果てしない海、フロラルドにはそこまで縁のないものであり、空を見渡すのとは別の魅力がある。
フロートアイランズ近辺らしいが、港のエリアでも水中資源の採掘を盛んに行っているらしい。船に勝手に乗り込んで、港を一瞥。
コンテナたちが並び、クレーンが動き回り。ポップスターからどれだけ取りつくす気か。恐ろく思いつつも、その技術や力に心を躍らせる面もあった。
「ここまでなのね?」
船を運転するワドルディが頷く。下っ端も下っ端なようで、タランザを見ても特に敵ととらえる様子はなかった。
「じゃ、元気で」
ワドルディののんきさには助けられる。橋の上でブリッパーの大ジャンプをかわしつつ駆け抜け。その先で、インベードアーマーが眠り込んでいた。
「力、借りるのねっ!」
ワクワクしながら乗り込み。タランザモードへ変化。続く長い道をどうしようかと見る。続いて見るのはアーマーの手のひら。そうだ、糸があれば!
放った糸はしっかり鉄骨をとらえ、スイング、スイング! 爽やかに、港の大冒険が始まる。こんなヒーロー居たっけなんて思いながら、奥の道と糸で行き来。柄にもなく、「いえーい」なんて叫びながら、タランザ、優雅に進んだ。
コンテナの上に飛び移り、すぐさままた糸でぶら下がり。8トン強の巨体をつるしてもびくともしない鉄骨に感心しつつ、体当たりで敵をなぎ倒しながら進む。
ご苦労にも荷物の運搬をするブロントバートを尻目に、移動。
「さすがに狙ってくるよねえ」
橋の上をスイングで移動しつつ、フロッツォボーグやママンティの突進。それを、糸を縫うようにかわし。
フロッツォボーグとグランクをその身でなぎ倒して、タランザは港をあとにするのであった。
「……」
少し研究所に視線を向けるが、ここに手がかりはないだろう。……あるかもしれないが、いちいち探すよりも、もっといいやり方があるはずだ。
さて、アーマーは乗っていて目立つというのがある。野外だと、かぎつけた敵たちがインベードアーマーを呼んでいる。マズい。タランザは追跡をかわすために、すぐ目の前。派手な見た目の工場に逃げ込んだ。
「だったらまだ研究所の方がいいのね……」
今更ため息と独り言を吐くが遅い。そして見上げてタランザ、苦笑。巨大アイスクリーム工場らしい。侵入者排除の姿勢にはかなり前のめりで、アイスクリーム……本物かは定かではないが、とにかくアイスクリームがどんどんと倒れ込む始末。
かわしつつ、その香りはとりあえずバニラとイチゴであることを確かめた。
「足で歩く種族はべたべたしそうなのね」
そんな独り言を猶更強く思ったのは、アイスキャンディーの足場を見たとき。ワドルドゥが平然とするあたり、ただ模しているだけなのだろうか。それでも踏むのが気持ちいものには見えないが。
「カービィならきっと丸のみ……いや、きせきの実でもなければさすがに無理っぽいかね」
巨大なアイスクリームを魔法でガードしつつ、そんなことも考えてみて。
甘味も好きだったな、彼女は。
そんな思い出にふけっている暇はあまりない。インベードアーマーを見つけたが、工場内だとあまり取り回しもよくなさそうだ。とにかく糸を張りつつ逃げに徹することに。
「あー、ごめんなのね」
どこか物悲しそうな顔の雪だるまオブジェ。雪でも纏わせてあげるべきだろうが、こちらに構う暇もあまりない。チリーのつららもウェブホールドで捕まえてお返しし、先を急ぐ。
ひとまず、敵は振り切れた。裏口から工場を脱出し、杭へ。まだまだ遠い。あまり目立つ場所は……と向かい方を探す矢先、目に飛び込んだのは海底の施設への入り口。反対側のパイプは杭の近くにある。意を決し、タランザは水中へと躍り出た。
「……」
クモの種族的に水中は得意とするところではない。しかし、吊るされたライトはどこか幻想的な様相。「侵略をやめても置いてくだけ置いてってほしい物」はいくつか目にしたが、どこか満足げに過ごすママンティやクラビィを見ると、この施設もその類であるように思えた。
「あいてっ!」
クラビィのハサミを喰らって、そういう純真な気持ちも「ちくしょー!」という気持ちに邪魔されるが。
さらに、メタルアクロがグルグル巡回している。こいつに警備を任せているという事だろうか。実際、タランザはすれすれでかわし心臓バクバク。
列に並んで迫ってくることもあり、ひとまずは隠れてやり過ごす。追跡機能などはないようで、慣れれば結構楽そうだ。
「むぐぐ……」
上がるがったり下がったりで結構きつい道だ。とはいえ進んでいる。ようやく出れそうなエリアを発見。原住民らしいスクイッシーに挨拶なんかもしつつ、水上の施設まで浮上した。
