「撮影の最中、突如の事件に巻き込まれる探偵たち」
「果たして東西の高校生探偵は無事に事件を解決できるのか?」
「二人の恋愛の行く末は」
「たった一つの真実を見抜く。見た目は青年、頭脳は大人」
「その名は、名探偵────晋一!!」
「えー、それでは皆さん。これより一人一人に事情聴取を行います」
男性が倒れた後、すぐさま俺は店内から誰も出ないように指示を出し、警察を呼んだ。
程なくして目暮警部をはじめとした警察官数名が臨場。
そのまま現場検証が行われ、店内にいた全員が事情聴取を受けることとなった。
「えらい事になったなぁ、工藤」
事情聴取を終えた服部が俺のもとにやって来た。
本当に、とんだバラエティー番組の収録になってしまったもんだ。
「あぁ。被害者のあの苦しみ方は尋常じゃない。それに亡くなった男性の口から匂いがしたが、気づいたか、服部?」
「おう、警察が来る前にな。しっかりアーモンド臭がしとったで。つまり、青酸カリの特徴と一致しとる。つまりは──」
「あぁ。これは殺人だ」
事故ではなく殺人事件が起きてしまった。
俺と服部はその事を警察へ伝えるべく、現場検証を行っている目暮警部の所へ向かう。
「お疲れ様です、目暮警部」
「おお、工藤くん。君も来ておったのか」
「いえ、俺はバラエティーの撮影で、偶然ここに来ていたんです」
「バラエティー? するとあの佐々木さん含めた六人というのは君たちのことなのか?」
「そうです。なので、彼らの犯行ではないと俺が保証します」
「なに? 犯行だと?! 工藤くん、それは一体どういう」
「どうもこうもないで、警部はん。これは殺人っちゅうことや」
俺ではなく、服部が目暮警部へ今回の事件が殺人であることを告げる。
俺と服部は目暮警部へ被害者の口からアーモンド臭がすることを伝えた。
程なくして鑑識から被害者の口付近より薬物反応が出たことの説明を受けた。
「なるほど。被害者は何者から毒物を仕込まれたということかね、工藤くん」
「そうなります。問題はどうやって被害者に服用させたかですね。少なくとも争った様子などはありませんでした」
「せや、警部はん。被害者の食べていた料理はなんか入ったりしとらんかったんか?」
「あぁ。被害者の食べていた料理はサンドイッチでな。料理自体からは何も検出されなかった」
「そうか。なら、料理に仕込まれた可能性は無さそうやな」
その後目暮警部から事件の詳しい状況の確認を教えてもらった。
①事件発生時、店内には俺を含めて13人いた。内6人はバラエティー番組のメンバーであり、3人は店員。残りの4人が一般のお客さんで、内1人が被害者。
②被害者の対面に座っていた人──園田さんは事件発生時、被害者──片山さんがサンドイッチを食べ始めたと思ったら急に苦しみ出したとのこと。
③被害者の食べ残した残りのサンドイッチからは薬物反応が検出されなかったが、被害者の手、及びその手に持つ食べ掛けのものからは微量の青酸カリが検出された。
④被害者は入店から事件発生まで離席は一回のみ。それもトイレにいく短時間のものであった。
⑤被害者がトイレに行く前後に一般のお客さん全員が利用したが、そのどれもが1人で利用していたため、被害者と接触は無かった。
⑥現在の容疑者は、被害者の対面に座っていた男性──園田 守さん。被害者の隣のボックス席に座っていた女性──日向 真由美さん。被害者から一番遠くの席に座っていた男性──楠元 東さん。の3名となっている。
⑦園田 守。被害者と同じ会社に勤める被害者の後輩。
⑧日向 真由美。よくこのファミレスを利用しているが、被害者との接点はないとのこと。
⑨楠元 東。たまたまこのファミレスにやって来たとのこと。被害者との面識は一切ないと断言している。
「以上が、今回の事件の詳細だ」
「なるほど。目暮警部、ちなみに容疑者全員がトイレを利用した回数と順番は分かりますか?」
「ん? それは分かるが、それが事件とどう関係するのかね、工藤くん?」
「いえ、一応確認だけしておこうかと」
