さすがに、侵略とはいえその風景には圧倒された。
ただの原っぱだったエリアはシティミュージック響くリポジトリムリズムエリアへ。まさに、摩天楼。数多のビルや巨大な高速道路が目を引く絶景となっていた。
そろそろ夜と言える時間帯だが、明かりは灯っている。不夜城といった所か。
「おお……」
目を輝かせるタランザ。屋上に座って、おしゃれな曲に合わせて、何気なく持っていた笛を吹いて。
『タランザは笛が上手ね』
『ふふ、いっぱい練習したのね』
『自分で言っちゃうの?タランザはカッコつけたがりだと思ってた』
『……キミが言ったのね。自分を磨く努力ができる人はカッコいいって』
目を見開いて、少し驚く“彼女”の顔が浮かぶ。溢れている涙を現実と認めたくなくて、彼は拭わずに立ち上がった。
と、そんなタランザへ急激に襲い来る衝撃。
「ぐふぁ!!」
吹っ飛ばされつつ空中で体勢を立て直し。見てみれば、音符のようなパーツが飛び出る仕掛けだ。タランザを侵入者と認識し、撃退するつもりだろうか。
「町中にあっていいモノなのね……?」
涙も引っ込み、さすがに首をひねるが、まあいい。かわすのは難しくないし、カプセルJ3に絡まれても糸にくるんでバイバイだ。ワドルディの車たちもやはり通りまくっているが、先ほどの仕掛けの事を思うと、ウカツに乗るわけにもいかず。のんきに夜の街を抜ける車たちを、タランザは見送った。
「……ゲホッ、ここ空気悪いのね」
工場近辺でも思ったことだが、ここに来て少し嫌な気分である。ネオンの照る屋上を飛び回りつつ住民たちの営みを何となしに思い。
バスたちの通る道は楽しくやかましい。
「コリゴリなのね……」
見下ろした先には、カジノ。近くまで降りて、そのやかましい光を見上げて。いろいろ思い出しつつもとりあえずはスルー……というところで、目が合う。
タランザが「げっ」とこぼしたのもまずかったらしい。警備員らしいブロッキーが、ずんずん走って来るのだった。
「いかせないよ~~!!」
「こりゃ逃げる方が面倒……!」
タランザ、迎撃!
迫りくるブロッキー、動きは見た目通り鈍重だが、強めの個体の薄茶色。少し機械化された体もあって、威圧感はまあまあある。
突進をかわせば軽く転び、そこにタランザボールを叩きつけ。振り返り怒り任せの落下攻撃。かわせば、今度は倒れ込む攻撃。これもかわしつつ、タランザは、メタナイトとの先ほどの戦いを思う。
「そう、確か、こんな気持ちで、こんな感じ……!!」
魔力で作り出す、ワールドツリーの幻影。ブロッキーももろに喰らい、目を回して倒れ込み。構ってる暇はない。放置して立ち去る彼。警備を倒してしまった以上、カジノに入っても騒がれるだけだろう。
タランザの視線は、目の前の研究施設に向かう。スージーたちを直に問い詰める方が速いはずではある。しかし、ワールドツリーの話やフロラルドの話をいろいろと聞いた今では、やはり気になってしまうというもの。彼はこそこそと、研究施設のスロープを登った。
「ま、そうだよねえ」
やすやす受け入れてくれるわけもない。床がどんどんと赤くなり、そこは電流か何かが流れているようだ。多少なら上にも喰らわせる仕様らしい。
とはいえ仕組みを理解した従業員たちはかわせるようにか、安全な場所もまあまある。
「ここかね」
タランザも、まあそもそも魔法で飛び慣れているし、かわすのは難しくなかった。梯子を上り、迷路のような道を潜り抜けた、その先で。
「あ……!」
インベードアーマー、発見。乗り捨てる従業員にはちゃんと教育した方がいいぞなんて悪い笑顔で考えながら、タランザはそいつに触れる。……当然だが、やはりタランザを認識し、色も変わって。
主人を迎えるように、コックピットが起動する。……そうか、自分が主人側か、とか、タランザは悲し気に笑って。
「さあ、行くのね!」
結論を言えば、研究所は警備がひどく厳しく、ろくに探ることはできなかった。それでも、相棒を見つけてタランザの調子は上がっていた。
アブナイ床の上を歩いただけの価値はあった。
ラボトリィやワドルディの猛攻も軽く糸でなぎ倒しつつ、進む。梯子を上り、扉をくぐり。最終的には、研究施設の高層階から街を見渡す形になる。
「これなら、やることは一つなのね!!」
飛び出し、飛び降り! そのまま糸をビルに引っ掛け大きくスイング、ジャンプ!
