反感買いそう。
でも思いついちゃったからね、仕方ないね。
この感情の名前は
『運命大戦』──
そこで私はお兄ちゃんを亡くした。
お兄ちゃんの死ぬ運命を変えたくて、私は2回目の運命大戦で勝ち、お兄ちゃんの死ぬ運命を帰るために過去へと渡った。
そこで私は、清蔵タイゾウさん。私の知る時間軸では『標の運命者』に選ばれながらも運命大戦に参加しなかったイレギュラーである彼に接触してお兄ちゃんを止めて欲しいと頼み込んだ。
思い返すと、タイゾウさんと私の出会いはここからなんだ。
あれから、しばらく時が経った。
運命大戦でお兄ちゃんは勝ち残り、『この時間軸の明導ヒカリ』の身体を治すことが出来た。その後に私の中に残っていた『シヴィルト』が引き起こした『宿命決戦』。
本来私は運命大戦が終わったら歴史の修正力で消えるはずだった。
なのに、私の中にシヴィルトがいた影響で私は消えずに残った。
その時、またしてもタイゾウさんの世話になることになった私は、影から宿命決戦の戦いをずっと見ていた。
過去の私と戦い、私は勝った。
私の中にいたシヴィルトがナオさんの持っていたシヴィルトの本体を取り返すためにナオさんの身体を乗っ取った。
そして、再び私の身体は消え始めた。
でもお兄ちゃんとガブエリウスがシヴィルトを打ち倒して、ガブエリウスが私の願いを汲んでくれた。
それで私はまた、この世界で生きることができるようになった。
明導ヒカリは、この世界に2人存在しちゃいけない。
私は『明星エリカ』と名乗って、タイゾウさんの手引きで清蔵アンカーボルトの研究生としてプロを目指すためにヴァンガードをしていた。
ここまでは、良かったんだ。
最近の私の悩み。
それは、いつもタイゾウさんを目で追ってしまうこと。
自分でも、何故だろうと思うことは多々あった。
沢山助けてもらったから?お兄ちゃんに負けず劣らずのお人好しだから?
考えても答えなんて出てこない。
タイゾウさんがいなければ、お兄ちゃんの運命を変えることは出来なかったと思ってる。でも、これは命の恩人、としての一面が大きいかもしれない。いや、恐らくそうだ。
でも、ずっとタイゾウさんの事を目で追ってしまうし、心の中とモヤモヤがどんどん大きくなって来てる。
これは、『恋』と呼ぶべきなのかな。
「エリカちゃん。」
「ひゃいっ!?」
考え事をしていた私に、タイゾウさんは声をかけてきた。
急に声をかけられた私は思わず変な声をあげてしまった。
「どうしたんだ?最近ずっと上の空のようだけど。」
「いえ、その……。」
「もしかして、体調悪いのかい?」
「い、いえ!そんな事ないです!!
ただ……。」
「ただ?」
「その……。」
『最近、ずっとタイゾウさんを目で追ってしまうんです』なんて、口が裂けても言えるはずない。
「ちょっと考え事してたんです。
タイゾウさんに助けて貰ってばっかりだから、恩返しをしたいと…。」
嘘だけど、この気持ちは嘘じゃない。
タイゾウさんに恩返ししたいのは本当だ。
でも、本当の気持ちを伝えるのが怖かった。
「別に、そんな事気にしなくても大丈夫さ。
俺がやりたくてやってた事なんだからさ。それに、困ってる人を見捨てるなんて出来るわけない。」
……ズルい。
──そんなかっこいい言葉言わないで……。──
……あれ?今私、どうしてこんなこと考えたんだろう?
「ズルい…です。」
私はただ、そう呟いて、自分の部屋へと戻って行った。
部屋で私は、ガブエリウスが端末として使っていたぬいぐるみに顔を埋めた。
「……私、タイゾウさんに恋してるのかな。」
そう呟いたって、誰も聞いてるわけない。だって、私の部屋には私しかいない。
この部屋だって、住む家もない私にタイゾウさんが用意してくれた部屋だ。
「少し頭を冷やしに行こうかな。」
私は思いたって、お兄ちゃ──アキナの家に行くことに決めた。
ちゃんと連絡をとって、私は少しの荷物を持って部屋を出た。
その道中で、タイゾウさんに会ってしまった。
「エリカちゃん?どこ行くんだい?」
「ちょっと…アキナの家に。」
「そっ……か。
これ、持って行ってよ。」
そう言ってタイゾウさんは私に紙袋を渡してきた。
これって……。
「君に頼まれてヒカリちゃんのお見舞いに行った時に持っていったプリンさ。
アキナ君の家に行くなら3人で食べてくれ。きっとヒカリちゃんも喜ぶと思うんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
心がモヤモヤする……。
心が苦しい……。なんで……?