「ふむ。それなら園田さんと楠元さんが1回で、日向さんが────」
「警部!!」
目暮警部が俺の質問に答えてくれる最中、警察官の一人が目暮警部の元にやって来た。
その手には、何やら怪しげな小瓶が入った袋があった。
「被害者の対面の席の隙間より、毒殺に使われたと思われる小瓶が発見されました!!」
「なっ、なに?! それは本当かね!!」
「さらに、瓶の中身の液体からは青酸カリが検出されました」
「ということは、犯人は被害者の対面に座っていた園田 守さんである可能性が高いな。急ぎ、園田さんへの再度事情聴取を行うぞ!!」
「分かりました!!」
目暮警部は証拠と思われる小瓶を持ってきた警察官と共に園田さんの所へと向かっていった。
それを見送りながら、服部が俺に話しかけてきた。
「なぁ工藤。見つかった小瓶が犯行に使われたと思うか?」
服部の問いかけに、俺は首を左右に降って答えた。
「いや、思わねぇな。犯行に使われたのなら、どうして“中身が残っているのか”。それが説明できねぇよ」
「あぁ。普通、凶器は隠すもんや。毒ならどっかに流すとかな。それをわざわざ中身残して席に隠す? 杜撰すぎて笑えもせぇへんで」
「となればミスリード。犯人が罪を擦り付けるために行ったと考えるのが妥当か」
「やろうな。しっかし、それだったら犯人はどうやって被害者に毒を盛ったんや?」
「毒を盛る───ん? もしかして、逆なんじゃないのか、服部」
「逆?」
「あぁ。犯人は直接被害者に毒を盛ってない。被疑者自身が“毒を服用した”んじゃないのか?」
「なっ、んなアホな?! 工藤、それやったら他殺やのうてただの自殺や!! 事件でも何でもあらへんがな!!」
確かに服部が言うように、自身で毒を服用したらそれはただの自殺だ。
だが、被害者がなにも考えずに服用せざるを得ない状況を犯人が作ったとしたら────ッ!!
瞬間、俺の脳裏に電流が走った。
(そうか、そう言うことだったのか)
この方法であれば、犯人は被害者のみに毒を服用させ、犯人を擦り付けられる。
しかし、あくまでも現状は推測に過ぎない。
推理を固めるため、俺は服部に頼みごとをする。
「服部、わりぃけど店員に聞いてきて貰えねぇか?」
「そらええけど、何をや?」
「被害者がトイレに入った“前後”にトイレに入った人がいたかどうか」
「ん? ────っ!!」
俺の質問の意図に始めは分からない様子であったが、流石は西の高校生探偵と呼ばれる男である。
数秒程度考えた後、俺と同じ結論に至ったのか、納得した表情をうかべていた。
「…………なるほどなぁ。そう言うことか、工藤。よっしゃ聞いて来るわ」
「あぁ。俺は“自分達のいた席”を調べてくる」
「わかった。んなら、そっちは任せたで、工藤」
早速俺は服部と別れ、自分たちグループが座っていた席に向かう。
そこには深刻そうな顔をした4人のメンバーが座っていた。
そのうちの1人、森山さんが俺に話しかけてきた。
「あっ、工藤くん。これって………本当の事件なの?」
「森山さん。はい、事件です」
「そう……なんだ。ハハッ、舞台と違って怖いんだね、本当の事件って。俺………震えが止まらないや」
「私も。ごめんね、工藤くん。難しい事件とか聞いちゃって。人が死ぬのに、簡単も難しいもないよ………」
「佐々木さん………気にしないでください。事件なんて、巻き込まれないのが一番なんですから」
「くっ、工藤くん。私たちは犯人じゃないから、ね。そっ、そうだよね?」
「花宮さん。俺たちは同じ席に居ましたよ。そんな状況で犯行ができたとは俺は思えません」
「でしょうね。本当に、事実は小説より奇なりだわ。リアルすぎてネタにすらしたくないわね」
「ハハハッ、こんなときでも垣根さんは仕事の事を考えるんですね」
「なに、悪いの?」
「いーえ。むしろ、常に普段通りに過ごせるその精神力。俺は尊敬しますよ?」
「ッ?! ばっ、ばーか!! 褒めても何もないわよッ! ほっ、ほら。さっさと事件を解決しなさいよ、高校生探偵さん」
「了解です」
俺は四人が座っている席を捜索する。
