でもヨシ!
義理の父ラウムと色々な話をした翌日オードリーはご機嫌だった
それはもう誰から見ても一目瞭然と言えるほどに
浮かれていると言われたとしても
「そう、かも知れませんね」
と彼女は苦笑しながらも、楽しそうに答えるだろう
彼女の夫であるバナージは
「オードリー?」
と流石に彼女を1番愛している自信があっただけにショックを隠せなかったりする
なので、後日オードリーは自身と夫2人でラウムの元に押しかけて昨晩みたいな事をねだる事になるのだが、今回は関係のない話なのでスルーしようと思う
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なお、そんな彼女と正反対に不機嫌の極みにあったのがセイラだ
何せ最近ではラウムのお世話をする時間が何よりの楽しみだったと言うのに、それを昨晩は奪われたばかりか明らかに自分の時とは違う対応をされた事が丸わかりなのだから
勿論、セイラはあくまでも他人であり言ってしまえばセイラの気持ちにも薄々気付いているラウムとしては
対してオードリーことミネバはどれだけ美人であったとしても、そこに親愛の情が生まれたとしても恋愛感情など持つはずもない
対応が変わる事こそ、当たり前なのだ
しかし、恋する乙女(?)
であるセイラからすれば、正に乙女の一大事である
セイラは意識していないが、セイラがラウムに持つ感情は確かに恋愛感情が
つまり
『仲の良かったお兄ちゃんをとられた』
と言うある意味微笑ましい感情もあったのである
…まぁ、問題はその感情と長年培ってきたラウムへの思慕の念が合わさって
何せ兄であるキャスバルも色々と拗らせていた人物である
さして変わらない幼少期を過ごしてきたセイラが『どうして拗らせないと思ったんですか?』(by宇宙世紀現場猫)
そして、セイラもまた拗らせた
しかもラウムと10年以上過ごしてきた(同居はしていません)
彼の1番近くで彼の支えになった
なのに、ぽっと出の娘に
それはもう
(私からラウムさんを
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なお、ここでは無いどこかでは
『おい、ジオン!貴様の娘がとんでもなく拗らせているではないか!?どうしてくれるのだ!』
『む、しかしラウム君なら娘を任せても良いと思うが』
『何を寝ぼけた事を言っておるか!あの状況のアルテイシアが正気だと本気で思っておるのか?
貴様の妻が怒った時よりもタチが悪かろう!』
『た、確かに』
『よし、構わん。アルテイシア、やってしまえ!
そうすればラウムは私の義理とはいえ弟になる
…欲を言えば兄になってもらいたかったが、この際だ。贅沢は言わん!』
『何を言うか!アイツは俺の義理の兄なのだぞ!
そんな事は認められんわ!!』
『シャア、それにドズル兄さん
何をやっておられるのですか?』
とまぁ混沌とした状況になっていたりするのだが、そこまで重要な話でもないので割愛しよう
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因みにラウムはオードリーが色々朝の準備を手伝おうとしたのだが、朝一にジュドーが部屋を訪れて
「おはよう、ラウムさん!
それにオードリーもいるじゃないか。旦那さんが寂しがってるから早く戻ってやりなよ。後は俺がするからさ」
とともすれば今日もラウムに甘え倒そうとしていた彼女の思惑を全力で外しにきたのだ
…流石は3人の中で1番コミュニケーション能力の高いジュドーであろう
他の2人が低すぎるなんて言ってはならない
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「大丈夫なの?ラウムさん」
「中々にあの子の抱えるものは大きいな、やはり
誰もそんな事を望んでいないと言うのに」
渋るオードリーを何とか部屋に返したラウムは憂鬱そうに嘆いた
ジュドーはラウムという人物の背景にそこまで興味はない。ハマーンに頼まれなければ関わる事もなかっただろう
だからこそ、放っておけないのだ
名前もあった事もないミネバ・ザビの影武者だった少女
確かに彼にとって、彼女はオードリーを助けてくれた恩人だろう。だが、言ってしまえばそれだけなのだ
自分やその家族を助けられたというならば、ジュドーにも分かる。リィナを助けてくれたセイラにはジュドーは今でも感謝しているのだから
だが、姪を助けたと言うだけで肌身離さず、そんな少女の遺髪を持ち歩くものだろうか?
