とある魔術の禁書目録外伝IF〜とあるフレンダの救済計画〜 作:死徒
シリアスとギャグで意味不明なことになりました。
脅迫
〜窓のないビル〜
フレンダを無事死の運命から救い出してから数日後、暗部端末を通してアレイスター本人から直接の連絡を受けた俺はアレイスターの居城である窓のないビルへと呼び出されていた。
「…アレイスター、今何と言った?」
「聞こえなかったのかね? ならばもう一度言おう。 君にはこれから学園都市に襲来するであろう神の右席…後方のアックアの迎撃を頼みたいのだよ」
「…凡百な魔術師ならば兎も角、神の右席相手では俺には荷が重い…他を当たってくれないか?」
神の右席…それも後方のアックアの相手なんて単独では無理だ…
俺は何とか断ろうとする。
しかし、奴はその後とんでもないことを口にした。
「ふむ…断ると言うのかね?」
「流石に神の右席相手ではな…仕方がn「そういえばうちはオビト、君の組織・暁に加入した者達が居るそうではないか?」!?」
俺はアレイスターの発言に驚愕し、硬直する。
何故この男はそのことを知っている!?
フレンダと猟虎は今、時空間である神威の世界に居る。
二人が暁に入ると決めたのはその世界の中でだ。
それに二人はそれから一切外へ出ていない…
それなのに何故この男はその情報を知っているんだ…
俺はアレイスターの得体の知れなさに恐怖を覚える。
まさかこの男は神威の世界でさえ介入出来るとでもいうのか…
いかにアレイスターであれど時空間の中までは介入出来ない筈と油断していた…
……いや…ハッタリである可能性もある…
此処は一先ず否定しておこう…
「…何のことを言ってるんだ? そんな奴は居ないぞ?」
「ほう……フレンダ=セイヴェルンと弓箭猟虎」
「!!?」
俺は抑えていた動揺が今のアレイスターの一言で遂に顕となり、驚愕に目を見開く。
同時にフレンダと猟虎の名前が出たことでアレイスターは確信があって言っているのだと悟った。
「どちらもレベル0とはいえ、優秀な人材を手に入れたではないか? それも他の暗部から引き抜く形でとは…見事な手腕だ」
「…アレイスター…アンタは一体…」
「ところで、先程の件だが…受ける気になってくれたかね?」
…何が「受ける気になってくれたかね?」だ…
これは最早依頼ではなくフレンダと猟虎を人質とした脅しだろうが…
俺がこの依頼を再度断ったら最後……俺は勿論のこと、フレンダと猟虎も何らかの手段で殺されるのは間違いないだろう…
俺が死ぬのは良い。
前の世界で死んでいたのが縁あってこうしてこの世界で再び生を受けたんだ。
元々死んでいたのだから今更死ぬのは怖くは無い。
だがあの二人は違う。
確かに原作…本来の世界線なら暗部抗争終結の10月9日までの間に彼女達は既に死んでいる…
それを俺が介入したことでその死の運命から二人を解き放った。
そんな二人を死なせることなど出来るものか!
フレンダと猟虎は必ず最後まで生かし抜いてみせる!
俺の命に代えてもな!
「…分かった…アンタの言う通りに動く…」
俺はアレイスターへの怒りから歯をギリギリと食い縛り、体を震わせながらも何とかそう口にした。
「ふむ、やはり君は聡明だ、実に頭が良い。 用件は以上だ、退がって構わんよ」
俺の言葉に満足したのかアレイスターはそう言うと、俺は奴の言う通り神威でその場を後にした。
アレイスター…お前をいつかこの窓のないビル…いや、統括理事長の座から引き摺り下ろしてやる!