俺の想像通りなら────やっぱりな。
ソファータイプの椅子の繋ぎ目からは“液体の入った小瓶”が見つかった。
それと同時に、
「工藤ぉ!! やっぱりお前の睨んだ通りや!! おったでぇ、被害者の前後にトイレに入ったヤツが」
「あぁ、こっちも見つかった」
そういって俺は小瓶を服部へと見せる。
こうなれば、あの人しかいない。
「ちゅうことは、犯人は」
「間違いなく、あの人だ」
「なら急がんと。早よぉせんと、誤認逮捕になってまうで」
「あぁ。急いで目暮警部の所へいこうぜ、服部」
「おう!!」
俺と服部は急いで目暮警部の元へ向かった。
「ですから、私は彼に毒なんて飲ませていません!!」
「ですから、それは署で詳しくお話を伺います」
「そっ、そんなぁ…………信じてくださいよぉ」
目暮警部の元に向かうと、ちょうど目暮警部たちが園田守さんを連行しようとする最中であった。
「待ってください!!」
「くっ、工藤くん?」
「工藤? もしかして、あの高校生探偵!!」
俺が声をかけたことで、園田さんは安心した表情をうかべていた。
本当に、取り返しがつかなくなる前でよかった。
俺は急ぎ、目暮警部へ伝えた。
「目暮警部、彼は犯人ではありません」
「なっ、なんだってー?!」
「ほっ、ほらぁ。高校生探偵の工藤さんもそう言っているじゃないですが!! 工藤さん、ありがとうございます!!」
「いえ、礼には及びませんよ。ただ事実を伝えただけですから。それと目暮警部、容疑者を集めてください。この事件の真相が分かりました」
「なにっ?! わっ、分かった。直ぐに集めよう」
園田さんが連行させられるのを止めさせた後、俺は目暮警部へ容疑者を全員集めるように頼んだ。
その後、俺は服部へひとつ頼みごとをする。
「服部、全ての席から────」
「ほぉ──よっしゃ。任せとき、工藤」
服部と一旦別れ、俺は推理の準備に取りかかる。
それから数分後には、容疑者全員が集まった。
◯ ◯ ◯
「それで工藤くん。本当に、犯人が分かったのかね?」
「はい、目暮警部。では、先ず始めに結論から言います。これはれっきとした殺害です」
俺がそう言うと、容疑者の1人である日向真由美さんが声を上げた。
「それは分かってるわよ。被害者の目の前に座ってたヤツが犯人でしょ?」
「わっ、私はやっていません!!」
「えぇ。園田守さんは犯人ではありません。これは、園田さんを犯人に仕立て上げようとした殺人です」
「……………それで、俺かそこの女が犯人ってか?」
「そう言うことになります」
同じく容疑者である楠元さんが日向さんを親指で指しながら話す言葉に俺は頷き、事件の概要について説明を始めた。
「先ず、被害者の殺害方法ですが、これは毒物による服毒殺です。犯人は被害者がトイレに行った時に毒を仕込みました」
「だから、その毒を仕込めるのは被害者の隣に座っていた人しかできないって言っているのよ!! あなたたち含めて、誰も被害者の席には行ってないんだから!!」
「そうだな。高校生探偵くん。君が俺かそこの女性が犯人だと考えている根拠は何だ? 教えてみろよ」
日向さんと楠元さんが俺に説明を求めてくる。
まぁ、犯人はともかくもう1人は無実なのに疑われているため無理はない。
「えぇ、これから説明します。先ず、被害者の食べていた料理はサンドイッチですが、被害者が自身の手に持っていた物しか毒物は検出されませんでした」
「そりゃそうだろ。毒物で死んだのなら、食べ物か飲み物に仕込むだろうさ。今回は食べ物だったがな」
「だから、それを仕込めるのは被害者の近くにいた人しかできないじゃない!!」
「確かに日向さんが言うように、毒を“直接”仕込むのであれば、園田さんしかできないでしょう。しかし、それは不可能なのです」
「不可能? それはどういうことかね、工藤くん」
「簡単な事ですよ、目暮警部。被害者が持っていたサンドイッチしか毒物が付着してない。つまり、持っていたサンドイッチ“以外”には毒が仕込まれていないということ。つまり───」
「つっ、つまり?」
