その内キチンと整理すると思いますので、しばらくお待ちくださればと
「さて、改めて自己紹介をしよう
私がラウム・クラヴァス。初めましてだね、ハサウェイ・ノア君
…それとも
僕とバナージさんはラウムさんの部屋の中に案内された
ラウムさんはどこかの部屋に連絡を入れた後、僕にそう言った
笑っていても、それが好意の証でない
そんな事を僕は知っている。そう思っていた
でも、違った。僕の知っていたそれは全然浅い所の話でしかなかったのだと今漸く気付いたんだ
「ハサウェイ・ノアです
確かに俺はマフティーを名乗っていますが」
「名乗るなどと容易く言わない方が身の為だぞ、少年
言葉というものをどうにもニュータイプ論者は軽く見る傾向がある様に思えるがな
言葉一つで禍を招く事もあれば、人を殺す事だってある。それが理解出来ぬうちは活動家などすべきではない」
重苦しい言葉だった
「かつてコロニー独立運動をジオン・ダイクンやデギン・ザビらがまとめてジオン共和国を作り上げた
が、それ以前にその様な運動が起きなかった訳ではない
彼等は中心となる人物こそいたものの、暴徒と然程に変わらぬとして連邦軍に鎮圧されていった
…ティターンズによる最悪の悪行として伝わる『30バンチ事件』。これも住民達による『反連邦運動』がその決定的な引き金をひいた。そんな意見もある」
「活動するのは勝手だろう
が、それにより混乱を招き社会秩序にまで悪影響が及ぶのであれば統治側はそれを放置する事など許されない」
「交渉も出来ないのですか?」
分かりきっている事だが、それでも聞くしかない
「無理、ですよね。お義父さん」
バナージさんも同じ意見みたいだ
「そうだな。バナージもハサウェイ君も理解している様だが、無理だ
そもそも
確かにそうやって歴史において大きな流れを作り上げたものも存在はある。が往々にしてその場合、多くの血が流れる事になった」
ラウムさんは淡々と語る
「皮肉としか言いようが無いのだが、その方がよりその結果出来た秩序に対して人々は真剣に向き合うという事だろう。借り物の信念や道理などに惑わされる様では困るのも事実だろうが」
悍ましい話だと感じた
「秩序とは何の為にあるか?
これも主観者によって見方が変わるのだろう
統治者からすれば統治の為の道具。それにより平和を享受している者には
「多くの人間にとっては『独裁者』や『人類史に残る惨劇を引き起こした一族』でしかないザビ家
だが、私からすれば『周りの者達を必死に守ろうと抗い続けた悲惨な一族』だ
主観的な評価ほど当てにならんものもないという事の好例ではないかと私は思う」
「でもザビ家はコロニーを落としたんでしょう?」
「そうだな。それにより数えきれないほどの悲劇が生まれたのも事実。連邦軍に入隊した理由の一つに『ジオンへの復讐』というものがあるだろうな」
ラウムさんは憂鬱そうに
「『ジオン公国』という悪しき前例。それがあった為にどれだけ非道な事をしたとしても『ジオンの再来』などと言われる始末
己らがした事だと、望んでした事だというのに、だ」
怒りを堪える様に
「ジオンの名を、ザビの名を語る連中。だが、その実彼等はジオン独立運動の事を何一つ知らない
知ろうともしない。私は当時精神的に相当追い詰められていたが、それでも当時を知る私達からすれば本当に何もかもが足りていないと思ったものだよ」
「足りていない、ですか?」
「そうだ。であるからこそ、後に続こうという思慮の足りない者達がわらわらと湧いてくる
独立運動の頃、連邦軍などにより拘束される事はざらにあった。そしてそれは死ぬ事と同義でもあったのだ
