推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

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第十話 裏 アクア⑱ かな好感度100イベ

 

 かなの母親は、SNS依存症だ。

 

 そこに至るまでの過程を推測しても依存症に陥る典型的な流れをしているように思う。初めはよくあるレベルからどんどん普通の人が立ち止まる先に進んでしまった。いや、進めてしまった人だ。

 

 現実での孤独感や満たせない承認欲求を埋めるために自分の人生二周目として娘を芸能界に送り込んだ。自分の果たせなかった夢を子供に託す。今では駄目だが、少し前の時代なら普通に美談になるよくある光景だった。かなの母親も初めはその姿に自分を投影し、満足していたのだろう。だが、かなは才能がありすぎた。自分の二周目とするにはあまりにも出来すぎた。だから自分の二周目と認識出来なくなった。かなが女優賞を取ってからそれが余計に顕著になっている。

 

 だから、仮想の自分を作ってそれで承認欲求を満たしていた。そして、承認欲求はどんどん膨らんでいき、今の姿があるのだろう。酒、女、ギャンブルの嵌まり方に近い。こうなってしまうと正論を言っていても無駄になるし、無理矢理止めさせても、また同じ事を繰り返す。治療に向き合ったとしても長い時間がかかるものに、こちらも付き合ってあげられるほど時間がない。

 

 借金があり、それを返済出来ないので、自己破産をしないといけないし、働く能力もないので生活保護に頼らないと生きていけない。そして小学校低学年までならともかく、それ以降は役所から働いて生活保護から脱する努力を求められる。そんな未来にも向き合うなんて出来るかと言われると難しい。

 

 なので、向き合う事もせずに済む答えを渡してしまおうと考えた。かなの母親はそれに飛びつくとは思っていた。

 

 俺が壱護さんに許可を取ったのは住宅ローンの実質的な肩代わり。かなの今、住んでいる家をこちらで借りて、ローンより上の金額で借り続けるという提案だった。その上で、今の俺たちの住んでいるマンションの別の部屋を借りて、福利厚生として住まわせる。生活費として従来のローン額とレンタル費用の差額分を生活費として渡すやり方だ。

 

 黒川さんが難色を示したのは、かなの契約と紐付けできないため、すぐに逃げられてしまう可能性があること。そして、不動産の運用になるので、色々と間を通さないといけないし、税金もかかるので無駄にお金が吹き飛ぶなど金銭的な面だけでもデメリットがてんこ盛りだし、経費計上したりしても、10年で億近い額が飛ぶし、これをリークされて、問題になる可能性だってある。

 

 だが、彼女には、働いていなくてもいいだけの理由になる社会的立場と収入を与えないとかなに集る事を止めないし、ただ、お金を渡した所でまともに使えないので、月に家賃として渡さないといけない。家事もまともにやってないので、かなの逃げ場所を近くに作らないと、ネグレクトで健康状態まで悪化させていくのが目に見えている。なにも期待できない以上、なにもかも支えられる体制を作らないと安心できない。

 

 なので、そういった条件で壱護さんにも話して条件を了承してもらい、あかねの母親経由で、あかねがどんな扱いを受けていて、かながどんな不当な扱いを受けているのか、苺プロに来るとどんなメリットがあるのかを、あかねの例を踏まえて話してもらって、黒川さん経由で、こちらへの移籍打診をして貰った。あくまでも、善意でこちらを紹介してもらう。

 

 大切なのは、彼女に自分は被害者であると言い訳出来るようにする事。そんな可哀想な自分に救いの手をさしのべられたと勘違いさせる事。言い訳をしてずっと逃げていた人だ。自分が悪者にならない逃げ道さえ作ってしまえば、簡単に逃げると思っていた。

 

 動いてもらって一週間も経たないうちに移籍が決まって、もっと面倒な事になる事を想定していた壱護さんが、こっちを変な目で見ていたが、まあ、そういう人は良く見てきた。そういう人なんだと思えば、そういう対処をすればいい。ああいう人はお金が欲しいんじゃない。居心地のいい空間が欲しいだけ。本当にそれしかない。

 

 不動産価格とあまりに大きな差異があると、贈与に当たってしまい、税務署に脱税を疑われる可能性すらあった。現実的な金額に収まったと思うと肩の荷が下りた。

 

 スマホを見る。

 