「園田さんが毒を直接仕込むのであれば、被害者が“必ず食べるサンドイッチを一つだけ”に毒を仕込む必要があるのです!!」
「そっ、そんなの。目の前で見ていた人ならどれを食べるかなんて分かるはずでしょ?」
日向さんは可能だと話すが、俺はそれに対し、首を横に降る。
「いいえ。それは難しいです。この店のサンドイッチは小さいのが八つのったタイプのものを提供しています。さらにサンドイッチは六つも残っていた。園田さん、確認しますが被害者の片山さんはサンドイッチを食べるとき、必ずどれから食べるのか決めていましたか?」
「いえ、それは決めてませんでしたよ。好きな具材なら真っ先に食べるかもしれませんが、必ずそれから食べるこもありませんでしたし、何よりサンドイッチの具材なんて私からはよく見えませんから」
「本当に? 貴方、犯人であるのを隠すためにでたらめ言ってるんじゃないの?」
「ちっ、違いますよ!! 確かにあの人は“よく”この店で“サンドイッチ”を食べていましたが、その順番なんて分かるはずないじゃないですか?!」
「へぇ、よく食べていた。ねぇ。お前、被害者の人がサンドイッチを食べることは知っていたんだな?」
「そそっ、それは──」
楠元さんが園田さんの発言を指摘した。その指摘に日向さんが声を荒げた。
「やっぱり!! 貴方、最初から被害者がサンドイッチを食べることを知ってたじゃないの!! さっさと白状しなさいよ!!」
「でっ、ですから私はあの人の部下ですので知っててもおかしくはありません!! それに今日は別の料理も食べたかもしれないじゃないですか!!」
「みっ、皆さん落ち着いて!!」
目暮警部が容疑者達を落ち着かせようとするも、容疑者たちの言い争いは大きくなる。
そんな被害者の言い争いを俺も止めるべく、ポケットからあるものを取り出した。
「皆さん!! ここに、園田さんが犯人ではない決定的な証拠があります!!」
「「「「ッ?!」」」」
全員が驚愕し、俺が手に持つものを見つめた。
それは園田さんの座っていた椅子から見つかったのと“同じ瓶”であった。
それを見た目暮警部が驚きの声をあげる。
「くっ、工藤くん?! それは犯人は使ったと思われる凶器のはずでは?!」
「はい、目暮警部。中身はおそらく被害者から検出された青酸カリが入っていると思います。そしてこれが見つかったのは────“俺たち六人が座っていた席”からです」
「なっ、なにぃー?!」
そう。今回の犯行は、まさにそこがポイントである。
「犯人は被害者がどこに座ろうとも、対面に座る人物が犯人として取り上げられるように、ある細工をしたのです」
「ある細工。それは何だね、工藤くん?」
「それは、おそらくですが“すべての席”に同じ瓶を用意したのです」
「なっ、それはどういう───」
「工藤ぉ────全部見つけてきたでー!!」
「「「「ッ??!!」」」」
目暮警部の問いかけと同時にやってくる服部。
その服部が手にする“無数の瓶”を見た目暮警部含む四人は先程よりも驚いた表情を浮かべていた。
「工藤の言っとった通りや。全部の席から瓶が見つかったで」
「はっ、服部くん。それは本当かね?」
「あぁ、警部はん。間違いないで。つまり、工藤が言うように、この事件は初めてから被害者の対面に座る人物が犯人に見せかけるものちゅうわけや」
「その通りです。手間をかけさせたな、服部」
「ええって。なら、推理の続きといこか」
「あぁ。さて、園田さんが犯人ではないのは、被害者のサンドイッチに毒を仕込もうにも、特定のひとつに仕込むことは困難を極める。そして、その毒自体もどこの席にいようとも発見されるようになっていたことからわかってもらえたと思います」
「だったら、犯人はどうやって被害者に毒を盛ったって言うのよ?!」
「日向さん落ち着いてください。それを今から説明します。今回の事件は毒が用意されたのは食べ物ではありません。被害者が行った────トイレのドアノブです」
「ど、ドアノブ?」
えぇ、と。目暮警部へ頷きを返し、俺は犯行の手口を説明する。
