義理の兄、なんだそれは!?   作:鞍馬エル

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それは乙女の一大事

とある日の『2人だけの戦争』の記憶(前編予定)


 譲れぬ戦い

 宇宙世紀0100年某日

 

 

「…」

 

「…」

 

ラウム・クラヴァスの所有するアパートの2階にある一室に2人の女性が向かい合っていた

 

金髪の美しい女性と栗色の美しい髪を短くまとめた少女ともいえる女性

 

 

「いつまでも黙っていては何も進まないわね」

 

ため息混じりで話を切り出した金髪の女性

その名をセイラ・マスという。またこのアパートの家主であるラウム・クラヴァスにとって浅からぬ関係にある人物と言っても間違いではない(・・・・・・・)だろう

 

 

「そう、ですね」

 

それに応じるのはオードリー・M・K・リンクス。同じ階に夫であるバナージ・K・リンクスと共に住んでいる女性である

なお、歳下であるオードリーが結婚しておきながら、未だにセイラが未婚(・・)である事を指摘する者は少なくともこのアパートにはいない

 

 

命が惜しいからである

 

余談ではあるが、このアパートにはあと二組の夫婦が住んでおりジュドー・アーシタとルー・アーシタの『アーシタ夫妻』にカミーユ・ビダンとユイリィ・ビダンの『ビダン夫妻』である

 

…何故歳下であるジュドー達が先かって?

 

籍を入れたのがジュドー達の方が少しだけ早いからです

 

 

 

 

なお、その夫婦に囲まれている形となっている某人物は

 

「俺も良縁が欲しいな」

などと寝言を言っているが、ビダン夫妻からは白い目で見られていたりする

 

 

----

 

「私としては別にそこまで変わる事はないと思いたいのだけど」

セイラは少しだけ躊躇しながら切り出した

 

「そうでしょうか?

私としてはお父様の伴侶、つまり私や夫にとっても義理とは言え母親となるのですから、かなり変わると思いますが」

オードリーは淡々と答える

 

 

今日セイラはラウムの元ではなく、オードリーの元を訪ねている理由がある

 

 

「ラウムさんとの結婚、やはり貴女は反対なのかしら?」

 

「反対、とまでは言えないと思います

ただ、戸惑っているという方が正しいとは思いますが」

 

セイラとしてもオードリーの言い分には納得できる部分は確かにある

セイラも今年で38だ

それに対してラウムは40歳を越えている。しかも、彼の体調はセイラやカミーユ、ファ達が手を尽くしているものの日に日に弱っているのが誰からも分かっていたのだから

 

 

「そろそろ俺も行か(逝か)なきゃならん

向こうで義兄殿達や親父たち、それにゼナを待たせているだろうからな」

 

そう言って、ラウムは自身の治療(延命)よりもアムロの方を優先する様に事あるごとに言っています

しかし、それに納得する者は誰ひとりとしていないのです

 

バナージは直ぐにリディの所へ連絡して、何とかして義父の命を救おうとしています

カミーユ達も自分達の伝手を使って何とかしようと懸命に動いていました

 

 

そんなラウムが例えセイラの願いであったとしても結婚を選択するとはセイラ自身思えないのだ

だが、それではあんまりではないか?

そうセイラは思っている。両親を亡くし、妹すら居なくなり、そして戦争により義理の家族は悉く死んだ。唯一残った妹とその娘は手の届かない所へ行ってしまい、やっと手の届く所に戻ったと思えばそれすらも手からこぼれ落ちた

それは影武者だったが、それでもラウムにとっては耐え難い痛苦を与えたのは間違いない

 

そして、ようやく会えた唯一の肉親。そしてその娘が生涯の伴侶を見つけ、結ばれた

 

そして少し前のあれである

今思い返してみれば、アレは彼からの遺言の様なものではなかったのか?

そう思えてならない

 

そんな最期などセイラは認めるつもりなどありはしない

勿論彼との繋がり(子供)も欲しいとは思うが、それ以上に死んでほしくないのだから

 

 

----

 

私は情けない事だと思っているのですが、お父様とセイラさんの結婚を前向きに受け止められませんでした

 

セイラさんがお父様にそういった感情を抱いているのは私にも分かります。たとえ子供の頃の恩人であっても、10年以上に渡ってその人の側に寄り添い続けるなんて半端な覚悟で出来る事ではない事くらいは分かっているつもりです

 

…でも、どうしても思ってしまうのです

 

『貴女達がお父様を苦しめたのに、何故今更になって助けようとするのですか!?』

分かっているのです。戦争だった

だからそうしなければセイラさん達が死んでいた事も本当にどうしようもなかった事も

 

 

でも、それでも嫌なんです

 

あの人は私にとってのただ1人の初めて出来た肉親なのです。だから私はそれを取られたくない

 

 

お父様には何でも打ち明けました

バナージ()にすら打ち明けられない様な事であっても

 

そんな事を突然打ち明ける私をお父様は

 

「そっか」

とだけ言って、抱きしめて頭を撫でてくれたのです

 

 

それは私が幼い時から本当に欲しかった温もりだった

 

ジオンの姫なんて敬われたくない

ザビ家の後継者なんて跪かれたくない

 

私は

私はっ!

