推しの子 ヒロイン全員好感度100達成RTA   作:重曹ちゃんかわいい

8 / 51
とりあえず、ここまでは更新したかったので、更新優先で書きました。
感想ありがとうございます。いつも励みになってます。お返しはまた後ほどさせていただきます。


第三話 裏 五反田監督

 

 

 

 100年に1人の天才

 

 

 

 居酒屋で酒を飲んでいると電話の鳴る音がする。知らない番号だ。悪戯電話だったら、ただじゃおかねえ。と思って出ると聞き覚えのある声がした。

 

「ちょっと監督! アイ全然使ってないじゃん!」

 

 一ヶ月前に苺プロのマネージャーの子供として来ていたあまりに早熟すぎる赤ん坊だった。赤ん坊のくせにあまりにも高い知性に、コミュ力、理解力もあった。その上、演技の世界のトップ連中がたまに持っているような瞳をもっていた。あと赤ん坊なのに苺プロのアイの事を共演者やスタッフに営業してたのを見て、絵面からなにまで面白くて将来性を見込んで名刺をくれてやったんだったな。

 

「お、早熟ベイビーか、おー、いい仕上がりだったのに残念だったな」

 

「じゃあ、どうして!」

 

 おー、若いな。当たり前か、赤ん坊だし。とおもいつつ、説明してやる。

 

「あの主演している女優は可愛すぎる演技派として売り込んでるって事は知ってるか?」

 

「まあ、知ってるけど……」

 

「なら、わかるだろうが、可愛すぎるなんて謳ってる女優の隣にさらに可愛い女の子が居たらイメージ戦略的に問題になる。アイが可愛すぎてその女優が食われちゃ困る上が出来るだけカットするように連絡が来たんだよ。あの女優は大手の事務所に所属してるから、大手との関係を優先したってことだろ」

 

「なにそれ」

 

「こういった出演時間の尺や出番は会社間のパワーバランスで決まる。アイが大手に所属していれば違っただろうが、苺プロじゃ太刀打ちできないだろうな。ま、事故にあったと思って諦めろ」

 

「納得いかない」

 

「芸能界を夢みるのは良いが。芸能界に夢見るなよ。早熟ベイビー。ここはアートではなくビジネスの場だ」

 

 とはいえ、俺も割り切れてるわけではない。良い演技をしたやつを会社都合で外すなんて反対したが押し切られただけだ。アイもこの早熟ベイビーと一緒でトップ女優になるような資質を持っている。こんな事でチャンスを潰してしまうのも惜しいのは事実だった。

 

「そっちの主張も分かるし、悪かったとも思ってる。替わりといっちゃなんだが、アイに仕事をふってやってもいい」

 

「仕事?」

 

「ああ、映画の仕事だ。文句ないだろ?」

 

「えっ、マジで」

 

「ただし、お前が出るのが条件だ」

 

 撮りたい画もある。勉強させたい奴も居る。せっかくだし、こいつの品定めもしておくか。

 

「…………」

 

「んっ、どうした?」

 

「……監督は俺になにをさせたいの?」

 

 やっぱ、こいつ、頭の回転速いな。面白いから出すだけじゃないってわかってやがる。

 

「さあな。それを考えるのも仕事のうちだ」

 

「分かった。俺のできる限りの事をする。ありがとう」

 

「ああ、仕事の話は事務所に通しておくからな」

 

 その言葉を最後に電話を切った。

 

「さて、あの早熟ベイビーはどうすんのかな」

 

 俺はなにが出るかも分からないびっくり箱みたいな赤ん坊の行動を想像し、それを肴に夜を楽しむことにした。

 

 

 そして、一週間後。

 

「あ、監督、おはようございます!」

 

 そこにはいかにも育ちが良さそうで礼儀正しく挨拶をする美少年を装った早熟ベイビーがいた。

 

「いや、誰だよお前」

 

 つい、口が出た。

 

「えっ、なんですかいきなり」

 

 挨拶に来たこいつを見て、まず思ったのはこれだった。誰だよお前。出会った時の気安いというか、友達にでも語りかけるような雰囲気はがらっとかわり、女子向きの漫画とかで登場するシーンで無駄にキラキラした雰囲気を出してるキャラ。あれだ。そんな雰囲気じゃなかっただろ。お前。

 

 いつものというか前の雰囲気と違い過ぎて気持ち悪い。

 

「いや、俺、B小町のアイドルの仕事によく同行するんだけど、仕事について行く時のキャラこれだから」

 

「キャラ? はっ? お前、仕事でキャラ作ってんの? その歳で?」

 

 とんでもねえ赤ん坊だ。雰囲気は戻ったが、なんかさっきのイメージがちらつく。いくら何でも早熟すぎんだろ。

 

「今回、共演する主演の人と子役の子も女性だって言うから、こっちの方が受けがいいと思って。なんか知らないけど、こういう感じであいさつに行くとなにかと世話焼いてくれたりするから便利なんだよね。さっきも主演の人に偶然会ったから挨拶したら、相談とかにのってくれて、カメラマンの人とかADさんへの挨拶のときに紹介してくれるって言っていたし」

 

「お前、顔良いもんな。主演の子そういう雰囲気好きそうだし」

 

 なんというかこいつを見てるとつっこみが追いつかないな。

 

「というか、なんでカメラマンとかADに挨拶とかすんだ。別にいらんだろ」

 

