推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

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誤字脱字報告ありがとうございます。正直、誤字脱字多すぎますね。すみません。完結したら、きちんと修正入れていきます。


第七話 裏 あかね②

 

 

 うう、かなちゃんと仲良く出来なかった。

 

 アクアくんとルビーちゃんと仲良くなれたので、かなちゃんとも! と意気込んで臨んだ撮影時の顔合わせだったけど、形だけの挨拶をして、すぐにアクアくんと打ち合わせしに行ってしまった。

 

「かなちゃん、拗らせてるから実力のある人って認めないと一切絡もうとしないんだよ。でも、実力があるって分かるとライバル認定してくるから、認めさせて、それから仲良くなればいいよ。仲良くなってもずっとツンデレだし、口も悪いけどね」

 

 ルビーちゃんがいつもの事って言ってる。そうだよね。まずは共演者として認めて貰わないと! 

 

「うん、頑張る!」

 

「頑張れ、あかねちゃん!」

 

 そうやって意気込んでいると、舌打ちととともに「また顔だけのやつが来た」と小声で言う男の子がいた。あれは同じメインキャストの悠人くんだった。

 

「うわ、またあいつだ。お兄ちゃんの次に有名な男の子役で年齢も近いから共演するんだけど、ほんと、態度悪いんだよね。気にしなくていいよ」

 

「う、うん……」

 

 また、という言葉に違和感を覚えながらもクランクインした。

 

 

 舞台は卒園式が間近の幼稚園。病気で登園しなくなった友達を自分たちだけで病院にお見舞いに行こうとする5人の園児を中心に物語が進んでいく。

 

 放送予定時間は2時間。絵本をテーマにした物語。

 

 やっぱり目立ったのはかなちゃんで、自分達だけで友達の卒園式をしてあげよう! という始まりのシーン。これだけで、この子が主役なんだなって思わせる演技。たったワンシーンだけでも存在感が、言葉の重さが、演技力の違いがわかる。

 

 その次はルビーちゃん。元気いっぱいのムードメーカーとして、ルビーちゃんが出るだけで華が出るようになる。画面の雰囲気がルビーちゃんが出るだけで切り替わる。暗いシーンから一気に明るくなって、メリハリが出てくる。

 

 そしてアクアくんはかなちゃんを主役として立てつつ、病院への道筋をたてて、作戦を練っていくしっかりものの参謀役として重要な場面で存在感をみせていた。

 

 対して、私は……

 

「あかねちゃん、ここはかなの役とは違って、これからやらないといけない冒険に不安になっている雰囲気が欲しいんだ。みんなで一致団結しているようにみえて、熱意の違いを表現してほしい。やらないといけないと思っているし、やる気そのものはあるけど、困難な事に不安が隠せない様子がのちの伏線になるから」

 

 アクアくんに頼りっきりになってしまっていた。かなちゃんやアクアくんと比べると役作りの甘さを指摘される事が多くて、演技のシーンの前にキャラがどんな心情で、この場面ではどんな事をキャストに求めているのかの要求に対してのつめが甘いことを思い知らされる。

 

 序盤は5人で一緒のシーンを撮ることが多いから、その差がクオリティーに反映して、一人でも質が悪いと偽物っぽさが出てしまう。

 

「悠人くんは逆、直情的なキャラなんだから、ここはもっと調子に乗ってるくらいでいいよ。ルビーより元気なくらいでいい。のちの離脱シーンでやる気の空回りをするところに繋がってくるから」

 

 そして、もう一人の悠人くんも私と同じく指摘を受けることが多かった。

 

 監督からの指摘もあるけど、アクアくんの指摘はもっと細かくて、全体の構成の調整をしつつ、演技の指導をしてくれる事が多い。自分の演技もこなしながら座長の役割を担ってくれている。

 

 脚本の書き込みを見せて貰ったけど、私と悠人くんへどう指導するのかみたいな書き込みが多いし、別枠で印刷した資料なんかもある。

 

 劇団で習った役作りよりも遙かに深くて広いし、そのシーンで完結しないで、後々のシーンのつながりを意識した演技を求められて居る。その場面で必要な画の理解度に差がありすぎた。

 

 なので、どんなシーンでも事前にどんな演技が必要なのか、どんな心情でこの役は演じないといけないのかを聞いてなんとか形にして貰ってる。足を引っ張ってしまっていることが申し訳ない。

 

 今は幼稚園のシーンだから良いけど、次からは実際の駅での撮影になっていく。何度も何度も指摘を受けると撮影許可時間を過ぎてしまう。なんとか立て直さないと……と思っていると悠人くんから話しかけられる。

 

「黒川だっけ? お前の名前を聞いた事ないけどこれまでメインキャストで何作でたの?」

 

