そろそろ方向修正しようかな?と思う今日この頃
「おじさん、少し聞いてもいい?」
「どうしたよ、クェス?」
あれからどこに行くにも兄さんの後をついて行くクェス。まるで親鳥の後を必死で追いかけている雛鳥みたいだと思う
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「どうにもラウムには妹なり娘なりと、年下の異性とは縁があるな」
「それは早計というものだろうよ?ならキャスバルやバナージとやらはどうなる?」
「『年下キラー』と言う訳ですか?サスロ兄さん」
「しかし、ラウムの兄上は親父やダイクンなどに好まれているとも聞いたが?」
「ですがドズル兄さん。あまり言いたくはありませんが、その大人達にラウム兄さんは人生を狂わされたのではありませんか?」
…何というか
今更ではあるが
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「しかし、セシリアから聞いた時は驚いたものだ」
「?何かあったのですか?兄上」
「どうせアレの事だ。お前の予想を遥かに上回るか下回ったのだろうよ?」
「実はセシリアとラウムが頻繁にやりとりをしていたらしくてな?ある時期から私に出される食事の質が良くなった気がしたので聞いてみたのだが」
ギレンは心底愉快そうに話始めた
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流石に公国総帥ともなると、食事一つにも気をつけねばならなかった。全くもって煩わしい事だったがな
何せ総帥という立場は随分魅力的に見えるものらしい
…お前とて少し前まではそれに固執していただろうに
何を
「…」(無言で目を逸らすキシリアの図)
…釈然としないが、まぁいい
警備は親衛隊が行なってくれたものの、どうしても行き届きにくい所があった
食事だな
「…なに?」
「ですから閣下。クラヴァス氏に料理を教わろうかと」
「…ふむ」
セシリアからの提案自体が珍しいものだった
その上提案内容がアレとあっては中々忘れるものでもない
「クラヴァス氏のこの前食べた野菜炒め。単純に思えましたが、その分幾らでも応用が効く様に思えました
…あまり認めたくはありませんが、私に『同じもの、若しくはそれに近いものを作れ』と言われたとしてもご期待に応えることは出来ないかと」
「であれば、学ぶべき。そういう事だな?」
「はい。こう言っては何ですが私や親衛隊長でも流石に食事内容にまで手が回らないのも事実。現在のところ、それに対する対処がなされていない以上危険かと考えます」
淡々と言葉を重ねるセシリア
だが、それなりに付き合いの長い私には分かっていた
「…セシリア。虚飾はあまり好まん
つまりお前はこう言いたいのだろう?
『ラウムに料理で負けたままでは悔しい』と?」
私の指摘を受けてセシリアは顔を真っ赤にしていたものだ
あれで中々可愛いところがあったからな
…なんだドズル?
その
「兄貴にもそういう機微を察する事が出来たのか!?」みたいな顔は
私とて
ましてラウムの様に変なところで抜けているわけでもないのだからな
…ああ、そこまで落ち込む事もあるまい、ラウム
それもまたお前自身なのだ。誇れ、とまでは言わないが胸を張れ。少なくともそんなお前に救われた者はそれなりにいたのだからな
さて、少し話が逸れたか
確かに暗殺するのであれば、私の食事に手を入れるのは効果的な方法だろう
別に毒物を致死量仕込む必要はない
毒物を少量ずつ摂取させて、私の体調を悪化させる方法もある
旧世紀の資料など調べねば出てこないが、その辺を教えてくれた義弟殿には感謝してもしきれぬものだとあの時改めて思ったものだ
まだ連邦と開戦していなかった為に、セシリアも多少自由はあったからな。ラウムの暇な時間
大抵アレが自宅に帰る途中セシリアのアパートで料理を学んでいたそうだ
…なに?
「『私がセシリアとラウムを信用していたのですね?』だと?
…ふっ、ガルマよ。お前達と違って私はラウムとの付き合いは長いのだ。愚直なまでに真っ直ぐあろうとするその性分は信用するに充分過ぎるだろうよ?
セシリアは言うまでもなかろう。アレが私の補佐を務めてどれだけ共にいたと思っている?」
仮にセシリアとラウムがその様な仲になったとしても、私は素直に祝福しただろうさ
そうなれば幾らでもラウムをこき使えただろうからな
…デラーズ。ラウムに同情的な視線を送ることはなかろう
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「…危な過ぎる件について」
私はラウムさんの言葉に膝をつきました
…確かに私は両親や友人達からも
「…ねぇ、セシリア。もう少し料理とかの勉強をした方が良いと思うんだけどどう思う?」
とよく言われてはいた
だが、まさか此処までだとは思わなかった
思わなかったのよ!?
こんな
こんな事になるなら
「もう死ぬしかないじゃな」
「はい、ストップ
なんか危なそうな発言ですから、やめましょうね?」
「…ごめんなさい」
どうやら色々マズい発言だったみたい
でも、絶望したらこう言えと何処かで見たような気もするのだけど
「しかしまさか此処までとは」
「本当にごめんなさい」
私は重ねて彼に謝った。
ほとんど使っていなかった我が家のキッチン周りはほぼ『物置』と化していた。その為、まずしっかりと清掃せねばならなかった為である
…アタシってホントばか
思わずそう自嘲してしまう程のポカである
どうして彼を家に呼ぶ前に確認しなかったんですか?
