推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

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第十話 裏 アクア⑥

 

 

 俺は・・・・・・雨宮吾郎は人生で二つ、大きな失敗をしている。

 

 一つ目はさりなちゃんに何一つ出来なかった事。

 

 病室から出れない彼女に寄り添う事もできず、助けることも出来なかった。病によって物心つく頃には全てを奪われたにも関わらず、病室の中で苦しみにもがきながらもキラキラとした目をしながらまっすぐに夢を見ていた少女の夢を・・・・・・救いたいと思った初めての患者の夢を力不足でただの夢で終わらせてしまった。

 

 二つ目はアイの妊娠時に目を曇らせ、彼女の人生を滅茶苦茶にしかけた事。

 

 俺はアイの主治医として本来、貧困や若年の妊娠など様々な妊娠困難な要素を持っていた患者であるアイは特定妊婦として扱い、フォローをしなければいけなかった。彼女が発達障害だった事を見抜けず、金銭的な援助はもちろん、保健所や児童相談所などと連携したケアが必要な患者に対して、なんのフォローもなく退院させてしまった。

 

 その結果、負担の殆どを壱護さんとミヤコさんに押しつけ、一人でも大変な子育てなのに、双子の子供の面倒をみさせてミヤコさんを育児ノイローゼにまでしてしまった俺の罪は重い。

 

 アイは未成年だった。中絶には親の許可が必要で、居ない場合は家庭裁判所に手続きをしないといけない事になっている。だから20週の場合は、本来なら間に合わないケースだ。だから、俺はもしアイが中絶を決断するなら、経済的理由を根拠にしていたはずだ。なのに、アイドルとバレない為に経済的支援をさせないように手を回しているし、育児困難者になるリスクの高い患者のフォロー制度を案内していない。

 

 弱小事務所の社長の年収からそれを出すのはそれなりの覚悟もいただろうし、子なしの女性に双子の育児を行政サポートなしにさせるなんて事になってしまった。

 

 もし、俺が、アイの子供として第二の人生を歩まなかったら・・・・・・アイはあそこでミヤコさんに出産の事をばらされて、アイドルとしての人生は終わっていたし、今後の人生も二人の子供を抱えたシングルマザーとして生きるしかなくなっていただろう。俺のせいでアイの人生が滅茶苦茶な事になっていた。

 

 医者として俺は失格でしかない。さりなちゃんの姿を重ねて、目を曇らせた馬鹿野郎だ。

 

 俺の第二の人生は、力が足りずに見殺しにしてしまったさりなちゃん、俺が適切なサポートをしてあげられなかった結果として人生が滅茶苦茶になりそうだったアイ。そして、今も、バレたら終わりの俺たちを支えてくれている壱護さんやミヤコさんへの償いの旅というのは大げさかもしれないが、雨宮吾郎の力不足と判断ミスで人生を壊してしまいそうになった人達が幸せに生きるために使うべきだと思っている。

 

 あの時、殺されていて良かった。アイを今でも狙うあいつらは許せないが、俺を殺してくれたことだけは犯人とカミキヒカルに感謝しないといけない。もし俺が殺されて転生していなかったら、さりなちゃんの夢を俺が二度も破壊するような事になっていただろうし、アイも壱護さんもミヤコさんも、みんなの未来は俺のせいで滅茶苦茶になっていたんだから。

 

 

 カミキヒカルについて、情報はそれなりに集まってきていた。

 

 テレビ業界、特にキー局に入ってこられると一番厄介だと考えていた俺は、カミキヒカルの能力的に、実力でテレビ業界の大手に入る力はないと判断し、教授推薦、OB推薦の枠から入る可能性が高いと考え、内部情報を集めていた。

 

 テレビ業界はコネ社会だ。キー局にはいくつか同じゼミから毎年採用が出る確定枠を持っている所もあれば、OB訪問をして気に入られると◯次面接まで免除みたいな推薦して貰えたりする所、普通に何を聞かれたのかとか、どういう仕事なのかを話してくれるだけな所もある。入るには出身大学というよりも、人事権に影響がある人達とのつながりがあるところに所属出来ていたのかが重要だったりするらしい

 

 懸賞論文に応募して賞を取るような人間だって来る中で、実力で選ばれるのは厳しい。こういってはなんだが、真面目な学生をしているとは言いがたい人間が入れる所では無い。なので、その可能性は切った。コネ入社して、近い立場や関係の深いところで暗躍されることが一番嫌だった俺は、そういう確定枠を持っているゼミやOBからの推薦などで入る事が多いゼミやサークルなどにカミキヒカルが所属しているのかを調べたかった訳だが、そういった内部情報はなかなか出てこない。