そんな事を考えていた時だった。
「エリカちゃん、アキナ君の家まで送っていこうか?」
タイゾウさんに声をかけられて、私は思わず──
「あ、いえ、大丈夫です!1人で行けます!」
そう言って、まるでタイゾウさんから逃げるように、アキナの家まで向かっていった。
少し困った顔をしたタイゾウさんを置いて。
なんなの、私。
アキナの家に着いた私は、渡されたプリンをテーブルに置いて話をしていた。
「んで?なんで急に家に来たんだよ?」
アキナにそう言われた私は、思わず嘘をついてしまった。
「プリン貰って、3つも食べるのしんどいから残った2つ食べてくれる人探してた。」
嘘。
本当はタイゾウさんに会いたくなくて、この気持ちをどうにかしたくて、ここに逃げてきた。
「このプリン、タイゾウさんがお見舞いに来てくれた時に食べたけど美味しかったの!また食べたいって思ってたからありがとう!」
もう1人の私──ヒカリが嬉しそうにそう言った。
ヒカリは、タイゾウさんの事をどう思っているんだろう。
そう思った時には、もう口に出ていた。
「ねぇ、タイゾウさんの事どう思ってるの?」
「え?なに急に。
かっこいい人だし、いい人だよね。」
「好きって気持ちは?」
「異性として…は仮に私にあったとしてもタイゾウさんから来ることはきっとないよ。
ほら、大人としての立場が危うくなっちゃいそうだし?」
「そっ……か。」
「え、何?もしかしてタイゾウさんのこと好きなの?」
そうニヤニヤしながら言うヒカリ。
こういう所、ほんと私そっくり。いやまぁ、私なんだけど。
「……うん。」
私は小さな声と共に頷いた。
「へぇ〜?そうなんだぁ〜?」
「……何?そろそろバレンタインだし本命チョコでも作れば?」
「別に〜?」
「はぁっ!?」
「だって〜、タイゾウさんならきっと喜んでくれると思うよ〜?
私はもう宿命者の皆さんにチョコ渡すって決めてるもん!
……喜んでくれるかな。」
「何?ヒカリも好きな人いるの?」
「え!?いや、いないよ!?」
「ふふっ、その反応ってことはいるんだね?」
「……うん。」
「私達って、本当に同じなんだね。」
「そうだね…。」
「2人とも、俺いること忘れてないよな?」
ふとアキナが私とヒカリに声をかける。
すっかりいること忘れてた私達は意図せず息のあった発言をした。
「「あ、ごめん。忘れてた。」」
「おい!!」
しばらく家に居させて貰って、気持ちの整理もしながら、久しぶりの家の空気を吸っていた。
……私やっぱり、この家の空気が好きだ。
「エリカ、俺もうすぐ晩ご飯作るけどどうするんだ?」
「うーん……食べてから帰る。」
「わかった。んじゃ用意するから少し待っててくれ。」
アキナの作るご飯。
久しぶりの感覚。やっぱり私、この世界に来てよかった。
ご飯も済ませていざ帰ろうと思ってた時だった。
ふとスマホに着信があった。名前を見てみるとタイゾウさんからだった。
『悪ぃなエリカちゃん!まだアキナ君の家かい!?』
「え、はい。そうですけど……。」
『今緊急で資料作ってて迎えに行くのは難しそうなんだ!
今キョウマが代わりに向かってるから、もう少しだけアキナ君の家で待っていてくれ!』
「あ、わかりました。」
そう言われて電話が切られる。
「ん?誰だったんだ?」
「タイゾウさん。
資料を急に作らないといけなくなったから迎えに来れないって電話。
キョウマさんが迎えに来てくれるみたいだからもう少しだけここで待つ事になった。」
「そっか。
もう少しゆっくりしろよ?久しぶりの実家なんだし。」
「うん。」
しばらくして、今度はキョウマさんから電話がかかってきた。
『エリカ、着いたんだが帰る準備は出来てるか?』
「はい!大丈夫です。」
『わかった。』
と、すぐに電話を切られた。
私はアキナとヒカリに挨拶だけして帰ることにした。
「それじゃあ、またね。」
「おう!また来いよ〜!」
「またね〜!!」
2人に見送られて私は玄関を出て、すぐにキョウマさんのいる車に乗りこんだ。
「どうだったんだ?久しぶりの実家は。」
「はい、なんかスッキリした気がします。」
「……タイゾウと何かあったのか?」
「え?」
唐突にキョウマさんからタイゾウさんの話を振られた。
「さっきまでタイゾウと居てな。
『やけにエリカちゃんに避けられてる』って少し落ち込んでいたぞ。」
「すみません……。」
「タイゾウと喧嘩でもしたのか?」
「いえ、そんなことは無いんです。
ですが……。」
「どうした?」
「……私、タイゾウさんの事が好きなのかもしれないんです。それで、無意識のうちにタイゾウさんから距離を置こうとしていたのかもしれない。」
「……そうか。タイゾウなら、今絶賛彼女募集中だ。」
「え?」
「先日共に酒を飲む機会があってな。その時の場で酒が回っていたからか、『俺も美人の彼女欲しい』で言っててな。
その時は冗談かと思ったのだが、どうやら本気のようだ。」
「そ、そうですか……。」
「それに、タイゾウのあの性格だ。気持ちは早く伝えないと他の女性に奪われるかもな。」
「そ、それは!!嫌……です……。」
「もう答えは出てるんじゃないか?」
「え?」
「君はたくさんタイゾウに助けられたんだろう?