そう言われても仕方のないくらい情けないミス
…仕方なかったのよ
あのギレン総帥の補佐役をしようとしたら、生半可な努力でどうにかなるはずないのだから
「貴女ももう少し勉強以外をしたら良いのに」
何度親から言われた事か
大丈夫だと思っていた
勿論総帥に恥をかかせる訳にいかなかったからある程度ファッションなどにも気をつけた
知識や人間の行動心理なども学んだわ
「ほう、よく知っているなセシリア」
そうあの人に褒められるのが、認めてもらうのが私にとって何よりの原動力だった
食事なんて食堂やコンビニなどで弁当や惣菜を食べればそれで良いと思っていた
でも、それだけではダメだと気付いてしまった
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あの時
「ドズルから何やらお裾分けだと貰った物でな。なんでも『温め直しても美味い』との事だ
セシリア。少し温めてきてくれるか?」
「分かりました」
困惑していたあの人から受け取った料理を私は隣の部屋にある電子レンジで温めて、あの人に出した
「…ふむ、彩は中々。香りも悪くはないな」
そう言ってあの人はソレを口にしました
「なるほどな。悪くない」
その言葉と表情を見た時の私の気持ちと言ったら
おかしい!
こんなの絶対おかしいわ!
こんなのって
こんなのってない!!
と言ったところでした
だってそうでしょう?
あの人が他の人にも分かるほどに表情を緩ませていたのだから!
「ドズル閣下のご夫人の手料理ですか?閣下も良い伴侶を選ばれた事改めてお祝いします」
私はそう言いました
でも
「ゼナの?
いや、これは」
あの時私は自分が料理を覚えていなかった事を心の底から後悔したのです
「ゼナの兄が作ったものだそうだ」
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私にも女としての意地があります
そして長年この人の補佐役をこなしてきたという自負も
だからこそ、そんな私ですら見たことの無い表情を引き出したラウムという人物は私にとって超えねばならない相手となったのです
…その衝動のままに連絡して教わろうとした結果がこのザマ
いっそ笑って欲しかった
「衛生面には留意しないとマズいですからね
まず片付けてしっかりキレイにしてからにしましょう」
穴があったら入りたかった
あの日私は戦うことなくラウム氏に敗北したのです
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そんな事がありましたが、それからそれなりの頻度で彼に料理を教わる事になりました
曰く
「ゼナにも教え込んだので、それなりに慣れてるつもりです」
との事だ
実際私はかなり細かい部分も気にする性分だった事もあってか、料理との相性は悪くなかったみたいです
そしてひと月後には
「…出来ました」
「うん。危なげなく出来た上にしっかり分量は測って、味見もしている。大丈夫でしょう」
と一応合格を貰えたみたいだった
まだ彼に及ぶとは思えなかったが、彼が言うには
「あとは経験を積んで慣れていきましょう
ギレンさんの好みとかを考えて作るのもありでしょうね」
との事
それ以降、総帥の食事は私が隣室で作ってからお出しする様になった
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「と言った事があったとセシリアから聞いている」
「…なるほどな。食事による暗殺
余りにリスクとリターンが釣り合っていないと切り捨てていたが、そう言うやり方もあったのか
…ラウムめ、知っていたなら教えれば良かっただろうに」
「お前にその手の事を教えれば更にお前が孤立を深めると心配していたのでは無いか?」
「ふん。それが俺の役割だ。余計なお世話というやつだな」
「そうは言いますが、サスロ兄さん
少し表情が緩んでおられるご様子」
「なんだ!サスロ兄貴も嬉しいんじゃないか!」
「別に感情を隠さなくとも良いと思います。私達は家族なのですから」
「…ふん
死んで重荷を降ろしてから随分お前達は丸くなった様だな?」
「いつまでも肩肘を張っても疲れるだけだろう
サスロ。私達の戦争は終わったのだ」
「…そうだな。そうだったな」
ギレンの言葉に目を瞑り、大きな
大き過ぎるため息と共に何かを吐き出したサスロ
「ならばお前の話を聞きながらアレを揶揄う算段でも立てるとするか?」
「…サスロ兄さん。ラウムはおもちゃではないのですよ?」
「流石にどうかと思うのだがなぁ」
「心配するな。こいつは今までといきなり違った姿をラウムに見せるのが少し怖いだけ
アレが言っていたぞ?
