なみことはっすの本名is何?
「あ゛ー!!なんであいつ死んでないの!?」
『うーん映像を見るにギリギリで逃げたみたいだねぇ』
「いや絶対間に合わないでしょどうやってよ!?」
『さてねえ……』
◆◆◆
「この状況はやばい。放課後、グリッドマンに聞いてみよう」
「うん、何かわかるかも」
昨日、グリッドマンとなって怪獣を倒した俺を待っていたのは、修復された町と怪獣やグリッドマンのことを忘れた人々のことだった。
さらに、何人かのクラスメイトが「最初からいなかった」ことになっている。いつの間にかうちのクラスのバレー部は問川さんだけになっていた。
明らかな異常事態。グリッドマンが何か知ってるといいのだけど……
「ちょっと、今日お店休みなんですけど」
「ええ〜、じゃあ開けてよ」
「今日予定あるんだけど」
用事がある、という六花を軽く責める内海。まあこの状況でグリッドマンに聞けないのは厳しいし……
そう思っていたら、六花の約束相手のなみことはっすが快く受け入れてくれた。正直ありがたい。
「よう響、調子はどうだ?」
「げっ天野」
「あ、天野。うん元気だよ……あのさ、昨日のこと、なんか覚えてない?」
その時、後ろから声をかけてきたのは天野。どうやら本当に俺のことを心配してくれているようで、なんだか悪い気がする。
「昨日のこと、とは?」
「ほら、怪獣とか、巨人とか。覚えてないか?」
ちょうどいいタイミングだと思い、天野にも尋ねることにする。微妙に天野のことを苦手にしている内海もそこは少しでも情報が欲しいのか、素直に聞いた。
しかし、天野は難しい顔をし、そのまま首を横に振る。
「怪獣か……悪いが、そんなものを見た覚えはないな、力になれなくてすまない」
「いやいや全然大丈夫だって」
律儀に頭を下げられてしまうとなんだか申し訳なくなる。これ以上は放課後までお預けなのだろうか……。
◆◆◆
「まずはいなくなった4人のことからだ。こんなこともあろうかと調べてきた。うちの高校の悪しき伝統、電話連絡網でな!」
「きもちわる」
放課後、再びジャンクショップに集まった俺たちのもとに、サムライキャリバーと名乗る、あの夜にも見た謎の人物が現れた。彼はグリッドマンの仲間だそうで、グリッドマンが入っているジャンクを最適化してくれた。そのおかげでグリッドマンとまともに会話ができるようになったのだが……
結局グリッドマンに聞いても、元通りになった町や消えた人々の記憶、いなくなった4人のことはわからなかった。
そこでまずは、いなくなった4人のことから調べることにした、のだが。
「い、行くぞ」
「いや、その必要はない」
そこに、予想もしなかった乱入者が現れたのだ。
「誰……って天野!?なんでここに!?」
「あー、天野くんじゃん。ごめんね、今日店休みで……」
六花が教えるものの、どうにも彼の雰囲気はジャンクショップにやってきた、と言う感じではなかった。
「いや、御託はいい。本題は、昨日の怪獣と巨人のことだ」
「なっ……お前も覚えてたのか!?」
内海が声をあげる。俺もとても驚いた。学校ではそんなそぶりは見せていなかったのに……
「ああ、覚えてるさ。というか俺からしたらお前たちも“忘れてる”側なんだけどな」
そう言って天野はジャンクの前までやってくる。
「まあいきなりそうなれば無理もないだろうけどな。それにしたって学校で聞いて回るのは不用心すぎだぜ、気持ちはわかるけど……で、アンタが昨日の怪獣を倒した巨人だな?」
『ああ、私はハイパーエージェント、グリッドマン。昨日、裕太と共に戦ったのは私だ』
「へーえ、グリッドマン、か。そんであなたは?グリッドマンの仲間?」
「ああ、サムライキャリバーだ。お、お前は?」