ならば、今度はエリカがタイゾウを助ける番だ。」
「そう…ですね。」
「俺1人ではどうにもできない問題もあるからな。」
「……ひとまず、気持ちは伝えてみろ。それでダメだったら──」
「わかってます。」
キョウマさんの一言を遮るように、私は返事を返した。
「……応援してる。」
「ありがとうございます。」
社宅の前に着いて、私はキョウマさんの車から降りた。
「あの、迎えに来てくださってありがとうございました。」
「あぁ。
……頑張れよ。」
「……はい!」
私は部屋に戻って、ベッドに顔を埋めた。
次会った時、タイゾウさんにちゃんと謝らないと……。
バレンタインの日。私は1人でチョコを作った。
同じ研究生の皆に渡す分だけじゃない。
アキナ達運命者カードの所有者と、キョウマさん。
……タイゾウさんにだって、ちゃんと作った。あとは渡すだけ。
「よし。」
作ったチョコを袋に包んで鞄にしまい、私は部屋を出た。
みんなにしっかり渡した後、タイゾウさんの元を訪れると何やら集中した様子でデスクと向き合ってるのが見えた。
「何をしているんだ?」
「ひゃぁ!?」
後ろからキョウマさんが声をかけてきて、私は自分から聞いた事のない声を出してしまった。
「タイゾウさん、忙しそうにしているので……渡すのは後にしようか迷っていたところなんです。」
「……またか…。」
そう言ってキョウマさんはタイゾウさんの元へと歩いていった。
しばらくして部屋の中からキョウマさんに呼ばれた私はそのまま中へ入っていく。
「タイゾウさん……。」
「やぁ。元気かい?エリカちゃん。」
空気を察してか、いつの間にかキョウマさんが部屋から居なくなっていた。
「あ、はい……。
あの、ごめんなさい!!先日は無礼なことをしてしまって!!」
私はタイゾウさんに頭を下げた。
でも、すぐにタイゾウさんに頭を上げるように言われてしまう。
「顔を上げてくれ、エリカちゃん。
俺は別に気にしてないさ。ただ、君の気持ちをきちんと理解してあげられなかった。俺の方こそすまない。」
「タイゾウさん……。」
私は、チョコの入った鞄を握りしめる。
タイゾウさんの口からあのような事言わせてしまった私が情けない……。
「ところでエリカちゃん、その鞄は?」
「……え?」
ふとタイゾウさんから声をかけられた私。
鞄を握りしめていた手の力が少し抜けた。
「チョコレートです。今日バレンタインなので、さっきまで研究生の皆に配ったりしてきました。」
「そうか。でも、それだけじゃないんだろ?」
「……やっぱり、タイゾウさんにはわかっちゃいますか…。」
私は鞄からタイゾウさんへ渡すためのチョコを取り出す。
……覚悟を決めよう。これでダメなら──
「タイゾウさん、これを渡しに来ました……!!」
「俺宛て?
それにしては、とても凝られてるが……。」
「……私、タイゾウさんの事が好きです。だから──」
『本命チョコです』と言おうとした時だった。
「エリカちゃん。」
「は、はい!!」
「ありがとう。
……俺もエリカちゃんの事が好きだよ。」
『俺も』……?え……!?
「嘘……!?」
「ほんとだよ。俺もエリカちゃんが好きだ。」
「え、どうして……!?」
「最初は責任を感じてたんだよ。キャンプのあの日、エリカちゃんやアキナ君、みんなの運命が変わってしまった。
エリカちゃんと出会って運命大戦や宿命決戦でも、エリカちゃんがいた。」
思い返せば、アキナ──お兄ちゃんが死ぬ運命を変えたくてこの世界に来た。
運命大戦も宿命決戦も、タイゾウさんがいた。
「あとは……ずっとエリカちゃんの面倒を見てたからかな。」
タイゾウさんは急に私の手を取った。
「エリカちゃん、俺と恋人になってくれないか?」
「はい!!もちろんです……!!」
私は空いてる左手でタイゾウさんの手を握り返す。
「……話は終わったか?」
扉の向こうからキョウマさんから現れた。
キョウマさんは私たちが手を握りあってるのを見て頭を抱えていた。
「……お熱い事だな。
あまり会社でそういうことをするなよ?」
「あぁ、もちろん。それに、スキャンダルもちゃんと気をつけるさ。」
「そう……ですね。」
私はタイゾウさんの手を離し、部屋を出ようと扉まで向かっていた時だった。
「エリカちゃん。
ホワイトデーのお返し、期待しててくれよ?」
「はい!」
外出て社宅の部屋に戻る途中──
『今日の夜、俺の部屋来れるかい?』
とタイゾウさんからメールが入った。
……どうなるかな。
期待を膨らませながら私は部屋に戻った。
終わり方がいつも雑……
どうにも出来んなぁ……。