」
私は今、幸せだ。