傑とマグル?
オリバーに言われてしまった。
「また行方不明になったなんて。君は呪われてるの……?」
「かもね」
本当に、どんな呪いだろう。どうやって解けるのかもわからない。
冬休みが終わり、僕の成績に初めてDがついた。悲しい。言うまでもなくボガート退治だ。
まあでも、合格できたのだからマシだろう。退学は免れたのだ。
それにしても、懐かしい彼の地に引っ張り込まれてしまう事象はどうしたものか。
いつどうなってもいいように、必要な物を持ち歩くようにした方がいいかもしれない。
魔法のトランクは普段持ち歩くには少し大きいのだが、背に腹はかえられない。
それに、梟は異世界とも言うべき場所に出入りできるというのは朗報だった。
持ち歩く物を考えつつ、準備をする。
蛙チョコをグイグイとトランクに詰め込む傑を宥めながら、夏休みに遊びに誘う。
蛙チョコ入れすぎたら他のもの入れる場所がなくなるからね? ごめんね傑。
「いいよ、悟のお父さん達、すっごくいい人だったし! でも、なんだか遊びに連れてってもらってばかりで悪い気もするね」
「助けに来てくれたじゃん」
「覚えてないけど」
「でも、僕がちゃあんと日記に書いてた。ロックハート先生の証明書にも書いてある。助けてくれてありがとう、傑。でもフクロウに捕まって移動とか危ないからもうやめてね」
あの後、ロックハート先生も恩人だなんだと五月蝿いが、まあ許容範囲だろう。
それから、僕達は頭を悩ませ……かなり悩ませ……取る授業を決めた。
三年生からは選択授業があるのだ。
夏休みには、転移呪文は危ないということで、マグルの飛行機を使って日本の実家に移動した。
実は、ワールドクィディッチが日本であるというのだ。
それで、オリバー達も誘った。
日本フリークのオリバーとクィディッチが好きなエマ、久々に冬休みに日本食が食べれてご満悦だった傑は大喜びだ。
久々に帰宅できる稔も。
爆弾をボールにするクォドポットよりはまあクィディッチは平和的なスポーツなので、皆が喜ぶ様を見るのも悪くはない。
飛ぶのも勿論大人なので、ハラハラしないで済む。
後は、シーカーの頑張りを祈るだけである。なるべく早く終わってくれ。
やっぱりクィディッチは苦手である。
じゃあ魔法界のどの娯楽が好きなんだって言われるととても困るのだが。
飛行機の中で、イギリスのワールドカップの報告書を見る。
目が死んだ。
ワールドカップの差配は僕の家がすることになっていたので、父にイギリスの資料を頼まれていたのだが、ゴミ箱に捨てておいた方がいいレベルである。
伊地知が恋しい。強烈に恋しい。
家に帰って一応計画を確認してみたら、ゴミクズの計画だったので、棄却して運営を乗っ取る。イギリスの報告書? 知らないね。
心苦しいが、心を操る魔法を使うことは避けられない。
それでも、とにかく被害が最小限に済むようにしないと。
ごめんね傑、皆。
子供達をマグル世界に放つのはとても不安を感じたので、ひたすら仕事を手伝わせた。なお、皆、喜んでくれていた模様。とてもありがたい。
現代日本で、かつてイギリスであったワールドカップみたいなオブビリエイト無双をされちゃ困るのである。
ボロ雑巾のようになって仕事をする。
夏休みは宿題がなくてよかった。本当に良かった。
そして伊地知を再評価した。
ありがとう伊地知ありがとう。
感受性の高い傑はトヨハシ・テングチームが負けて箒を焼いていたのをみてショックを受けて泣いてしまったので、それを慰めていたところで、父上のところに急報が入った。オブスキュラス発生の危機ということである。
傑がまた、マグルに対して怯えてしまうかもしれない。
僕の顔が引き締まった。
「兄上、傑達をお願いできますか? マグルの悪い所は、傑には見せたくない。父上、僕も向かわせてください。仮にも子供を守る教師の生まれ変わりです」
「任された」
「いいだろう」
そうして、僕は父上について行って魔法使いの保護に向かった。
ありがたいことに、魔法使いはすぐわかった。品の良いマンションの、荒果てた室内で、両親は錯乱していた。
「無理だ! 無理なんだ! こんな化け物愛せるものか!!」
「怖いのよ、だって、急に不思議な事や怖い事が起こるのよ!?」
ご両親の不満を辛抱強く聞き、預かる事を約束する。
将来、会っても会わなくてもいい。ただ、この子はこの子に相応しい世界で真っ当に育てると誠意を持って約束する。
とても特殊な環境だった。
子供は3人。オブスキュラスになりかけの11歳の魔法族。1歳の魔法族。そして、小さな普通の赤ちゃん。
始祖が二人も生まれるとは! それに、この環境で0歳の普通の赤ちゃんを守るのは大変だ。ご両親が苦しまれるのもわかる。
ご両親に頭を下げ続け、宥め、最後にはわかってもらえた。
やっぱり伊地知がいてくれたら、と思う。本当にこういう時、伊地知がいてくれたらありがたかった。でも今はいないのだから、伊地知の分も僕が頑張らねばならない。
子供を預かりドアを出ると、傑達が気まずげに立っていた。
「傑!」
「……悟。話は聞いてたよ」
「傑。僕は、マグルは」
「大丈夫。悟。ねぇ、翔くん、守くん。私は傑。お父さんだよ!」
「お母さんよ!」
「お父さんだよ」
「お父さんです!」
そして、何故か僕はホグワーツで幼児二人を育てることとなっていた。
屋敷しもべ妖精が手伝ってくれるが……。
校長先生! 許可出さないでほしかったな! そりゃ責任持って預かりますと言ったけどさぁ! 僕が育てる事になる!?