「いや、監督言ってたじゃん。新人俳優は客に売れるか、スタッフに好かれるかしないとって。俺に次があるかなんて誰も分からない訳だし、共演者とかスタッフの人に良い印象を持って貰うために、初めての子役で不安なんです。相談に乗ってください。なんて言えるのは初めだけなんだから、こういう時に顔を売らないと」

 

 アドバイスというか、仕組みは説明したが、それを赤ん坊が実践するな。これ出来なくて何人の新人が次なく終わると思ってんだ。迷惑かもしれないが、初めてなら許される事はある。それを利用して、顔を売ろうとするなよ。どんな赤ん坊だ。

 

「……すげー嫌な赤ん坊だな。それ周りに言うなよ。引かれる」

 

「俺だって言うべき相手は選んでるよ。アイの仕事を紹介してもらったけど、俺とアイはコネでごり押しされたって言われても仕方ないし、俺が横柄な態度をとったりしたら急に押し込んだ監督のメンツを潰すことになるから気をつかってるんだよ」

 

「そりゃどうも。なんというか早熟なんて言っていたが、そこら辺の俳優より大人な対応してるんだが、これも時代なのか? ぜったい違うだろ」

 

 明らかにこいつがおかしい。

 

「あっ、そうだ。妹も連れてきてるから後で紹介していい?」

 

「ああ、あの双子の妹ちゃんか、まあ、いいが」

 

「俺より演技も上手いから、いい子役が見つからなかったら苺プロに連絡してよ」

 

「前はアイの営業してたけど妹の営業までするのかよ!」

 

「だって、せっかくのコネなわけだし。紹介するだけならタダでしょ? 妹も小中学生くらいの判断能力あるから使い勝手いいと思う。将来、アイドルになりたいって言ってるから、知名度を稼げる仕事はいくらあっても足りないし」

 

 駄目だ。これ以上、こいつのペースにのったまま突っ込みをいれていると日が暮れる。

 

「わかった。わかった。後で見てやるよ。で、仕事の話だが、台本は読んだか? 俺が何を求めてるか? 分かるか?」

 

 普通なら分からないんだろうが、こいつの余裕っぷりを考えると、正解に辿りついてるんだろうな。

 

「まあ、俺が演技ができるかも分からないのに呼んだって事は多分、演技力そのものを要求しているわけじゃないってのは分かる。その上で求められた役が気味の悪い子供役。そしてあきらかに子供が言わないような言葉使いに台詞の長さと内容を考えると、まあ、答えは一つだと思う」

 

「ほう?」

 

「ここでの気味が悪い子供は、姿形は子供なのにまるで中身が大人みたいな口調や台詞回しをする。そんな気味が悪い子供。そのまま読むだけでもお前は気味が悪いから、演技なんていらない。そのままやれ。みたいな感じ? いや、これ、子供が言われたら普通は泣くんじゃ無い?」

 

「正解だ。普通の子供にこんな役つけないから安心しろ」

 

 正直なところ、ここまで深く見破られるとは思わなかった。やっぱり、立ち回りといい、こいつの理解力と応用力、頭の回転の速さは尋常じゃない。頭の良い俳優は腐るほどいるが、それより、さらに飛び抜けている。

 

「怪しさを表現する一番初めのここで主演の人の感情演技が欲しいわけだから、より意外性を出すために王子みたいなキャラで挨拶してたわけだし。前の子で台詞ミスがあった時は直ぐに止めてよ。初めてだからこそインパクトがあると思うから」

 

「は?」

 

 なに言ってるんだ? こいつ。

 

「いや、導入シーンで怪しさ、怖さを上手く表現出来れば、感情の入り口になるからさ。それをより表現してもらう助けになればと思って、こういうキャラで現場入りしたんだよ。キャラにギャップがあればあるほど自然にそういうのって出るし」

 

 おいおい、こいつ、主演女優にサポートとか手助けなんて言葉こそ使ってるが演技をさせるとか言い放ちやがったぞ。しかも初めからキャラを作っていたのはこのワンシーンの為の仕込みのためでもあるからとか言いやがって。

 

「アイが注目されるためにも映画自体が人気になってくれないと困るからね」

 

 演技初心者のくせにそんな風に不敵に笑うこいつを見て俺はこの映画は良くなると確信した。

 

 

 

 

 

 撮影を終えて、俺の想定以上の演出を引き出したあいつには次回作にはもっと出番を用意してやるから出ろと言って帰した。

 

「おもしれぇな。こういう奴がでてくるのか」

 

 酒を飲みながら、つい呟いてしまった。

 

 たったワンシーンだけで惚れてしまった。顔を売るなんて言い方をしていたが、出演者とより良いシーンを作る為に動いていた。演技力なんてまったく無くても、あれは欲しい。高いコミュニケーション能力に、賢い立ち回りと役を理解する頭の良さだけでここまでやれると思うと、演技力なんてつけた日には手が付けられなくなるな。と思った。

 

 たった数秒の出番を観ただけで次を観てみたいと思うようになってしまった。

 

 あいつは100年に1人の天才だと思った。

 

「くそ、将来あいつが育った時は主演に使ってみてえなぁ」

 

 100年後にも評価されるような作品を作るにはこういうやつが欲しい。こういうとんでもない天才となら自分が表現したい世界を映像として再現出来るような気がする。

 

 10年後、20年後の事を考え、俺はしばらく感じていなかった自分の中の熱が高まっていくのを感じていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。