『普段から攻撃的な人物ほど、他人から攻撃されるのを鬱陶しくおもっているのではないか?』とな?」
「ラァウゥムゥゥゥ!?」
「ドズル、ガルマ。サスロを止めろ
キシリアは直ぐに父上なところへ行き、援軍を要請するのだ
私はキャスバル達を引っ張ってくる」
そう言って皆それぞれ動き出した
しかし誰もがその顔に笑顔を浮かべていたのだけは確かだった
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「改めてお久しぶりですラウムさん」
「お元気そう、というのは全く違うでしょうが
…オードリーやバナージから聞きました。最期の最後まで面倒をかけた様で」
「そんな事はありません
貴方が私に教えてくれた事であの戦争中にあの人も私も最期まで人間としてあり続けられたのですから
それをお返ししただけです」
「おじさん、この人誰なの?」
セシリアとラウムの親そうな会話を不思議に思ったのか、くっついているクェスは疑問を口にした
「だから言い方を考えろと」
「構わないと思いますよ、私は
私はセシリア・アイリーン。旧公国の総帥付き秘書を務めておりました」
「って、無茶苦茶偉い人よね!
なんでおじさんそんな人と仲がいいのよ?」
言葉を偽ろうとしない、飾ろうともしないクェスの姿にセシリアとラウムは密かに和んでいた
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「…何それ
私の父親も一応連邦の政治家だから秘書の人はいたけど、そんなに仲が良かったと思えなかったわ」
「それは本当に人それぞれかと」
「だな。セシリアさんとギレン兄さんの在り方が正しいという訳ではないだろう。ただ『2人にはそれが合っていた』それだけさ」
「…なんか羨ましいなぁ
私の家族は何も話そうとしなかったもの。私も親が嫌いなのに、その
インドでニュータイプの力に目覚めた時、何か変わるかと思ったけど何も変わらなかったの」
「インドで?何かあったのか」
「ニュータイプの修行をしただけよ、おじさん
結局父親に連れ戻されたけど」
ラウムの疑問に答えるクェス
「でも貴女自身が何か変わったとは思えなかった?」
「…そうね。逆に更に窮屈になった気がしたくらいかな?
それでロンデニオンに向かう父親について行く事にしたわ。家にいたところで何もないと思ったから
…でも今思えば逃げてたと思う。何もかもから」
「家庭の事、娘の事すら満足に出来ない人物が世界を論じる
何とも皮肉ですわね」
「しかし、セシリアさんや
少し考えてみると、そういう人多くないか?」
「…あら?」
クェスの話を聞いたセシリアの言葉にラウムが疑問を投げかける
そしてセシリアも少し冷や汗を流してしまうのだ
「ダイクンおじさんは、子煩悩な割に子育てに成功しているとは」
「…とてもではありませんが、言えませんわね」
「デギン公はまだマシか?」
「…そうかも。ねぇ、おじさん。ちょっと怖くなってきたのだけど」
「だな。俺も正直ヤバい気がしてきたぞぉ」
「触れてはならないものでしたね」
クェスの言葉にラウムとセシリアも同意する
「まぁ、俺ら既に死んでいるからね
仕方ないね!」
「そうよ、死んでいるアタシ達は眺めて少し昔の事を振り返るだけで、だけで
良いのかしら?」
「クェスさんはラウムさんと新しい思い出を増やしましょう
この人無駄に顔が広い上に、話題にも事欠きませんから」
「ただ逃げ回っていただけなんだがなぁ」
そんな2人の会話を聞いていたクェスは
『逃げ回りゃ、死にはしない』
と何処かから聞こえてきた気がして、思わず周りを見回してしまった
「どうしました?」
「どした?クェス」
そんなクェスを心配そうに見る2人と、少し遠くで何やら大捕物の様な事になっていたが、そこまで気にする事はないか。とクェスは割り切った
『あの、クェスさん?
その大捕物貴女がおじさんと慕っている人ととても近しい人達がしているんですけど』
と思わなくもないが、あくまでクェスにとっての興味はラウムだけである
実は密かにクェス・クラヴァスと名乗ろうか思案中だったりする
のたが、その場合イニシャルがK・Kとなってしまうか、或いはC・Kとなってしまうので
「何か字面が嫌なのよね?」と首を傾げている
一応クラヴァス本家に倣えばK・CやC・Cともなるのだが、何やら甲高い笑い声やピザを夢中で食べている自分を見たような気がしたのでやめておく事としていた
なお、仮にその決断をした場合
某少女が
「クェスさんでしたか?
少しお話がありますので、此方に」
と普段の温厚さを虹の彼方へと放り投げて、全力で潰しにかかってくる事だろう
それこそ、自身がバンシィに乗って乗り込む事すら恐らく辞さない
その場合、バンシィvsαアジールという夢の対決が行われる
のかも知れない
なお、レフェリー側にはサザビー、キュベレイにゲルググマリーネカスタムやハンブラビ、ジ・Oにビグ・ザムなどがついている模様
控え目に言って地獄かな?(白目)
クェスの乗り越えるべき
「嘘!?おじさん裁縫も出来るの!?」
もしかしたら一番大変なのはラウム相手なのかも知れないが
今日もこの世界は平和です
という訳で難産でした
そろそろ闇ゲージが溜まってきたので、異伝を少し拡大してみようかな?と検討中
誰が曇るか?
それはまだ不明
こういった短編、要ります?
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いる
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いらね
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書けるなら書いて、ほら役目でしょ?