推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

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第十話 裏 アクア⑯

 

 自分の子供が上手くいく事で自分のコンプレックスを満たそうとする親というのは少なくないし、これ自体が悪いわけではない。だが、それを他者へのマウントや、称賛の言葉を得る道具に使ったり、上手く行かない子供を責め始めたり、強制しだすと問題になる。

 

 そして、この問題の厄介な所は子供が親のコンプレックスの部分を解消して成長したとしても、本人のコンプレックス自体は解消されないこと。そしてどんどん、子供への要望が大きくなっていく事。かなの母親はその典型だった。

 

「んっ、なんだそりゃ」

 

 パソコンの前で俺がどうするか迷っていると壱護さんが話しかけてきた。

 

「かなの母親のSNSアカウント」

 

「いや、こんなのどうやって探してくるんだよ」

 

「こういう承認欲求の強い女性はブランドバッグとかこだわりの家具とか、車とかそういうのは1度はSNSに載せてくるし、リフォームしたら、その日には写真とかを載せないと気が済まない。かなにリフォームした日を聞いて調べた。防音室なんて作る一般家庭は少ないから、すぐに特定できたよ」

 

 あれから半日経って、かなの証言も参考に調査したら案外すぐに見つかった。

 

 かなの母親のアカウントはお金持ちの家に嫁いだ勝ち組ママで、娘はお遊戯に夢中な小学生という設定だ。有名人との写真や、食事会の写真なんかもモザイクを入れているが時々載せていて、こういう人達とも交流があるイケメンなお金持ちの旦那から溺愛されている設定らしい。実態は娘が芸能人で、その娘のお給料を抜いているだけ。かなの仕事での芸能人との食事会の写真に、軽いモザイクかけている旦那扱いの男はホスト。こんなものに意味があるのかはわからないが、こういうのが楽しいのだろう。かなり高頻度で更新されている。…………正確にはされていた。

 

「あー、いるよな。そういう芸能人のアカウント。動画にすると企画扱いになって経費にできるってのもあるが、愛情をいくら金を払ってくれるのかで量る、それでどれだけ愛されているのかでマウントを取ってくる為にやるやつ。っで、そんなの調べてどうするんだ?」

 

「かなの母親の行動原理が知りたいんだよ。今、出来る最善手は自己破産してしまって、生活保護を受ける。あとは、生活保護費以外の金は前みたいにかなの給与から抜いて役所にバレないように使うとかなんだろうけど、その選択肢がとれないのは、したくない理由があるから。その本当の理由が知りたい」

 

 まあ、面談や審査もあるし、見つかれば次こそおわりだが、別に生活苦なんかにはならないだろう。でもそれでは満足が出来ないんだろう。その理由はこれを見ればだいたい分かる。

 

 他者からの評価に依存し、それを常に評価して貰わなければ自分に価値を見いだせない、感じる事が出来ない人間のやる行動だ。他者からの評価に依存している人は、認められる事により成功体験を積んでいき…………そこから降りられなくなる。評価を下げられる事を恐れて理想の自分になろうとする。

 

 これが自分の努力によるものなら自信が付いて、うまく妥協点を見いだせることもあるが、嘘の場合、承認欲求が一時的に満たされても、それが虚像だと知っているので、自信は付かず、満たされず、ただただ承認欲求だけが膨れあがっていく。どんどん、承認欲求を満たすために行動し、いつか破綻していく。無限に嘘をつき続けるのも、評価され続けるのも無理だからだ。

 

 そして、かなの母親はコンプレックス自体はかながトップ子役になった事で満たされたのだろう。だが、いつしかそれで満足出来なくなった。もう消されているが、一時、有馬かなの母親を名乗るアカウントがあったらしい。

 

 恐らく、ここで有馬かなを育てた母親としてコンプレックスを満たそうとして失敗した。正直、かなの才能は育て方どうこうではないし、正直に言ってしまえば、わがまま放題させていた為、親としての能力をかなり疑問視されている。演技力なら同世代でトップの代わりに、性格が悪いというのがかなの評価だった。そして、その悪い部分は母親の教育によるものとみられるので、有馬かなの母親という地位はあまり居心地のいいものでは無かったのだろう。

