推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

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第六話 裏 アイ②

 

 

「ママ! ママ! よしよししてぇ!」

 

「よしよし、ルビーは甘えん坊だね」

 

「は~極楽浄土~♡」

 

 私は日課になったルビーのよしよしをして、難しい言葉を覚えているルビーにやっぱりうちの子はヤバいくらいの天才なんだと改めて思った。

 

 社長さんに、アクアとルビーは頭が良すぎるから知能検査をしておいた方が良いと言われてうぃぷしーとかいうのをチェックして貰ったところ、ルビーもアクアも7歳児までの検査基準では正確な数字が測れないくらい高かったらしい。日本で一番の大学の人の平均より高いと聞いて、多分私ではなく元カレの遺伝なんだろうな~と思いつつ、なぜかミヤコさんがほっとしたような表情をしていた。

 

 アクアとルビーは頭が良い。特にアクアは、この子は天才なんだと思う事は多かった。

 

 

 

「アイ! 見て! これから演技の仕事をするからアイの演技の真似をしてみたんだ」

 

 いつもは難しい事を考えていそうな顔をしているのに、振り返ると太陽みたいな笑顔、吸い寄せられるような瞳にまるで無敵みたいな自信をもった雰囲気をしたアクアが居た。

 

 私ってこんな風に見られてたんだ。と思った後に引っかかった言葉があった。

 

 私の演技の真似? 

 

「ねえ、アクア、私の演技の真似って?」

 

「んっ? だってアイ、アイドルをしている時って演技してるでしょ? 格好いいから真似したんだよ。普段の優しくて頑張り屋さんのアイも好きだけど、アイドルをしているアイも好きだからさ」

 

「うーん、今まで演技だって分かった人ってニノちゃんしか居なかったのに……」

 

 ニノちゃんの場合、私の演技をする前と後を知っているから分かった。それでも違和感に気がつくまで、私が気がつかずに素で独り言を言ってたのを見てようやくわかっただけで、二年以上気がつかなかった。と言っていたので、演技をする事が日常的になってしまった今、自分でも嘘か本当か分からない事が多いのに、気がつくなんてやっぱり、アクアは凄いんだな~と思った。私は馬鹿だから分からないけどIQってのが高いとこんなこと出来るんだ。

 

 優しくて頑張り屋さん……初めて言われた言葉だった。アクアには私がどう見えてるんだろう? 

 

「うん、アイの助けになろうと思って、アイの行動を観察して困っていそうな事とその解決策を抜き出したんだ。それをする過程でアイの演技の部分以外を抽出してたらアイの演技の部分が出てきたからそれを真似したんだ」

 

 アクアはそう言って、私にノートを渡してきた。

 

 困っていそうな事リストの一つ目に「人の顔と名前の覚え方!」と書いてあった。

 

「アイは好意を抱いて来た相手は覚えやすいみたいだから、例えばお菓子をくれた加藤さんみたいに、好意的な行動をしてくれた事と人の顔を結びつけて覚えるようにしたらどう?」

 

 と書かれていた。そういえば、アクアとルビーの名前を覚えられるようになったタイミングも同じだったと思った。私に好意があったのを見てから名前を覚えられるようになった。

 

 思い当たるのは、私は愛せる相手を探していて、その相手ではないと分かると興味を失っているのではないか? というものだった。

 

 次のページ、次のページを見ても、実際に私が困っている事とかが幾つも書いてあって、アクアからこうすれば良いんじゃ無いか? みたいなのが沢山かいてあった。

 

 この子からすると私って相当頼りなさそうに見えてるんだな。と思うのと一緒に、この子は私でも分からなくなってきていた素の私が見えていると思うと嬉しかった。

 

「なにか困ったことがあったらなんでも言ってよ。僕が力になるから」

 

 私の駄目な所とか誤魔化してきたところとかを見ても助けたいと思ってくれるアクアは、ルビーを大切にする時の姿とダブってしまう。ああ、この子はルビーと同じくらい私の事を大切に思ってくれて、同じように助けようとしてくれるんだな。って思うと胸が温かくなる。

 

「ありがとう。アクア。大好きだよ」

 

 嘘か本当か分からなくなったからこういう事はあまり言いたくなかったけど自然に出て、つい抱きしめてしまった。するとアクアは抱きしめ返してきた。

 

「僕もアイの事が大好きだよ」

 

 私はその言葉が嬉しくて少し涙が出てしまった。作った私じゃなくて、お馬鹿でドジばっかりする私に向けられた言葉はとても温かった。

 

 

 アクアは私より私の事が分かっていると思えるかのようにどんどん解決策を出してくれるので、困ったことを相談しやすかった。そして、まだ小さいのに私の為に頑張ってくれることもとても多かった。

 

 

 監督の所に映画の撮影のキャストに急に追加された時もそうだった。

 

「今回の件はありがとうございます。本日はよろしくお願いします」

 

「おう、よろしく。ったく、あの早熟ベイビーに愛されてるねぇ」

 

「愛されてる? ですか? アクアに?」

 

