ケイムおじ様、セリアおば様
私はこの人を支え、守られたいのです。私はあなた達が死んだ理由です。恨まれても当然の事だと思います
私とこの人の
それでも私はこの人を諦めたく無いのです
私が全てを奪ってしまった
貴女のお兄さんを私に任せてくれませんか?
なぁ、ゼナにドズルくん
お前達の子供は強く、優しい子に育ったよ?
ギレン
父さん、母さん
俺たちの可愛い娘は素晴らしい相手を見つけたよ?
カーディアスさんにアンナさん。貴方達の息子さんは本当に良い若者に育ちました
だから、もうあの子達は大丈夫
ごめん。俺もそろそろ眠いんだ
「長くない事を知っていて、それでも貴女はあの人の幸せを願う事はないのかしら?」
「何が幸せなのか?それを判断するのはセイラさん
貴女でも私でもないのではないでしょうか?
それはお父様だけが決められる事かと思いますが」
私セイラとあの人の
今彼女と私は対峙している
理由?
それは
私とあの人の結婚について認めさせないといけないから、かしら?
はっきり言ってしまえば、別にそこまでする必要もないと思わなくも無いけどこの辺をしっかりやっておかないと色々と面倒な事になると思うのも事実ではある
何せ私は
…はっきり言ってしまうととんでもない縁なのよね。何せ長年敵対してきたはずの宇宙市民の独立運動を主導した両輪なのだから
想像するのも恐ろしいけど、彼との間に子供が生まれたとしたら間違いなく目の前の彼女よりも多分恐ろしい人生を歩ませてしまう
そう容易に想像できる。しかも、ラウムさんの実家はオーストラリアにおいて連邦議員を何度も輩出した名門クラヴァス家らしい
どう見ても大人達にその人生を利用され尽くす未来しか想像出来ないのも事実なの
…本当に残念だけど
それにやっぱり結婚するのなら、周りに祝福して欲しいと思うのも事実だ
マス家の人なら、ラウムさんの出自を知ったら大慌てで祝いの言葉を贈るどころか人を寄越してきそうでとても嫌、なのだけどね
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本当に人の
お互い昔は交わっていた筈の私達ザビ家とセイラさんのダイクン家
しかし、今となってはごく一部を除けば不倶戴天の敵ともいう存在となってしまった
ダイクン派が主張するジオン・ダイクン暗殺の真相は未だに闇の中
お父様が言うには
「一応ザビとダイクン両方に多少なりとも関わりがあった身として言わせてもらうと『あり得ない』とまでは言わなくとも『考えにくい』と言うのが私の本音だな
仮にザビ家の仕業とすれば、その報復にサスロ氏が殺される理由は今一低い。必要とあれば身を呈する事くらいはやるだろうけど、そうでなければそこまでする必要性をあの人が認めるとは思えないからな
逆にダイクン派の暴走とするには余りにも報復手段がお粗末過ぎる。確かにサスロ氏の手腕は見事だったと思うが、今思い返せばそれでも疑える要素はあった様にも思えてしまう
勿論、後知恵と言われればそうだろうが、な」
との事らしい
一時はそれこそ独立運動の為に力を尽くした両家。それを対連邦という一点において強力に補佐したのがお父様のクラヴァス家
そう考えれば私やセイラさんよりもとんでもない人生を歩む事になったのはお父様ではないか?
そう思えてしまいます
ですが、そのお父様が払った犠牲は余りにも大き過ぎました
両親をダイクン氏の死の混乱において亡くし、しかもお父様にはその存在を知らされていた妹すらも喪った
そして、自分達の思い出の詰まった家も人達も全て忘れて過ごさねば生きていけなかった
お母様も協力したでしょうが、お父様は文字通り身を粉にしてまでお母様の生活を支えたといいます
「ゼナにまで苦しい思いをさせる訳にはいかなかったからな」
そうお父様は言っておられましたが、バナージがお父様とこの前一緒に銭湯に行った時驚いたそうです
その身体中にあった無数の傷跡に
お父様は頑なに私やバナージが着替えさせる事を拒んでいた理由がこれだったのでしょう
既にお父様は車椅子での生活を考えねばならない程に足腰が弱っているそうです
カミーユさんの知人の先生が言うには
「失礼な事と思いますが、寧ろこの状態でまだしっかりと両の足で立てている事自体が不思議と言わざるを得ません
娘さんには言いづらいのですが、恐らくこれから急激にお父さんは体調を崩されると思います。抗生物質を一応処方しておきますが、恐らく精神面の影響が大きい様にも思えますので」
との事だった
事実、お父様の睡眠時間は日に日に長くなりつつある
そして光が落ちる頃には床につくことが増えた
以前お父様が言っていた
「もう長くない」
とは恐らく事実なのだと
