推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA 作:重曹ちゃんかわいい
黒川さんから壱護さんに話が入ったので、状況を聞くと、紹介した弁護士から今までの資産を手放さないといけない事を聞いて、拒否から入ったらしい。そして自己破産をすると、家が競売にかけられて自己破産をした事が周囲にバレる事をいやがり、生活保護を受けるには、近親者、この場合はかなの母親の親に区役所から連絡が行き、支援の拒否をされる事が条件になる事を話すと、ヒステリックになったようだった。
自己破産をして、一からやり直す事に関してはどうにかなるかもしれないが、今までの周囲の人間や自分の親に今までの事を知られる事が嫌らしい。
かなが事務所の取り分を引かない数字しかネットに出てないが億の収入があった事は有名だ。子供の財産から抜くことはまあ、良くあることだし、多少は許される風潮はある。だが、何千万も抜けばさすがにおかしいと思われる。そもそも何に使ったのか…………ブランド品や外車、家の改装なんかもあるとは思うが酒、あとは風俗関係なんだろうな。
自分の娘の財産を散々切り売りして贅沢な生活をして、そうしていたら夫に逃げられた。そして、その夫に騙されて借金を負ったなんて知られたくない。その気持ちは分からなくもない。だが、そんな事を言っている場合ではないだろう。
普通なら、理不尽に思いつつ、好転する余地がないから諦める。だが、かなの母親は諦めていない。有馬かなが再び、スターに駆け上がれば全部チャラになると思っている。父親はその余地がないから飛んだ。だが、母親は諦めきれない。
子供の資産の切り売りなんて窃盗となにも変わらない。だが、家族間でのお金に関する問題は刑事事件にならず、民事だ。6歳の子供に親に裁判を起こせなんて出来ないし、部外者のやれる事は少ないし、やっている間に何年かかるか分からない。
なら、所属のタレントの給与を勝手に使われる状態にしている事務所側の問題を提起して、使えないようにすれば諦めるだろうと思うのだが…………それも難しいらしい。
「ああ、そうだな。なにから説明するか…………子役の芸能事務所って大きく分けるとスクール型とプロフェッショナル型があるから、経営方針も結構違うんだよ」
「スクール型とプロフェッショナル型?」
「プロフェッショナル型とスクール型の違いは、子役を育てるレッスン料なんかを負担するか、負担しないかの違いだな。まあ、基本料金だけは負担して、特別なレッスン費を特別徴収するとか、半額くらい負担してる所とかもあるから、正確には大別できないんだが、そういう傾向があるってだけだ。プロはウチみたいなやり方の所で、入れるメンバーを絞って、売れる採算が取れるやつだけ雇うタイプで、その代わりにレッスン費やマネジメント全般に関わる費用はこっちが持つ。スクール型は今は実力の足りない子供を芸能人にしたい親が入れる塾みたいなシステムで、比較的簡単に入れる代わりに結構な金額の入会金と授業料を払う事になってるんだよ」
「いくらくらいなんだ?」
「本当に格差はあるが、入会金は除いて大手だと年間20万~60万くらいで幅があるな。もちろん月に2回とか3回だけある授業だけでは足りないって思うなら、対面レッスンとかの追加サービスを利用する事になる。大抵、そんなんじゃ足りないから、追加のレッスンを入れたり、合同合宿とかでどんどん膨らむ事になる事もある。かなの所は典型的なスクール型だな」
「受験生の塾と一緒だな」
年間30万とか書いて釣って、短期合宿とか受験前対策、追加補修、基礎強化月間とかなにかと名前をつけて、気がついたら年間50万、60万とかになるような手法だ。受ける受けないは自由だから違反ではないが、騙されたと感じる人も少なくないだろう。さらに芸能事務所は出演の権利の都合もあって最低でも1年は縛る。1度契約すると1年はその事務所でしか仕事ができなくなるなど、縛りが多く、途中で抜ける場合は、デメリットも大きい。
「プロフェッショナル型はかなり厳しいオーディションでもう子役のプロとして通用する子役やかなりポテンシャルのある子役だけを選んで、プロとして扱うからそこら辺はタダになる。スクール型も能力が高い奴は特待生扱いにして、タダにして集めるわけだから、実力と実績のあるやつはタダになる。だが…………」
「能力と実績が無い子ほど金がかかる」
