タランザシップが、空を舞う。いつもの操作と全く状況が違うはずだが、レバーを動かした方に進み、ちゃんと糸を放つ余裕もあるらしい。
タランザの操縦を学習したのだろう。成層圏ですら、それは手に吸い付くように。
「準備はできている」
大砲上部に剣を設置。斬撃の衝撃波を弾丸として射出するようだ。
「こっちも準備完了、行くのねッ!」
レバーを倒し、双方、向顔! 「タランザを用済みとして切り捨てた」メモリーが、それこそセクトニアらしい振る舞いであると教え込む。
この星をかけた、魂の戦いが幕を開けた。
「アハハハハハハ!!」
狂ったような高笑いで、花を二輪、自らより分離。小手調べとばかりに、炎の弾丸を放ってくる。
「え~~~っと、」
慌てつつも、メタナイトのアシストもあり、横に回って回避。斬撃をどんどんと飛ばして叩きつけつつも、やはり簡単に大ダメージとはいかない。
「来るぞ!」
「了解なのね!」
放ってくるミサイルを、全て蜘蛛の糸でとらえ、キャッチ。大砲にセットしつつ、お返しだ!
「利いてるのね!?」
「さあな。だが攻撃の手は止めない。そちらも操縦に専念してくれ」
「もちろん!」
レーザー発生装置も放って、さらに二輪の花も構え。同時にレーザーを放ち、ハチャメチャな軌道でぐるぐる。顔をしかめつつもタランザはそれらをみな的確にかわし、「今なのね!」と反撃のチャンスも伝え。
『データのサルベージ完了。生体情報をモトに、行動ノ再現ニ移りマス』
「本領発揮だ! わらわの美しき力をその目で見ること、光栄に感じろ!」
「セクトニアさまはいつもお美しいのね……」
そうつぶやいたタランザを前に、右へ左へ、最後に正面へ、テレポート。花たちは剣に姿を変え、一気に迫りくる。
「タランザ!」
「準備ばっちりなのね!!」
それに斬撃で応戦し、怯む花たちを糸でキャッチ。これまた大砲にセットして、解き放った。
正面からもろに喰らうセクトニアは、テレポートで現れ反撃とばかりに赤熱し突進。少しかすって姿勢を崩すが、それでもすぐに立て直し。タランザの魔法と、メタナイトの翼だ。
しかし、立て続けにセクトニアの攻撃。四輪に増えた花たちが電撃をまとい、四角いフィールドが迫る。
「間を抜けろ!」
「いや、悪いけど攻撃を続けてほしいのね!」
「いいだろう、タランザシップの艦長に任せる」
「それはやめるのね!」
下がって避けつつ、斬撃をひたすら花にぶつけ。ひとつがヘタれた瞬間に糸を広げ四つすべてキャッチ。電撃をまとっているうちに、お返しだ。
「まだなのね……!!」
「辛抱だ、根性でもってくれ」
「言われなくても!」
まだまだ元気に、セクトニアドリームは、インベードアーマーを射出。さすがにこれはかわす方が速い。横にそれて避けつつ、斬撃は絶え間なく飛ばし続ける。
異次元から招来する光弾もすべてかわし、つぼみ状になった花たちの突進も前方に突っ込む形で回避。斬撃は的確に叩き込まれ、星の夢にも段々傷がついてきた。相手もマズいと判断してか、ハート形のバリアを展開する。
「これどうするのね!?」
「とにかく斬る!」
斬撃弾をより一層激しく、激しく! 機械と魔法で増幅した斬撃は、バリアにもひびを入れ。最後には粉々にして、それすら糸にくるむ。
「いくらでもお返しするのね!」
「おまけつきでな」
さらに斬撃を四方八方に放ってぶちあて。二輪の花がレーザーを放って反撃するがそれも即座にかわし、今度の斬撃弾で、真っ二つ。
追い込まれたセクトニアは、星の夢本体に光を集積。紫の光を放って、巨大な波動砲「スタードリーマー」をぶっ放した。
「タランザ!」
「ここは、……いや、このまま押し切るのね!!」
「……ならば!」
連続で放たれた斬撃と、糸と魔法で張ったバリアで巨大に渦巻く光の束を防ぎ。バリアがぐわんっと歪むが、それならと、そのままタランザが魔法を浴びせかけて。
言うなれば、超巨大なタランザウェブホールド。それがとらえるのは、光線そのもの。セクトニアドリームの目前まで押し切り、爆散!
