推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA 作:重曹ちゃんかわいい
俺はあの神の遣いを自称する少女の言うことが真実かどうかを調べる事にすると、俺と生前に仲の良かった看護師さんに絞って、カミキの目撃情報がないか確認した。
六年も前に一度だけ訪ねてきた男の顔を覚えていられるものなのか不安だったが、目撃者を見つける事ができた。
これであの少女の言っていた事に一定の信頼性がある事が分かった。
ミヤコさんには無理を言ってスケジュールを変えてもらったりと便宜を図って貰った甲斐があって、雨宮吾郎が行方不明になった日にカミキと、俺たちのマンション付近で銃刀法違反で捕まった男が来ていた証言まで取れた。
アイの出産日に社長以外だと唯一アイの居場所を知っていた男がわざわざ九州まで、俺たちのマンションに刃物を持って待ち伏せして捕まった男と共に来て、アイに会わずに帰っていた。その日にアイの主治医が行方不明になっているなんて、黒ではないが、かなり黒よりのグレーだろう。
社長を説得するのに足る材料は揃ったので、死体を発見したこと以外は話す事にした。
「そうか、あの先生が…………」
壱護さんはため息をつきながら、力なくそう呟いた。まあ、病院を選んだのは壱護さんだろうし、自分の判断で死んだかもしれない人が出るとなると思うところもあるだろう。
アイと違って、そういう可能性もあるとは思っていたようだが、下手に関わるとやけどで済まないことになるだろうし、知らなかった事にしておけば、自分は悪者にならなくて済む。
都合の悪いことは知らなかったこと、気が付かなかったことにする。大人はみんなやっている事だ。
「アイの出産日にアイに会いに来たカミキに付いてきてきた男と、引っ越したばかりのアイの住むマンション付近で銃刀法違反で捕まった男が同一犯だって証言が取れたことで、アイに対して殺意があるのは明白だと思うけど?」
「本当にその二人連れはカミキとその犯人だったのか?」
「まあ、六年以上前の話だからうろ覚えだったけど、俺の顔を見て思い出したみたいだった。自分で言うのも何だけど、俺の顔はかなり目立つから」
「まあ、一目みたら忘れないような顔だよな」
壱護さんは俺の顔を見つめてそう言ってきた。
「一度目はその医者の人を殺して、その処理をする為にアイの殺害を諦めないといけなかった。二度目は場所は知っていたけど、ダブルオートロック式のマンションだったからアイのところにたどり着けずに見つかって失敗をしたからよかったけど、次はそうとは限らないとおもうけど」
「次、次か」
「初犯って事もあって、一年も刑務所に入って居なかったから、もう出所している。カミキに対してどう思っているかは分からないけど、もしまだカミキの言うことを聞くなら、危険だ。もしカミキがテレビ局に入り込むことがあれば、撮影とかの情報からそいつに渡してアイを狙う可能性がある。その時、守れたとしても、そこから今回の事がバレるような事があれば…………」
「アイの芸能人生どころか苺プロそのものが吹っ飛ぶ爆弾になるってことか」
「調べた結果、カミキヒカルが広告代理店の白英堂の創業者一族で、元代表取締役の愛人の息子っていうのは可能性が高そうだ。元々、カミキヒカルの所属するゼミにも昔は所属していたみたいだから、そっちのコネで所属していたりするのかもしれない。こっちの世界に来る可能性は低くないと思う」
「まあ、テレビ業界はコネの世界だからな。入るだけならわりとゼミとかサークルなんかの繋がりでも入れるが、そういう繋がりだと余計に面倒だ」
「社内に好き勝手に出入りできて、横つながりから得られる情報もたくさんある。殺人教唆をするようなやつにそういう暗躍をされると守り切れずにアイが殺されるようなことがある可能性はもちろん、失敗してこっちも巻き込んでやろうとアイの事をバラす可能もあるわけだし、手をうった方がいいと思う」
「まあ、そうだな。バレた時のために契約とかを見直すか。一本、自粛されるだけでも億単位の金が飛ぶのを十数本なんて抱えてたら、苺プロそのものが破綻する」
「うん、そうしないと、いつ潰れるか分からないし、無理心中されかねないし、良いと思う」
そう答えると壱護さんがこっちを真剣な眼差しで見つめて、言葉を発した。
