読切 五条悟の転生体
「すごーい! 悟、とっても早い!」
「それだけが取り柄だしね」
ドラゴンになった僕は、九尾の小狐の傑を口に入れて、優雅にお空の散歩をしていた。恐ろしいドラゴンの口も、傑にとってはちょっとジメジメした籠である。
その時、いきなり空中に黒い穴が開いて、僕らはそこに吸い込まれてしまった。
通り抜けた先は、マグルの街!
しかも、なんだアレ、呪霊!!?
びっくりしながらも、咄嗟に攻撃する。効いた!
とにかく物陰に逃げて、傑と共に人間の姿に戻った。
どうしよう。
僕達、杖を持っていない!
ほんのちょっと出るだけのつもりで、いや、平和ボケしてたんだ。
「悟。ここ、マグルの街だよね? 早く魔法界に帰らないと」
「そう、だな。早く帰んないと」
そうして、素手でも使える伝達魔法などを使ったのだが、残念ながらこちらに魔法界がない事が判明した。
「どうしよう、悟」
「傑。大丈夫。僕がなんとかするよ。マグルには知り合いがいるんだ」
「悟」
新聞を漁り、百鬼夜行の事件後ということを知る。
幸い、帷も張れるようだ。
傑を隠し、僕は記憶を頼りに映画館へと向かった。
ああ、警察と話して中に入っていく七海が見えた。
出てくる時に話しかける。
「七海、七海!」
「君は……? 五条さんにそっくりですね」
「僕、サトリって言うんだ。で、これはお手紙。じょーほーりょー一万円ちょうだい」
「……はぁ。五条さんの関係者ですか。わかりました。差し上げましょう」
「ありがとう。またお金に困ったらお手紙売りに来るね」
「ちょ、待ちなさい!」
手紙を開くと、今追っている呪霊の詳細と純平のこと、この後の流れが記されていた。
「未来視の能力者……?」
七海はすぐさま五条に確認する。
もちろん、五条悟に隠し子はいない。ええ。心当たりもありませんとも。
『気になるね。保護しておいて、七海』
そんな五条先生の指示を聞き、順平を保護し、事情を聞き、真人を追う。それと同時に、さとりくんの情報も聞き込みをした。
虎杖と野薔薇しか攻撃が効かないということで、急遽野薔薇出張である。
「五条先生にそっくりの子供ねー。本当に隠し子じゃないの?」
「あり得ますね」
そんな事を話しつつ、虎杖はふと廃墟を見上げる。
「なんか、ここ、変な感じする」
「この廃墟ですか?」
入っていくと、確かに電灯がチカチカしていた。
「傑。いい子だから落ち着いて。ほら、甘いチョコ食べて」
「悟……。私達、もうおうちに帰れないのかな。母上と父上に会いたいよ……っ」
その会話を聞いて、七海は飛び込んでいた。
レジ袋にはお菓子とお弁当。子供が二人。さとりと名乗った子供である。
「五条さん? 夏油さん! どういう事ですか?」
「七海っ近づいちゃだめだ!」
傑を後ろに庇い、悟が叫ぶ。
「傑は感情が昂っている時に人が近づいたらだめなんだ」
その言葉に、七海は足を止めた。
「五条さん……? 本人、ですよね。どうしたんですか、その姿は」
「あー。異世界に転生して何故か出戻っちゃったって言ったら信じる?」
「そんな馬鹿な。死因は」
「いやいや、呪術師だったらわかるでしょ。死体を乗っ取って操るタイプの奴がいてねー。僕にも情があったんだってね」
「それは……いつですか」
「今から一年以内? いや、過去変えたらどうなるかはわからないから迷ったし迷ってるんだけどね。でもやっぱり、東京壊滅は防いでた方がいいかなーって。実際、僕らこのままでも詰みだし、孤児院に行くことも考えたんだけど」
「っ さっさと頼りに来てください!」
「だって、僕ら非術師なんだよ。呪霊見えない。傑は記憶もないんだ。その上、異能で周囲を傷つけてしまう性質を持っていてね」
「だったら尚更です! その姿で放っておいてもらえるはずがないでしょう!」
「やっぱり?」
「当然です」
「えっ この子、五条先生なの?」
「先生っ まさか俺のせいで先生死んじゃうの……!?」
「いやー。さっきも言ったでしょ。僕の一番大切な人の死体を乗っ取られて、抵抗もできなくてね」
「先生……」
「取り敢えずその未来はぶち壊させていただきます。東京を壊滅されても困りますし。伊地知くんを……いえ、五条さんを呼んだ方がいいですね。傑さんの忘形見を発見したと言えば飛んでくるでしょう」
飛んできた。
「傑の隠し子!? って、はあああああ!? 僕との子!? そんな覚えないけど!?」
「違います。違いますよね?」
「違います」
「悟の父上? 私達、帰れる?」
「帰れないんだ、傑。帰る事は一旦諦めよう」
「そんな……」
傑はぐしぐしと涙を拭く。
「大丈夫だよ、傑。僕が守るから」
「悟の父上……」
五条悟は傑を抱き上げて、冷たい眼差しを悟くんへと向ける。
「で、お前誰。呪力が欠片も見当たらないけど、フィジカルギフテッドでもないね」
「それ、君の腕の中の傑くんも同じなんだけどね。僕らは異世界人だよ。僕ら、傑と二人で転生したんだ」
「転生? じゃあ、未来や僕の死因を知ってるって事?」
「死んだあたりの記憶は正直曖昧なんだ。ただ、捕まった時の事は覚えてる。全部教えるから、僕達の養育費出してくんない? 部屋の隅に置いて通信教育させてくれるだけでいいんだ。僕らの場合、異能の暴走を鑑みて学校は無理だからね。大人になったら暴走も収まるし、そしたら普通に就職するよ」
「無理でしょ。未来情報持ち。僕と傑そっくり。間違いなく狙われるね」
「父上が、迎えに来てくれるかも!」
「それは難しいと思うよ、傑。道具も何もかも置いた状態でこっちに来てしまったし」
「真希さんだって呪術師やってるじゃん。なんとかなんねーの、先生」
「そうよ、仮にも自分の未来でしょ? もっと大事にしなさいよ。っていうか、大丈夫よ。未来は変わるもの。五条先生死なないし。そうよね、先生」
「五条さんが守れないというのなら、私がどうにかします。安心してください、五条さん」
「七海……」
七海が悟くんを抱き上げる。
「軽いですね。ちゃんと食べてますか?」
「悟はお家でご飯があまりもらえてないんだ。ご両親の仲が良くなくて」
「とりあえずは食事ですね。お弁当もいいですが、これは後で私が頂きましょう。この辺りにリゾットの美味しいお店ってありましたっけ?」
「検索する!」
「傑はお腹空いてない?」
「私もちょっとお腹減ってる」
そうして、悟も加わり、食後の運動で真人はあっさり消えた。
未来情報を聞いて、さっくりメロンパンも倒せたのだが。
「そっかぁ。僕、早く死なないと傑と生まれ変われないのかぁ」
「五条先生!?」
「ふざけんな五条さん」
「ちょっと!不確定な未来より、今保護が必要な傑くんを見なさいよ!」
「確かに!!」
野薔薇ナイスアシストである。
「それで、悟くんはどちらに?」
「ん? 上層部から尋問受けてる」
七海は悟を回収に走った。
五条先生は生徒と七海からガチ目に怒られた。