 

 だから架空の家庭を作って、理想の自分を当てはめて、キラキラした虚構の城を作り上げた。そこで何十人、何百人の人に注目されて、嵌まってしまったのだろう。こういう風になる人は少なくない。

 

 夢から覚めたら、夫に捨てられ、ローン破綻寸前の元専業主婦という事実だけが残る。それが嫌なんだろう。かなの母親はお金が欲しいのではなく、承認欲求を満たしたいだけ。簡単に言えばそれだけの人だ。

 

 こんな手は使いたくは無かったが、夢の城が消えた時、どうなるか分からない。周りにも迷惑をかけるが、ある程度、強引な手でやらないといけないかもしれない。

 

「…………それで、カミキの件とかなの件はどうなったの? それを教えてくれに来たんでしょ」

 

 あれからすぐ壱護さんはカミキの親と面会して、俺の死体の事やその証拠があること、そして、カミキと付き合ったり、関係がある女性が何人も亡くなっている事などを伝えにいってくれた。金田一さんの所の女優も殺されているらしく、かなり揉めていた。その後、今回のかなの件についての管理体制について、かなの事務所へ話し合いへ行ってくれた。即行動に移してくれて感謝しかない。

 

「カミキの件はこっちの探偵に調べさせた結果と例の時計の写真を渡してある。信じるためにもこっちで調査をしたいから時間が欲しいと言っていた。カミキには探偵をつけてある。現地に飛んでカミキと組んで証拠隠滅を図ろうとするならわかるようになってる。…………そうなったらもう駄目だな。こっちで公開して事件にするしかない」

 

 その場合はもうどうしようもならない。と壱護さんは言った。場所が場所だ。聞いただけではたどり着かないような場所にある。カミキは土地勘もないはず。6年近く前の山の中の死体の場所なんて説明できないだろう。

 

「有馬かなの件は…………駄目だな。労働時間についてはまあ、こっちも人の事言えた義理じゃない。学校にまともに行かせてないのを親が認めてしまっているからやりたい放題だ。その為の飴が、中抜きしてる事を黙っていることなんだろうな。認知してないとかすっとぼけてた」

 

 知らないはずがないが、そうやって来たのだろうし、唯一残った希望を学校に行かせると労働可能時間が大きく減るから、親の協力の下に仕事を入れているんだろう。限界までいれた上で、練習時間は別枠で自主的にやらせている。こっちは時間制限なしだ。テレビの仕事は減っても地方興行は知名度でいける。車で移動させて、そこで練習や休憩時間にすれば良いという考えらしい。小学一年生にやらせることじゃない。18歳未満のルールを芸能枠だからと6歳に当てはめて悪用している事が知られれば、業界全体のルール改変に繋がりかねないし、ネットで知られれば炎上するだろう。法改正すらあるかもしれない。

 

 そして、そんな事よりも、こんな生活を続けていたら、体もそうだが、精神がもたない。これを許可する親もおかしいだろう。夢の城の為に、現実の娘を省みない母親にいらだちが隠せそうにない。一刻も早く、救ってあげたい。

 

「カミキの件が上手く解決したならうちたい手があるんだけど…………いいかな?」

 

「なんだよ。上手くいかないとできないのか」

 

「うん、ちょっとお金がね」

 

「金で解決か…………アイの時も身元引受人を金で用意したな」

 

「いくら?」

 

「200万円」

 

「なら、今回はその50倍になるね」

 

 そう笑顔で言うと壱護さんが顔を引きつらせていた。まあ、俺の今までの稼ぎが吹き飛ぶ額だが、まあ、良いだろう。いいさ。その夢の城がかなよりも大事だっていうのなら、夢のつづきは見せてやる。だけど、数年後に夢から覚めた後は知らない。勝手にすれば良い。

 

 正直、馬鹿正直に渡してもすぐに使い切って、最悪、こっちを脅してくるような手を打ちかねない。だからうまくやって、相手をなるべく金を使わずに飼い殺しにするように手を打たないといけなかった。

 

 壱護さんとその為の準備をしていると、点けていたテレビから信じられないようなニュースが流れてきた。

 

 カミキヒカルの死を知らせるニュースだった。

 

 

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