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は天野トウジ。彼らのクラスメイトだ。よろしく」
『ああ、よろしく』「よ、よろしく」
グリッドマンとキャリバーさんに自己紹介をした天野は、そのままカウンターに座り込む。その姿はなんだかとても様になっていて、なるほど内海の言う通り人気があると言うのにもうなずける。
「それで、いなくなった4人のことだったか。──はっきり言ってしまうが、あいつらは死んだ。これは紛れもない事実だ。信じ難いだろうけどな」
「えっ」「なっ」「そんな……」
俺たちはひどく驚いた。4人が死んでしまったということにもだが、なぜ天野がそんなことを知っているのかということもだ。
「死んだって、そんな……」
「な、なんだってお前がそんなこと知ってるんだよ!……はっ、まさか宇宙人!?」
「いやいや、それはないでしょ……」
内海の飛躍した発言に、狼狽しつつも六花が否定する。俺も同感だった。しかし、当の本人は一瞬キョトンとした表情をした後、腹を抱えて笑い出した。
思わず驚き、注視する俺たち。しばらく笑っていた天野だったが、しばらくしてから、涙を拭い顔を上げた。
「な、なるほどそうきたか。宇宙人、宇宙人ねえ」
「ほら言ったでしょ内海くん。宇宙人なんていな──」
本人の反応を見て、改めて内海の意見を否定する六花。しかし、その言葉は天野本人によって遮られることとなる。
「いいや、内海の意見も的外れじゃない、むしろよくわかったってところだ。どうやら俺は内海に対する評価を改める必要があるようだ。どうやらただのオタク野郎ではないらしい」
「何を、言って──」
「改めて自己紹介だ。俺は天野トウジ。はるか銀河の彼方からやってきた地球外生命体、内海の言うところの宇宙人だ。以後よろしく、グリッドマン、響裕太。それとグリッドマン同盟の皆様」
◆◆◆
それから間も無く、また怪獣が出現した。怪獣自体はキャリバーさんの援護によって無事倒すことができたのだけど、俺がジャンクから出てきたときにはもういなかった。内海と六花いわく、いつの間にか消えていたらしい。
「やーっぱりあいつ宇宙人だったのか!おかしいと思ったんだよなあ容姿端麗成績優秀品行方正スポーツ万能の人気者だなんて。でもそれも宇宙人だったとする納得できる。宇宙人は大概スペック高いからなあ、ウルトラシリーズじゃ定石だ」
「でもその理屈だと新条さんも宇宙人ってことになっちゃうよ?」
その日の夕方。ジャンクの前で再び集まった俺たちは、今日の出来事──主に天野のことについて話し合っていた。
色々と言いまくる内海と、それにツッコミを入れる俺。しかし、六花は黙り込んだままだった。
「ぐぐぐぐぐ……。……んでどしたの六花さん、黙り込んじゃって」
「あっ、うん。……天野くん、最初っから宇宙人だったのかな?」
内海が声をかけるとようやく反応した。しかし、その顔にはまだ憂いが残っている。
「わっかんねえ。ウルトラシリーズだと、スパイ目的での潜入も成り代わりもどっちもありうるからな」
「だよね……明日、ちょっとなみこに話聞いてみる。悪い気もするけど……」
「わかった。でも、なんで彼女に?」
俺と同じ疑問を持った内海の質問に、六花は少し悩んでから答えた。
「これ、言っちゃっていいのかちょっと不安なんだけど……なみこ、半月前まで天野くんと付き合ってたんだ。しかも幼馴染だったんだって」
結局俺は、帰り道ずっと内海の妬み混じりの天野に対する考察を聞かされる羽目になったのだった。
時間かかった割に話が進んでねえ……ヒロインはなみこです。(断言)
あと主人公は別にほんとのこと言ってるわけじゃないです、嘘もついてないけど。
感想評価よろしくお願いします。