 SNS上では、有馬の母親は、自分を愛してくれた夫を不幸な事故で失い、家族との思い出がある家をみると辛いから手放すことに決めた。そのあとは、夫が残した財産で娘と二人で質素に暮らしていくと言って、俺たちが用意したマンション…………というか俺たちが今でも住んでいるマンションの部屋の写真をあげていた。

 

 あきらかに質素ではない。というより、高級マンションの部類なので、あきらかにおかしいのだが、落ちぶれたわけではないアピールがしたいのだろう。

 

 その写真には、たくさんの応援メッセージがあり、そこに丁寧にお礼を返している。

 

 お金持ちの家に嫁いだ嫁から、不幸にも夫に旅立たれた丁寧な暮らしをするシングルマザーにジョブチェンジを図ったらしい。あかねの家を見て、丁寧な暮らしをする専業主婦に憧れたらしく、それで良いと、そっちの方が良いと思えるようになったらしい。前よりはお金は使わずにすむだろう。むしろ、ブランドものを買い漁ると、突っ込みが入ることになる。

 

 こんなことになんの意味があるのだろう。

 

 いや、依存症とはそういうものなのは分かってる。特にこういったドパミン系の刺激は中毒になりやすい。

 

 こういった依存症も年齢で落ち着きがでてくる。25歳が一つの区切り。そこからは脳がある程度完成して、そういった脳内物質の出も悪くなる。快楽そのものをどんどん増やさなければ、勝手に少しずつ減らしていっているのと同じような状態になる。30歳半ばを超え始めるとある程度落ち着いていく人が殆どだ。かなの母親が落ち着くのを待つしかないだろう。

 

 事務所にかなが入って来て、みんなで出迎える。

 

 ルビーが「これからは一緒の事務所だね」と笑顔で言い、あかねも「かなちゃんとこれから一緒に練習とかもできるね」と、かなを囲むように近づいていて、言葉をかけている。アイをはじめとしたB小町のメンバーも挨拶をして、かなもそれに礼儀正しく答えている。

 

 正直、少しやらかさないか心配していたが、問題なかった。

 

 そして、俺の前に来たかなに違和感を感じた。

 

「ありがとうアクア。私の為に色々動いてくれたって聞いたわ」

 

「俺は社長にかなの現状を伝えて、お願いをしただけだよ。今までのかなの実績と実力からしてみれば、スカウト出来るのならしたいって言っていたし、大した事じゃない」

 

 かなには、お金の話はぼかしてある。かなを傷つけたくなかったし、変な感情を向けて欲しくなかった。それにその方が、事務所がリスクを冒してでも取りたいとおもえるくらい価値があると思えるように、今回の件はかなの才能や実績を高く買ったからスカウトしたという説明をしている。

 

 初めは、事務所でそういったものを出してくれるといってくれたが、それだとその他のメンバーと比べて不公平な扱いになってしまい、後々に面倒が増えることが目に見えていたので断った。

 

 とはいえ、子供の貯金をそんな風に使えないので、報酬比率を下げてもらった。あくまでこの問題は俺がかなに入れ込んでやっている事と、業界の人間に言い訳する為にも必要だった。

 

「そう、期待してもらっているみたいだし、もっともっと頑張るわ」

 

 かながそんな事を言い出したので、止めなければならない。事務所の移動はかなに無理をさせない。今以上に頑張らせない為のものだ。

 

「いや、今は法律の許す以上にやっているだろう? きちんと学校に行って、法律で可能な労働時間から学校の時間を計算した上できちんとしよう。俺も最近は働きすぎだったけど、改めるつもりだ」

 

 正直、練習時間まで入れ始めると仕事が回らないし、そんな事を計算してやっている人なんて居ないので仕方ないが、実労働時間くらいは合わせないといけない。

 

「それじゃ駄目でしょ…………せっかく、期待して貰えたのに、その期待を裏切れない。今の私にはいっぱい働くことでしか期待に応えることが出来ないから」

 

 うつむくようにしてそう呟くかなの手を握る。今度は見逃したりはしない。

 

「これからについて少し話そう」

 

 かなにそう告げると、みんなに話したい事があるからと、時間を作って貰って、かなを空いている部屋へ誘導した。

 

「なにがあったんだ?」

 

「…………なにが?」

 

「そんな風に暗い表情をすればすぐわかる。なにか辛いことがあったんだろ?」

 