「アクア、お前はもう、手を引け」
「なんで?」
「なんでもなにも、まだ未就学児を殺人事件なんかに巻き込めるわけないだろ。カミキヒカルの事は俺がなんとかするからお前は普通の仕事だけしてればいい。受験だってあるだろ。勉強しろ。勉強」
いや、まあ、正論なんだが、正直、受験で手に入れるはずだったものは手に入ったから別に入らなくてもいいし、仕事だって、アイの事をどうにかする為に始めたようなものだから、これより優先度が低い。未就学児どうこう言われても、そもそも俺は中身が前世含めると30半ば。とはいえ、そんなこと言えないからどうしたものか。
なんて説得したものか。と思ったが、正論言われるとどうしようもないので、勢いでごり押す事にした。
「今回の件もだけどカミキが命を狙って来ていた事を突き止めたのも、アイとカミキの関係とか、どこで出会ったのかとか、ララライで公然の秘密みたいになっていた事とかそういうのも俺が突き止めたわけだけど、壱護さん、一人で大丈夫? 俺、心配なんだけど?」
「そうは言っても、さすがにそんな事にお前を巻き込めるか。これは俺やアイが解決すべき問題だ」
「巻き込むもなにも俺が当事者みたいなものだと思うし、壱護さんが止めろって言っても俺は俺で勝手に動くけど。なら壱護さんの監視下に居て、リスクヘッジした方が良くない? そうすべきなのは分かるけどさ。ただ、倫理的にそうすべきって考えで、アイの危険が増すより、アイの安全を第一に動いた方がいいと思うんだけど。俺は役に立つよ?」
「………………」
「………………」
沈黙し、にらみ合うような感じになる。お互いに簡単に意見を曲げそうにない事を理解した。まあ、俺から折れる気はない。俺は今生をアイとルビーの為に使うって決めている。今回は理屈とか倫理的観点であっちが正しいのは分かるけど、引けない理由がある。
「なあ、アクア、お前っていつくらいから記憶あるんだ?」
なんだろう? 話がいきなり変わった。
「うん、まあ、生後二ヶ月くらいかな? アイの復帰前。そこからはルビーと一緒にずっと喋っていた記憶があるし」
「あー、そうか、じゃあ、やっぱ、そういう事だよな」
「なに? 確かに早熟だけど、そんなのいまさらじゃないか?」
「いや、そうじゃなくて。お前達をこそこそとテレビに出すなんてリスクの高い事を強行しようとしたミヤコの態度が気になって問い詰めたら、お前達がアマテラスの化身だとかなんとか言ってくるからな。育児ノイローゼで頭がおかしくなったんだと思っていたんだが、一応知能検査とかして確認してみようって事にしたんだ」
「ああ、あの検査ってそういう意味だったのか」
「一歳半とかできちんとしゃべれるどころか、まあ、ストレスとかでおかしくなったとはいえ大人を騙せる判断力があるし、お前もルビーもどう見ても才能の塊だったからな。結局、そこら辺の事も考えた上で許可したわけだ。いや、あの頃から演技していたんだな。と思ってな」
少し齟齬があるな。俺たちをミヤコさんがホスト代にしようとしたのは生後、半年したか、しないかくらいだったはず。いや、さすがに半年だとおかしいから、そこら辺盛ったのかもしれない。
「まあ、さすがに新婚して大して時間も経ってないのに、子育てをするハメになって、俺とルビーが迷惑をかけていたのは事実だしね。ミヤコさんも少し、やけくそというか、キレてしまったのは当然といえば当然だと思う。まあ、ホスト遊びとかもしたい年頃だったし、アイの秘密を売って逃げようなんて考えるのも無理はない。別に気にしてないよ」
「ホスト遊び?? 俺が聞いたのは若いイケメンに囲まれて仕事したいって言って、お金を持って逃げようとした話だったんだが」
「………………」
「………………」
沈黙が流れた。ああ、うん、さすがに言わないよな。少し盛るというか過小に申告するよな。さっきもしていたし。ちゃんと壱護さんがどこまで把握しているのかとか話してから喋れば良かった。
「………………記憶違いかもしれない」
「いや、なんかすまん。ミヤコのやつには俺から言っておく」
「いいよ。ルビーも気にしてないし。それだけ俺たち親子が迷惑をかけたって事だろ。ミヤコさんは悪くないよ。さすがに、新婚早々、いきなり所属事務所の担当のアイドルなんて、ほぼ他人の子供、しかも双子の世話なんて大変な事をおしつけられたわけだし」
