守が泣き出して、物が浮き出した。
「まーもーる。起きた? 今日も元気だね」
「僕も起きた」
「翔。おはよ」
「悟パパ、傑パパ、おはよ」
守をあやし、起きてきた翔をぎゅっとして、優しく朝食にしよう、と声を掛ける。
傑も、と振り返ったらいなかった。代わりに伊地知がオロオロしてた。ウッソだろ。
「ご、五条さん。傑さんは恐らく大丈夫ですよ。食事にしましょう」
「……うん」
子供達を食べさせて、トランクに入っていたロックハートの著書を取り出す。
「ご本読もうか」
そこで、七海が入ってくる。
「五条さん。上層部が呼んでいます」
「はぁ。子供達は?」
「わ、私が見させていただきます」
「何かあったらすぐ呼んで」
上層部の不愉快な尋問を受けている最中、伊地知から呼び出しを受ける。
正直助かった。膨らんだ伊地知を魔法でもどし、守を落ち着かせる。
伊地知に遅い昼食、もう夕食か、を頼んだ。
「守。落ち着いて。伊地知がご飯を用意してくれるよ」
「しゃとゆ」
「そう、悟だよ、いい子だね」
「悟パパ、お話長かったね」
「そうだよ、まいっちゃったね。大人しく待てていい子だね」
「うん、僕、伊地知といっぱい魔法の練習したんだよ」
「……へぇ。そう」
「ヒィィッ」
自慢そうに言う翔に、じろりと伊地知を見る。
「……すぐ帰るって言ってるのにな。探って何の意味があるんだっつーの」
「気になるのは気になりますよ。何事もなく帰れるなど、五条さんも思ってなかったのでは?」
七海の言葉に、頭を掻く。
「そうは言っても、君は助けておきたかったしさぁ? だから、過去の僕にこっそり接触したかったんだけど。傑。まだ戻んないの?」
「……未来情報については礼を言っておきます。五条さんですが、夏油さんは当分離さないのでは」
「今の傑、なんだか悩んでいるみたいでさぁ。前世の二の舞なんて嫌だから、非魔法使いとあまり接触させたくないんだよね。早く返すように伝えてくんない?」
「伝えておきましょう。魔法使いは携帯は持たないのですか?」
「魔力が電子機器と相性悪いんだよね」
「五条さんも魔法を使えるのですよね。見せていただいても?」
「それぐらいはいいけど」
その後、魔法を見せたり本を読んだり、翔に英語を教えたりして過ごした。
夕食の時、ようやく傑に会えた。
「悟……!」
「傑、大丈夫!?」
「君が、私を背負う事なんて全然ない!」
「あ、ごめん。傑。前世の記憶思い出しちゃった」
「はああああああ!?」
僕は思わず杖を振ったが、傑が過去の五条悟の前に体を投げ出したので無理になった。
「私のことで、喧嘩しないでよ……! 私は、記憶を思い出してよかったって思ってる」
「僕は全然よくないと思ってる。傑。前世の重荷なんか、傑が背負う必要はないんだ。君はもう生まれ変わったんだから」
「悟もそうだろ」
「そうだよ。だから、僕は自分の道を……」
「嘘つき。私の為私の為私の為。君からそれ以外聞いた覚えがない」
「傑。それは違う。僕は、僕の為にしてるんだ」
「何より!!! 君だけ記憶持ってるなんてずるいよ!! 私の事、内心ですっごく見下してただろ!」
「そんな事はない!」
「じゃあ、私が風邪ひいて薬を飲むの嫌がった時、薬を仕込んだスコーンを通り道に浮かせたのは何なんだよ! あれ悟だろ!」
「だって実際食べただろ! 道端に落としてたら流石に汚いだろうし目につかないだろうし」
「食べたよ、魔法族だもん! 悟ばっかり頭魔法族じゃないのずるい!」
「僕も頭は魔法族だよ、ボガート退治の時見てただろ? 目の前で傑に変身されて偽物ってわかってるのに問い詰められて泣きじゃくるなんて、過去の僕だったら絶対ないし。ある意味、自分が馬鹿になったって毎日突きつけられるの苦痛なんだよ?」
「でもだって、私、私、悟が元マグルなのに偉そうに間違った知識を教えたり!」
「だってそういう時の傑、超可愛いじゃん(仕方ねーだろ、小さい時にマグル界から引き離されるんだから)」
「可愛いじゃんじゃないんだよ! 以前は対等だったはずの相手に猫可愛がりされる身にもなれ!」
「し、しまった。本音と建前が……」
「大体、以前君、そんなんじゃなかったろ! わた、私のせいで、あんな別れ方だったから君が気に病んで、その記憶に来世の君の人格が押し潰されて……わ、私の事なんて忘れて私の知らない所で幸せになれよ」
「傑、俺の事、キライ……?」
「すごく好き! 好きだよ!! 泣くなよ! 君こそ、前世の私と全然違う私なんて」
「そうだな。過去の傑は惚れ薬入ったカップケーキを躊躇なく口に入れたりする食いしん坊ではなんかった。軽率に食わせたりもしなかった」
「あああああ!! 忘れて? 忘れてよそれは!」
「そういう天真爛漫で、俺の分も魔法使いの来世を楽しんでくれてるような傑が好きだよ」
「わあああああああああ。それって馬鹿にしてるだろ!」
「そんな事ないって。でもその、傑。ここみんな居るし、あとで二人で話さないか?」
ハッとして傑が周囲を見る。
かああああああっと顔が赤くなった。
「いや、僕は大丈夫。続けて?」
「浮いたスコーンを通り道に設置……発想も発想ですが引っかかる方も引っかかる方ですね」
「つまり、魔法族の子に薬を盛りたければお菓子を吊るしておけと……」
悟、七海、伊地知の言葉である。
ダッと逃げかけた傑を抱えて、五条悟は無情にも言った。
「今日は皆で夕食しようってことになったから、傑もちゃんと参加してね」
「わあああああああ」
「傑、さっさと食べて二人で話そうぜ」
「ところで、杖って取り上げていい? 武器だろそれ」
「これがないと僕ら何も出来ないから駄目。情報量もまだもらってないんだし」
「確かにね。魔法抜きだと見ることも出来ないとなると、杖がないと無力になりすぎるかな」
そうして食事を始めたんだけど。
過去の五条悟は、傑にはいあーんで食べさせるのをやめろ。それは僕の役目なんだよ!
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マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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