「ないわよ。そんな事。いつも通りの事が起きてただけ。ただ私はそれを知らなくて、最近知っただけでなにも特別な事なんて起きてない」

 

「そうか…………母親の事か」

 

 ああ、恐らくだが、母親についてある程度はバレたんだろう。と思った。娘の初日に同行すらしないんだ。なにかあると感づいてもおかしくない。どこまでバレたのかは不明だが、ここまでショックを受けているという事は、ある程度の事は知っていそうだ。

 

「…………アクアはなんでも知ってるのね。そう。お母さんの事。お母さんが何をしていたか最近分かったんだ」

 

 かながぽつりぽつりと語り出した。

 

「お母さん…………携帯を事務所から支給されたやつに変えたみたいなの」

 

 俺が壱護さんに頼んだものだ。固定費になるものは会社支援という事で渡すようにしていた。かなに連絡が行きやすいようにという名目だが、業務用を勝手に個人携帯として使う事を誘導すれば、もしもの時は中身を抜ける事を見越していた。

 

「その時に、多分、操作を間違えたんだと思うけどさ。連絡帳と同期しちゃって、私のSNSの友達かもしれないって出てきて、私の新しい部屋の写真とかそういうのが出てきたから遡って見たのよ」

 

 最悪だった。最も見てはいけないものを最も見てはいけない人が見てしまっていた。

 

「お母さん…………私のお誕生日の日にSNSではたまの贅沢だって写真をあげてたんだ。お父さんとは違う人と写真に写っていて、旦那だって言ってて、私はその日仕事をしていたのに、遊んでばっかりとか書いてた」

 

「少し前だってさ、私がピーマンを苦手で食べられないから困るって書いててさ。苦手な子の為の料理とかを募集してた。私はお医者さんにピーマンは食べちゃ駄目だって言われたのに…………それなのに、お母さんは私の為に用意したんだって言うの。顔も知らない人たちに良い格好をしたくて、そんな事ばっかりするの…………完食させて、その写真をあげてる」

 

「お母さんのSNSの中の私はお遊戯に夢中な娘なんだって。可愛くて仕方ないとかそんな事を書いてあった。私は沢山頑張ってお母さんの為に頑張ってきたのに、そんな事よりも、遊んでばっかりの娘の方が良かったみたいに書かれてた」

 

 優秀な娘に耐えきれなくなって…………自分の投影先として使えなくなった娘から逃げて無かった事にしている母親なんて俺も見ているだけで嫌になった。当事者ならもう駄目だろう。誰も信じられなくなる。

 

「お母さんの中には私なんて居なかった! あそこに居るのは私じゃない! もう、お母さんは私の事をなんにもしらないし、興味もないんだ!」

 

「かな…………」

 

「私が数字にならないと分かると、あんなにちやほやしてくれた人達も居なくなっちゃった。私は演技が出来ないと、数字を残せないと、お金を稼げないとみんなどこかに行っちゃって、私の事なんて見てくれなくなる…………事務所を移動するのがどんなに大変かなんて、この業界にずっと居ると分かる。それなのに迎え入れてくれた事務所の人の期待を裏切るのが恐い。あの時みたいにお母さんにサボってるとか言われたくない。一生懸命やっているのに、頑張ってるのに、結果が出ないとなにもしていないって言われるのが恐い。結果を出せない私はせめて数をこなさないといけないのよ!」

 

 かなは、息を荒げて、涙を流しながら訴えかけてくる。

 

 努力が人気に繋がる訳では無い。そんな世界で結果を親にも周りにも求められ続け、結果が出せないと簡単に見捨てる環境…………かなはその理不尽さに苦しんでいる。

 

「俺は、かながどんなに頑張っているか知っている。今は結果が出ないとしても、それまでかながずっと努力してきた過程をずっとずっと見てきた。そんな事を言う奴がいるなら俺が否定する。かなとずっと一緒に居た俺が言うんだ。なにもしていないなんて…………頑張っていないなんて言わせない」

 

 勉強なんかは一定のレベルまでは努力をしていけば実力をつければつけるだけ結果が出るものだ。だが、芸能の世界は違う。実力なんてなくても結果が出ることは多々あるし、逆に実力があっても埋もれる事が珍しくないどころか、そっちの方が多い。あとは長くやっていると飽きられてしまったりもする。そんな残酷な世界だ。