なるかぁ。
三学年が始まった日。
僕は魔法使いから見たマグルを知りたくてマグル学を取っていたが、傑とオリバー、エマと仲間外れを嫌った稔も、マグル学を取ったのだった。
傑がまたマグルは猿なんて言い出すと思うと、気が気ではない。
そして、僕が心配する通り、傑は表情を暗くしていった。
寮では一緒の部屋なので、僕は傑に話しかける。
「傑。僕、将来魔法大臣になるよ」
「悟……?」
「将来、傑が笑って暮らせるように。僕、頑張るよ」
「悟」
傑は、驚いたように僕を見た。
「私が悩んでたの、知ってたの?」
「まぁね」
「だけど、悟。悟に魔法大臣はできないよ」
「何故?」
「悟は、魔法族のこと、嫌いだし見下してるもん」
僕はそのことに胸を打たれる。
「……僕は。魔法族を愛しているよ」
「嘘つき」
そんな、少しギクシャクしてしまった僕達を心配し、エマ達がホグズミードに送り出してくれた。
子供の世話があるので、ホグズミードには順番に遊びに行く予定である。
ホグズミードでイタズラ店などを見てまわり、翔と守へもお土産を買う。
そろそろ帰ろうかというところで、傑が本を渡してきた。高度な魔法の書かれた本だ。
「破れぬ誓いって言うんだ。お互いに殺せなくなる。私、君を殺さないって誓うよ。その為に、この誓いを結ぼう」
「だめだよ」
「なんで? 私はっ」
「僕が傑を殺せなくなるから」
「っ」
「傑を殺していいのは僕だけだから。だからダメだよ」
「悟」
最低なことを言っているとはわかっている。でも、それを正直に話すのは、精一杯の誠意だった。
「その誓いは結べないけど、僕は僕以外の全てから傑を守るって約束するよ」
傑は、ぎゅうっと抱きしめてきた。
「それは……それは、私が夏油傑の生まれ変わりだから?」
恐ろしいボガートの問い、再びである。
「傑」
「そして君が、五条悟の生まれ変わりだから?」
傑は泣いていた。
「君はマグルの五条悟じゃないし、私はマグルの夏油傑じゃない。魔法使いだ。もう生まれ変わっているんだよ。私は……私は、ダメだ、私は君を責める資格なんてないのに。他の誰も責める資格なんてないのに」
「あるよ」
「ないよ」
傑が、何を望み、何を悩んでいるのか、さっぱりわからなかった。
「傑。僕は、その。助けられる準備ができてる人しか助けられない」
「うん」
「今度は、ちゃんと準備をしてよ、傑」
「私は、悟が助けるに値する者じゃない」
そうして、傑は僕を突き飛ばして逃げてしまった。
僕は凹んだ。
しかし、傑には痛いところばかり突かれてしまった。
やっぱり、僕は魔法大臣、それがダメならマグル関係の仕事について、少しでも軋轢を減らしたい。
「校長に、アニメーガスについて習わなきゃなぁ」
潜入にはやっぱりアニメーガスだ。
コガネムシがベスト、ネズミがベター。それがダメでも黒猫、犬、蛇でも我慢。烏……は冥冥さんに操られちゃうか。だったらフクロウとか?
僕は、自分の変身した姿に想いを馳せながら、トボトボと一人、帰路についた。
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マシュマロ
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