だからこそ、私は躊躇します
この状況でセイラさんと結婚したとしても、セイラさんにとって傷を残すだけになるのではないか、と
だからこそ、私は敢えてキツい言葉を投げつけます
それに私にもそこまで余裕がある訳ではないのですから
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俺は今お義父さんの車椅子を押しながら、散歩していた
お義父さんたっての願いだから
「悪いな、バナージ。多分もう数えるくらいしかこの景色を見る事も出来ないと思うから。せめてオードリーの夫であるお前には私の見た景色を見せてやりたかったんだ」
「いえ、俺も嬉しいです
でもお義父さん。まだ諦めないで下さいよ?俺もオードリーもお義父さんに子供を抱いて欲しいんですから」
泣くな
俺は自分に言い聞かせる
「…ふふ、そうか
もしそれが叶うならば、ゼナや義弟殿に良い土産話となるだろうな」
お義父さんは分かっているんだ
多分それが叶う事はないって事を
カミーユさんとファさんから少し前に呼び出しを俺は受けた
「バナージ。俺としてはラウムさんに何処かの病院でせめて静養して欲しいと思うんだが」
「ごめんなさい。私達で出来ることはしたつもりなのだけど」
2人はお義父さんが病院に対して
せめて、もう少し健康なら或いはソレを克服する手段もあっただろう
…でも今のお義父さんは本当に『気力だけで何とか保たせている状態』だ。仮にこれが悪い方に転べば間違いなくお義父さんは無事では済まない
最悪そのまま帰らぬ人にもなりかねない
それを2人とも知っているからこその苦悩なのだ
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「バナージ。ラウムさんは
…もう長くないのか?」
「…はい」
お義父さんとあまり関わらないアムロさん
オードリーから聞いた話では、オードリーにとっての実父や叔父を戦場で倒した人物だ
それはつまりお義父さんにとっても義理の弟達を殺した相手という事でもある
アムロさんとしても、どう接すれば良いのか悩んでいるのだろう
でも、アムロさんもお義父さんの心配をしてくれているのはよく知っている
本当に複雑な関係なのだと思う
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ジュドーさんはお義父さんと仲が良いらしく、俺から聞くまでもなく知っていた
でも
「本当にこういう時自分の無力さが嫌になるよ」
「…ジュドー」
「あの人まだ50歳なんだろ?まだ早過ぎるよ
なぁ、バナージ」
「はい」
「なんでも良い。ラウムさんの為になるなら俺は何でも力になるからさ。声をかけてくれよ?」
「ありがとうございます」
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「此処は良くゼナと過ごしていた頃に食材を買いに来ていたなぁ
…そうか、いつの間にか此処も店を閉めていたか」
お義父さんはいろいろな所を案内してくれます
…でもその殆どが店を閉めていたり、新しい建物になっていました
その度にお義父さんの表情は少しだけ寂しそうに曇るのです
「セイラに再会してから、買い出しは彼女がしてくれたからなぁ
それからは殆どあのアパートから出る事はなかったが、こうも様変わりしていたのだな」
俺は何とか泣きそうになるのを堪えています
お義父さんとゼナさんの思い出は確かにある。でもその思い出となった場所の多くは過去のものとなってしまい、もうお義父さんはそれに耽る事すら許されないのだと
「最後になるが、バナージ。もうひとつだけ頼めるか?」
「…はい」
俺は涙を堪えながら車椅子を走らせました
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「…これって」
俺は目の前の
その廃墟の入り口には『keep out』と書かれた黄色のテープが貼られていました
でも、それもかなり古いのかボロボロになっていたのです
「…此処が俺とゼナに両親が住んでいた所だよ」
やっぱりそうなんだ
俺はお義父さんの言葉を半ば絶望しながら聞いていました
そこらじゅうにある
(何で、何でなんだ!)
俺は思わず膝をついて子供の様に泣きました
何でお義父さんがこんな目に遭わねばならないのか?
お義父さんはもう十分過ぎるほどに苦しんだ筈だ。なのに何故まだこんなにボロボロのお義父さんに酷い仕打ちをするのか、と
「バナージ」
お義父さんは俺を呼びます
声が出ない。苦しい
「バナージ」
お義父さんは困った様に笑いました
なんでそんな哀しそうな顔をしているのに笑えるの?