仕方ない。本来なら、行政を挟まないでこんな育児をするの無理な案件だった。
「はぁ、馬鹿だと思うくらいお人好しなお前からしたら、今、やってる事もアイを守るだけじゃなくて、迷惑をかけた替わりの恩返しみたいな感覚なんだろうけど、もう、そんな事しなくていい。俺たちの夢が叶えられたのはアイやB小町の他のメンバーだけじゃない。お前の力も大きかったし、十分過ぎるほど恩なんて返してもらった。というかそんな事を恩なんて思わなくていい。これからの問題なんて俺とアイがやらかした問題の後処理だ。そんな事に関わる必要はない。そんな風に言いたかったんだけどな」
壱護さんはため息をつきながらそう言った。
「別に、気にしなくていいよ。アイは俺の母親なわけだし、親の問題を子供が解決するなんてよくある話だろ」
「いや、それは成人後の話とかだろ。お前はまだ6歳なわけで、早すぎるだろ。いや、まあ、その原因って、ミヤコがお前達を売ろうとして、役に立つ存在でないといけないみたいな強迫観念を植え付けたせいだし、元を辿ると俺がミヤコにそんな事を押しつけた責任なわけだからな…………ほんと無理すんなよ」
「そもそも、きちんと行政支援とかの話すらしなかった医者もかなり悪いからそんなこと考えなくてもいいと思うけど。分かった。まあ、これからは契約とかもだけど、ネット関連とかの分野に手を出したりしてリスク分散しないといけないわけで、無理しないとか出来るか不安だけど、まあ、できるだけは負担が少ないように心がけるつもり」
「お前な。なんだその政治家みたいな曖昧な言い方」
まあ、お互い、不本意な部分こそあれど、アイのことがバレた後のリスクを考えて、仕事の契約の話とかリアルだけではなく、ネット関連の話とかも受ける事で話しはついた。
B小町は今が全盛期だろう。年齢的にもアイドルが最も綺麗でいられる時期だ。大体、人間は20歳が美貌のピークで、あとはそのピークをどこまで引き延ばすかみたいな話になる。25歳にもなると大体の人はそれなりに老化するというか差が出てくるわけで、引退の時期を見据えるのもここら辺だ。
だから、ここで最大に売り込んでおくのが大事なんだが、その時期にリターンではなく、リスクを取るという事は、アイドルの生涯年収にも関わってくる。リスクの高いCM撮影だけど、B小町というセットなら数千万、良い所なら億の出演料が期待できる訳で、契約条件を変えて別の人に変えるなんて事になれば、一人当たり1000万近くギャラが減るわけで、壱護さんも説得とか大変だろうなと思う。
それでも、カミキヒカルの行動次第で即、破綻する状態は危険すぎたのでやるしかない。
それからは必死になって働くのは当然としてカミキについての情報とあの少女の言った複数人の殺人の証拠がないかどうかを調べる日々になった。
もしそれが見つかれば、俺の死体なんて爆弾を使わなくて済むかもしれないから。
でも、その証拠は見つからず、仕事の事だけは上手くいくがカミキについては全然と言って良いほど解決に向かえなかった。
何日も、何週間も、何ヶ月もかけて調べても、こちらにとって都合の悪い情報しか入ってこなかった。
そんな事をしていると、あかねが俺の調べている事というか目的について察しているのか、カミキのことについて調べて、こちらにさりげなく話してくるようになった。
本来なら、そういう事に手を出すな。と言うべきなんだろう。しかし、少しでも情報が欲しいと焦っていた俺はそれを止める事ができなかった。
カミキヒカル。こいつは馬鹿だ。いや、頭が悪いというより、考え方が幼稚というべきかもしれない。プロファイリングした結果、そうとしか思えない行動が多すぎた。享楽的な人間だから計画性というのがない。計画性がないから先を読みにくい。そういう人物だった。
事務所の契約の切り替え、ビジネス方針の転換も順調に進んでいた。けど、肝心のカミキについての対策が進まなかった。
死体を発見してしまえば、カミキについては終わらせることができる。けど、その後の事を考えると俺の死体を使うのは躊躇してしまっていた。もう少し、もう少し、ギリギリでも良いんじゃ無いか。そう思ってしまった。
そんな時にあかねから電話が来て…………
かなの表情を見た瞬間、また前世と同じ失敗をした事に気づかされた。