「真実の“アイ”は、いつも一つ!!」   作:あるく天然記念物

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「ついにアクアがバラエティー番組デビュー」
「恋愛リアリティーショーにより、過去の記憶が明かされる」
「西の高校生探偵と東の高校生探偵の過去にいったい何が?」
「たった一つの真実を見抜く。見た目は青年、頭脳は大人」
「その名は────名探偵、晋一」


『恋愛リアリティーショー殺人事件』前編

《時計の針はさらに進み、アクアとルビーが高校へ入学して数日後の世界》

 

「あっ、パパ、ママ。お兄ちゃんの出演する番組がもうすぐ始まるよ~」

「はーい。晋一、早く早く!!」

「はいはい。洗い物が終わったら飲み物持って、すぐに行くから落ち着いて待ってろよ」

 

 ルビーが陽東高校の芸能科へと進学し、アクアが“帝丹高校”へ進学して数ヵ月が経った。

 ルビーは母親であるアイとのアイドルとして共演を目指すため、芸能科へと進路を進めた。

 一方、アクアは今後の将来に関して“どの道”を進んでも問題ないようにと東都の進学校である帝丹高校へと進学を決めたのであった。

 そんなアクアは持ち前の地頭のよさ、アイから譲り受けた類い稀なる容姿、そして俺譲りの“洞察力”により昔の俺と同じように────

 

「でもママ、お兄ちゃんスッゴいよねぇ~。今じゃ誰もが知るパパと同じように“高校生探偵”って呼ばれてるもん」

「だね~。頭は私じゃなくて名探偵譲りで本当によかった~」

「…………あっ……アハハ」

「…………おいおい」

 

 母親自ら頭が足りない発言をしてどうするんだよぉ。ルビーすら何て返事していいのか分からず愛想笑いしてるぞ。

 まあ俺も“歌の才能”がルビーは俺ではなくアイよりであったことに心から安心するし、どっちもどっちか。

 さて、俺の血筋故の呪いなのか………アクアは昔の俺──今もだけど── みたいに“事件”に巻き込まれることが多々あった。

 知らない人であっても困っている人は見過ごせないアクアは事件解決のために警察の手伝いをしていき、高校進学する頃には2代目高校生探偵と呼ばれるようになっていた。

 血は争えないとは言うが、事件に巻き込まれる体質だけは引き継いで欲しくなかったぜ。

 そんなアクアは今日番組収録のため不在。んでもって、その出演する番組は今日が放送日となっている。

 

「これでよしっ、と」

 

 洗い物を終え、アイとルビーそして自分の飲み物を準備する。

 冷蔵庫から適当なジュースをグラスに注いだところで、

 

「あっ、始まったよママ!!」

「そうね!! ほらー、晋一も早く!!」

「分ぁーってるよ」

 

 アイとルビーの分も含めた飲み物を三つ持って二人の座るソファーへ行くと、丁度番組が始まった。

 テレビに映る番組のタイトルは、俺にとっては“懐かしい”ものであった。

 

「《今からガチ恋♡始めます》…………かぁ。懐かしい番組が復活したもんだ」

 

《今からガチ恋♡始めます》

 それは恋愛リアリティーショーという題材を売りにするバラエティー番組だ。

 芸能人を6人程度集め、カップルが成立するのかどうかを楽しむという内容だ。

 どうして“高校生探偵”とは言え、ほぼ“芸能人でない”アクアがそんな番組に出ることとなったかと言えば、スポンサーを見ればある程度分かる。

 事実、番組スポンサーが流れ始め、一番最初に出てくるのはやはり《鈴木財閥》だった。

 参加をする理由をアクアは最後まで話さなかったが、恐らくは次郎吉の爺さんが面白がって参加させたのだろう。

 ここだけの話、最近のアイは意味もなくニヤついてアクアを見ていることが多かったから、ほぼ間違いなくアイも黒だ。

 アクアもアイから頼まれたら絶ってぇ断らねぇからなぁ~。本当、我が息子ながら御愁傷様。

 俺はこれからテレビ画面に写し出されるであろう息子へ、静かに黙祷を捧げた。

 

 しかし、世界はアクアだけを落とすことはしなかった。

 

 きっかけはルビーの一言だった。

 

「復活? ねぇパパ、《今からガチ恋♡始めます》って昔にあったの?」

 

 ルビーの問いかけに、飲み物をテーブルに置く動作で判断力が散漫となっていた俺はつい答えてしまった。

 