「えっ、これで初めて……だけど……」

 

「まあ、見りゃ分かるよ。アクアのやつがべっとりだし。使えないと思ったやつにあいつは付くからな」

 

 私が駄目なのは分かっているけど、そんな言い方……と思ってしまう。

 

「まあ、俺も人の事を言えたもんじゃないけどな。これでもあいつがアイドル優先していた時は代役として何本もメインで出させてもらったのに、あいつ等と比べると駄目な子あつかいだ」

 

 自嘲する様になにも言えなくなってしまった。

 

「演劇をずっとやってきて、それが評価されたわけじゃなくて、アクアの妹のルビーが目立ち過ぎないように周りに顔の良い奴を配置するから、それで選ばれただけなんだぜ。俺もお前も。不思議に思わなかったのか? なんの実績もなければ、大手の事務所に所属してるわけでもないお前が選ばれたのはそれが理由なんだ」

 

「…………」

 

「かなのやつみたいに偉ぶって見下してくるようなむかつくやつだったら、まだいい。むかつくけどそれが俺の実力だから受け入れられる。だけど、あいつは顔だけの妹を出すために自分を消して大人に媚び売ってる。それがほんとむかつく。アクアの言うとおりにやってろよ。顔だけ役者。お人形ごっこしてれば勝手に評価は上がるぞ」

 

 それだけ言うと悠人くんは去っていた。

 

 私は演技とかが評価されたわけではなく、ただ顔が良かっただけで選ばれただけ。

 

 

 それを聞いて私は…………特に何も思わなかった。

 

 

 

 

 

 ほら、アクアくんは周りの為に自分を消しているように見えるけど、違うよね。

 

 自分の理想の画を作る為、その為に個で考えて無い。周りの人が出来ないなら、ぱくりって食べて、全部自分でやってしまう。共演者がきちんと求められている演技をさせるように操ってしまう。周りを全部食べてしまう演技。

 

 あらゆる演技を使って、あらゆる手段を使ってより良い画を作り上げるために動く。

 

 アクアくんは全部出来る。台本を見せて貰った時、全ての役の書き込みがされていて、どうやって魅力的な画を作るかを考え込んで、なにからなにまで使って成し遂げる。どんなカメラワークなら魅力的に映るのか、どんな動きをさせれば上手くいくのか。全てが計算されている。

 

 自ら輝くこともできるし、周りを生かすことも出来る圧倒的な技術と頭脳がアクアくんの強み。

 

 だから証明し続けないといけない。私はこっちの方が魅力的な画を作れるって。かなちゃんもルビーちゃんもそれをし続けられるからアクアくんとあんなにすごい画を作れる。

 

 かなちゃんとルビーちゃんは自身が輝くような太陽のような演技をして、こっちの方がいいってずっと主張し続けて、アクアくんはそれを認めて、2人が最も魅力的に見えるように動いてる。でも、もし、これが魅力的じゃなかったら、周りの人全員を食べちゃうような演技で押しつぶしちゃってるよね。

 

 常にアクアくんの想定を上回るような演技をし続けないと、アクアくんは自分の思い描いた画の通りに周りを動かしてしまう。

 

 自己主張の連続、常に良い演技をした方が主導権を握る。かなちゃんとルビーちゃんで主導権の奪い合いをしてるし、そこをアクアくんがバランスをとってる。駄目なら自分が動いて、一気に2人を食べてしまう。これが子役でトップの3人の演技の世界。

 

「すごいなぁ……すごいなぁ……!」

 

 私はその世界に入れていない。悔しいけど、本当に悔しいけど、目の前の光景は光り輝いていた。これはアクアくんの想定を上回るような演技をしないと本当に操り人形みたいになって終わる。

 

 顔がいいだけの役者でいい。これは本当なんだろう。使えない役者でもそういう風に演技させてしまえる自信がある。だから、お人形で満足できないならアクアくんの出す正解よりもより魅力的な正解を出さないといけない。

 

 アクアくんと組みたくないって人の気持ちは分かった。

 

 常に自分が演じるものよりも上の演技を無理矢理させられる。役者として不正解をつきつけられるのがつらいんだよね。

 

 でも、目の前に答えがあるんだよ。自分よりも優れた答えが。そしてそれを超えれば、あの世界があるんだよ。

 

 なら、それを聞いて糧にしないでどうするの? 