①最初に犯人は、被害者がトイレに向かう前に、先んじてトイレへと向かった。
②犯人はトイレの“内側”のドアノブに毒を仕込み、席に戻る。
③被害者がトイレを利用したのを見計らい、再びトイレに入り、毒を仕込んだドアノブを拭き取り、また席へ戻った。
④後は被害者がその毒の付着した手でサンドイッチを食べるのを待った。
「以上の手口により、犯人は被害者へ毒を盛ったのです」
「確かに。工藤くんが言うように、被害者の手に毒が付着していたのであれば、直接手に持っていたサンドイッチのみに薬物反応がでるのも頷ける」
「そして、その犯行ができるのは1人しかいません。そうですよね────日向 真由美さん?」
「ッ?!」
俺がそう言うと、日向さんは数歩後ろに下がり、俺を睨み付けてきた。
「はっ、はぁ?! 高校生探偵だがなんだが知らないけど、どうして被害者と面識のない私が殺人を侵したっていうのよ!!」
「日向さん。俺は何も証拠なしに言っているわけではないのです」
「しょっ、証拠ですって?」
「あぁ、そうや」
その証拠については俺ではなく、店員へ確認した服部の口より語られた。
「この殺人を行うにはどないしても、被害者がトイレに行く“前後”にトイレに行く必要がある。そうでもせんと、工藤みたいにサンドイッチとか素手で料理を食べるお客さんが亡くなってしまうからなぁ。そんで日向さん。店員へ確認した限り、被害者がトイレに行く前後にトイレに行ったのは────あんただけやった」
「ッ?! そっ、そんなの店員の見間違いなんじゃないの? 私以外にもあんたたち含めて、全員利用したはずでしょ?!」
「いいえ、日向さん。目暮警部より確認しましたが、そもそもトイレを二回利用したのは貴方だけなんです。それに、今回の全席に瓶を仕込むトリックを利用するには、この店に何度も行く必要がある。貴方のように、常連客として」
「──────ッ?!」
「日向さん。ここまで言えば、もうお分かりですよね?」
俺は右腕をゆっくりと上げる。
そして、上げた腕を思い切り────彼女の方に振り下ろした。
「犯人は────貴方だッ!!」
「…………こっ、殺すしかなかったのよ」
そうして日向さんは事件に至る経緯について話し出した。
それは被害者である片山さんと日向さんは婚約をしていたとのこと。しかし、結婚を間近に控えた時に、別れ話を突きつけられた。理由として、別に好きな人がいてその人と子供を作ってしまったから。
結局一方的にに片山さんから別れを告げられた日向さんは自身を弄んだとして、片山さんを殺害することを決めた。
片山さんを殺さないと、自分自身が新しく生まれ変わり、生きていけない、と。
「それで、片山さんを殺して、貴方は本当に生まれ変われるのですか?」
「かっ、変われるのか、ですって?」
「人を殺すと、殺人という罪だけでなく、その人の背負うべきだった人生その物を背負うことになります。安易に人を殺すという道を選んだ貴方に俺は、それを背負いがら生きていけるとは到底思えません」
「あぁ────あぁ………」
静かに涙を流す日向さんを目暮警部がつれていく。
こうして、恋愛リアリティーショーの撮影の最中に発生した事件が、幕を閉じた。
……………
………
…
事件発生により、恋愛リアリティーショー《今からガチ恋♡始めます》の撮影は急遽中止となった。
参加者それぞれが現地での解散となり、俺も家に帰ろうとしたところで、
「あっ、あのッ。工藤さん!!」
花宮さんから呼び止められた。
「花宮さん、どうしたの?」
「あっ、あのぉ。事件があって、番組も中止してしまったじゃないですか」
「そうだね。こりゃ、放送もできないだろうね」
「そっ、それで。私、元々、番組の最後に告白するじゃないですか。その相手を最初から決めてたんです」
そう言いながら、花宮さんは顔を真っ赤にしながら俺に手を伸ばしてきた。
「私!! 初めから工藤さんのファンで、ずっとずっと、貴方の事が好きでした。私と、つつ、付き合ってください!!」
「あぁ。それは──」
『晋一───!! エヘヘ~』
(あっ、アイ?)