「バナージ」
お義父さんはそんな俺をゆっくりと抱きしめました
「お前もオードリーと同じく優しい子だ
他人の痛みすら自分の事の様に受け止められる。強くて優しく、そして少しだけ不器用な俺の可愛い自慢の息子だ」
そう俺に言います
俺はただ、何も言えずに頷く事しか出来ません
「お前達はその優しさを、強さを、そして気高さを忘れるな。大丈夫だ。お前やオードリーを見守ってくれる人は大勢居る」
違うんです。お義父さん
俺とオードリーは
「時には足を止めても良い。後ろを振り返って過去を想うのも良いだろう」
俺達は
「でも、いつかは歩き出さねばならない。それが生きるという事だから」
おれ、たちは
「あの
そしてそこにそろそろ
とう、さん
「もしも、お前達に子供が出来たなら、俺やゼナ。義弟殿や義兄達の墓に一度で良いから見せにきて欲しい」
「…うさん、死なないでくれ」
俺の嗚咽混じりの言葉に
「いや、それは無理だ
これはお前達の親である俺に出来る最期の務めだからな」
とうさんは少しだけ晴れやかな顔をして笑いました
「お前達よりも俺が後に死ぬ
そんな情けない大人に俺をさせないでくれ、バナージ」
「…は、い」
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それから僅か2日後の事です
俺とオードリーは嫌な予感がして、急いでお義父さんの所に向かいました
多分『虫の知らせ』という奴だったのだと思います
「お父様っ!」
「とうさんっ!」
部屋に入った俺達は悲鳴にも似た声をあげたのです
「バナージとミネバ、か?…最期に会えて良かった」
「お父様!」
「とうさんっ」
俺とオードリーは急いでとうさんの所に駆け寄ります
「お迎えが来たみたいだ。何とかお前達を最期に一目みたくてな?柄にもなく頑張ってみたよ」
とうさんの目にはもう光はなく、俺とオードリーが手を握っていても視線はあっていません
「昨夜、ドズルくんとゼナが迎えに来てなぁそろそろ俺も向こう側に行く事になった」
「お父様、お父様ぁっ!」
オードリーは必死にとうさんに縋りつきます
「長い、長い旅路だったよ。それでも僕は何とか歩き通せたらしい。こんなに優しく、強い娘と息子がいるんだから」
「とうさん、とうさんっ!!」
俺もとうさんの腕に縋りつきます
「バナージ、ミネバ。しあわせに」
それがとうさんの遺した最期の言葉でした
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宇宙世紀0101
1人の人物の命の灯が消えた
その日は奇しくも43年前、クラヴァス夫妻が亡くなった日
彼もまたそうして虹の向こう側へと消えたのでした
本来アルテイシアとの結婚を入れるべきかとも思いましたが、彼女の考え通り間違いなく騒乱の元にしかならない事と、そもそもラウムが子孫を残す事に同意するか?と今更思ったのでこうなりました
仮にアルテイシアとラウムが結婚した
その事実があれば、ともすれば
『2人の子孫』を名乗る者が出てくる可能性もラウムは思い当たりました
弱く臆病で、それでも誰よりも家族達の想いを受け継いだ少年の旅路はようやく終わったのです
本話を持ちまして拙作『義理の兄、なんだそれは!?』
は一先ずの完結とさせて頂きたく思います
今まで皆様ありがとうございました
これより先は蛇足となるので興味のない方はスルーして下さい
本来単発予定だったこれが此処まで長く続いたのも偏に皆様からのお気に入りや評価に読んでいただいたというアクセス数。そして感想によるものです
この場を借りて、改めてお礼申し上げます
ありがとうございました
とりあえずだらだら続けるよりも、一度しっかりと完結させた上でチマチマと書いていこうかと思った為、此の様な仕儀となりました
アルテイシアについては完全に嘘となった事謝罪します
申し訳ございませんでした
此処からは個人的な所感を少しばかり
まず驚いたのは反響の大きさでした
いつもマイページでチェックするたびに「ファッ!?」と驚き、1時間でお気に入りが20人くらい増えた時は「おなかいたい」と思いました
低評価を下さる方もおられたのですが、その理由を伺いたかったなぁ。と言うのが正直な気持ちです
一部ランキングに載っていた時は最早笑うしかありませんでした
キャラの解像度が低かった事については偏に私の調査不足にあると痛感しております
次回の後書きにてある程度のキャラに関して紹介しようかなぁ?とは思っていますね
とにかく感想が中々なかった時には『これでええんやろうか?』と思いながらも『自分の始めた物語やし、行けるところまで行ってしまえ!』となった結果こうなりました
なんでこうなったのやら
なお、『想い』における各話の頭の文字を読むと、なんかあるかもしれません
英語力が標準搭載されていればなぁと
皆様一人一人が持っておられる宇宙世紀とは似て非なるものになったとは思います。が、もしも皆様の少しでも楽しみになれたならば、これに勝る喜びはありません
一応書き方などにも留意したつもりではありますが、読みづらかったりしたと思います
ラウムくんの旅路は終わりましたが、もしかしたらまた彼を使って別のキャラクターに焦点を当てるかも知れません
その時もし宜しければお付き合いしてもらえると嬉しく思います
令和5年5月21日 鞍馬エル