車たちに乗ってせわしない住民たちを見下ろし、タランザは摩天楼で舞う。邪魔をするスカーフィたちも体当たりでぶっとばし、誰にも文句は言わせない。
「あはは!」
さすがのタランザもこれは楽しい。高い建物の間を、糸を使って移動するなんていうのは、実現する機会のない「やってみたいこと」であった。
高いタワーも、ビルも、吊り橋だって今の彼には思いのままだ。
「こっち!」
タランザの邪魔をしようと、いかつい顔のスカーフィたちも飛んで来る。しかしお前なんて相手じゃないと、糸を絡めつけてグッバイ。そのまま着地し、タランザは電車の発着駅へ。
「一旦お別れなのね!」
電車相手だと、目立つし邪魔だし重い。アーマーを駅において、タランザは電車の屋上へ登る。夜の街を駆け巡るそれは、杭の方に向かっているのだ。
中を覗き見ると、住人達はせわしなく過ごしている。ちょっぴり気の毒に思いつつも、タランザは屋上の隙間にへばりついて過ごす。この前の機関車と違い、こっちはバレそうだ。
そうしてしばらくを過ごし、電車が止まったのを確認。降りれば、杭の前の扉がタランザを迎え入れた。
「まだ倒せる気でいるのかねぇ」
タランザもそろそろまた調子がついてきた。ロボボアーマーに乗って来れなかったのは惜しいが、速い方がいい。彼は意を決して施設の中へ。入口はまあまあ高いところにあり、糸を張って登っての到着だった。
「次はだれなのねー?」
「おーお〜 わーれらが ハールトマン〜♪ おーお〜 わーれらが ハールトマン〜♪ 銀河に♪ 名立たるー♪ 王者よ〜♪」
暗く広い部屋で、タランザを迎えたのはスージーだった。
「ま、やっぱり歌はお上手なのね」
「これはどうも。おなじみ美人秘書のスージーでございます」
いつも通り頭を下げるスージーに、気取ってタランザもお辞儀。
「しかし、驚きました。あのメタナイトボーグを倒しちゃうとは……。フッ。マザーコンピューターの システムもまだカンペキじゃないのね。」
小さな声でつぶやき、それを聞いて首をかしげるタランザを一瞥。スージーは不敵な笑みが得意技だが、今回はより一層勝気なものだった。
「けど、今度の相手はそうはいかないわよ。わずかな細胞から最新技術で 生み出された……デーンジャラスで、デーッドリーで、デーラックスな、クローンモンスターですわ」
「クローン……って、……複製!?」
「ウッフフ……そうよ。しかもこのモンスター、何やらアナタに対し、トラウマ、対抗意識、負い目……そういうのがあるみたいね? ……さぁ、おゆきなさい」
スージーの指令によって動き出した、白い影。……それは、間違いなく、かつてタランザが連れ去った、その姿。
「プロダクトNo.D-0030、「クローンデデデ」! お邪魔なクモなんか駆除しなさい!」
「デデデ大王……!!」
さすがにタランザにも負い目というものがある。動きが鈍っている隙に突進をもらった。そして戦いの舞台であるエレベーターが動き始める。
早いところカタをつけねば面倒なことになることは概ね想像がつく。
「タラ、ン……ザ!」
「っ、」
よくもオレさまを好き勝手してくれたな。クローンがそんなことは知る由はないが、それでもそんな気迫を感じる。
無理矢理にでも前向きに考えるなら、カービィ相手ならどうなっていたか。デデデの対抗心はこれで済まないはずだ。
「っ」
隙もなく振るうハンマーをかわし。咄嗟に横を潜り抜けつつ糸を張る。
「ぐあ……」
「よしっ」
糸が引っかかり、ジャンプ攻撃と同時に怯むデデデ。追撃だとばかりに向かうタランザに、クローンデデデは大口を開けて吸い込み!