「きゃああああああああ!!!」
「……ッ、セクトニアさま、」
「まてタランザ、終わりではない!」
『「あやつりの秘術」データをサルベージ。アクシア・アークスと「パラサイト・マージ」を行いマス』
「っふふ、アハハハ!」
星の夢は、母艦アクシア・アークスと合体しようとしているのだ。
「……どうするのね、まだやるか……?」
「いや……タランザ、私に糸をつないでおけ!」
一体何を、と問う前に、メタナイトは自らを大砲にセット。もう彼を信じるほかない。射出して、軌道のさなか。メタナイトは、その手に「きせきの実」を持っていた。
「今こそ、力を使わせてもらおう」
その光をまとった宝剣ギャラクシアの、一閃。
それは星の夢を大きく傷つけ、ひるませることに成功した。さらにアクシア・アークスの外壁にもひびを入れ。アクシア・アークスの上に立ったメタナイトは、実と剣のエネルギーを借り受けた剛力で、タランザのロボボアーマーを引き寄せた。
「っはァ!」
さらに、その光は、ロボボアーマーに宿り、無限の力、まるで
「なんだと……!?」
『キンキュウ事態発生……キンキュウ事態発生……』
その糸はアクシア・アークスの外装をすべて剥ぎ取り、どこかかわいげのある……
対象は、もちろんセクトニアドリーム。ぶつけられた塊が星の夢の胴体に激突し、彼方、果てまで吹き飛んで……。
「いや、……まさか」
「タランザァ……!」
吹き飛んでは、いない。いや星の夢はもうキラッと光って彼方にぶっ飛んだが、セクトニアは違った。上半身だけとなった体を斬り外し、まるで彗星のように、全霊で向かってきていたのだ。
タランザと対峙した「セクトニアスター」はすがるような眼でタランザを見て、今にも叫びだしそうなヒステリックな震えでもって、ツタを突きつけた。
「わらわは、私は、お前の望む姿を追った、それだけだった、だというのに、裏切るの……!」
「違う、違う! セクトニアさまは、昔も、そんな情けない顔はこのタランザには向けなかったのね……!」
「黙れ、黙れェ……!」
「どれだけ暴虐の限りを尽くしていても、ひたむきに自分のための手間を惜しまない、その姿を、セクトニアさまは、セクトニアは持っていた……!」
セクトニアスターの攻撃を喰らい、ロボボアーマーは火花を立てる。もはやデータを管理する星の夢も居ない。これが最後の挨拶だとばかりに、主人を弾き飛ばし、脱出。
タランザは振り返らない。爆発する相棒を一瞥したら、この涙が、こぼれるだけで済まないことを知っていたからだ。
姿勢を変えつつ、タランザは瓦礫に着地。セクトニアスターもそれを追う。
「お前には……セクトニアがどれだけ見目麗しき天上の存在か、ちゃんと目に焼き付ける義務があるのねッ!!」
そして、と続け、タランザは魔法でその幻影を魅せつける。
クィンズファントム。タランザが追い続けた、花で、月で、愛で、糸で、心で、……そして、幻。
「神にも等しき美貌が前に、ひれふし……あがめ……全てをささげるがよいっ!」
クィン・セクトニアの幻影は美麗なる姿と共に、杖による雷撃を散らす。
セクトニアスターは、みとれて。
……生まれて初めて、「こうならねばならない」ではなく、「こうなりたい」をみつけた。
「ああ、そうか……」
「ッ、クローン!」
雷に焼かれ、力なく身を投げ出すセクトニアスター。タランザは新しい、初めましての存在として、抱きとめようとその手を広げる。