 

ただ、どんな時でもそばにいて(ミネバという少女)を見て欲しかっただけなのです

 

 

強くあろうと心を凍らせました

強くなる為に自分を偽る方法を学びました

強く見せる為に周りから目を背けました

 

そうやって出来たのがオードリー・バーン(偽りだらけの少女)

 

勿論、バナージと過ごした時間を実感できるこの名前()今となっては好きになりました

でも、私はあの時お父様が私の名前につけた祈り(願い)を聞いたのです

 

私が知らず知らずのうちに嫌悪していた自分の名前。そんな自分自身の浅はかさに涙を堪えねばならない程悔しかったのです。苦しかった

…でも嬉しかったのです。私は確かに生まれてきて良かったのだと

その証が私の名前だったのだと、そう思えたから

 

私はお父様が居なければ、自分が愛されて生まれてきた事すらも知らない子供だった

 

私にとっての光はバナージです

ですが優しい闇はお父様なの

 

 

光だけでも闇だけでも私は生きていけない

だから、お願いします

私からお父様(優しい闇)を奪わないで

 

 

 

その日、セイラは結論を出すのを諦め、また機会を設けて欲しいとオードリーに頼み、オードリーもそれを受け入れた

 

 

 

----

 

その日の夕方オードリーは父ラウムの部屋を訪れていた

勿論夫バナージには話をしている

 

そして、バナージはアムロ達に

 

「すいません。今日だけはオードリーに時間を下さい」と頭を下げて回っていた

 

本来なら、健康に不安のあるラウムを一人きりにする事を彼等は良しとせずアーシタ夫妻かビダン夫妻、もしくはセイラの何れかが必ずラウムの元にいる事となっていた

その選択肢にオードリーとバナージは入っていなかったのである

 

それはアーシタ夫妻やビダン夫妻なりの思いやりがあった

 

 

 

しかし何よりも

2人の予想以上に衰えているラウムの姿を見せたくなかった

 

 

----

 

「どうした?オードリー」

 

お父様は不思議そうに私に問いかけます

私はその時点で泣きそうになるのを堪えるのが精一杯でした

その名前(オードリー)で呼ぶのにどれだけお父様は葛藤したのでしょう?

それでも夫が使う名前だからと無理矢理自分の想いを押し込んだと思うと、余りにも切ないのです

 

私もバナージとお父様と慕っています

なのに、そのお父様の気持ちを誰よりも傷つけているのが私達2人だなんて余りにおかしな話なのでしょう

 

「結婚したと言うのに、お前は泣き虫だなぁ」

 

お父様の苦笑混じりの声が頭の上からします

そうです。私はただ弱いだけの、失う事が怖いから強く見せているだけの泣き虫なのですから

 

 

私は無言でお父様に縋り付きました

 

 

----

 

お父様は私やバナージが思う程に楽観できる余地すらない程に痩せ衰えていました

それをお父様は重ね着などをして誤魔化していただけだったのです

 

「それで?今日はどうした?」

 

今、私はお父様と一緒の布団に入っています

私にとってはいくら望んでも叶わなかった事の一つでした

 

『もしもアンタの身内で誰か生きていたなら、構やしない

思いっきり甘えるんだよ、アンタにはそれが許されて然るべきさね』

 

昔アクシズでシーマが私に言ってくれた事です

 

『いいかい、ミネバ。アンタはそれだけ寂しい思いをしてきたんだ。例え再会するのが大人になってからだったとしても、アンタだけは甘える権利、いや義務があるのさ。周りの雑音なんて気にするこたぁないさ。本当にアンタを愛してくれているなら断られる訳ないだろうさ』

 

…シーマ。本当に貴女が言った通りでしたよ?

私を愛してくれるお父様は今此処に確かにいるのです

 

 

 

「さて、私の生活スタイルに合わせてしまっている以上、若いお前には少しばかり早い時間だろう?

どうだ?聴きたいのなら昔話でもしてやれるが?」

 

「それは是非聴きたいです!お父様、お願いしても?」

 

「分かった。さて、何から話したものかな?」

 

私は思いもしなかったのですが、これでまた実父達の事をもっとよく知る事が出来ると思い、童女の様に声を弾ませたのです

 




娘と寝る(直喩)
でも、彼女にとっては必要だと思うので後悔なんてしない


多分、きっと、maybe

それで需要あるのでしょうかね?これ

 ミネバの幼少期のエピソード

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