態々特殊加工までして、それが崩れ落ちない様にして離す時も雑に扱う事はない
そこにラウム・クラヴァスという人物の歪みが見えるのだ
はっきり言って、今の時代や少し前だとしても、その生き方は正しいとしても余りにも辛過ぎる生き方でしかない
ジュドーは怖いのだ
少し知り合っただけのラウム。でもその人の良さはあの時のジュドーにもよく分かった
だからこそ、ジュドーは木星から帰ってきた
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ジュドーにとって大人とは『自分の利益の為なら他人を平気で追い落とす者』だった
あの戦争に身を投じるまでジュドーは仲間達と妹のリィナと共にシャングリラコロニーで生活していた
全くもって笑えない冗談だ
何が
ジュドーの両親は自分達の事など省みる事もなく、どこで何をしているのかすら知らない
知りたくもない
家はあった。学校に行けたかも知れないが、それよりもリィナを
本来そんな事を子供である自分が考える必要なんてありはしない
でも、そうしなければならなかった
子供であり、何の取り柄もない自分が手っ取り早く稼ごうとすればジャンク漁りしかない
しかしジャンクを持って行っても待つのは非情な現実だった
大量の質の良いジャンクを持ち込んでも、質の悪いジャンクを同じくらい持って来る
「
そう言えば必ず
「じゃあ、ウチに持って来なくてもいいよ
まぁどこに持っていこうとそんなものだろうけとな」
そう言われてきた
なんのことはない。俺たちが子供だから
そんな理由でマトモに買い取ってくれなかったんだ
俺たちだって好きでこういう事をしている訳ではなかった
だから、そのうち俺は大人に期待する事をやめた
疲れるからな
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そんな俺だったから、ラウムさんと会った時何となくだけどあの人からも同じような感じがしたのを今でもはっきり覚えている
目に力はなく、どう見ても同じ歳の人に比べたら言い方は悪いけど
でも、その奥底には拭い難い『他人への不信感と拒絶』があったんだ
ま、その時は何となく気になる
程度だったんだけどさ。木星に行くときってホント時間がかかるから色々考える時間だけはあった
ハマーンやプルにプルツーの事
俺は別にグレミーに何も感じちゃいないから考える事なんてなかったけど
だから自然とラウムさんの事も考えてしまった訳さ
それで色々考えたらそんな考えが頭をよぎって、思ったんだ
多分あの人はガンダムに乗らなかった自分の可能性の一つだったんじゃないかって、ね
まぁラウムさんに言ったら
「ジュドーくん程私は器用でも強くもないさ
買い被りすぎだと思うがね」
なんて軽く流されたけどさ!
でも俺はそんなラウムさんにも幸せになって欲しいってお節介だとは思うけど考えてる
はっきり言って、俺はそういう意味においてはセイラさんの味方になるつもりだ
ルーはオードリーの味方らしいけど、それは別に良いと思う
そんな事で壊れる様なヤワな関係じゃないからね、俺達は
だから、悪いとは思ったけど昨晩はバナージが必死に頼み込んだから邪魔しなかったけど、俺はお節介だと思う。けどラウムさんとセイラさんの
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実はこの件についてはクラヴァスハウス(仮称)内においても意見が割れている
アムロはホワイトベース時代からの縁からセイラを応援
カミーユとファはオードリーの孤独の深さを何となく理解しているからオードリーを応援
ジュドーは上記の理由からセイラを
ルーは妹分となっているオードリーを
それぞれ応援している
言うまでもないが、バナージはオードリーを全面的に応援している
かと言って、普段の生活にそれを持ち込む様な無粋をする程に彼等は子供ではなかったが
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そんなラウムについてのスタンスで対立している2人だが、彼女達にはいくつかの共通点があるのもまた事実
ダイクンとザビの違いこそあれど、実家の重過ぎる名前に苦しんだ事
ジオンの姫と呼ばれる事
近しい人が戦争という悲劇に身を投じた事
など
勿論、ラウム・クラヴァスという人物と深い関係にある事も事実だろう
彼という存在に救われた
だからこそ、その恩を返したいと願うセイラ
彼という存在が救いとなった
だから、その人の1番近しい存在でありたいと願うオードリー
それ故にお互い退けない
2人ともラウム・クラヴァスが好きなのだから
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「昨日は失礼しました、セイラさん」
「…いえ、構わないわ」
昨日の憔悴した態度とは打って変わって凛々しい佇まいのオードリーにセイラは一瞬とは言え気圧された程
(伊達に『ジオンの姫獅子』などと呼ばれていた訳ではない。そういうことかしら?)