「まあ、そういう事だな。あと、子役ってやつは儲からないし、下積みにエキストラをやるにしたって一人で現場に行けないから親同伴だ。ずっと芽が出ないのにエキストラばっかりしてる状態が一番駄目だ。母親は撮影がいつになるのかも分からないから働けなくなる上に子供につきっきり、頻繁に家事もできなくなるなんてなれば、相当、父親の理解がないと続かない世界だ。子供がよほど才能があるならともかく、子役なんて基本的に時間を持てあました金持ちの道楽の世界なんだよ」
「でも、拡大し始めて、1年から2年そこらは大分うまくいってたみたいだけど?」
「お前はよく分かってないかもしれないが、お前と有馬かなのブームの時は、子役にしたい親もかなり増えたんだよ」
「ああ、そういえば、そんな事があったような気がする。でも元々、アイドル事務所だから無理だって断ってるはず。育成なんて、監督の下でたまに見て貰ってるだけだから出来ないし、そもそも、子役自体にそんなに需要がないはず」
大体、テレビドラマや映画で脇役になれる人間は限られる。チャンネル数に限りがあるし、ドラマの枠だって多いわけではない。大抵エキストラで終わる。そもそも数が少ないからバーターで出すにも限界がある。
「お前とルビーもそうだが、黒川あかねは例にならないぞ。普通は小さい児童劇団での稽古経験しかないのに役者歴が2年程度で劇団からスカウトなんて来ない。今みたいにメインを、しかも複数やれるなんて、大手事務所でも殆ど居ないような本物だからな」
分かってる。俺の周りは参考にならなさすぎる。あかねも機会自体は与えたが、それですぐに結果を出して、俺から技術を吸収し、かなに次ぐレベルになった。演技というより、学習能力が異常に高い。
「B小町だって、読者モデルやれるような顔の良いやつばっかり集めたアイドルグループだった。歌もダンスも徹底的に仕込んで、アイドルの中じゃ上澄みだ。それでもお前が仕事を取ってくる前はアイ以外埋もれてた。お前も生の歌番組とか出たなら分かるだろ? 絶対に警備付きの所でやって関係者しかみせないのは何の為かなんて。加工しまくってるから生で本当に歌うなんて出来ない奴が本当に多いんだよ」
「ああ、大手の顔売りをしている所は、そういう技術で食ってる。それっぽく作る技術、それっぽくする能力が高いスタッフを抱えて、バーターでテレビや雑誌に出して、売れればどんどん売り込んで、売れなさそうなら次を用意して、そうすれば常に売れてるタレントを増やしていける」
量産型アイドル、量産型歌手なんて言われるが、それをコンスタントに出せるのは、そういう技術、ノウハウがあるからだ。それは誇れることだし、強みでもある。常にそれなりの人を出せるというのは大きい。
それが信頼になって、◯◯事務所の子ならとどんどん機会が訪れたりもする。逆に、圧倒的に勝てるなにかを持っていないと中小事務所のタレントはチャンスすら来ない。
「プロの世界は厳しい。中学生のガキを売り込む苦労は嫌というほどしたが、それでも成功したのは最近までアイだけだった。そんなちょっと流行ったからなりたいなんてガキが生き残れるほど甘くないんだよ。あと金も儲からないぞ。そもそも脇役までたどり着くやつの方が少ない世界。それでも1本数千円がいいところだ。そこそこ有名になって5万とかが精々なんだから、子役の出演料で儲かるなんてほんの一握りだ。お前からしたらスタート地点だった所かもしれないが、大体のやつがそこにたどり着くまでに力尽きて辞める」
「分かってる。子供のアイドルも歌手も需要がなさ過ぎて無理だった。だから比較的に需要のある子役で売り込もうとしたけど、上手くいったのは運に近い。大手事務所の所属か、最上位の実力を持つやつしかテレビに出られないような競争の世界だ。俺とかなのブームがきて、そのバーターで売り込まないとルビーでも埋もれそうになる所だった。俺が子役デビューできたのも監督に気に入られて、機会があっただけだし、そうじゃなかったら、今は無かったと思う」
「子役の需要なんてそんなにない。子役にしたい親が増えたって仕事が増える訳じゃない。だから自分の子供がテレビで脇役にもなれない。ただ月に数回やった程度でなれるほど甘くない。それに気がつくのに1年、2年かかって、それに気がついてどんどん抜けてったんだろうよ。有馬かなの事務所はスクールタイプだから、マネジメントで食ってる訳じゃ無くて、授業料で稼ぐタイプだから、有馬かなのバーターで取ってきた仕事を餌に、合格実績なノリで採用実績を載せて、ここに入ればテレビに出れるアピールして稼いで拡大してきたんだろうな」
