情報の代価
夏休みは、ホグワーツが閉まってしまうので滞在ができない。
なので、ホテルに滞在することになっていたのだが、エマが家に誘ってくれたので、5人でエマの家に滞在する事となった。
今日は皆でロンドンにお出かけである。
5人一度に移動しようとしたのが悪かったのだろうか。
僕達は、廃墟に投げ出されていた。
「ここ、どこなのよ?」
「悟様……」
エマと稔が不安そうに声を上げる。
「とりあえず、外に出ようか」
「待て。何かいる」
傑の声に、子供達はぴくりと震える。
これは……いるな。だが見えない。呪霊? 馬鹿な。
「な、何がいるんだ?」
「皆、静かに。外に出よう」
僕はプロテゴを使って、全員に守りを付与する。なんだか子供が一人余計にいたので、その子も守りをかけておく。なんだか見たことがある子供だ。思い出せないが。
「行こう」
そうして、僕達はそろそろと廃墟の外へと向かった。
「おっと。ここは危ないぞ」
「日本語?」
「日本語だわ」
出会い頭にあったのは、虎杖悠仁だった。
どうやら、ここは僕の知っている場所だったようである。
彼は何かを殴るが、もちろん、僕の目には何も見えなかったのだった。
僕の頭の中に、過去の全てが過った。
傑はもう助けられない。悠仁が呪術師をしているということは、もう死んでいる。でも、七海は助かるかもしれない。
助けて、いいのだろうか。ここが過去だというのなら、未来は変わってしまうのではないか。今の、傑との毎日が。
「悟……そこに何かいるのかい?」
震える傑の声に我に返る。
「皆、いい子だから固まって。大丈夫。僕が守る」
「悟? 五条先生と同じ名前だ。大丈夫。じっとしててな」
悠仁の言葉に従い、僕達は大人しく一塊になった。
じっと待っていると、悠仁は戦いを終わらせる。
「皆、落ち着いて。大丈夫。使っちゃダメだよ。悠仁が守ってくれるからね」
「知ってるの?」
「うん……とてもいい子で、頼りになる子だよ、魔法は使っちゃダメだよ」
悠仁は、笑って話しかけてくる。
「もう大丈夫だからな。うわ、先生そっくり。もしかして先生の子供?」
【名前を同じにするか……? しかし、呪力は感じないが、そっくりだな。まあ呪術師の子が呪術師とは限らんか】
「口がついてるわ!」
「彼も魔法使いなのかい?」
エマとオリバーが声を上げる。
「僕の名前は五条悟。悠仁。ちょっと話したい事があるんだ。五条先生への報告は少し待ってもらえるかな?」
「終わった? 虎杖。あら、子供がいたのね」
「そんな事より、僕達お家に帰りたいんだけど? 貴方達は僕達のおうちを知ってますか?」
「オリバー」
「私はエマ・カートンよ! 早くお家に送ってちょうだい」
流石純血。周囲が自分を知っている前提である。
「エマ、オリバー。ここは日本みたいだ。ちょっと困ったことになったみたいだから、僕はこの人達と話さないといけない。安全な場所を用意してもらうから、いい子にしててもらえないかな」
「出たよ、大人ぶりっ子!」
「僕らだって同じ歳なんだから、ちゃんとお話聞くよ。いい子にだってできるんだから!」
傑がぷりぷりと怒る。
子供達から目を離すのも怖かった僕は、諦めた。
「ごめん。近くの店で話せないかな。あと、僕ら今、お金持ってないから、奢ってくれる?」
「先生だったら、ビルの前で待ってるよ。恵と一緒に」
「あの日かぁ」
どうりで子供に見覚えがあった気がしたわけである。
僕は諦めて、肩をガックリと落とした。
「せんせー! せんせーの子供達保護した!」
「「はあ!?」」
僕は持ち上げられて、トロフィーのように掲げられたのだった。
とりあえず、混じってた子供を送る。
その後、食事に行く事になった。
「せっかくの歓迎会にごめんね?」
記憶に変更がないかビクビクしながら謝る。
話している間にどんどん記憶が書き変わったらどうしようかと思ったが、その兆候はなかった。
「よく知ってるね」
「早速だけど、僕達困ってるんだ。助けて欲しいかな。お礼は……」
僕は、戸惑いつつも、勇気を出していった。
「情報で、どうかな。僕達を助けてくれたなら、それに値する情報をあげる」
「情報ねぇ。いいよ」
そういう僕の目線の先には、傑がいた。
ということで、僕らはファミリーレストランに連れて行かれた。
「なんでも好きなものを頼みなよ」
「じゃあパフェ」
「何を頼めばいいの? わからないわ。私もそのパフェでいい」
「私はそばで」
「僕もパフェにしようかなぁ」
「悟様がパフェなら、私もパフェで」
「すみません、お子様ランチ4つとそばとミニパフェ5つください」
「はーい」
「実は僕、生まれ変わったんだ。名前も姿もそのままで、異世界に。いや、異世界の僕が、この世界の五条悟の記憶をインストールしてしまったのかな。そのままイギリスに留学して、記憶のない傑と会って、あー、この子達と一緒にいる時に、何故か元の世界のそれも過去に戻ってきちゃったってわけ。今の僕は呪術師じゃないから、呪霊は見えないし呪力も使えない」
「呪霊って何?」
「悪いゴーストみたいなもので、人には見えないんだよ。それで、この人たちはそれを見ることも攻撃する事もできる。すごく特殊な人たちなんだ」
「ふーん」
「とにかく、今の僕は無力だから、元の世界に帰れるのか試して、無理だったら5人でなんとか生活できるようにしてほしい。その後、戻る方法を5人で考えるから。その代価は、未来情報でいいかな? ここでは話せないけど」
「なんだか信じがたいね。二人が僕と傑のクローンだって言われたほうがまだ生合成が取れるかな。ただ、今の君達には呪力を感じない。清々しいほど全くないよ。でもフィジカルギフテッドって感じじゃない。まあ、その未来情報とやらは呪専に帰ってからしっかり聞かせてもらおうかな」
「呪専かぁ」
「何? 不都合ある?」
「いや。僕が覚悟できてないだけだよ。過去に干渉する覚悟がね。それに呪力ないとこの世界では色々苦労するでしょ? 特に僕の転生体ってなるとね。僕、誰かを守るの苦手だし」
「そこは任せて!」
「なあなあ! 未来ってどんな!?」
「とりあえず、渋谷が更地になるかな。今年のハロウィン」
「まじかー」
「頑張って防いでね」
「つまり、どういう事?」
エマが小首を傾げる。
「僕がリークした情報の代価で、南硫黄島に行けるってこと」
「南硫黄島?」
「僕達の世界では、そこに学校があるんだよ。そこ行ってみて何もないなら、途方に暮れるしかないね」
「既に途方にくれそうな予感がするわ……」
野薔薇の言葉に、僕は同意を示すわけにもいかず、黙り込んだ。