セイラは口にこそ出さないものの、オードリーのそれを素直に称賛した
が、セイラとて自分の幸せだけでなく、ラウムのこれからの事も真剣に考えた上での結論なのだ
退くつもりなど、ない
「私はお父様の幸せを何よりも誰よりも願っていると思っているし、そうありたいと行動するつもりです
お聞かせください。貴女とお父様の結婚がお父様にとってどの様な未来をもたらすのかを」
そこには父親の幸せを何よりも願う娘の姿があった
(そう。話し合って、貴女を納得させてほしい
そういう事なのね)
セイラはオードリーのこの話し合いにかける決意が昨日とはまるで違う事を受け入れた
「率直に聞きます。オードリー
貴女はこのままラウムさんがどれだけ生きていられると思っているのかしら?」
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「率直に聞きます。オードリー
貴女はこのままラウムさんがどれだけ生きていられると思っているのかしら?」
っっっ!!
私は激発しそうになる感情を何とか抑えます
少しでも気を抜けば言ってしまうでしょう
『他ならぬ、お父様を苦しめた元凶の一族である貴女がそれを言うのか!!』と
それではダメなのです
私は昨晩お父様にどれだけ私が愛されているのかを聞かせてもらいました。父上や母上、叔父様や叔母様にお爺様からも私は愛されていたのか?を
そしてそれと同時にお父様もまたどれだけ愛されていたのかも知ったのです
恐らくお父様はそれを見ようとしないでしょう
お父様にとって、母上を失った時からその全ては私の為
それは本当に嬉しい事だと思います。何度生まれ変わって、あんな苦しい事があったとしても
私はお父様の姪としてこの世界に生を受けたい
そう思えるくらいに
でも、それだけではダメなのです
私とバナージは何れ子を授かると思います。それは男女の営みを重ねればあり得る事。寧ろ自然な事でしょう
でも、いえ
だからこそ私たちの子供には見せてあげたいのです
私とバナージが尊敬するお父様の姿を
お父様に私の子供を抱いてほしいのです
私が生まれた時、お父様が叶えられなかったソレを叶えてほしい
でも、お父様はそこまで生きていくつもりがないのは昨晩の事で悲しい事に確定的な事実となりました
私やバナージ。それにここに住む皆さんやセイラさんも誰一人としてお父様の死を望む者はいないでしょう
でもお父様は私たちの中で1番高齢なのです
どうしても先に死んでしまうのは避けられません。そして誰よりもお父様がそれを願っているのですから
なら私達に出来ることは
お父様の残り少ない人生の中でお父様がその生を満足して、納得して安らかな眠りにつける様にする事だろうと私は信じます
だから
「素人の考えではありますが、恐らく長くはない
そう思っています」
私は現実と向き合います
『いいかい?ミネバ
先ず現実を見な。理想を語るなんて誰でも出来るんだ
だが何かをしようってんなら、現実が伴わなきゃ意味はない。理想なき力は虚しいもんだが、力無き理想なんてのは妄想にしかならないからねぇ。忘れんじゃないよ?』
そうです。私はその為の道標を幼い時から手渡されていたのだから
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「素人の考えではありますが、恐らく長くはない
そう思っています」
淡々とそう言ったオードリーに私は彼女を殴らない様に自制するのが精一杯だった
そこまで知っていて、それでも貴女は彼の幸せを考えてあげられないのか?!
私はそう大声で怒鳴りそうになります
オードリーという少女は決して愚かではない
寧ろ優秀だと思う
だからこそ、私は思うのだ
『どうして愛する人までいる貴女があの人を縛り付けるのか!?』
と
私にはもうマス家の人間も信じられない
無理もないとは思うが
兄も一時期とは言えマス家に世話になっていたのだ。その兄が地球圏に堂々と姿を晒してアクシズ落としを実行した
その事実は余りにもマス家にとって、大きすぎた
彼等は地球に住んでいる
つまり
『兄はそれを知りながらも、平然と復讐を選んだ』という事だ
当然妹である私に対しても今まで通りとなるはずもなく、いくらかの手切れ金を渡されて私はセイラ・マスではなく、『ただのセイラ』となった
この歳になっても、
それをあの人はまだ親が必要だった頃には失っていた
その恐ろしさを私は身をもって理解したといえるだろう
情けない事だが、もう私が頼れるのはあの人しか、ラウムさんしかいないのだ
浅ましいと思う
情けないとも感じている
それでも私はあの人と共に居たいのだ
そして2人の道は交わった
ただ1人の男を求めて
その果てにあるのは笑顔か?
それとも
実はオードリーよりもセイラの方がかなり精神的にまいっていたという悲しい話
でも、よく考えるとコイツがセイラと結婚した場合
ザビ家とダイクン家がラウムで繋がるんだよな
なんだこれは、たまげたなぁ
これにはダイクン過激派も困惑しますわ
ミネバの幼少期のエピソード
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いる
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いらない
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書けるならどうぞ