まぁ、あの空気に酔っていた部分もあるとは思うが」
それは
「MSによるテロを企図している君に言ったところで無駄かもしれんがね
当時、ダイクンやザビの者達の盾となって連邦に拘束された政治犯というのもかなり居たのさ
連邦の連中にとっても、私達にとってもアレは今に比べると遥かに規模は小さかったものの確かに『戦争』だったのだ」
クラヴァス一家がサイド3に移住してきた頃というのは本当に危険地帯となっていた頃だった
連邦側であった政府(という名の連邦の代理人)ら兎に角独立運動の勢いを殺すべく、ありとあらゆる無法すら良しとしても独立運動派やその協力者を根絶やしにしようと躍起になっていた
それに対して抗おうとするダイクンやザビを中心とした独立運動派の者達
それは殆どの住民を嫌でも巻き込む事態へと発展していった
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「酷いものだな」
「ええ。これがコロニー独立運動」
当時としては異例すぎる地球からの
まだ幼いゼナを守る様に虚勢を張っているラウムであったが、既に自宅へと辿り着くまでの間数度警察などから職質を受けていた
時は宇宙世紀0052
前年に連邦政府は新規コロニー製造の凍結を連邦議会にて可決
つまり、これ以上
そうなれば連邦軍による加速していた独立運動に対する
それ故に此処サイド3の住民達は必死でコロニー独立運動を進めていたのだ
彼等は知っているのだ。此処で自分達が自治を諦めれば連邦政府は恐らく自分達に対する
既に一部のサイドは連邦政府の完全な統制下に入っており、そこで独立運動などしようものなら即座に牢獄送り。悪ければその場で死ぬ事すらあり得た
連邦政府はコロニーを単なる『
各サイドやコロニーの政府や自治組織の要職にある者達はコロニーにて生きるのではなく、『
彼らにとって、コロニーでの生活というのは左遷ではなく、一時的な出張でしかなかったのである
当然、コロニー住民に配慮する必要などなかった。何せ下手をすれば
そして彼らからすればジオン・ダイクンという存在は
「
が、何故
彼らにとって経歴作りの真っ最中。今後の事を考えれば此処で躓くなど論外なのだ
その為、ダイクンが活動していたコロニーの者達は『ダイクンを殺す事』により起こりうる
その候補は元々デギンによって独立の機運が高まりつつあったサイド3が最有力だった
何せ地球から一番離れたサイドであり、地球の影響力が強い
サイド3建造の経緯より月面都市グラナダとの間にはそれなりの航路が用意されており、そこからファンブラウンを介してサイド3の物は地球へと届けられる。勿論逆も然りだ
そうなると問題が起きる
地球より近いサイド群と地球から最も遠いサイド3
しかし、地球に供給する資源などにそこまでの違いはない。質も然程に変わらないだろう
さて、この場合
する訳がない。彼等にとってそれは『安く供給されて当たり前』なのだから
そして、その場合サイド3の地理的用件が非常に好ましくない事態を招く。
当然そこにも費用が発生する訳だ。サイド3の場合だと、グラナダ、フォンブラウンを経由する
つまり地球へと直接納入出来る。若しくはフォンブラウンのみを介する他のサイド群に比べると最低でもグラナダを中継する費用が余分に発生するという事
それでサイド3が各サイドと
出来るはずがない。そしてコレは地球から手に入れるものにも当てはまる
そして、殆どのサイドよりもサイド3の完成は遅かった。地形的な理由からだ
当然連邦政府としては『建造費用』を回収しようとするだろうし、その上で利益も求めるだろう
それに反発しないだろうか?