「ん? あぁ、あったぞ。つっても収録だけして放送は“されなかった”けどなぁ」

「…………へぇ、放送されなかったのにどうして“晋一は知っている”の?」

「そらおめぇ、その放送されなかった第一回目の収録に俺が参加した───から………なぁ……………あれ?」

 

 いっ、今パパではなく、晋一って呼ばれた? そしてどうして部屋の空気が重くなったのだろうか。

 ふと手元を見れば、テーブルに飲み物を置こうとしている俺の手が異常に震えていた。

 あれれー? おかしいなぁ? どうして俺はこんなにも恐怖を感じているのだろうか。

 一端の飲み物をテーブルに全て置き、恐る恐るプレッシャーを感じる方へ視線を向ける。

 そこには────一番星のように輝く紅蓮の星を目に浮かべる二人の修羅がいた。

 

「ねぇ、どういうこと、晋一? 私、知らないんだけど?」

「………パパぁ?」

「えっ…………えぇっとぉー…………あっ、ほらアイ。そしてルビーも、今アクアが自己紹介をしているぞ!!」

 

 話題を必死に変えようと、俺が指差すテレビ画面にはアクアが『俺はアクアって言います。ちょっと今の俺には荷が重いけど“2代目高校生探偵”って呼ばれています。みんな、これからよろしくな!!』と俺の目頭が熱くなるような事を“本心から”話すアクアの姿があった。

 父さん、すごく嬉しいよ。

 ほら二人とも、俺の息子がこんなにも嬉しいことを言っているぞ。この姿を見れば俺の過去なんて───

 

「さすがはアクアねぇ~。誰よりも輝いてるッ! …………で、晋一──どういうこと?」

「お兄ちゃんパパの話題で盛り上がってるね~。恥ずかしがってる割にはスッゴく楽しそうにしてるなぁ~…………で? パパ、詳しい話を教えてくれるよね?」

 

 おう、バッドコミュニケーション。

 二人の視線が、テレビに写るアクアではなく俺へと突き刺さる。

 すまん、アクア。父さん、今日が峠かもしれん。

 …………いやいやいやいや、まだだ。まだ終わらんよぉ!!

 

「いやっ、あのっ───そのぉ…………」

「しーんーいーちー?」

「パーパぁ?」

 

 俺がアイとルビーに問い詰められようとした。正にその時であった。

 

───ピンポーン───

 

 来賓を伝えるチャイムが鳴った。

 

「あっ、お客さんだ!! アイ、ルビー。父さんちょっと出てくるなッ!!」

「「あっ?!」」

 

 このタイミングしかない!! そう思った俺は二人よりも早く、部屋を飛び出た。

 

「晋一────ッ!!」

「パパ────ッ!!」

 

 二人の呼び止める声を聞こえないフリをしながら、俺は玄関の扉を開けた。

 これでようやく逃げられる。

 そう思っていた俺を─────神は嫌っていたようだ。

 

「よぉー、工藤。久しぶりやなぁ!!」

 

 玄関を開けた先には浅黒い壁が建設されていた。

 浅黒い壁…………もとい、その人物────服部 平次は必死な俺とは対照的に楽しそうに笑いながら立っていた。

 服部平次。俺の長年の親友だ。

 彼は俺と同じ“高校生探偵”として活躍した探偵仲間。

 当時は俺が東都出身のため東の高校生。服部は大阪出身のため西の高校生探偵と呼ばれていた。

 そんな高校生探偵だった平次も10年以上も経てば立派な“父親”の顔をしていた───ってぇ、今はそれどころではない!!

 

「よっ──よぉ、服部ぃ」

「ん? なんや工藤、そんな今にも死にそうな顔をして。あんまおもろぉないで?」

「いやいや、そんなこたぁねぇよ。んじゃ、俺は行くところがあるから家でゆっくりしててくれ」

「あっ、おい工藤?!」

 

 ついでに時間を稼いでくれと思いながら俺は服部の横を通りすぎようとして────

 

「どっ、どないしたん、工藤くん? なんか事件でも起きたん?」

「工藤お兄さん、なんか大変そう……」

「かっ、和葉ちゃんに輝夜ちゃん………あっ、いやそういう訳じゃ───」

 

 遠山 和葉──いや、今は“服部”和葉とその娘の服部 輝夜ちゃんが俺の進行方向上にいた。

 二人は心配そうに俺を見つめており、そんな心配は不要だと伝えようとしたところで、

 