あの二人に手を出すような真似をしたんだ…絶対に許さん…
上条と奴の決戦の際は参戦し、一矢報いると俺はこの時誓った。
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〜学生寮・オビトの部屋・夕方〜
あの後、暗部抗争が終わったということもあり、神威空間からフレンダと猟虎を出しても問題ないと判断した俺は二人を俺の部屋で住まわせることにした。
学生寮で異性と暮らすのは問題があるとも思ったが、良く良く考えたら上条は禁書目録(インデックス)と暮らしているし、土御門もちょくちょく義妹の舞夏(まいか)を招いている……フレンダと猟虎がうちで暮らしても特に問題ないのではないかと考えることにしたのだ。
そもそも幼女とはいえ、8月の時点でフレメアをうちで預かっている時点で問題もクソも無かったのだが…
それに神威空間に二人を匿ってもアレイスター相手にはあまり意味がないということを悟った…
ならば俺の部屋で同居させ、二人を守りやすいようにするという考えもありこの決断に至ったのだった。
こうして久しぶりに直接的な再会をすることとなったフレンダとフレメアは対面するや否やお互いに涙を流して抱きしめ合い、そんな光景に猟虎は感動のあまり自分のことのように号泣し、俺も俺で目尻が熱くなるのを感じていた。
その後フレンダが今までフレメアに会わなかった理由を話したのだが、やはりそれは暗部に入ったことが原因だったようだ…
暗部に入った理由はただ一つ…フレメアの為に多額の収入が欲しかったというただ妹を大切に想う姉としての慈愛心からであった。
置き去り(チャイルドエラー)であったフレンダとフレメア…
親からの仕送りなど無く、貧しくも何とか生きていくしか無い極限の生活。
フレンダの好物がサバ缶なのもそこに起因しているのだろう…
サバ缶は安価で栄養価も高い…当時のまともな収入源の無い貧困な状況ではまさに救世主とも言えた…好きになるのも頷ける。
話は逸れたが、こうして暗部に入ってからも初めのうちは共に暮らしていたものの、このまま自分と共に暮らしていたらフレメアに危害が及ぶ可能性が高い…それに今までの任務で人を多数殺してしまい、それを繰り返していくうちに気付けば嫌で行っていた殺し自体に愉悦を見出すようになってしまっていた…そんな血に汚れた自分がフレメアの元に居て良い筈が無いとフレンダは妹の元を去っていたのだ。
フレメアの「お金なんていらない…私はフレンダお姉ちゃんと一緒ならそれで良いにゃあ!」という言葉にフレンダは「ごめんフレメア…こんなお姉ちゃんでごめんね…」と涙ながらに語り、姉妹は更に強く抱きしめ合った。
もうフレンダとフレメアが離れることはもう無いだろう。
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皆が泣き止み、落ち着いた後、夕食を摂ることになった。
今日の料理担当は猟虎。
だったのだが…
「さあ出来ましたよ♪ オビトさんの為に腕によりをかけて作りました! 是非召し上がって下さい! フレメアちゃんもいっぱい食べて下さいね!……あっフレンダさんはこっちですから」
「あ、ありがとな猟虎…」
「猟虎お姉ちゃんありがとうにゃあ!」
上機嫌で自分の作った料理…ナポリタンを運んでくる猟虎だが、俺とフレメアに対する態度とフレンダに対する態度にあからさまな温度差がある…
それに対し俺は引きつりながら、フレメアは年相応の満面の笑みで礼を言う。
「ちょっと猟虎可笑しくない!? 私の皿!」
「何がですか?」
「何がじゃない訳よ! フレメアはまだ小さいから良いとしてオビトのと比べて料理の量が明らかに少ない訳なんだけど!?」
フレンダの指摘通り、俺の皿には料理が山盛り、しかしフレンダの皿はフレメアと同じサイズ…しかも料理の量がかなり少量という…可笑しすぎることになっていた。