しかも、不穏分子を各サイドから押しつけられるというおまけ付きで
ジオン・ダイクンという思想家とデギン・ザビというサイド3におけるある意味では重要人物の合流。更に各サイドで独立運動に
そして、それを良しとしない現地政府や治安維持組織はそれを何とか抑えつけねばならない。何せ他のサイドに逃す事もあちら側が受け入れないのは明白だ。何が何でも鎮圧しようとする統治側と、これが最後の好機と悟った者達による混乱が穏やかに終わるはずもない
特に他のサイドで独立運動に失敗した者達からすれば、『サイド3政府は
しかし、あくまでも『自分達の主張』を押し付けあっていた他の独立運動と比べ、サイド3のそれは少しだけ毛色が違った
余りにも行き過ぎた内容故に同じコロニー住民からも倦厭されていたダイクンらの主張は『段階的に独立自治』を求める。という少しばかり
これに対してサイド3政府内でも是々非々の激論が交わされる事となり、翌年0053にはサイド3政府首相としてジオン・ダイクンが選出される事となった
連邦政府としては少なくとも『話にならない相手』から『少しは話し合いが出来る相手』と認識を改めたのかもしれない
だが、此処で大き過ぎる認識の差が生まれてしまう
連邦政府からすれば『譲歩した結果、こうなった』だろう
だが、独立運動派の者の中には『こちらが譲歩した結果』と受け止める者が少なからずいたのである
そして、『独立への第一歩を
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サイド3政府の首相となったダイクンとその補佐役として、主に経済対策などを担当していたデギン
しかし、困った事にダイクンの周囲には『
果たしてこの動きを連邦政府はどの様な目で見つめていただろうか?
そして、ジオンとデギンは何とか彼等を説得や調整して回る事で宇宙世紀0058にジオン共和国が成立する事になる
が、その直前にクラヴァス夫妻の息子であるラウムが一部の者達に襲われかけるという小さくとも大きな事件が起きる事になり、それを受けてケイム、セリアの両名は独立運動から距離を置く事を選択した
息子と娘を守る為なのは明白だろう
しかし、ケイムの実家からは絶縁を言い渡されておりセリアの実家はケイムの家の影響下にあった
その為、彼等は不安の残るままにサイド3に残る事になったのである
これに対してジオンは「自分はクラヴァス夫妻やその息子を信用している」とのアピールから息子キャスバルと娘アルテイシアの遊び相手をラウムに依頼。クラヴァス夫妻は渋ったが、ダイクンの懇願ともいえる「私は君達に何も返せていない。せめてラウム君には何かを返させてもらいたいのだ」との言葉により折れる
更にデギンも自身の息子であるギレンやサスロに出来る範囲で良いから身目をかけてやる様に頼んでいたりもする
キャスバルやアルテイシアに言葉足らずとも、色々な事を話すラウムの姿にダイクンの屋敷を出入りする者達は『クラヴァスの息子は両親に似て良く出来た子供だ』とその認識を強めた
…ところが、その立場を熱望していた者達にとって、ラウムは邪魔者以外の何者でもなかった
その多くは他のコロニーにて独立運動の中心的人物やその関係者だ。彼等は
何せダイクンは既に高齢でないにせよ、
そして、彼等はある知らせを受け取った
セリア・クラヴァスが子を宿したというのだ
それは今現在邪魔者となりつつあるクラヴァスの権力が盤石になる可能性を彼等に幻視させた
幸いと言うべきかラウムの妹、ゼナの存在は徹底的に伏せられており、それを知るのは夫妻に好意的だったアンリ・シュレッザーくらいというレベルであった
このままでは
そう彼等が歯噛みしていた時、それは起きた
そう、ジオン・ダイクンの暗殺である
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これについての犯人は今もって不明であるが、とにかくこれによりジオンの後継として長年補佐役を務めていたデギン・ザビが次期首相となるのは別におかしくない
が
殺したのは、その死によって最も利益を得た者だ
とミステリー小説でも中々お目にかかれない理論により、焦りを覚えていた者達はデギンの排除と、
更にクラヴァスの息子の台頭を阻止する為にクラヴァスの資産の殆どを奪い取ったのである
妹ゼナを確認する唯一の機会がクラヴァス夫妻の葬儀であったが、彼等はそれよりも
いや、正確には葬儀に出席した者の中にも彼等と誼を通じていた者は確かにいた
だが無言で涙を流しながらも、参列者に頭を下げているラウムの姿を見た時彼等の中にあるなけなしの良心が彼等に問うたのだ
『お前達は自分の子供達が
彼等は顔を見合わせると、この場にいなかった者達には
「クラヴァス夫妻の子供はラウム・クラヴァスのみ」
と連絡するに留めた
そして、その子供は一年戦争、デラーズ紛争、グリプス戦役、ネオ・ジオン紛争、シャアの反乱、ラプラス事変が起きる中ひっそりと生き延びる事になる
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「ま、こんな事があったのさ」
僕は絶句するしかなかった
なんだ、それは
それを平然と話せるラウムさんに
そんな事を平然と行える者達の悍ましさに
「…そんな事があっんですか」
「オードリーにも話をしていない事も多いがな。話す話さないの判断はお前に任せる」
「なん、で」
「うん?」
「なんで!そんな事をされて貴方は何もしないのですか!」
僕には理解出来ない。そこまでされてどうして怒らないのか?憎まないのか?恨まないのか?