 

 だからこそ、同じ大学に入る予定の人間という身内になって、将来、業界に入るときのアドバイスとして、どこに所属すれば入りやすいのかという話をテレビ関係者の人から聞き出したかった。だから系列の小学校に入る事にしたわけだが、あかねとのドラマ出演の際に、その系列の学校をモデルにしたドラマに出て、インタビューで、「この学校に入る事を目標に勉強しています」なんて言うことで身内あつかいされたのは良い誤算だった。

 

 一応、模試でずっと一位をとり続けていて、学校の顔としてタダで使える人間は落とさないだろうみたいな話を学校の関係者の人から聞いた。

 

 その結果、聞き出せたのは、案の定、カミキヒカルの所属していた所は大手キー局の確定枠を持っていて、それだけでなく、OBの力も強かった所だった為、コネ入社してくる可能性がある事だった。

 

 そして・・・・・・大手広告代理店の創業者一族に、カミキ姓が居る。ただの偶然かもしれない。だが、カミキの金はどこから出ているのかを考えると嫌な予感しかしない。

 

 ララライへ行くのは、カミキの人柄を知ることと、芸能界への復帰をララライからして、アイに近づくのではないかという予想からだったが、後者の可能性はかなり低くなった。なので、純粋に人柄を知るという一点のみになったので、入るリスクとリターンを考えると微妙になったことは否めない。

 

 ララライの中でどんなにカミキヒカルの人柄が良いと分かっても殺人犯と分かっている以上、その評価を信頼出来ないというのもある。結局、最悪のケースを想定するしかないのだから。

 

 壱護さんにも同じ業界に来る可能性は伝えた。悪い噂を流したりなんだりして落とせないか、とか、探偵でなにかしらの悪事を働いている所を見つけて、大学に知らせて退学させられないかなど話したが、上手くいくかどうかは分からなかった。

 

 聞き取り調査をする内に情報は集まるが、対抗手段が行き当たりばったりになるのは否めなかった。考えはあるが犯罪すれすれのものだったり、バレるとこちらの信頼もなくなるような手ばかりだった。

 

 なにより、カミキヒカルをどうにかすると、アイを道連れにしてくるリスクもある。普通に大学生活を楽しんで、新しい彼女と満足した関係でも作ってくれれば楽だが、楽観的に動いて後悔するわけにはいかない以上、動くしかない。

 

 そんな時に仕事で高千穂でのドラマ撮影があった。

 

 俺が行方不明になったのに、捜索依頼が出されていないようだったし、そういった事を調べる良い機会だと思った。社長にお願いして、マネージャーとして付いてきてくれるミヤコさんに、病院へ雨宮吾郎について聞いて貰うことになった。

 

 結果として、捜索願いは身内しか出せないので、身内の居ない俺は出して貰う事が出来なかったみたいだ。警察で必要と判断するなら行うと言われ、そのままになって年月が過ぎたという事らしい。まあ、よくあると言えばそれまでだった。

 

 たいした収穫もなく収録を終えた後、ミヤコさんに散歩に行ってくると言って俺が殺された場所付近を歩いていると声をかけられた。

 

 

「ねえ、ここでなにをしているの?」

 

 不思議な雰囲気がする少女だった。顔は整っているのに声に抑揚がなく、表情からは感情が読み取れない。年齢は同じくらいか、少し年上にも見える。周りにはカラスが飛び回り、ここにいるような、居ないような・・・・・・初めて出会う感覚だった。

 

「散歩をしているだけだよ。君は?」

 

「私はね。1度話したい人がここに来ていると聞いて、探しに来たんだ」

 

「へえ、でもここは結構、森の奥だし、迷子になるから一緒にきて。大人に相談してその人を探して貰えるように頼むから」

 

「いらない。だって見つけたから。私が話したかったのはキミ」

 

「・・・・・・俺?」

 

「ええっと、なんて呼べばいいかな。アクア?それとも星野アクアマリン、雨宮吾郎って言う方がいいかな」

 

 星野姓は壱護さんとミヤコさんとアイとルビーしか知らないし、雨宮吾郎なんて名前はルビー以外には出てこないはずだ。

 

「君は・・・・・・何者だ?」

 

 少女は少しだけ笑うと淡々と告げた。

 

「キミを転生させた神様の遣いかな?」

 

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