「あっ、服部君に和葉ちゃん、それに輝夜ちゃん久し振り~!!」

「平次お兄さんに和葉お姉ちゃん、お久しぶりです。輝夜ちゃんも久し振りだね~」

「おぉー、アイにルビーちゃん。久し振りやなぁ」

「アイさん、ルビーちゃん。お久しぶりです」

「こっ、こんちには……」

 

 俺の後ろから修羅が合流してしまった。

 ガシッ、と効果音が出てきそうな勢いで、俺の両肩が捕まれる。

 

「で、晋一。説明してくれるよね?」

「パパ、逃げたことも含めてお願いね?」

「あっ…………あぁ──」

 

 万事休す。もはや俺の命はここまでかもしれない。

 アイとルビーに引きずられる形で家に引き込まれるなか、そんな俺を心配てくれたのか、服部が声をかけてくれた。

 

「なっ、なんや工藤。お前、嫁さんと子供こない怒らしてどないしたんや?」

「それは───」

「ほらぁ、晋一? アクアが出てる《今からガチ恋♡始めます》が終わっちゃうから、早く戻りましょうね~」

「《今からガチ恋♡始めます》? どこぞで聞ぃたことあるなぁ………ッ?! あぁー!! そういうことか、工藤ぉ」

 

 アイから告げられる《今からガチ恋♡始めます》のタイトルから、服部は俺がどうしてアイとルビーに連行されるのか理解したようだ。

 顔色を変え、今すぐにでも帰りたいようなオーラを出す服部。

 そうだよなぁ、服部。おめぇ“も”知ってるもんなぁ~。

 

「ん? 平次、工藤さんはどないしたん?」

「あっ、いや、大したことやないで!! ほら、工藤んとこは忙しそうやさかい、今日んとこは帰ろか、二人とも」

「えっ、でも平次。せっかく工藤くんとこに来たんやから、上がらせてもらおうや?」

「お父さん、私もルビーお姉ちゃんといっぱいお話ししたい」

「せっ、せやかて工藤ぉのとこにも事情があんねん。ここは大人しく帰ろうや、な?」

 

 嫁さんと子供を説得し、この場から去ろうとする服部。

 和葉ちゃんと輝夜ちゃんもしょうがないといった様子で帰ろうとする───が、そうはさせねぇよ。

 アイとルビーに引きずられる中、俺は服部の肩を思い切り掴む。

 

「まぁ待てよ服部ぃ?」

「くっ、工藤ぉ?! おまっ──」

 

 服部が何かを言う前に、俺はコイツの退路を塞ぐ。

 

「実はな、俺とおめぇが“昔でてた”《今からガチ恋♡始めます》って番組に俺の息子が出てんだよ。せっかくだから一緒に見てってくれよ」

「くっ、工藤ぉッ?! おまっ────」

 

 俺の言葉に、服部はこの世の終わりのような表情を浮かべた。

 

「《今からガチ恋♡始めます》? それって今流行りの恋愛リアリティーショーやなぁ。ん? 平次、昔でてたって───どぉいうことや?」

「かっ、和葉。ちゃう!! それは工藤だけがでて──」

 

 和葉さんが服部を睨み、なんとか誤魔化そうとする服部。

 しかし、そうはいかねぇよ。

 

「いやいや、嘘はよくねぇよ。あの時のサブタイトルは『東西の高校生探偵集結』だったじゃねぇか」

「工藤ォオオオオッ?! お前は鬼かッ?! 死ぬんやったら一人でいっとかんかい!!」

「バーロォ!! てめぇ一人だけ逃がすわけねぇだろうが!! 安心しろよ、死ぬときは一緒に死んでやらぁ!!」

 

 今年で32歳となる大の大人二人が共に醜い言い争いをする。

 そんな俺たちの様子を見ていたアイ、ルビー、和葉ちゃんの三人の表情が険しくなっていく。

 

「へぇ、晋一に聞きたいことが増えちゃったねぇ~。ねっルビー?」

「ねぇーママ。…………パパ、覚悟してね?」

「平ぇ次ぃ~?!」

「えっ? えっ?! どいうことなの? ねぇ、お父さん。おかんとアイお姉ちゃん、ルビーお姉ちゃんが怖いよぉ~」

 

 唯一状況の把握ができていない輝夜ちゃんがオロオロしつつ、俺と服部は俺の家へと引きずられて行くのであった。

 

「「平次(晋一)ッ?!」」

「「ぎゃあぁああああぁああぁッ!!!!????」」

 

 そうして俺と服部は共に正座をさせられながら、過去の事について話すのであった。

 