必死に告白する花宮さん。
そんな告白を受けながら、何でアイの顔が浮かんだのかは、俺にもよくわからなかった。
でも、幼い頃から一緒に過ごし、笑いあってきたアイ。俺が恋愛とかするにしても彼女を抜きにして考えるのは間違っている気がしたのだ。
花宮さんが悪いわけではない。おそらく良い子であり、性格も嘘しかつけないアイなんかとは比べ物にならないだろう。
でも、そんなアイの好きな食べ物は知っている。好きな遊びを知っている。どういった趣味をしており、どんなことで笑うのかを、俺は知っている。
対して、俺は好意を向けてくれる花宮さんについて、何一つ知らない。
あれ? どうして俺は花宮さんとアイを比べているのだろうか。
「………ごめん、花宮さん。俺を好きでいてくれるのはすっげぇ嬉しい。けど………」
「くっ、工藤さんは、すす、好きな人がいるんですか?」
「好き…………いや、ん───近い人はいる」
「そっ、そうなんですか」
「あぁ。その人は────一番星で、俺の憧れでもある」
アイ。
この感情が好きなのかどうかは、今は分からない。
だけど、アイは今アイドルとして一番星のように輝こうとしている。
一番星である彼女との関係に答えを見つけるために、俺はアイと同じ位に輝く“名”探偵にならなくてはならないのだ。
同じ立場に立てなければ、目線が変わってしまう。
俺はアイの瞳を常に同じ位置から見ていたいのだ。
だからそこ、今この手を取ることはできない。
「俺は今追いかけている最中なんだ。その一番星を。なので、恋愛は少し難しいかな?」
「わか、りました。それなら───私も工藤さんに追い付いて見せます!! いつか、いつの日かグラビアアイドルの頂点になります!!」
「ハハハ。なら、お互いに競争だね?」
「はい!!」
こうして俺はアイに、花宮さんは俺に追い付こうと頑張ることを決意し、連絡先を交換後、この日は別れることとなった。
「平次くーん!! さっきの推理、めっちゃすごかったねぇ~。あっ、連絡先交換しとくね~」
「ちょっ、勝手に携帯を弄るなや、佐々木ぃ!!」
「はーい。登録完了!! これから宜しくね、西の高校生探偵さーん」
「はぁ…………。ほんまにおもろいやっちゃなぁ、お前」
「いや~。それほどでも~」
「アホ、ちぃとも褒めてへんで」
どうやら、服部の方も交流関係が広がったらしい。
俺が決意している間に、向こうも楽しくやってたみたいだ。
こして撮影のみで終わってしまった《今からガチ恋♡始めます》の物語は一旦幕を下ろした。
そして、17年という月日を跨ぎ、番組が復活して俺と服部に災難が降り注ぐことなど、このときの俺は知るよしもなかった。
……………
………
…
ピピピ────。
「ん、ルビーから電話か。はい、もしもし?」
『あぁ、もしもしお兄ちゃん? 私、私、私』
「詐偽の電話なら切るぞー」
『あぁー!! ごめんごめん、ちょっとふざけただけだって~』
「はぁ…………で、要件はなんだ?」
『あっ、そうそう。お兄ちゃんの出演した番組家族全員で見たよ~』
「………マジかよ。まぁ、見られても問題は無いけどよぉ」
『お兄ちゃんモテモテだったね~。でっ、誰を狙ってるの? 妹としてはね~』
「冷やかしなら切るぞ」
『あーもう、ちょっとは可愛い妹との会話に花を咲かせるぐらいしてもいいじゃーん。まあ、冗談はこれぐらいにしてと。今日はそのまま帰り?』
「あぁ。そのつもりだが」