「あばばばば!」
「あっはははは!」
楽しそうなスージーを恨めしく睨みつつ、タランザバースト。吸い込みで至近距離だったのが響いたのか、デデデも怯み、チャンス到来である。
しかし果敢にも向かうタランザを前に、クローンデデデは弾け飛ぶ。
「……えっ?」
呆然とする彼を前に、クローンデデデは三体に分裂したのだ。
「そんなのアリなのね……!?」
だが的は大きい。糸を張って飛びかかりをかわせば勝手に向こうからかかってくれるのだ。もちろん絡まって行動不可能とはいかないが、魔力を込めた糸で体力を奪っていく。
「よしこれで一体完了なのね!!」
弾け飛ぶ一体を得意げに見送りもう二体にタランザボールをぶつけ。勝てるぞ! そんな確信をよそに、背後からの突進。
「いでっ!」
「あははっ! クローンデデデはそんな簡単にやられないわ!」
一転、囲まれ、窮地だ。
「タラ、ンザァァ……」
「タランザァ!」
「……ッ」
やる気満々のデデデ達に囲まれ、ジリジリせまられるピンチに。タランザバーストで……いや、まとめて吹き飛ばす火力は……。
「……負けるわけにはいかないのねッ!!」
タランザは打開の方法を知っている。今一度想いを馳せる、ああ、あの花に会いたい、あの花を見上げて、ワタシは、ボクはっ。
「づあああ!!!」
いとしのワールドツリーが持ち上がり、その魔力の塊、幻影が、飛びかかるデデデたちをまとめて吹き飛ばした。
「よしっ、勝った……っ」
地面に手をつき、肩で息のタランザ。たどり着いた屋上から見える摩天楼に少しだけ見惚れる。
……だが、クローンたちが未だに蠢くのを見て、これで終わりではないと悟る。だがタランザは諦めない、絶望しない。デデデ達が砲台「D3砲」に乗り込むのを見て、なお彼は糸を構えた。
「どこからでも来いなのね!」
「無駄な抵抗だわ!」
レール上を動き回るD3砲を前にタランザは構える。高笑いのスージーを前に、タランザはD3砲を糸で張ったトランポリンを使い回避。衝撃波そのものを糸で包み、ブンっと投げ返して。
「どーせでっかい光線なのね!」
その通りだ。放たれた「デンジャーキャノン」を魔法のガードで全て防ぎ、焦って投げつけられる爆弾を全てかご状に編んだ糸、ウェブホールドを浮かせてキャッチし。
「お返しするよっ!」
「で、デデ!!デデデデ!!」
焦るクローン達に、もうなす術などない。暴走したD3砲がレール状を暴れ回り、最後にピタリ。
「
「
「
情けない断末魔と花火で吹き飛んで、93億ハルトマニーの結晶が爆炎に変わる。
「……な、なんですって?」
こうも負け越せば焦りもするようだ。スージーが悔しげに去っていき、多少の傷はあれどタランザは勝ち誇った気分だった。
こういう時、下界の勇者サマはどうしてたか……。タランザは、ちょっとばかり真似ッコ。
自分流のリズムに乗ってダンスを踊り、幻影で作った分身も一緒に踊って、最後は手を広げて得意げに。遠くから、スージーがこれまた悔しげに見つめていた。
さて、杭も爆発し、最後に残るのは母艦……のちに知るが、「アクシア・アークス」であった。
タランザは単身、その内部へ突撃する。