「んっ? そりゃそうだろ。ドラマでお前の出番が少なかったと文句の電話入れてきたり、早熟にかわりに出るならお前を映画に出してやるって言ったら、出るって言いやがったぞ。しかも昨日の仕事は完璧だった。お前が大好きだから仕事もあんなに真剣だったんだろう。もしかして言ってなかったのか?」

 

「はい、聞いてません」

 

「照れてやがるな。あの早熟め。今度からかってやるか。まあ、いい。せっかくあの早熟ベイビーがお前の為に掴んだチャンスなんだ。爪痕残せよ」

 

 そう言って肩を叩いて去って行った監督になにも言えなかった。

 

 アクアが私のために……

 

 そう思うと力が入る。あの子は私のためにたくさんのことをしてくれている。それに応えてあげたい。

 

 そして私が活躍すると、アクアもルビーも本当に嬉しそうにする。あの姿を家に帰ってまた見たかった。

 

 いつの頃からか分からないけど、私は愛したい相手を見つけたい為でも、嘘が本当になるようにでもなく、アクアとルビーの喜んだ顔を見たい為に仕事を頑張りたいと思うようになっていった。

 

 私はあの子達に愛されている。その事が実感できるあの瞬間が大好きだった。

 

 

 

 けど、私はまだあの子達に愛していると言えなかった。

 

 なんの脈絡もなかったと思う。

 

「ママ、世界一愛してる」

 

 ルビーがそう言って胸に飛び込んできてきた。

 

 ルビーはこうやって甘えてくることはよくあった。その時にはママもルビーが好きだよ。とかママもルビーが大好きだよとか返していた。

 

 だから、ここでは「ママもルビーを世界一愛しているよ」と返すべきだった。いつも通り言えばいい。

 

 そう思っているのに。口が動かなかった。

 

 だって、この子達はこんなにも私を愛してくれているのに、愛しているって言葉が嘘だったら。そう思ってしまうとあまりに恐ろしかった。だって、あの時の自分の気持ちをあの子達にさせてしまう事になるから。

 

 次に出たのは

 

「ママもルビーが世界一好きだよ」

 

 だった。

 

 その後もルビーが離れるまで平静を装っていたが、ルビーが離れると脱力してしまった。私はこの子達にこんなに愛されているのに、愛しているという言葉すらかけられない。

 

「アイ……」

 

 心配そうに見つめるアクアが私の背中をさすっていた。最初は誤魔化そうとしたけど、アクアはそんなのお見通しだろう。私は縋るようにアクアに聞いた。

 

「ねえ、アクア……愛してるってなんなんだろうね。私は分からないんだ」

 

 アクアはなんでも知っていた。いつもみたいに教えて欲しかった。

 

「それは、僕も分からない。人によって愛の定義って違うから、アイにとって愛がなにかは分からない。だから、僕が愛だと思っている事を話すよ」

 

 アクアはそう言って、私の手を握る。

 

「僕にとって愛は取引じゃない好意だと思ってる。例えばなんだけど、子供が絶対に治ることのない病にかかってしまったとして、その子供にお見舞いなんてもう意味がないからやめてしまおうとか、世間体の為に行っておこうって親の人は愛がない人だと思ってる。だけど逆に、少しでも子供の為に、子供が心配だからとか、子供になにか出来る事がないかと会いに来てくれる人なら、愛があるんだと思ってるんだ」

 

 アクアは私の目を見て話し出す。

 

「もうすぐその行為が自分にとって無駄になってしまうかもしれないけど、その子にとってなにかをしてあげたいと思う心があるのなら愛なんだと思ってる。アイ、もし僕があと一ヶ月もしないうちに死んでしまうと分かったら、もう意味がないからって、お見舞いにもこなくなる?」

 

「そんなわけないよ。最後までアクアのそばに居る」

 

「アイ、ありがとう。だとしたら、僕の中の愛の基準ならアイは僕を愛してくれているし、僕はアイに愛されてる」

 

 アクアは言葉を続けた。

 

「僕は例えアイがよぼよぼのおばあちゃんになっても、アイが僕のことを忘れてしまっても、アイが僕のことを嫌いになってもアイの幸せを願い続けるよ。たとえ、アイに好かれなくなったとしても僕はアイのことを好きで居続けるし、アイが僕を愛してくれなくても、僕はアイを愛し続けるよ」

 

「愛は取引じゃないから、愛されたからといって、愛し返さないといけないわけじゃない。だから愛してるって言えない事自体は気にしなくてもいいけど、アイも自分の愛がなんなのかを考えないといけないと思う。それだけは僕が教えてあげられない。僕が出来るのはアイがその答えを出すまで寄り添ってあげることと相談にのることくらいしかできない。でも、いくらでも待つし、いくらでも相談にのる。だから、一緒に見つけよう。アイにとって愛ってなんなのか」

 

「うん、うん」

 

 私は嬉しくて泣いてしまった。

 

 未だに愛してるってなにかは分からないし、いつ言えるようになるのか分からないけど、もし、愛してるって言えるようになったら、一番始めに愛してるって言うなら私はアクアに言いたかった。

 

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