『だったら、家じゃなくて阿笠博士のところに集合ね~』
「博士のところ? それは別に良いが、何かあったのか?」
『んー。お兄ちゃんが出てた《今からガチ恋♡始めます》って、昔もあっててそれにパパが出てたんだよね~』
「へぇ。……そう言えば、ディレクターも何かお蔵入りとなった伝説の初回があるって言ってたな。父さんが出てたっていうなら納得した。で、それがどうした? 別に番組の参加ぐらい、父さんなら相応の理由もあるだろ?」
『それがさぁ、確かにお婆ちゃんから頼まれたからって理由があるから、それについてはママは怒らなかったんだけど……』
「けど?」
『…………番組で花宮 皐ってグラビアアイドルと知り合いだったことをママに黙ってた』
「はっ、花宮 皐?! 花宮さんと言えばグラビアアイドルの頂点と言われる、あの人のことか?」
『えっ、お兄ちゃんよく知ってるね。花宮さんって数年前の人なのに…………えっ、もしかして、お兄ちゃんファンだったの? イヤーん。俺はアイの奴隷だ~とか言いながら見るもんは見てたんだ~』
「ちがっ、それもディレクターが──」
『はいはい。お兄ちゃんもパパと同じ男の人だって分かってるから。いや~、物わかりのいい妹でよかったね、お兄ちゃん?』
「…………何が欲しいんだ?」
『最新のコスメ。ちょっと高くて買えないやつがあってさ~』
「はぁ…………買ってきてやる」
『へへっ、やった。まあ、それはそれとして、でパパがママに内緒でグラビアアイドルと知り合いだったことにママの火がついちゃってさ~』
「あー、つまりは“そういうこと”か?」
『うん。絶賛私たちの妹か弟ができそうな最中』
「それなら博士の家に行くのも分かるが、そんな状況で哀さんと会いたくないぞ、俺」
『大丈夫大丈夫』
「何がだ?」
『ママが哀さんに連絡した上での出来事だから。んで、博士がひとりぼっちで可哀想なんだよね~』
『────しょぼぼーん』
「あー。そういうことなのか」
『そうそう。だからパパにお願いしてお金もらったから、今日は博士の家でお兄ちゃんのバラエティー出演パーティーしようね!! 番組の感想も聞かせてね!!』
「はいはい。んじゃ、コスメはメールしてくれ。買ってくるから」
『はーい!! 待ってるからね~』
ピ───。
スマホを鞄に直し、アクアは父を思う。
…………父さん。昔とはいえ、母さんに嘘がつけないからって、言わないという選択肢はダメだろ。
「はぁ。俺も父さんみたいにならないよう気をつけるか」
(まあ、今のところは男性、女性陣ともに交流関係は良好だし、女性陣も“全員”と連絡先交換して、“遊ぶ約束”もしたから今後の関係性は大丈夫だ。何も問題ない)
そう思いながらルビーから頼まれたコスメを買いに行くアクア。
アイが無事で、更に頼れる父がいる故の油断しての行動であったのだろう。女性陣全員と遊ぶ約束をしてしまったアクア。彼のその行動が後にとんでもない非常事態(アクアのみ)へとなってしまうのだが、それはまた別のお話。
next コナン,S ヒント!!
『繭』
「次回は遂に少年探偵団の活躍が!!」
「ところで平次、工藤さんが最後に言ってた佐々木って女性って誰なん? 私、そんな人知らないんやけど?」
「あぁ~。そいつか。いや、知り合いちゅーか、勝手に携帯を弄ってきただけで」
「まぁ、エエわ。後でちゃんと説明してや?」
「…………はい」
「あかん、おかんめっちゃ怖い」
「じっ、次回も楽しんでくれや!!」