「して、どうなる」
「どうなる、って」
ラウムさんは僕を見据えて
「では聞くが
誰かを殺せば両親が帰ってくるか?生まれ落ちる前の妹は俺の前に現れてくれるのか?」
「そんな、こと」
「復讐が無意味とは言わんよ
だが、これを抱えて俺は生きていく事を決めたんだ。誰を憎めばいい?誰を怨めば良い?
俺には分からんよ」
その力の無い笑みを見た僕は
「なん、ですか。それは」
力無く項垂れるしかなかったんだ
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「憎しみに囚われたまま、何をしたところで残るのは虚しさだけだろうさ
アクシズの反乱。アレの首謀者のグレミー・トト
彼もまた周囲の大人達に翻弄された人物だった
ハサウェイ。君が目標としているキャスバルとて恐らく虚しさを抱えていたそうだ」
「俺も、そうだって言うんですか?」
「さてな。そこまでは知らんさ
あと、現在連邦軍はMSの小型化を推進しているそうだが、その意味を考えたことはあるか?」
「意味、ですか?」
突然の質問に戸惑う
「ま、俺の推測だがな
MSは元々人型の作業機械を軍事転用したもの
グリプス戦役後のアクシズとの戦闘において、連邦軍は終始アクシズのMSに苦戦していたそうだ
だが、俺としてはそれは当然だと思っている」
「当然、ですか?それってどういう意味です?お義父さん」
バナージさんが思わず口にする疑問。それは僕も同じだ
「アクシズのMSは純戦闘用。対して連邦軍のそれは治安維持などにも利用されるもの
用途が違うと思うが」
その言葉を聞いた瞬間途轍もない悪寒に僕は襲われた
つまり、それは
「そう。俺は思っている
これから連邦は住民への示威行動にすらMSを再び使うのでは無いか?とな
…正確にはコロニー内の戦闘を前提とした機体の開発を進めているのだと見るが」
更なる惨劇の幕が上がる事を意味していた
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「その惨劇の幕が上がるのがいつの事かなんて私には分からんさ
が、そう遠く無い未来だと思う
…全く度し難い話だがな
残念だが、その時まで私は生きていまい。ハサウェイ君がテロをするなら話は別だろうが」
お義父さんは深いため息を吐くと
「もう私の時代はとうの前に終わっている。後はのんびりと朽ちていくだけさ」
そうのんびりと呟くと目を閉じた
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「アムロさん達に会って行きますか?」
「いや、先ず自分の不始末を片付けてからまた来るよ
今会ったら多分怒られるだろうし」
そうハサウェイさんは笑います
「ラウムさんか。父さんもあの人にとって恨むべき相手の1人なんだろ?それでも押し殺せるのか」
「お義父さんは言ってました
『もう、疲れたんだよ』って」
「…そんな人達を増やすかも知れなかったんだな。僕は
また今度来るよ」
そう言ってハサウェイさんは少し陰のある表情で立ち去りました
「…本当に重いな」
俺はお義父さんが抱えていたものを思い、そう呟きました
ハサウェイ君がその後どうなったかは多分明確にしないと思います
クラヴァス夫妻の子供の件は割と早めに決めていたヤバい要素の一つですね
闇が深いラウムなので、この位は背負ってもらいませんと(鬼畜)
あとはアルテイシアの総括と一応最終話で終わると思います
多分、きっと、maybe
あと明日くらいにアンケート締め切りたいと思います
ご協力ありがとうございました