 

 OKが出ると、私はアクアくんに声をかける。

 

「アクアくん、ここの演技についてなんだけど、聞いていい?」

 

「うん、いいよ」

 

 ほら、アクアくんは絶対にこういう時に出し惜しみをしたりしないし、拒絶もない。どうやっていい演技をするのかを教えてくれる。なら聞くべきだ。

 

 自分より優れた人が優れた答えを知っていて、途中の考え方まで教えてくれる。

 

 全ての役を毎回、毎回、深掘りしていくのだって、大変だけど、それをするのはより良い作品を作る為なんだ。だからより良い作品にする為に努力するアクアくんなら絶対に力を貸してくれる。

 

 頑張れ、頑張れ、私。

 

 私は顔が良いってだけで選ばれて来ただけかもしれない。でも、こんな世界に触れることが出来た。なら、理由なんてどうでもいい。こんなチャンスを貰ったんだから少しでもこの世界に近づかないと。ここで逃げたら、次にこんな世界に来られるのは何年後か何十年後か分からない。

 

「アクアくんは役作りの時、どうしているの?」

 

 役者の根幹。これは話して貰えないかな。と思ったけど、アクアくんはあっさりと教えてくれた。

 

「基本はプロファイリングがベースになっているかな。実在の人物なら過去の行動記録や個人情報を分析することで、これからの行動を推測することができるけど、今回は作り物だから、その場面、場面でその選択をするにあたってなにを考えていたかなどを推測していく必要がある。でもそれだけだと足りない部分も出てくるから、過去作なんかも読むかな」

 

「えっ、違う作品なのに?」

 

「ああ、もちろん違う箇所もあるんだけど、作家ってキャラクターを一部を変えてベースは変えていないキャラも多いんだよ。特に主人公周りはがっつり好みが入る。あと、作家がどんな哲学で、どんなシーンが好きでみたいな癖もあるんだ。だから作者がなにを考えてそのキャラにその役割を与えたのかなんて想像をすると、一気に作家への解像度が上がってどんなキャラが書きたいのかが分かる。まあ、基本はとにかく材料を集めて、何を考えてどういう人格なのかを数式パズルみたいに組み立てていく感じでいいと思う」

 

 そう言うと、アクアくんは役作りに使った本が監督の家にあるからと言って、監督に話を付けてくれて、本と一緒に、アクアくんの分析結果なんかも見せてくれた。

 

 すごいと思った。今まで出演した作品とその関連の登場人物。何百、何千人の人物や登場キャラクター造形を分析して、今のアクアくんの演技がある。血のにじむ努力の結果がそこにはあった。

 

「考えて、考えて、考え抜いて、するといつか考えなくても自然にできるようになる。それが血肉になってようやく自分のものになったって言えるようになる。なにかを成そうとするならそれを繰り返していくしかないよ」

 

 アクアくんの言葉は私の心に響いた。

 

 

 

 

 私は直ぐに役作りからやり直した。それだけに没頭して、今、演じている役柄がどんな事を考えて、どんな風に動くのかを深く考察することに専念した。

 

 すると、どんどん、指摘される事が減っていって、本当に最後だけ、最後のシーンだけだけど、アクアくんの想像を超えることが出来た。そんな風に思えるシーンが取れた。

 

「最後だけだけど、やった! やった!」

 

 演じきった後、疲れて座り込んでしまった。でも、心は達成感で満ちあふれてる。

 

 ああ、これは癖になるなぁ……

 

 かなちゃんやアクアくんみたいになりたい。はじめはそれだけだったけど、こうして一緒に演技をして演劇の世界を知ってこんなに面白いって分かっちゃった。

 

 そんな風に思っているとかなちゃんが近づいて来た。

 

「ふ~ん、あんた、結構やるじゃない」

 

「あっ、かなちゃん」

 

 かなちゃんに認めて貰えた。それだけで胸が熱くなる。

 

「あんたとは長いつきあいになりそうね。これからよろしく」

 

 かなちゃんが差し伸べた手を取って立ち上がる。

 

「うん! よろしく!」

 

 それからは私とかなちゃん、アクアくん、ルビーちゃんは一緒に働く機会が増えていくことになる。夢だったかなちゃんとアクアくんとお友達になれて、一緒に演技の練習をして、一緒におうちでお勉強会なんかもしちゃって……このとき、私たちはこれからこんな日々がずっとずっと続くと思っていた。

 




 今日あまでメルトくんにやった事を全員に全シーン強要してくるマンのアクア。演技が上手い人や現場スタッフからするとサポートキャラとして滅茶苦茶重宝するし、好感度が高いが、中途半端に演技ができるプライドの高い人からは共演を断られるレベルで嫌われる。周りを食いまくる外来生物2名も大暴れしてるので、目立つ事が出来ず、4歳の子供に操られて終わる最悪の現場の模様ですが、身勝手かつ圧倒的な役者が大好きなあかねにとってはご褒美だった模様。おとなしいようで向上心の塊なので、がんがん成長します。
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