……………

 

………

 

 

《時は大きく遡ること17年前》

 

 とあるファミレスにて6人の男女が集結していた。

 6人はそれぞれ個性豊かに自己紹介をしていく。

 最初に顔立ちの良い短髪の男性から口を開いた。

 

「始めして、俺は盛山 庄司って言います。舞台俳優をしています」

 

 それに続くのは髪を金髪に染め、耳にピアスを何個かつけた女性。

 

「はいはーい!! 私、佐々木 千穂って言いまーす!! 《ソクラテス》ってバンドグループのボーカルしてまーす!!」

 

 三人目は、スタイルがいい黒髪でロングヘアーの少女。

 

「わっ、私は花宮 皐。いちっ、一応グラビアアイドルです」

 

 四人目に、彼が自己紹介をした。

 

「俺は工藤晋一────高校生探偵です」

 

 五人目は目元まで髪の毛を伸ばした黒髪の女性。

 

「私は垣根 心…………小説描いてます」

 

 六人目は、四人目の男を目の敵にするように自己紹介をしてく。

 

「オレは、西の高校生探偵服部平次や。そこにおる工藤晋一のライバルや!!」

 

 以上六名が今宵、恋愛について語り合い、駆け引きが行われる。

 第一回《今からガチ恋♡始めます》開幕。

 

◯ ◯ ◯

 

 気が進まない。

 高校生探偵として世間から注目され始めたある日、俺は一つの依頼を受けた。

 それはバラエティー番組の出演。しかも恋愛リアリティーショーである。

 恋愛に関して然程興味がなかった俺は断りたかったが、依頼主がそれを許さなかった。

 

『晋ちゃーん。このお仕事断ったら、お小遣い抜きね♡』

 

 そう言って半ば強制的に依頼主──母さんは俺を番組に出場させた。

 なんでも番組のスポンサーが母さんの古くからの友人であるらしく、男性のメンバーが集まらなかったとのこと。

 それに初回放送となるため、話題性のある人材を探していると母さんに相談したことにより、急遽俺の参加が決まった。また母さんは俺だけに飽きたらず、同じ高校生探偵として注目され始めた服部平次まで起用してきた。

 本当、行動力の塊である。

 

「さて、自己紹介も済んだことだし、先ずは質問でもし合おうか」

「いいっすねー!! それじゃあ、はーい!! 工藤さんに質問でーす!!」

「何ですか?」

 

 思い切り手を上げ、俺に質問をしてくる。

 彼女は確か、バンドのボーカルの佐々木さんだったか。

 

「工藤さんって、高校生探偵って事ですけど。ぶっちゃけ今までで一番難しかった事件って何ですか?」

「んー。事件は基本的に守秘事務があるからあまり公表できないんです。ですが、難しかった事件というのは存在しないですね」

「ほぉー。それって工藤さんにとっては簡単だったって、ことですか?」

「いいえ、違いますよ。事件があれば必ず“解き明かす”。だからこそ、そこに簡単も難しいもないんですよ、探偵には」

「ほへー、かっこいい~」

「すっ、すごいですぅ」

「その台詞、今度の小説に使えそうね。ネタ提供ご苦労」

 

 俺の回答に質問をしてきた佐々木さん含め、全員が何やら納得といった表情をしながら見つめてくる。

 特に決めた台詞とかではなく、普段から思っていることを言っているだけにちょっとむず痒く感じる。

 そして彼らもまた、俺の言葉に同意を示してきた。

 

「ほぉ、さすがは工藤やな。確かに探偵が事件を難しいと言うて諦めたら、何にもならへんからなぁ」

「探偵って意外と奥が深いんだね~。俺は舞台で探偵役とかすることもあるから、参考になるよ」

「俺にとっては、当たり前のことを言っているだけなんだけどなぁ」

「だからこそですよ、工藤さん。それじゃあ俺からも質問いいですか? 工藤さんと同じ高校生探偵の服部さんに」

「おう、何でも聞いてくれてかまへんで」

「ありがとうございます。では────」

 

 互いが気になることを質問し合うこと約一時間程度。

 ようやく全員が一通りの質問をし終えた。

 その頃には────

 

「へぇ、服部はあの大阪府警本部の警視監、服部 平蔵さんの息子なのか。通りで質問する姿が様になってるわけだ」

「そう言う工藤の方こそ、着眼点が鋭いのは推理小説家の工藤 優作譲りやなぁ」

「まあ、親父にはまだまだ追いつけそうにねぇけどな」

「ハハッ、奇遇やなぁ。俺もや」

 

