とある魔術の禁書目録外伝IF〜とあるフレンダの救済計画〜   作:死徒

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とある夢

〜とある大型移動車両の中〜

 

 

「…ちっ…あん時の夢かよ…クソッタレが……」

 

暗部組織…グループでの任務の最中、一時交代で仮眠を取っていた学園都市第一位のレベル5一方通行…アクセラレータは思い出したくも無い光景に眉間に皺を寄せながら不機嫌そうに目を覚ます。

 

 

——あの夜。

 

神の右席「前方のヴェント」が学園都市に攻め込んできた0930事件の混乱の最中。

 

科学者、木原数多率いる暗部…猟犬部隊(ハウンドドック)がアクセラレータを完全に包囲し、追い詰めていた。

 

無敵と思われていたアクセラレータの能力だったが、アクセラレータの能力開発を初期から関わり、その対処法を独自で編み出していた木原には全く通用せず、科学者とは思えない程強力な近接戦闘力を持つ木原に一方的に殴られ続けるアクセラレータ。

 

辛くも拘束されていた打ち止め…ラストオーダーを能力で吹き飛ばすことでその場から何とか離脱させたものの、限界を超えていたアクセラレータの身体はその荒技に耐えきれず、倒れ伏していた。

 

その場の誰もがアクセラレータはもう終わりだと思った。

 

そんな時!

 

【フンフンフ〜ン♪】

 

軽やかな鼻歌を口ずさみながら、奇妙な仮面の黒髪の男がテクテクと戦場の真ん中を歩いてきた。

 

胸元に赤い雲のマークが施された黒いコートに渦を彷彿させるグルグルのオレンジの仮面、片目だけ覗く不気味な出で立ち。

 

完全に場違いな男…暗部組織〔暁〕のリーダー…うちはオビト…コードネーム〔トビ〕の分身体…コードネーム〔ゼツ〕は首を傾げてへらへら笑った。

 

「フンフンフーン♪…ってありゃ?……えっと…もしかしなくても…僕って場違いっスかね〜?」

 

木原が眉をひそめ、部下に目で合図しながら声をかける。

 

 

「……何だお前、奇妙な格好してやがんな……俺達と同じ暗部か? いや、待てよ…確かそんな服着た新設の暗部があったな…確か名前は暁だったか?」

 

ゼツは肩をすくめ、へらへらと馬鹿みたいに笑いながら手を振った。

 

「そうっス そうっス! 当たりっスよ! 同じ暗部同士仲良くしましょうね〜! 僕、ゼツっていいますよ〜♪」

 

木原はゼツの反応を鼻で笑い、冷たく吐き捨てる。

 

「ケッ!…悪いが手柄は俺達のもんなんでな……それに暗部同士が仲良しこよしはないだろ?……つーわけだからさ、まっ、消えてくれや」

 

木原は部下に目配せする。

 

すると、即座に数人の部下がバズーカ砲を構えた。

 

ゼツの仮面の下で目が点になる。

 

 

「バ、バズーカ!? ヤ、ヤバいっスよこりゃ!? ちょ、ちょっと待って待って〜!! 話せばわかるっス!!」

 

ゼツの焦る様子に木原は口元を歪め、サディステックな表情をしながらにやりと笑う。

 

 

「問答無用、良しお前ら、遠慮せず殺ってよし!」

 

木原の合図と共にバズーカ砲が一斉に発射された。

 

「ちょ、ちょっと! 待って! やめてー!! うわあああっスよおおお!!」

 

ゼツは必死に逃げ回る。

 

しかし、追尾効果を持ったスコーピオンと呼ばれるバズーカ砲は逃げるゼツを容赦なく追い込んでいく…

 

そして、遂に逃げ場を失ったゼツにバズーカは襲いかかる。

 

それを辛くも避けたゼツであったが、最終的に地面に着弾したバズーカの爆風を受け…

 

 

「うぎゃー!!」

 

「グヘッ!?…」

 

