『悟、宿題は済んだ? 終わらせないと退学させられちゃうよ。この際、近しい人に魔法を見られるのは仕方ないってさ。申請もしてあるよ』
「だそうだけど、宿題終わった?」
「まだ」
「あら、意外。早く終わらせちゃいなさいな」
「だって……。俺、退学になっちゃうかも、なんとかなる気がしない」
ラルゥの言葉に、しょんぼりする悟。
「あら、本当に意外。そんなに難しいの?」
「ボガート退治なんだけど」
「ボガート?」
「近くにいる奴の思考を読んで、そいつの一番恐れるものに化ける妖精」
「あら、怖い」
「退治方法は恐怖に打ち勝つ、とかかい?」
こくりと悟は頷いた。
「リディクラスって魔法をかけて、怖いものを笑えるものに変えて、心の底から嘲笑すればボガートは退治できるんだけど。例えば、怖い奴だったら女装させたりとか」
「随分と趣味の悪い敵に趣味の悪い魔法に趣味の悪い退治法だね。できないの?」
「……泣いちゃう」
子供らしい表情に微笑ましい空気が流れる。
「退治するの見たい!」
「泣かされるの見たい!」
「最強も生まれ変わればただのこどもですね」
「そうだよ。元々魔法使いって、種族的に倫理思考できないんだよ。六眼あった前とは真逆」
「おや、そうなのかい?」
「出なきゃ今時フクロウ便なんて使ってないって。いまだに中世レベルのが多いんだ」
「へぇ。でも、宿題はちゃんとしな。皆は出来るんだろ?」
「もう半分がクリアしたって」
「じゃあ、悟も頑張りな。私が見ててあげるから」
「ん、傑がいるなら頑張る。でも傑意外に怖いもの見られるの嫌だ」
「私達も貴方が魔法使いで五条悟の転生体って証拠が見たいわ。今の所フクロウ便だけだし」
その言葉に、悟はしばし考える。
「過去の俺のこと、この事で虐めない?」
「いじめないよ。ね、皆」
そうして、傑の家族総出で見学をする事になったのだった。
「すぐそばにいろよ、傑。でもボガートからちゃんと距離をとって」
「わかったよ」
そうして、ボガートを小瓶から出した。
それは、小さな少年の形を取った。
【悟。君はさ。結局、私と私の前世のどっちを見ているの?】
「す、傑……」
【ちゃんと今の私のこと見てる? 前世の記憶なかったら、私なんて見てなかったんじゃない? イタズラにも付き合ってくれないしさ】
「違う、違うよ、傑!」
【何が違うの?】
突如始まった可愛らしい昼ドラに傑は頭を抑え、ラルゥは笑いを抑えきれない。
「……これは私を揶揄っているのかい?」
「リディクラスダゾ、五条悟!」
「そ、そうだ。女装! とりあえず女装、この傑は偽物、リディクラス!」
そして、傑はウェディングドレスへと変じた。可愛い。輝いている。
【私、つまんない悟より、ロックハート様のお嫁さんになるから】
「すぐるぅぅぅ!!! リ、リディクラ、リディ、う、うわ、ああああ」
泣きそうになりながら、悟は傑に振り向いた。
「私を頼らない! っていうかこの試験の内容で私頼ったらズルだよね」
キッパリとした傑の言葉に、悟の顔が絶望に染まった。
「誰ナンダ、ロックハート様!」
必死に笑いを堪える家族たち。
真奈美はしっかりビデオを回している。最強の弱みゲットだぜ。
そして、小さな気配が背後に。気づいてはいたのだが、目の前の事があまりに衝撃的すぎて気にならなかった。
「悟? 悟が怖いの私なの?」
ちょこんとした小さな夏油傑は、杖を持って前に出る。
その背後には美々子と菜々子。手には黒鷹を抱っこしている。
そう、傑は体重を軽くする呪文をかけてもらい、黒鷹にぶら下がってきたのだ。
大冒険である。
「いいかい悟、私はロックハート先生のお嫁さんにはならないよ。……君のお嫁さんにもね」
そうして傑が前に出ると、ボガートの姿が変わった。それは二人の男だった。脳みそを丸出しにした夏油傑と、箱に囚われる五条悟。
【私は脳みそを入れ替えることで体と術式を奪えるんだよ。千年後の世界でまた会おう。お休み悟】
「リディクラス! 馬鹿馬鹿しい!」
それはなんの変哲もないびっくり箱になってカタンと落ちる。
「す、傑。生まれ変わる前のこと、覚えてるの!?」
「んー? 全然。これ、多分私の過去なんだよね? よくわかんないや。最初はびっくりして怖かったけど。あれ? なんでまだ脳みそくり抜かれてないの、過去の私?」
「夏油様! ど、どいうことなんですか!?」
その時、利久が飛び出して、ボガートが変化した。
それは凶悪な呪霊へと転じる。
「不味い!」
「わっ」
「プロテゴ!」
傑を魔法で守る悟、悟と傑を保護して下がらせる私。
攻撃は効かず、ボガートは素早い呪霊に化けて逃げていった。
「……いや、参ったね」
「どうしよう、マグル界にあんなの放ったら大変なことに」
「これって俺のせい?」
魔法使い二人が顔色を悪くする。
夏油は子供二人を抱きしめた。
「心配はいらないよ。私がなんとかするからさ。利久も、びっくりしたね。大丈夫だよ」
「傑! 僕の子供を保護してるって一体どういう事だよ!?」
突如として空間を渡ってきた五条悟は、親鳥のように子供二人を抱きしめる夏油傑を見て固まった。
「……に、認知します」
「いいかい悟、男同士で子供は出来ないんだよ? それにね悟、私は、将来可愛いお嫁さんをもらうんだよ」
小さい傑が大きな悟に言い聞かせる。もうめちゃくちゃだった。
ミゲルは笑いすぎて死にかけるのだった。
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