 俺と服部は大分意気投合していた。

 お互いに父親や母親の姿が大きく、それに向かって努力しているというのが似ていることが分かり、それに伴う苦労話等で盛り上がった。

 

「なんか、東西の高校生探偵が盛り上がってるね~」

「そうっすね~。あの二人の会話についていけそうにないっす」

「くっ、工藤さん……………やっぱりかっこいいなぁ~」

「工藤×服部………いや、服部×工藤。どっちもアリね。次回の小説は推理ものでいこうかしら」

「んー、続きは食事でも取りながらしよっか」

 

 女性三人が置いていかれたかのように固まっていたため、舞台俳優の森山さんが気を利かせ、今度は食事を取りながら雑談をすることとなった。

 収録場所がファミレスということもあり、各々が好きな料理を注文する。

 そして数分後には料理が運ばれ、全員が食事を始める。

 俺は注文したサンドイッチを食べていると、グラビアアイドルの花宮さんが話しかけてきた。

 

「くっ、工藤さんはサンドイッチがお好きなんですか?」

「ん? いや、別にサンドイッチが好きって訳じゃないんだが。そう言う花宮さんはビーフシチューを注文してたみたいだけど、好きなの?」

「はっ、はい。お母さんがよく作ってくれたので。あっ、あの工藤さんは好きな料理とかあるんでか?」

「好きな料理? そうだなぁ───あっ、目玉焼き」

「めっ、目玉焼き…………ですか? 珍しいですね~。あっ、私も目玉焼きは大好きです!!」

 

 好きな料理と聞かれ、俺が思い浮かんだのは、何故かアイが初めて作ってくれた料理であった。

 それはアイが小学校高学年となって初めての調理実習の前に、俺の家で特訓したときであった。

 

『あはは…………失敗しちゃった』

 

 見るも無惨な真っ黒な目玉焼き。

 卵をフライパンに落として焼くだけのシンプルな料理を、どうやったら失敗するのかと言いたい程、真っ黒な物体だった。

 それがアイの初めての料理であった。

 とてもではないが美味しそうでない料理。食べたら体に悪そうな料理だった。

 けれど俺は────

 

『ん、個性的な料理だな。おかわり』

 

 それを完食し、アイにおかわりを要求した。

 何でそうしたかと言えば、アイの手を見たからだった。

 絆創膏をいっぱいに張り付けていた。

 キッチンを見れば無惨な料理や食器がところ狭しと置かれていた。

 そんな中、唯一食べ物として形に残っていたのが真っ黒な目玉焼きだった。

 味は評価しようもない酷いものであったが、どうにか料理を食べてもらいたいと思う気持ちが伝わるものであった。

 だから俺は食べた。

 結局おかわりの目玉焼きも真っ黒な物体であったが、俺は全部食べた。

 

 その後は母さんから見るも無惨なキッチンの状態にめちゃくちゃ怒られたが、父さんからは何も言われなかった。

 ただ優しく頭を撫でられ、

 

『晋一、よくやった』

 

 と、何でか褒められた。

 そんな経緯のある目玉焼きが、俺の中で異様な存在感を放っていたのだった。

 

「ほぉ、工藤は目玉焼きが好きなんか。俺も朝には必ず食べるで」

「あっ、いや。別に目玉焼きが大好物ってわけでは───」

 

 俺が目玉焼きの経緯に関して服部へ説明しようとした。

 まさにその時であった。

 

『ッ?! がぁあああぁあぁぉああああああぁああッ?!』

「「ッ?!」」

 

 突如お客さんとして来ていた一般の男性が喉元を押さえ、大きな呻き声を出した。

 対面に座っていた人が心配して声をかけるも、喉元を押さえる男性は呻き声を止めなかった。

 その声は数秒間続き、やがて────

 

『がぁ─────』

 

 力なく、男性はテーブルへ倒れ込んだ。

 突然の出来事に誰も反応ができない。

 数秒時間が経過し、

 

「きゃ、きゃあぁああああぁああぁっ!!??」

 

 近くにいたウエイトレスの悲鳴が店内を駆け巡ったところで、店内が騒然とし始めたのであった。




next コナン,S ヒント!!

『サンドイッチ』

「次回はついに事件の推理を行うぞ!!」
「晋一、《今からガチ恋♡始めます》についてはちゃんと説明してくれるよね?」
「平次、あんたもやで」
「「ハハハ…………はい」」
「「「次回もお楽しみに!!」」」
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