「たしかに…………アーカイブで拾ったデータで確認すると、それっぽいな」
「有馬かなの所属事務所ってことで子役志望の奴は、有馬かながバーターで仕事を取って来れなくなって、おこぼれすら貰えなくなって子役が居なくなったって所だろうな。規模を拡大したのはいいものの、維持出来なくなったんだろ。よくある話だ。この場合、ヤバいのは箱代だな。普通契約なのか定期契約なのかは知らないが、短くて2年、長いと10年契約。短ければいいが、途中で契約を切るなら、相場だと1年分の賃料に共益費は違約金として取られる感じだな。家賃、保証金、礼金、管理費、不動産手数料に保険金…………あとは内外装工事費に設備備品なんかもかかってるはずだから、初期費用を回収するなら相応の利益率を確保しないと厳しい。それが1、2年で採算合わずに撤退なんてしたら、キャッシュが足りなくなるだろうな。この業種は信用がないから簡単には金を借りられない。有馬かながやたらと金目当ての仕事ばっかりしていたのを考えると自転車操業になってそうだな」
「だから、今、どんな状態でもかなを手放さないって事?」
「ああ、有馬かなを失えば、もう再起なんて出来ない。手放せば自分の事務所が無くなる可能性があるのに、ぬるいこと言ってられない」
かなの抱えている問題は多い。法的にアウトな案件も多い。だが、それで事務所をどうこうできるわけではないらしい。
特に問題の労働時間だが、正直、売れっ子で法律を守っている方が少ないまである。学生スポーツの世界でもレクレーションだとか言って、筋トレをしたり、トレーニングをしていたりするものだし、そうやって、周りとの差をつけるために努力した者が生き残っていく世界だ。未成年という事で注意が入るかも知れないが、それだけだ。
芸能界を含めて勝った者が総取りな世界では、そういった実質罰則がないものや、取り締まりができないものに関しては無視されるものだ。むしろしない奴は努力しろと言われてしまう。
それに、キー局のADやDは週1休みが当たり前になっているくらい休みが少なく、拘束時間も長い。
これはまだマシな方で制作会社は大手でもさらに酷く、一ヶ月、長いと半年休みなしなんてひとも当たり前のようにいる。さらに下になると派遣、さらに二重派遣も起きるような状態になってる有様だ。そんな人達で構成されてる世界で何千万を稼いで、月に80時間を超えたからなんだという話になる。100でも200でも反応はあまり変わらないだろう。そういう世界だ。そもそもタレントが学校を疎かにして仕事をしている奴が山ほどいるので、かなだけが特別不遇というわけではない。みんなブラックになれすぎている。
事務所が一人の看板役者に依存しているというのもよくある事だ。その看板役者の出演と引き替えにして、脇役に同じ事務所の人間をデビューさせて、認知度を上げる。そのデビューした子が育っていけば、また新たな取引カードになる。そんなバーター取引をしていって事務所を拡大していく。
事務所ならみんなやっている事で、特に中小規模の事務所では一人のスターに依存している事が多い為、追い詰めすぎることだってよくある事にすぎない。脅迫されたり、暴力を振りかざされることがなければ、同情すらされない。
昔のアイだって似たようなものだった。一人のスターが残りの事務所のメンバーの全てを握っている状況は珍しくない。アイが居なくなったらB小町はもちろん事務所自体が存続できるか怪しい状態だった。アイにおんぶにだっこ状態だった時にアイが妊娠したのは今思うとかなりヤバい。
これらの件で事務所を移動しようなんてすれば、間違い無く事務所からの報復が待っている。芸能界は誰がいつどうウケるのかが分からないし、ウケたとしてもそれがいつまで続くのかも分からない。事務所の力で実力と知名度を上げて、そのまま契約を更新せずに逃げられれば、投資が無駄になるので制裁を科して、後続が出ないように圧力を加えてくる。
もちろん、そうすると事務所もそのスターへの投資が無駄になるので、ほどほどで妥協する事も多いのだが、折り合わない場合は全力で潰してくる。今回、かなが居なくなる。もしくは芸能活動を抑えるなんて言い出せば、逆転の目すら無くなるだろうから、妥協は…………しないだろうな。
