刀剣男士に恋愛感情を持つことを時の政府に禁じられた世界観で審神者がある刀剣男士への片思いをする話。
ひたすら審神者がある刀剣男士への感情を吐くだけの話なので特に刀剣男士はメインでは出てきません。

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さよなら大好きな

大好きでした。

正しくは愛していました。

 

あなたの穏やかで優しい声も、整いすぎて怜悧に見える顔立ちも、どんなに我儘を言っても受け止めてくれるところも。長く綺麗な銀色の髪も。少々おっさん臭いところさえも全部全部、愛していました。

 

私は審神者になるのが早かったので貴方のことはすぐに本丸に迎えることができました。

外見から耽美キャラだと思っていたので貴方のどちらかというと、いや、かなり庶民よりの性格も酒好きなところも意外で驚きました。 特に恋愛感情を持つことはなく他の男士同様迎えてから早々とカンストさせ隠居させてしまいましたね。2年間。そう、2年間は。

 

なにかの過ちだと、間違いだと思いたいけれど。好きになってしまったのです。貴方を。

 

そのきっかけはほんの些細な事。人が聞いたらまるで子供の恋のようだと嘲笑うかもしれません。いえ、嘲笑われて当然です。

理由が、とてもとても子供じみていたから。

 

あの日私は神社に参拝に行こうとしていました。

夏の終わりであれどとても暑い日でしたね。

思ったよりも暑くて目眩がし倒れそうになった時、貴方がすぐに私を倒れないように支えてくれましたね。

 

近くで貴方の顔を見た時、美しいと、とても美しいと思ったのを今でも覚えています。

刀剣男士は皆美麗な美男子揃いなので当然の感想なのですが、それでも私はとても美しいと思い恋をしてしまったのです。

そんな、些細なことで人は簡単に恋に堕ちてしまうのです。

そう「堕ちて」しまうのです。

愚かにも。人間風情が。身の程も知らずに。

 

好きになってしまってから少しでも傍にいたくて貴方をずっと近似にしました。

勘の良い刀は私が貴方に恋をしてしまった事を感じたのか、応援してくれたり釘を差されたりしました。

貴方は私のこの感情に気がついていましたか?

勘の良い貴方の事だから気がついていたと思います。

優しい貴方の事だから気が付かないふりをしたのだと思います。

 

暇だと欠伸をする貴方の横顔を見つめているのを、落ちた紙を拾おうとした時に手が触れた事を。しばらく席を外した時に穏やかに歌っていた貴方の歌声に聞き入っていると「おや、あんた聞いていたのかい?」と気恥ずかしそうに微笑みましたね。そんな小さなひとつひとつな事が私にとっては宝物のようでした。幸福で、夢のような。

 

審神者にはひとつ、政府から禁止されていることがあります。

それは刀剣男士に恋をすること。

審神者は刀剣男士の主人たる存在です。

もし審神者に恋心を告げられたら原則として刀剣男士に拒否権はありません。

無理矢理性的な関係を結ぼうとする者。刀剣男士は容姿端麗なのでそういう者も出てくるでしょう。

気性の荒い審神者ならもし拒まれたら可愛さ余って憎さ百倍、刀解する者もいるでしょう。

双方互いに思い合っていたとしても色恋にかまけて審神者と刀剣男士の本分たる戦を放棄する者も出るでしょう。

それ故に審神者は刀剣男士に恋愛感情を持つことを禁止されているのです。

 

先程、審神者が刀剣男士に恋することを禁止しているのに応援する刀もいる、と言いましたが刀剣男士の中には審神者との恋愛を悪く捉えていないモノもいるのです。

少女漫画が好きな乱藤四郎。

審神者が結婚して人妻になるなら身近な刀剣男士に嫁げば良いと思っている包丁藤四郎。

彼らは私の恋をこっそりと応援してくれていました。

それがとても嬉しかった事を覚えています。

 

わかっています。

好きになってはいけない。

思いを告げてはいけない。

わかっています。

 

これは、私の懺悔の物語。

もし、審神者が恋をしていると政府に気づかれたらどうなるでしょう?

どうなると思いますか?

禁止されている行為をしようとする者にも政府は慈悲深いのです。

本丸ごと解体する等はしません。戦力が無くなるからです。

勿論審神者や刀剣男士を処刑する等もしません。

審神者は特別な能力が必要なので誰にでもなれる職業ではないからです。

そして、刀剣男士は貴重な戦力なので刀解したりもしません。

拷問などの残酷な行為もしません。

 

それでは私はどうなるのでしょう。

私はこの本丸を去るか、貴方を他の本丸に譲渡するか。

どちらかを選ばなければならなくなりました。

新しい本丸を築くか他の本丸を譲り受けるかすればまた別の貴方に会えると思われそうですが、移動した本丸では貴方を顕現しても政府に譲渡するよう指示されます。

例え新しく顕現した貴方を隠しても政府には常に権限状況が把握されているのですぐに露見します。

なので二度と貴方に会うことはできないのです。

会えてもすぐに離される。

 

ええ、わかっています。見た目が同じでも私の愛した貴方ではないのだと。

 

だから私は決めました。

この本丸を去ることを。

 

どこにもいかず審神者を辞めることを。

 

もしも退職をするとなったら政府は一度は止めます。

それでも辞めると言うのなら、禁を一度は犯した者。受理されます。

 

審神者であった時の記憶はすべて抹消され代わりにずっと眠っていた事にされます。

 

愛した人の記憶は全部失うのです。

 

この幸せな感情を、この苦しい感情を置いて行くのです。

大好きな人。願わくばせめて私のことを少しでも覚えていてください。

すきにならなくていい。

愛してくれなくていい。

ただ私が貴方の主人であったことは覚えていて。

 

 

「!!…目が覚めた…?起きたの!?」

母が号泣していると妹が近くの看護師に声をかける。

「姉が!目を覚ましました!!」

どうやらずっと長い間眠っていたみたいだ。

なぜだろう。何か、大事なことを忘れている気がする。

涙が止まらない。

 

そうだ、あの人、あの人は誰だったんだろう。

確か…

思い出せない。すごくすごく辛くて苦い感情が込み上げてくる。なのに、少しだけ幸せな感情。

あの人は…二度と会えない人。

誰だろう…

あぁ…ずっと…愛しています。大好きです。

でも、さようなら。

さようなら大好きな大般若さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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