五条悟は帰りたい   作:かりん2022

2 / 28
読切2 年の差

「悠仁!」

 

 呼ばれた方向にいたのは、五条先生だった。魔女のコスプレをして、トランクを抱えた子供。

 

「五条先生? なんか、小さくなる術式とかあるの?」

「いや? なんか顔も名前も同じで並行世界に転生しちゃったんだよね」

「転生? ごっ 五条先生死んだってこと?」

「今年のクリスマスイブ。前世の記憶ははっきり覚えてるわけじゃないけど、傑と命日が同じだなって思った記憶があるから、多分確か」

【ほう。そんなに早く俺は復活するか。それにしても並行世界か。確かに残穢がないな】

「死因……もしかしなくても、俺、なの?」

「僕のミス。親友の体を乗っ取られてね。それはいいんだ。もう終わったことだから。いつでも元の世界には戻れるんだけどね。7月8月は居場所がないから、こっちの世界に滞在していこうと思って」

「居場所がないって……」

「ちょっと複雑な家に生まれてね。このトランクは空間圧縮を掛けてあってね。生活空間もあるから、この中に隠れてれば良いんだけど。安全な場所に二ヶ月預けて欲しいんだけど、頼めるかな? それで8月31日の朝にトランクを開けて貰えば、それでいいから。一応、こっちのお金はないけど、金貨なら」

「いや、いいよ! 先生、家庭環境悪いんだろ。もらえねーよ」

 

 そして、小さな五条先生を見る。

 服のデザインが違うのは並行世界だからでいい。しかし、服のサイズは合ってないし、首のあたりに痣があるし、どうみても事案である。

 

「先生、未来わかるんならさ。先生が死ぬの、止めらんねーの……? そんなに宿儺強い?」

「や、親友の死体が盗まれてるの一言で終わるんだけどね? 過去を変えるとどうなるかわからないし、僕にとってはもう終わった事だからね。僕は精一杯頑張って生きたし、それに……一才ちがいだったんだ」

「一才違い?」

「親友と。僕の親友は、去年亡くなっていてね。僕が死ぬの遅れたら、ますます年齢離れちゃう。だから悠仁。クリスマスイブに僕が死ぬのは内緒だよ?」

「先生……」

 

 その時、五条のお腹がくぅとなった。

 

「食べながら話そうぜ、先生。たまには奢らせてよ」

「ありがとう、悠仁。僕のいた場所イギリスだから、日本食は正直嬉しい」

 

 食事を食べるのを見守りながら、虎杖は問う。

 

「伏黒は? 釘崎は、未来ではどうなん? 俺は?」

「そう、だね。記憶を消させて貰ってもいいなら……いや。やっぱり忘却呪文を人に撃つのは嫌だな。でもまあ、あまり楽しい未来ではないよ。東京壊滅するし」

「……せんせぇは、俺らと、生きたくなかった……?」

「そういうわけではないよ。ただ、そうだね。僕は、かつて最強だった人の記憶を持った全くの別人に過ぎないから。……それでも、今、学校で、親友と過ごすのがとても楽しいんだ。だから、現状を変えようとは思わないかな。ごめんね、なのに声を掛けて頼ってしまって。悠仁を見た時、とても嬉しくてね」

 

 先生は、穏やかに笑う。俺の胸はぎゅうっと締め付けられた。

 

 その時、伏黒と釘崎が入ってくるのが目に入った。

 俺は全力で助けを求めてから目を逸らした。

 

「五条先生、今の先生、子供だろ。俺でも力になれるかもしれないし、色々話してよ。やっぱりダメだってなったら、俺に忘却呪文撃っていいからさ。それとも、俺のこと信じられない? 五条先生」

「悠仁……」

「今年のクリスマスに死んじゃこととか、未来の事とかじゃなくていいよ。今の先生の事とか、聞きたい」

「あんまり気持ちのいい話じゃないよ」

「話聞いてもらうだけでも楽になるかもだし!」

「僕のお母さん、マグル……非魔法使いの事をそう言うんだけど、マグルでね。母さんに、惚れ薬と忘却呪文を使って子どもを作ったクソ野郎が僕の父さん」

「わ、わぁ……」

「僕、もう呪術師じゃないし、まだ子供だろう? 抵抗するにも力がなくてね。それに、マグルに惚れ薬を盛ったりしても、魔法族は罪には問われないし。そう考えると、呪術界は非術師に術式を使うのを禁じてるんだからまだ健全だよね」

「どうにかできねーの?」

「魔法族が魔法族を傷つけたらそれは罪になるからね。法を破らずにってのは無理かな。それに、今はあいつの方が強いしね。僕、母さんにそっくりだから、これ以上成長するとそっちの面でもちょっと心配でさぁ。本当はちゃんと帰って母さんを守るべきなんだけど、ほんと情けないよね」

「そんなことねぇよ! 自分の身を守るの大事だし! なあそれ、非魔法族が魔法族を倒すのは罪?」

「そんな罪はないね。あり得ないとされているから」

「で、いつでも行き来できるんだよな?」

「そうだね」

「じゃあ、俺が五条先生の親父をぶっ倒す! だめかな」

 

 きょとんとした五条先生は、笑った。

 