コンテナエリアでこそこそ進んでいると、目の前にボンカースが登場。機械を装備しているあたり、ハルトマンワークスカンパニーのメンバーらしい。
「いかせないぞ!」
見たところ、バナナを守っているようである。バナナに興味がない旨を告げるが、どうも報酬にもらっているようである。
「おまえ倒したらもらえるからな!」
ココナッツ爆弾を投げつけてくるボンカースから距離を取り、ココナッツをウェブホールドで捕まえ発射。それを受けてもなおひるまず突き進む。
「ほっ!!」
「っぶないのね!!」
叩きつけるハンマーを素早くかわし、背後でタランザバースト。さらに糸も連射して、隙を与えず撃破。急襲かつ強靭な敵。緊張の糸で若干、荒い息だ。
「えいや!!」
糸を絡めて、仕返しとばかりに蹴っ飛ばし。今一度水中に戻り、居住区を進む。メタルアクロも慣れて、ゆっくりし海底でかわし。しばらくバカンス気分の明るい海底遊泳。そうして、最後は上昇とパイプ通過。
目の前に、杭とその防護施設があった。相変わらず、タランザの迎撃態勢は万端らしい。
意を決して、施設へ。しばし廊下を通り、大きな部屋に到着する。
「ウフフ……。こんな所にまで、ゲンジュウ民が来るなんて」
「ワタシは……原住民かはビミョーなのね」
そう言いながら、声の主に視線を向ける。豊かな桃色の髪と青くつぶらな目が目立つ、異種族らしき女性。
「これは失礼。フロラルドの民だったかしら。あぁ、申し遅れました。ワタクシ「ハルトマンワークスカンパニー」の社長秘書をつとめております、「スージー」と申します」
「タランザなのね」
「これは礼儀正しいことで。あちらのお坊ちゃまだったかしら」
「……む」
やはり、フロラルドの事を把握している。
「……ご覧くださいませ。この豊富な水に綺麗な空気を。この星には、莫大な資源が眠っているのです」
「奪っていい理由にはならないと思うけどなァ」
「アナタがそれを仰るの?」
「……」
クスクスと笑うスージィは、やはりタランザが何者かも調べがついているようだ。……ある程度は。
「悲しいことに、ゲンジュウ民たちは、その値打ちさえ分からずに……」
わざとらしいため息。かと思えば、今度は不敵に笑って。
「と、いうわけでして、アナタは、我々の「キカイ化しんりゃくプロジェクト」に とって、ジャマな存在と判断されました。……ここまでご足労いただき大変おそれ入りますが、すみやかに……」
ニヤリ、笑って、彼女はリモコンを操作する。ズゴン!と音を立てたのは巨大な乗り物らしい。ロボボアーマーを入手できなかったのが、痛い。
「くじょされてくださいませ!」
「断るのね!」
「なら実力行使ですわ!」
乗り物ことリレインバーはカラフルでにぎやかだ。しかしポップな姿とはいえ油断はできない。巨大な体躯で、ためらいなく押しつぶしてくる。魔力の糸で多少傷はつけられているが、多少である。
「ふふ、無駄ですのに!」
リレインバーの腕を高速回転させて迫ってくる始末。縦横無尽の攻撃だが、動きはまあ重い。上手いことかわすと、あらお上手だとか、スージーも適当な感想。
ぽちっと操作したかと思えば、ミサイル発射。かわし切っても連続で発射!糸を放ちまくって包み、蹴っ飛ばしてぶつけ、リレインバー、揺れる。
「困りましたわねえ……!」
少し本気を出す気らしい。部屋の真ん中に立って、床を隆起。さらに穴もあけ、何事かと身構えるタランザにお構いなしの突進。ブレードになっている腕部をぶん回しつつ、迫る。
しかもジャンプを交えての押しつぶし攻撃だ。さすがに魔力で防御してやり過ごし。仕方ないなとばかりに、スージーによるミサイルの猛攻が始まった。
「アハハハハ!」
「もう読めてるのね!」
だがミサイルなどチャンスでしかない。糸で絡めて投げ返すと、リレインバー、ぐらぐら。さすがに怒りをあらわにし始め、これならどうでしょうと、穴を貫通するドリル突撃。
「えっ」
「こうよ!」
まさかそう来るとは思わずぶっとび、それでも手は止めない。受け身を取る空中でタランザボールを叩きつけ、リレインバー、撃破。スージーも巻き込まれ、ぽてっと落下した。
かぶっていたバイザーをはずしつつ、のっそり起き上がる。ほこりを払いつつリモコンを起動し、相変わらず不敵な笑み。
「あはは……アーッハッハッハッハッハ!!!」
「待つのね!」
高笑いと共に、プロペラを掴んで立ち去っていく。同時に杭も火を上げるが、それどころではない。社長秘書なら、知っていることもいろいろあるはずだ。
「一体、ワールドツリーは……!!」
糸も届かぬ距離に消えたスージー。ため息をつくが、ウラを返せば、これから先お偉いさん直々の迎撃もあるかもしれないという事。タランザは多少無理矢理ながら希望を抱いて、駆け出すのであった。