という間の抜けた叫びを上げながら、延長線上に倒れていたアクセラレータを巻き込み、二人は一緒に吹き飛ばされた。

 

「はぁ!?」

 

ギャグ漫画のような展開に流石の木原も目を丸くし、口を開けて愕然とし固まる。

 

ゼツとアクセラレータはその後別々の場所に吹き飛んでいったが、着地した先は互いに、先程木原達が居た場所から離れた路地裏。

 

そしてアクセラレータは木原の増援で現れた一台の車両を目視した瞬間、首の電極のスイッチを入れ、残った力を振り絞ってその車両を制圧。

 

運転手一人を残して全員を叩きのめし、後部座席に乗り込んだ後、負傷させた運転手を脅して車を発進させる。

 

更にひょんなことからその場に現れた禁書目録…インデックスを自身と隣の後部座席に乗せると、アクセル全開でその場から走り去った。

 

 

——アクセラレータが車両のテールランプを残して夜の闇に消えた直後、木原はバズーカの爆風によって瓦礫の山と化したその中心でふと我に返る。

 

すると先程までの状況を徐々に思い出したのか、彼の顔の左側に刻まれた刺青が怒りで一気に歪んだ。

 

「いたたー…全く酷い目にあったっス……」

 

やれやれという風に後頭部を掻きながらゆっくりと立ち上がり、ゼツは路地裏から姿を現した。

 

それを見た木原はマイクロマニピュレータを装着した両手をぎゅっと怒りのままに握りしめる。

 

「……おいおいてめえ……あのクソガキを偶然を装って逃しやがっただろ?」

 

ゼツはへらへら笑いながら埃を払い、わざとらしく肩を落としてみせた。

 

「あら? 分かっちゃいました? 僕の迫真の演技だったのに……ショボ〜ン……」

 

木原の目がさらに細くなり、額の青筋が増え、彼から発せられる殺意が濃くなる。

 

「いやいや、バズーカから逃げて吹き飛ばされて偶然吹き飛ばされた先にアクセラレータが居て一緒に吹き飛ばされて、更に何だ、俺の部下が増援でそこにやって来る……どう考えても出来過ぎだろ? それにてめえ、俺の部下の増援が来ることも把握してやがったな?……只の新設の暗部が出来ることじゃねえ…本当に何者だ?」

 

「…ふぅん…やっぱりアンタ…危険っスね…どうせ後でやられると思うっスけど……」

 

木原の発言のその直後、ゼツの仮面の奥で写輪眼が一瞬だけ輝く。

 

その瞬間、木原の本能が危険信号を全力で鳴らした。

 

木原の動きがピタリと止まる。

 

指一本動かせないほどの圧迫感が全身を包んだからだ。

 

「(おいおい……なんだ、なんなんだ…この眼……ただの能力じゃねえ……!?)」

 

「…さっさと始末してしまった方が良いか?」

 

「っ!?」

 

雰囲気と共に声色まで別の物に変化し、殺気を飛ばし始めるゼツに、木原は彼の本性はこちらだと悟ると共に自身が危機的状況であることを再認識させられる…

 

 

その直後——

 

空から巨大な風の渦が吹き荒れる。

 

風が収まると、そこには端正な顔立ちを彷彿させるものの、それを全て消し去る程の独特な化粧と表情、更に顔と舌に痛々しいピアスを施した見るものを一目で嫌悪させる見た目をした全身真黄色の修道服を身に纏い、その細い右手には不釣り合いな程巨大なハンマーを持った女性……前方のヴェントが居た。

 

ヴェントは周囲を見回し、苛立った声で吐き捨てる。

 

 

「……何だか異常な気配を感じて上条当麻が居るかもと思って来てみたけど…居たのは顔に入れ墨をした柄の悪い男と兵隊…それに何? その趣味の悪い仮面つけてるヤツ…頭沸いてんじゃないの?」

 