しかし、セクトニアスターは、タランザの頭に星の夢のヘルメットをかぶせることで応えた。もはや星の夢は存在しない。それが持つ機能は、クローン内部のナノマシンへの、データの送信のみ。
「素晴らしい、データを見つけたわ。星の夢なんかじゃない。あなたが、あなたが最高の、データベース」
「だから、キミはセクトニアでいる必要なんて……」
「何を言っても無駄よ。私がそうしたいの」
それなら……と、受け入れるタランザ。雄大な星、ポップスターを眼前に据える宇宙空間で、二人は静かな一瞬を過ごす。セクトニアも、その姿をタランザに似たクモのものに変えて。
「……認識を、理解したわ」
「どう、する気……なのね?」
「あなたの、セクトニアに対する認識に完全に従うの」
歓迎すべき事実かどうか、判断しあぐねる彼に、そんな思考よりもはるかに斜め上の結論を、セクトニアは叩きつけた。
「あなたのなかで、セクトニアは……もう会えない存在。会えるかもしれないと希望を抱いても、絶対にもう会えないと、奥底で理解した存在」
「……は?」
「これで、あなたにとってのセクトニアになれるわ」
ぼろぼろと、崩れ始めるクローンの肉体。
「……さようなら」
「そんな、そんなッ、そんな!!」
かぶりを振り続けながらかき集めるタランザをよそに、セクトニアは、ただただ笑っていた。
最後の、最期の瞬間まで、笑っていた。
星の夢を失ったカンパニーを再建すべく、ハルトマンとスージーはポップスターを去って新たな事業を始めるようだ。今回でゲンジュウ民からの反撃も気にして、侵略をする気はない、とか。
「次があったら、今度こそぼくが倒しに行くからね!」
カービィはそう意気込み、ご心配には及びませんと笑いながらスージーは去って行った。
そうして、あまり仲良くなる機会のなかった相手をちょっとだけ残念に見送ると、その視線は木陰にいるタランザへ。
「メタナイトから、いろいろ聞いたよ。ありがとね!」
「礼には及ばないのね」
「えっと、セクトニアのこと、」
「みなまで言わなくていいよ。……ワタシは大丈夫なのね」
あまり、無理をしている様子でもなく、タランザは静かに本を読んでいるようだ。取り繕ったものなのか、案外大丈夫なのか、カービィの優しくも鈍感な精神ではその機敏ははっきりは分からなかった。
「やっぱり、綺麗なのね」
見上げた先、ワールドツリー。それは、誰かを見ることはなく、天に高く咲き誇っていた。
カービィが立ち去るのを見送ると、タランザは本を閉じて、笛をほんの少し吹いて。
「……セクトニアさま、今回で、気づかされました。ワタシは、とっくに、とっくの昔に、あきらめていたのですね」
クローン・セクトニアの事を悼んで、また笛を吹き。あの花に会うために、……そんな夢を見ようとすればするほど、クローンが笑んだ「さようなら」の声に目が覚めてしまう。
「……」
溢れるものを拭っても、拭いきれないもやもやを、彼は静かに抱きしめて。その頬にポップスターの風を浴びる。
「……分かってるのね」
タランザは、笑っていた。
お付き合い頂きありがとうございます。救いのない風の終わりになりましたが、自分の内心と向き合って折り合いをつけるきっかけになったりもするかもしれません。たぶん。
スタアラに繋がる風にするために、あまりタランザが変わりすぎないようにしたかったのもあります。……が、〇〇でゴーなのでifでしかないだろと言われりゃそうなんですけど。
それではまたどこかで