もちろん、小学生相手に暴力や脅迫みたいな過激な方法はとらないだろうが、事務所を離れようとするなら、今後は仕事を無くすように圧力をかけるだろう。もちろん、これは本来であれば法律違反であり、やると法的に裁かれる可能性はあるが、こういう内側の事を漏らせば、漏らした人が制裁される為、証拠が出てこないし、証明が難しいのでやりたい放題になってしまう。労働基準法違反をさせているのは事務所側だから、事務所が悪いという風にはならない。完全に法律を無視した行動を業界が許容してしまっているからだ。
あと、かなは芸名が本名なのもまずいらしい。芸名を取り上げるという名目で、テレビで本名を使えなくされる。有馬という名字やかなという名前も今後、名乗れなくなる可能性が高い。築いたブランド全てを取り上げられる権利を事務所が持ってしまっている。これも普通に法律違反になる可能性はあるのだが、業界では制裁として認められている。法律を無視して好き放題してる世界だ。
労働基準法なんて殆どの人間が守ってないし、守る気もない。医者の世界も年間の残業時間が2000時間を超えていたりする所……まあ、産婦人科の事なんだが。似たような所も普通にあるので大概だが、芸能界の場合、欲望の度合いが強すぎて、より悲惨な有様になっている。
有名な事務所なんかは雑誌にどんな嫌がらせをしたのかを掲載してる所もあるが、それでも法的に訴えれていない。昔みたいに反社会的団体をタレントに突っ込ませるなんてことはしないだろうが、追い詰められた相手なんてなにをするか分からない以上、やるべきではないだろう。
親の問題もそうだが、芸能界そのものも、訴訟なんてしたらそれ以上のリスクを押しつけることが出来る世界だ。だから本来なら闘わずに上手く躱さないといけない。
だからどうにもならない。どうにかするデメリットが大きすぎる。
壱護さんが出した結論は正しい。本来、ここに来るまでに引き返す機会はあった。それに気がつかなかった俺のミスだ。
「俺が気づいていれば…………」
ぽつりと言葉が漏れる。
「いや、お前と有馬かなはしばらく共演もしてなかったんだろ? それなら分からなくて仕方ないだろ。それにこれは有馬かなの親と事務所の関係であって、お前は悪くないし、最近はカミキの件にかかりっきりだっただろ。そんな中、気がつけるはずがないだろ」
そうだ。カミキ…………俺がカミキの件をもっと早く処理していれば良かったんだ。そうすれば、かなの件にもっと関われたはずだ。かなに心配をかけて、相談しづらくしたせいで…………
「そうだ。俺がカミキの殺人事件の証拠をさっさと警察に通報していれば」
あの神の遣いを名乗る少女の言う通りにしておけば良かったのかもしれない。俺が少しでもアイやルビーの悪影響を無くそうと勝手なことばっかりしたせいで、こんなことになってしまった。
「おい、カミキの証拠ってなんだ?」
壱護さんが居た事を忘れていた。漏らしてしまった以上、仕方ない。話すしか無い。
「宮崎に行った時に、アイの担当医らしき死体を見つけたんだ。そこにはカミキのものらしき腕時計が落ちていた。有名な海外メーカーのブランドのオーダーメイド、しかも、イニシャルも彫ってあったから、製造番号とかも含めて誰の物か直ぐに分かると思う」
「…………どうやって見つけたのかとか、聞きたい事は色々あるが、なんで黙ってた」
「こう言っちゃうとなんだけど、罪悪感から直ぐに通報されるかもしれないと思って、黙っていた。これをすぐ公表すれば、アイどころか事務所自体が潰れる可能性があった。だから、きちんと契約の見直しとかそういった事を最低限終わらせて、公表時期を見計らう段階まで来たら話そうと思っていた。その間にカミキの他の殺人の証拠が見つかるならそれで良かったしね」
「お前な…………」
「だけど、どうしても納得できなくてさ。ずるずると先延ばしにしてしまって、今、別の問題を起こしてしまった。こうなるなら、先に相談しておけば良かったかもしれない」
かなの事は、これ以上、巻き込むわけにはいかない。だから俺がなんとかしないとな。
「スケジュールの事は任せるよ。都合がつけば担当医の先生の死体の所に案内するから」
「おい、有馬かなの件はどうするんだ?」
「法的にどうにもならないなら仕方ない。俺も出来るだけの事はするつもり。かなのサポートとか悩みを聞く事くらいならできるからさ…………」
「お前は本当にそれでいいのか?」
壱護さんからかけられた声に俺はなにも答える事が出来なかった。