 

「でも! でも! ほとんどの人はそう思わないじゃない。頑張らないと! 結果を出さないと! 所詮は子供とか、手を抜いてるとか思われちゃう!」

 

「だとしても、それに付き合う必要はないよ。かなは十分努力してるし、頑張ってる。結果が出ないのだって、今だけだ。俺はキミの演技のすごさを知ってる。大丈夫、これからは俺がかなを隣で支えるし、監督やルビーやあかねちゃん、協力してくれる人も居る。だから、一人で思い詰めないで欲しい」

 

 手を差しのばすが、かなの顔は上げられない。

 

「…………信じられない。だって、お母さんもお父さんも、事務所の大人の人も同じ役者仲間だった子もみんなみんな離れていって、悪口ばっかり言ってくるようになった。ここの事務所の人もアクアもルビーもあかねも、みんな、私を嫌いになる」

 

「そんな事ないよ」

 

「そんな事あるわよ…………だって、家族だってそうだったのよ。ただの友達でしかないアクア達がそうならないってどうやったら思えるようになるのよ。演技の出来ない私なんてただの性格の悪い子供でしかない。生意気な子供だって言われて嫌われる。演技が出来たり、お金を稼げたりしない私なんて誰も好きにならない」

 

 ああ、目の前の子はかつての俺だ。医学部に進んで地元に帰って医者になる親孝行な息子でなければ居場所が無いと思っていた。ここで逃げたら人でなしだと蔑まれるのではないかと思って、内心恐かった。だから夢を捨てて、地元で働いていた。

 

 本来、人が無条件での愛情を初めて向けて貰えるのは母親だ。母親の代わりに成功する為に産まれて育ってきたかなにはその経験がない。だからそこに利益を結びつけてしまう。その経験がない以上、仕方の無い事だし、俺もさりなちゃんと出会っていなかったら、どこか他人事のように思っていたと思う。

 

 前世の俺は顔も悪くなかったとは思うし、医者という事でステータスもあった。だから、女性にモテた。だけど、内面的な所を好きになってくれた女の子はさりなちゃんだけだったし、内面的なところを好きになれたのもさりなちゃんが初めてだった。人の内面を好ましく思い合える関係は本当に難しいし、愛されるという自信は、愛される事でしか築けない。

 

 その初めての気持ちを抱いた女の子を失った時、俺は死にたくなった。

 

 ただ失ったわけじゃない。裏切られたかなはその時の俺以上に苦しいはずだ。

 

 これは…………医者としてふさわしくない行動だ。でも、それでかなを一時的にでも支えられるならする価値はあると信じたい。

 

「かな、聞いてくれ」

 

「なによ…………」

 

「本当はさ。かなの事務所移籍は俺が頼んだ事だけど、かなの役者としての実績とか、集客力とか、金銭面での期待からスカウトしたわけじゃないんだ」

 

 最初はかなは役者として評価されたいという気持ちが強いと思って隠してきた。だけど、母親がかなの愛情を、献身を、思いを踏みにじってしまった今、有馬かな個人に対しての思いを伝える方が、彼女が求めているものを上げられるのではないかと思う。

 

「じゃあ、なんで苺プロは私をスカウトしたのよ」

 

「俺がかなを救いたいと言ったからだ。俺がかなを救いたいことを知って、苺プロのみんなが良いと言ってくれて、かなが安心して働ける環境をあげるように手配してもらった。ただ、それだけ。今回、スカウトをしたのはお金でも実績でもなんでもないんだよ。ただ、かなが泣いていて、苦しそうだったから、そこから逃がしてあげたかった。それだけなんだ」

 

 カミキの件は言えないので、そこは暈した。

 

「えっ?」

 

「俺はかなのお母さんがどんな人なのか、結構前から分かってた。だから、一緒に居ると辛いなら、逃げられる場所になって上げたいと思って、このマンションを用意したんだ。苺プロは本当はさ。家賃支援とかそういうのも無いんだ。けど、かなの近くで支えたいと思って、社長にお願いして、その件も呑んで貰った。お金は俺の取り分からひいてくれって頼んでさ」

 

 かなの手を握る。小さくて冷たい手だ。どれだけ傷ついて、どれだけ不安を抱いていたのかは分からない。かつての俺なんかの何倍も苦しい日々を送っていたんだろう。

 