「悠仁。ありがとう、とても嬉しい。でも、今度は呪術規定に引っかかっちゃうよ。でも、気持ちだけ貰っておくよ」

「でも、じゃあ、何かできることねぇの?」

「夏休みの間だけ匿ってもらえれば十分。学校は寮生だしね」

「魔法使いの学校ってどんな?」

「そうだね。楽しいと言うより、戸惑うことが多いかな。色々常識が違ってね。日本のマグル、ついでに呪術師としての常識が記憶と一緒に僕に染み付いてるわけだから、中々溶け込めないかな。例えば、舌が溶ける飴とか、普通にイタズラグッズで流通してるんだよ? 食べられないよ」

「うえー! 大変じゃん」

「正直食事が怖いよ。何入ってるかわからないし。そもそも母さんが惚れ薬盛られて僕ができたワケだし」

「先生、大変そう。なぁ、もう一度聞くけど、そんな未来の方が、俺たちより大事? 長生きしてさ、俺と伏黒と釘崎と、他にも先生の知ってる人と、思い出いっぱい作れねぇ?」

「僕、元から社畜だったからねぇ。長生きしても、仕事の時間が増えるだけかな。……悠仁達といるのは楽しかったけどね」

「先生……」

 

 それから、学校や魔法使いの事を色々と話した。

 大変な種族らしく、愚痴の割合が多かった。杖を奪われると割と無力と知れたのは朗報だった。

 食事が終わり、ファミレスを出る。

 

 そこへ、ローブ姿の男が現れた。

 

「探したぞ、悟……!」

「父さん……!」

 

 伸ばされる手。咄嗟に、悟は悠仁を庇おうとする。

 そして、その男は背後からぶん殴られた。その際杖も奪われる。

 

「恵! 野薔薇! どうして」

「とりあえず、性的虐待野郎は処しておくとして」

「五条さん、そういうのは大人に相談すべきだと思います」

 

 すぐに車が近づいてきて止まり、男は車に詰め込まれ、悟も乗せられた。

 釘崎と伏黒が伊地知さんと五条先生に連絡をしてくれていたのだろう。 

 

「伊地知? 過去の僕!?」

「未来の僕には僕の言い分があるんだろうけどね。今を生きる僕としては、やっぱり選択肢は欲しいかな」

「五条さん、選択肢なんてないですよ。迷わず生きるほうを選んでください」

「その人と、それだけ親しい親友だったんでしょ? 多少年の差広がっても、友達になれるわよ」

 

 そういうわけで、悟は保護されたのだった。

 

「ってことで、未来の事話して欲しいなー♡」

「僕は……ごめん。何も話せないよ」

「……事が東京壊滅となれば、問答無用で尋問されるけど」

「……」

 

 きゅっと口を閉じる悟。

 そして、尋問が始まった。

 

 悟が傷つけられたその瞬間、現れたのは小さな夏油傑!

 

「悟!? ここは、呪専!? くそっ」

「やあ、傑?」

「誰であろうと、大事な後輩を傷つける奴は許さない!」

「傑、どうして」

「悟、私、君には私が関係ない所で幸せになってほしかったんだ。だって、君にいっぱい迷惑を掛けた私が、どんな顔をして君と友達って言うっていうんだ。だから、私、裏から悟のこと手助けできないかって」

「知ってた。知ってたけど、僕は、悟って呼んで、一緒にいてくれた方がずっと嬉しかったよ」

「悟……」

 

「はいはい、感動的な所悪いけど、杖は没収させてもらうよ」

「あっ」

「ねぇ傑。傑も、僕に早く死んで欲しいって思ってる? 今年のクリスマスに死ぬらしいんだけど、僕」

「悟……それで私と一歳違いなのか……。ねぇ、悟。もっと長生きしてよ。私が大人になった頃に生まれてきてよ」

「傑、もう僕と友達でいたくない?」

「違うよ! 違う、私は、君が生まれた時に駆けつけて、守りたいんだよ!」

「傑」

「たった一歳違いじゃ、君に何にもしてあげられない。だから、私に君を探させてよ。守らせてよ。お願い、悟」

「そんな事言って、傑がおじいちゃんの時に生まれてくるかも」

「魔法族は長生きだから、大丈夫だよ。忘れたの? どうしても寿命が足りないようなら賢者の石でも作るよ」

「傑」

「悟」

 

 二人は抱き合って涙を流す。

 とても感動的な光景である。

 

「……悟くん。未来の僕。じゃ、話してもらえるかな」

 

 悟は、コックリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 

 

 

 

 

 

 

 メロンパン討伐RTAのお時間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メロンパンと漏瑚を討伐した時、小さい悟と小さな傑に変化が訪れた。

 

 悟が健康的ながっしりとした体となり、傑がすくすくと大きくなったのだ。

 

「おおっ 未来変わった!?」

「やったな!」

「やったわ!」

 

 一年生達が歓声を上げる。

 

「傑」

「悟。約束を守ってくれてありがとう。私も約束を守ったよ。ところで、魔法族はやはり性に合わなくてね。こちらの世界に居候しようと思うんだ」

 

 大きくなった傑は、かつての傑にそっくりで。五条先生は、傑の手を取った。

 

 

 親友争奪戦の始まりの鐘が鳴る。

 

 

 




感想や配信へのご来場ありがとうございます。

この作品ではないですが、追加の誤字報告、ありがとうございます。

マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
返信不要の場合は返信不要と書いておいてください。

https://odaibako.net/u/karin2022v
リクエスト、返信不要の匿名感想はこちらにお願いします。

そろそろここ好きや感想が欲しいです><
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。