「趣味の悪いとは失礼な! アンタこそなんスか! 趣味の悪い下品な化粧に痛々しいピアスをそこらじゅうに付けて! アレっスか? 化粧を取ったらあまりにブスだからそれを誤魔化す為にそんなナリをしてるんスか! 成る程! 確かにブスならそんな巨大なハンマー持てる訳っスね! よっ! ブスゴリラ女さん!」

 

現れて直ぐにぞんざいな扱いをするヴェントにゼツは声色をマダラの物から通常に戻すと即座にへらへら笑いながら反撃した。

 

言ってはならない発言ばかりを繰り返すという特大爆弾を投下するという暴挙を…

 

案の定それを聞いたヴェントの顔が歪み、眉間に皺が刻まれ、一瞬で顔面が真っ赤に染まる…

 

…誰の目から見てもブチ切れモード全開である…

 

「はぁぁぁ!? このクソ仮面野郎……ブチ殺す!!」

 

ヴェントはハンマーに風を纏わせるとそれを振り上げ、ゼツを全力で追いかけ回し始めた。

 

「ちょ、ちょっと言いすぎたっス!? わあああっスよおおお!! 待って待って〜!! 許して〜!!」

 

と叫びながら大げさに逃げ回るゼツ。

 

「許すかクソが!! 跡形もなく消してやるから覚悟しなさい!!」

 

「嫌ぁ〜!!」

 

「「「「……」」」」

 

戦場をぐるぐる回るゼツとヴェント。

 

木原と彼の部下達はそんな馬鹿げた追いかけっこ見て呆れて固まっていた…

 

少し経ち、木原は冷静になると青筋を引っ込めて舌打ちした。

 

「……チッ。馬鹿らしくなってきたぜ。

おいお前ら! 本来の任務に戻る。 ラストオーダー捜索を優先だ」

 

木原数多は部下たちを引き連れ、その場から撤退。

 

ヴェントとゼツのドタバタ劇は、最終的に神威での逃亡に成功したゼツによって結局うやむやのまま夜の闇に消えた。

 

その後ヴェントは上条当麻に倒され、木原も黒い翼を発現させたアクセラレータに消され、0930事件は終結した。

 

木原を消したことにより、アクセラレータは暗部入りを余儀なくされることになり、現在に状況に至る訳だが、またそれは別の話だ。

 

アクセラレータは現在に意識を戻し、深い溜め息を吐いた。

 

「(……クソが…あの時の借り、まだ返してなかったな…暗部暁のゼツ…ふざけた三下野郎だが、助けられたのは事実だ…借りを作ったままなのは気に食わねェな…ヤツ個人の意思なのかそれとも暁自体の思惑かは知らねェが…いつかこの借りは返させてもらう)」

 

思考するアクセラレータ。

 

「アクセラレータ交代だ…どうした? 随分と難しい顔をして?」

 

そこへ、仮眠時間が終わったらしくグループの同僚の土御門元春が交代でアクセラレータを呼びに来る。

 

「何でもねェよ…交代だろ? 分かった。 土御門、てめェもさっさと寝とけ」

 

「…まあ良い。 なら遠慮なく休ませてもらうぜ?」

 

「あァ…」

 

アクセラレータは傍に置かれた杖を右手に持つとそれを補助として立ち上がり、仮眠室を出ていくのだった。

 

その後、アクセラレータも度重なる負荷によって徐々に生気を失っていくラストオーダーを救う為、彼女と共に学園都市を脱走し、その手段を有する国…ロシアへと向かうことになる。

 

そこでオビト達【暁】と対面することになるとはまだ彼らは知る由もない。





という訳で0930事件の時にオビトは分身を通して密かにアクセラレータを助けていたという話でした。

原作通りなら普通に生存すると分かっていたものの、万が一を考えて分身を使っていた訳ですね。

救う手段がギャグみたいな感じでしたが…

オビト本人としては特に意識していませんでしたが、助けられた本人であるアクセラレータは意外と彼に恩を感じており、早く借りを返したいと思っています。

それがいつどのようになるかはお楽しみを
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