「本当の家族だなんて思わなくていい。だけど、俺はかなを家族のように支えたいと思ってる。その為なら、お金なんていくらでもだすよ。事務所移籍で色々と言われるだろうけど、それを黙らせるくらい、かなが不利益を被らないように仕事だってするつもりだ。だからさ、利益があるから、かなの事を助けようとしているわけじゃないって事だけは覚えておいて欲しい」

 

「なんで…………なんで私なんかの為にそんな事するのよ。アクアが大切にしてるのは、妹のルビー。そして好きな人はアイでしょ?」

 

 かなが妙な勘違いをしていた。いや、この二人の為なら死んでも良いくらいに思っていたから、表向きは家族ではないアイに対して恋愛感情を向けていると思っても不思議じゃないかもしれないが、まだ小学生でもないのに恋愛感情はさすがに飛躍しすぎだろう。

 

「いや、どうせ直ぐ知る事になるから言うけど、アイは俺の母親だから、恋愛感情はないぞ」

 

「はぁ?! いや、ルビーに似ているとか思ったけど、母親??」

 

「ああ、だから、その二人にしていたのは家族愛だよ。普通だろ」

 

「アクアのそれは異常すぎるのよ! えっ? じゃあなに? あんた、シスコンな上にマザコンでもあるの?」

 

「その言い方はやめろ!」

 

「だって、完全に目線が女の人を見る目だったし…………アクアって自分の母親をそういう風に見てるの? ちょっと引く」

 

「そんな風に見てないだろ」

 

「いや、見てたわ。絶対に見てた!」

 

 このナチュラルに煽ってくる感じがいつもかなと話していた感じがして懐かしかった。昔は…………4歳まで、かなと一緒にずっと共演していた時はいつもこんな風に喋っていたのを思いだした。最近はこういう会話をしてなかった。かなもさっきまでと違って少し明るくなっていた。

 

 有馬かなはこういう奴だ。根は悪くないが、口が悪く、考えなしに発言をして周りから誤解される。でも、そんなところも嫌いじゃ無い。

 

「アイやルビーに対して、利益うんぬんで接してないように、かなにもそんな気持ちでこうやって動いたりしているわけじゃない。かなといっしょに過ごして、一緒に話している時間とかが好きで、大切だと思ってる。だからその為に色々してるつもりだ。だからさ。本当の家族なんて思わなくてもいい。でも、俺はアイやルビーに対してやっているように、かなが困っていたり、辛いことがあれば助けてあげたいんだ」

 

 ずっと握っていたせいか温かくなってきたかなの手に少しだけ力を加えた。

 

「私は…………アイやルビーみたいに可愛くないわ」

 

「そんなことはない。有馬かなは可愛い」

 

「私は性格も口も悪いし、絶対に嫌いになる」

 

「一時的にそうなったりする事もあるかもしれないけど、また仲直りして好きになるよ」

 

「これからずっと売れなくて、迷惑をかけるかもしれない…………」

 

「側に居て、笑ってくれていればそれでいいよ。他のことなんかいらない」

 

 かなを見つめて問いかける。

 

「ずっととは言わない。けど、大人になるまで…………18歳になるまでかなのことを家族として守らせてくれないか?」

 

 18歳にもなれば、高卒の社会人1年目と同じ年齢。満18歳以上の雇用契約からは親の意思の介入度が殆ど無くなる。その時までは大人として、彼女を守ろうと思った。

 

「18歳…………それから先は?」

 

「そこから先はまた一緒に考えていけばいい。10年以上先の話を今決めることないさ」

 

 かなはゆっくり目を閉じて考えているのか、沈黙が流れる。少し時間が経って、開いた瞳は前と同じか、それ以上に輝きを放っていた。

 

「わかった。アクアを信じるわ。18歳になるその時まで私を守りなさいよね」

 

 かならしいと言えばかならしい態度に苦笑が漏れる。するとかなの顔が近づいてきて、唇と唇が重なった。

 

「アクア…………愛してる」

 

 その笑顔は太陽のように眩しかった。

 

 




アクア・・・(かなが)18歳になるまで、家族の代わりに支える。18歳で自立出来るようにフォローする。自立したら距離を取って、かなが幸せになるように見守る。

かな・・・(アクアが)18歳になるまで、家族の代わりとして支えてくれる。そして18歳になったら。

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