悪意たっぷりでやっているのが猟虎の表情から窺えた…
「貴女に作ってあげただけ有難いと思って下さいよ? 別に貴女に作る義理も必要性も無いんですから。 文句があるなら貴女はサバ缶でも食べていれば良いじゃないですか?」
「なっ!? 相変わらずムカつくわね! それにその言い方…アンタサバ缶のことバカにしてる訳!? 猟虎、アンタ表に出なさいよ!」
「安価で美味しい有能なサバ缶をバカになんてしていませんよ? まあ良いですけど…ズタボロにされて泣くことになっても知りませんよ?」
「フン! 弱い犬程良く吠えるとは良く言ったものよね?」
「その台詞、そっくりそのままお返ししますよ?」
「ニヒヒ…」
「フフッ…」
「「ぶっ殺(す)(してあげます)!!」」
「フレンダお姉ちゃんも猟虎お姉ちゃんも大体楽しそうにゃあ! 二人共頑張れー!」
「いやいやフレメア、そこは止めないとダメでしょ!?」
売り言葉に買い言葉を繰り広げ、遂に戦闘宣言を言い放つと、互いに自らの得物を携え部屋から出ようとする二人。
呑気に応援する少しズレてるフレメアに転けそうになるものの、俺は二人を仲裁しに掛かる。
「待て待て! 今日は君達がうちで暮らす記念の日なんだぞ! 仲が悪いのは仕方がないにしても初日からいきなり殺り合うなって!」
「!? た、確かにそうね…わ、私が悪かった訳よ…」
「!? わ、わたくしも…そ、その…い、言い過ぎました…」
俺から注意され、フレンダと猟虎は多少冷静になったのか互いに謝罪し合う。
後フレメア、「むぅ〜 面白そうだったのに…オビトお兄ちゃんなんで止めたんだにゃあ…」とか残念そうに言うなって…
見た目によらず意外と過激派なフレメアに若干圧倒される俺…
「君達は全く…これから一緒に暮らすのにそんなにケンカばかりしてどうする?」
「「ごめんなさい……」」
諭す俺にフレンダと猟虎は共に謝ってくる。
そんな暗い顔をされて俯かれると何だかバツが悪いんだが…
「…ま、まあ、兎に角、ケンカは極力しないように! せっかく猟虎が作ってくれた料理が冷めないうちに食べよう」
気まずい状況を変える為に俺は手を叩いてそう言う。
それに対し、三人は頷くと全員が「いただきます」と言って食事を開始する。
何だかんだ穏やかに食事を摂る彼女達。
こんな日常がいつまでも続くことを願いながら俺はナポリタンを口にするのだった。
いや…しかし…このナポリタン…凄まじい量だな…
折角猟虎が作ってくれたのだから頑張って食べるしかないが…
その後俺は気合いを入れ、込み上げるものを抑えつつ何とか全てを胃に収めたのであった。
でも暫くナポリタン…スパゲッティは見たくない…
〜幕話〜
ーいただきますの後の食事風景ー
「ちょっと猟虎! 結局、私の料理がこのままってどういう訳よ!」
「仕方ないじゃないですか、オビトさんにたくさん盛り付けてしまったんですから」
「結局、アンタの配分は可笑しいってのよ! オビトが好きなのは分かるけど、あんなに盛り付けてアイツが食べ切れる訳がないっての!」
「そんな筈ありません! オビトさんは絶対に食べ切ってくれます!」
「フン! そんなこと繰り返してアイツに嫌われないと良いわね?」
「き、嫌う!? オ、オ、オビトさんが…わ、わ、わたくしを…嫌う………」
オビトに嫌われると言われ、何を脳内で妄想したのかこの世の終わりのような顔をして倒卒する猟虎。
「ちょっと猟虎!? 冗談で言ってんだから起きなさい! というか戻って来る訳よ!?」
冗談で言ったつもりがまさか気絶するとは思っておらず、パニックを起こし騒ぎ始めるフレンダ。
「こんなに賑やかなご飯大体久しぶりにゃあ!」
ニコニコと屈託なく笑い、ナポリタンをもぐもぐと呑気に頬張るフレメア。
「……ハァ……」
そんな光景にオビトは今宵何度目となるか分からない溜め息を深くつくのだった。